あぱかば・ブログ篇

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2009年 01月 31日

三世代の団欒・横谷宣写真展「黙想録」へまた行ったことなど

すでに3,4回来ている。
今日は、写真を趣味にしている次男「アキタコマチ」と、義母を連れて行った。

義母はここのところへとへとに疲れている。
夫の祖母、つまり義母の母親が昨年の夏に亡くなってから、相続の関係を一手に引き受けていろいろと。
今、ちょっと小さな山を越した状態らしいので、あらかじめ私のブログ記事置換への断念/共有する感懐 を読んでおいてもらい、いっしょにお出かけに行くことにした。
御茶ノ水のギャラリー バウハウスは、亡くなった祖母がしばらく入院していた病院のすぐそばにある。
そして、私たち夫婦が結婚式を挙げた神田明神もすぐそばにある。
義母はきっと懐かしがるだろうし、神田明神の鳥居の横にある老舗の甘酒屋にでも連れて行ったら、喜ぶだろう。

「ああ、この道はちゃーちゃん(祖母の愛称)の病院へ行くのによく通った道だわ!懐かしいわね。」
と、案の定そう言っていた。
写真展を見たあと、
「せっかくだから、神田明神に寄ってお参りしましょう。」
と誘うと、方向音痴の私以上に方向音痴の義母は、自宅から程近いのに
「え?どこどこ?神田明神ってどこにあるの?ここのそば?」
と聞く。
ギャラリー バウハウスから、もう見えている。
義母は我々の結婚式のとき以来、神田明神へは一度も来ていない様子だった。
案外、そんなものなのだな。
当然「アキタコマチ」も来たことがないから、
「おかーさんたちはここで結婚式したんだ。あの本殿の中で。」
と言ったら、
「へえ!あんなとこでやったら目立ったでしょう。」
と驚いていた。

義母のふだんの好みからして、甘酒が好きだろうと予想を付けていたが果たしてそうだった。
ここの甘酒は本当にすばらしくおいしいので、味に喜ぶのは当然としても、「天野屋」というこの店に入るのが初めてというのには私のほうが驚く。
ここの土産物コーナーの納豆は名物なのでたまに買うらしいが(今日もお土産に買ってくれた)、家からすぐそばなのに、甘酒の店舗があることすら知らなかったとは。
「お土産屋さんの隣にこんなお店があったのねえ。お土産屋さんのほうにしか入ったことなかったわ!」

そのあと池袋に出てデパートへ行って、ワインやらチーズやら、義母にいろいろ買ってもらった。
「アキタコマチ」は新しい服を買ってもらった。
なので私はなんにもお金を出していないのだが、遠出でなくても、意外と盲点である近場での楽しい半日を過ごしてもらえたかなと思った。
こういう形でしか、親孝行らしいことができない。
金額で親を喜ばせるのは現実的に不可能だもん。

さて、写真展については、義母はある程度はおもしろがるだろうと思っていた。
義母の父(夫の祖父)が写真好きで、娘時代にいろいろな写真展に連れて行かれたと言っていたから。
けれども、デジカメ世代の息子には、なにもかも手作りの工芸品のような、横谷さんの写真のよさがわからないかもしれないと思っていた。
それでも、いいものは見せたいから連れてきた。

ところが予想に反して、「アキタコマチ」はいい反応をしていた。
1枚1枚に関して、私が感心するような感想を言っていた。
自作レンズで撮った写真を、自作現像液で焼いていくという工程には、経験がないからさしたる興味を示していなかったが(自分で暗室作業を経験した人間はとりあえずまずここに感じ入るものだが)先入観も知識もないぶん、率直な目で感想を言う。
「この斜めに射してくる光がいい」
「端へ行くと、光がぐるっと回転させたように、回っているように見えるところがいい」
「空がぼやっとどこまでもつづいているように見えるのがいい。空がなにかを語っているように撮れるのがいい。」
「つづきもので見ることを想定した場合、これもこれもいい、でもこの中で1枚だけ選んで部屋に飾るなら、と考えると、これが選ばれる。1枚だけで完結する写真と、つづきで見て映える写真がある。それは、持っているよさがちがう。」

