あぱかば・ブログ篇

apakaba.exblog.jp
ブログトップ
2008年 10月 28日

フランスよりも遠い大阪の民家へ——安藤忠雄建築展

東京に住んでいて、よかった——としみじみ感じることが、年に数回ある。
先日、感無量の体験をした。
決して入ることのできないと思っていた、あの「住吉の長屋」に、入ることができたのだから!

乃木坂にある、TOTOの運営するギャラリー・間(GALLERY・MA)で開催されている安藤忠雄建築展[挑戦—原点から—]へ行ってきた。
安藤氏の代表的作品の年表や1/10模型、写真と解説、設計図などが展示されている。
とくに2度行ったことのある、大阪の「光の教会(探訪記こちら『光の教会——“イメージ”を獲得するための結晶として』)」の1/10模型には、いとしさがこみあげた。
この教会のカタチを、三次元でこのように一望できるとは、まるで神の目を与えられた人間のようだ。
本当にかわいらしく、カッコよく、他のなにとも似ていなくて、惚れ惚れするカタチだ。
それでいて、目を上げ、壁に展示された大きなパネルを見れば、“光の十字架”のその光に改めて打たれる。
いろんな安藤建築を見たけれど、やはりあそこはいい場所だなあ……と、旅の思い出とともに温かい気持ちが湧き上がる。

国外はむろん無理だとしても、国内の安藤建築はなるべく見ていきたいと思っている。
どこへ行っても、なにかしらのメッセージを受け取るから。
それでも「これは無理だもんな。民家だもの。でも、見てみたい」と、ずっとあこがれ続けていた作品が、大阪の住吉区にある、出世作「住吉の長屋」だった。

「こんど関西に行ったら住吉の長屋に行きたい!」
と夫に言っても、
「そりゃ無理だわ。だって人の家だろ。せいぜい正面を道路から見るだけだよ。ふつうの人が住んでいるんだから、おじゃましますって中に入るわけにはいかないだろ。」
と一笑に付されていた。
そう言われるとますます行きたい。
せめて玄関だけでも……でも建築って、中まで入って初めて本当のよさがわかるものだもんね。
やはり無理なのか……。

そう思っていたのに、このギャラリー・間では、なんと「住吉の長屋」を実物大で再現しているのであった。

上のリンクページを読んでいただければわかるとおり、「住吉の長屋」は、極限状態にまでせまいスペースだからこそ、安藤氏のエッセンスが絞り出されたような空間だった。
ぐるぐると飽きずにせまい家の模型を歩き回りつつ、
「東京にいながら、住吉の長屋を体験できるなんて。なんて贅沢なことだろう。」
と幸せをかみしめた。
昨年、六本木ヒルズの森美術館で開催されたル・コルビュジエ展でも、建築作品の原寸大模型には感銘を受けた。
(レビューこちら『デコレーションとミニマム——森美術館 ル・コルビュジエ展』)
フランスへ行かなくても、東京でル・コルビュジエ作品を体験できるとは!と驚いたものだったが、逆にいえば、お金と時間さえあれば、フランスへ飛んでル・コルビュジエの教会でもなんでも見てきたらいい。
しかし「住吉の長屋」はごく普通の、ひとさまの住居だ。
建物の中を自由に歩くなど、フランスへ行くよりも、さらに難しい体験だ。
すばらしい企画展に、感謝の気持ちでいっぱいになった。
しかも入場無料!
TOTO太っ腹です!

12月20日まで開催中。是非。

by apakaba | 2008-10-28 22:59 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(4)
Commented by ogawa at 2008-10-29 22:38 x
「住吉の長屋」が見られるのですか?
それはすごい。
関西にいても中まで見ることができない、安藤建築で見たくてもみれない最右翼の建築物です。
いいなぁ。

光の教会も1/10のモデル見れるのですか?
なんか行きたくなってきたなぁ~

真紀さんは、関西の安藤設計の主要な建築は行かれてますが、住吉の長屋は別として、司馬遼太郎記念館かな・・・行っていないのは。

私も安藤忠雄建築展・・・行きたいなぁ。
先日のフェルメールもだけど、こういう時は東京が羨ましい。
Commented by apakaba at 2008-10-30 20:21
連休は東京へいらっさーい。
同じ大阪でも決して見ることのできない、住吉の長屋に入れます!
光の教会は、小さくかわいくなって、ますますいとしさが込み上げます。
プラモデルにわくわくしていた子供時代ってこういう感覚だったんだなあ……と思えますよ。

来月、大阪に行くときに司馬遼太郎へ行くか、みんぱくに行くか迷っています。
Commented by k国 at 2008-11-04 18:47 x
長いこと建築やってきました、30年で150軒ほど建てましたが
普通の極普通の建物ばかりです。
一番心に残っている建物は、新築ではなくて昭和初期の豪邸が
腐って傾いていたのを、元に戻して補強して、割烹料理屋に復元した事ですね、お金だけ出してもらって何の制限も受けずに、自分の思いのまま工事が出来ました。
素材が良いけど死んでいた建物を生き返らせる、楽しかったです。

安藤忠雄さん、私なぞ足元にも及びませんが生き方が好きですね。
Commented by apakaba at 2008-11-05 09:09
安藤忠雄展レス。
K国さん、ごく普通の建築といっても、「気概」はどこかに存するものだと思うんですよ。
今のホチキスでバチバチ留めていくような、大工不在のおうちなどは、気概もなにもありません。
建て売りの新築の家を見ていても「いいなあこの家。」としみじみする家のなんと少ないことか。

安藤さんは、ファンに愛されるタイプの人ですね。
上野の法隆寺宝物館を建てた谷口吉生さんなどとは対極です。
慶應からハーヴァード卒というエリートな経歴ながら、メディアにほとんど登場しない谷口氏も、気概があっていいですが、建築を「こっちこっち。こっちにおもしろい世界があるよ」とアピールしてくれるのは安藤さんですねえ。


<< ヴィジョンズ オブ アメリカ完結      旅立て逃避行! >>