いっぱしの批評家気どりだ。

息子が一番気に入ったというのは、地階に展示してあった、たしかオーストリアの、くずれそうな石の階段の写真だった。
「“これだけ”と絵の中で完結していかないような雰囲気を持っているのがいい。
このあとどうなるのか、この先の場所がどうなっているのか見たい気持ちにさせるのがいい。オレはこれが好き。
写真の中の世界に引き込まれるような感じになる写真が好きなの。
なにか、つづきを感じさせるような写真が。
これなんか(階段の写真)平凡な景色だし、場所はどこで撮ってもあんまり重要じゃなくて、それより“ん?なんだろうこれ?どうして撮ったんだろう?この先の風景はどうなっているのかな?”と、ついフッと見入ってしまうような写真が好きなんだ。
“これ1枚”として選ばれるなら、他の(もっと構図がきちんとして、絵として完結しているタイプの)写真かもしれないけど、完成していなくても、オレはこういう物語のある感じが好き。」

この子は、親バカなのかもしれないけど、やっぱり感性は持っている子なんだと思った。
なんの知識もなくても、ここまで言葉にできるのは、親バカなのかもしれないけど、見どころのあるヤツだと思った。

私も、先入観も撮影技術もないぶん、素直に批評できると、自分では思っていた。
でも、この子に較べたら、私はよほど先入観まみれだ。
ファンである田中真知さんのご紹介というだけでかなり舞い上がっているのだし、著書『孤独な鳥はやさしくうたう』で横谷さんのことが書かれているのは知っていたし、観る前から「いいに決まっている」と、どこかで決めてかかっていなかったか?
いや、もちろん実際、作品はよかったんだけど、息子は真知さんの本も横谷さんのエピソードまで読み進めていないし(つまり知らない)、さまざまなレビューもひとつも読んでいない。
私も、「おもしろい写真展があるから行こう。」としか話していなかった。

予備知識ゼロのまま写真だけと向き合って、たちまちちゃんと横谷さんご本人が「何よりも撮りたい」と語っていらした“光”の射し方に注目したし、「場所はどこで撮ってもあんまり重要じゃなくて……」という感想には、内心でぎょっとした。
なぜなら、横谷さんの口から、まるで同じ言葉が出ていたのをトークイベントのときに聞いていたからだ。
横谷さんはこう語っていた。
「本当は、このギャラリーに展示するとき、撮影場所を書くことはしたくなかったんです。“インド、ドコドコ村”とかって、そういう、撮った場所がどこかというのは、僕にとってはあまり重要じゃなくて、見る人にとってもおそらくそれはあまり重要じゃなくて、だからかえってそういうのって余計かと……」

感性のある人間同士は、顔を合わせていなくても向き合えて、響きあっているんだなあ、と、なにか自分が彼らに較べて途方もなくツマラナイ人に思えた。
義母も、
「おばあちゃんもこれが好き!これいいわよね。『アキタコマチ』の言ってること、よくわかるわ!」
と喜んでいた。

今日は、三世代から各1名ずつ代表が出て出かけたが、いい半日を過ごせたなあ。

by apakaba | 2009-01-31 20:24 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(10)
Commented by ヨコタニセン at 2009-02-01 04:22 x
驚きました。
私の思いそのままです
今日はとても幸せな日になりました
ありがとうございました
Commented by Amano at 2009-02-01 10:17 x
昨日はどうもです・・・(^'^)
あんなところでお会いするとはビックリしました。

アキタコマチ君の感性、素晴らしいです。
もうオッサンの私が感じとれないことを、しっかり掴んで
いますネ。
Commented by apakaba at 2009-02-01 17:40
横谷さん、書き込みありがとうございます。
ご本人が読んでくれるといいなあとテレパシーを送ったのが届いたようで光栄です。
きのうもたくさんの来場者がいました。
何度も行っていますが、受付の女性に「横谷さんの写真集というものは、出ていないんですか!今後出版されるという予定などは、ないんですか!」と食い下がっている人がいたり、大きなカメラをさげた外国人がいたり、年齢層も雰囲気もバラバラな人たちがいつも見に来ていて、スタッフでもないくせに「ほっほっほ、すごいでしょう」と鼻高々です。
エジプトに行ったことのある義母も、「あたし今まででこんなふうにピラミッドを撮った人を見たのは初めて!」と驚いていました。

次男はまだ子供ですが、目は確実に養えているんだなあと思いましたよ。
いつの日か、会ってやってください!
Commented by apakaba at 2009-02-01 17:43
Amanoさん、東京ってせまいのね!
悪いことはできませんな、お互い!
世代のちがう人間となにかを見て意見をかわすのも、楽しいものですね。
年が下だからといって、こっちのほうがすぐれているということはないのね。おもしろいね。
Commented by ぴよ at 2009-02-02 01:30 x
アキタコマチ、育ったなぁ!
以前お目にかかった時も、子供と思えない鋭い感性で写真について熱く語るヤツだぜ!と感心したものだけど、
ここまで語るようになったんですか・・・成長したなぁ~

ここまでアキタコマチに語らせる作品となると
(どうして眞紀さんのレビューの時に反応しない<自分)
どうにもこの写真展が見たくなるじゃないか。
名古屋ではやってくれないのか(涙)
また東京に来いと?
・・・ダーが転勤になっちゃったので、東京に気軽に行ける身分ではなくなってしまったんですよ。
ああどうすればいいんだろう・・・
Commented by apakaba at 2009-02-02 10:17
ぴよさん、あいつは勉強はできないけどやっぱりバカじゃないんだと思いました。

全国に巡回されたら最高だけど、そうもいかず、御茶ノ水に来ていただくしか道はありません!
平日に日帰りじゃ。
見ないと一生の損!
ガンバロー!
Commented by のこのこ at 2009-02-02 13:23 x
へぇぇぇ~~~。
私も行きたくなってきたわ。
アキタコマチはすげーよ。
二月中かぁ~。 この二月は異様に忙しいけどちょっと考えてみる!
平日昼間の子連れご一行様でなんとか。
Commented by apakaba at 2009-02-02 15:06
のこのこさん、あいつは勉強以下同文。
あいつを見てると、「勉強っていかほどのコト?」とも思えてくるわ。
無理しないでね。
いや、少し無理しても来てね。
もちろんおつきあいするよ!
Commented by 子ヤギ at 2009-02-25 21:31 x
先日、観てきました。もちろん、アキタコマチさんのような、感想を述べられませんが・・・・笑
も・わ・わ・わ・わ・あ~~ん。と視覚がやられて、次にすう~~っとメンソレータムみたいな浸透感?を感じました。
写真は、どこかの旅先で、見たような景色や、人の姿、だったので、自分の薄れた記憶が、ぼんやりと、浮かんできている瞬間の映像みたいで・・

何でなのか?深呼吸しちゃうほどに、胸がいっぱいになりました。
たぶん?「リアリティー」って、こういうことなのでしょうか?
素敵な写真でしたね。
Commented by apakaba at 2009-02-26 08:28
子ヤギさん、きゃああ、うれしいです!
では会期終了間近でしたね?間に合ってよかった。
そうですかメンソレータムだったのですかーその人その人の表現がとても興味深いです。

あの写真は、たしかに撮影場所は各国の旅先なんだけど、「旅心を刺激する」「旅へいざなう」というタイプの写真とも、またちょっとちがうんですよね。
「ああ、どこかへ行きたい!」と切望する感じではなく、個々の内面へすーっと降りていくような働きをしますね。


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