あぱかば・ブログ篇

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2009年 05月 11日

忘れえぬロシア 国立トレチャコフ美術館展

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の、「忘れえぬロシア 国立トレチャコフ美術館展」(Bunkamuraサイト内特集ページ)へ行ってきた。

ロシア革命以前に、西欧の手法を学んだロシアの画家たちが意欲的な創作活動をしていたことがよくわかった。
だが、どの作品もとても美しいのだけれど、立ち止まるほどの絵がない。
乱暴に括ってしまうと、ヨーロッパの絵画は、19世紀後半から20世紀初頭の、印象派からエコール・ド・パリにかけての動きで、ひとつの臨界に達してしまい、それを学んだ画家はそれを超えることができない。
題材はたしかにロシアの風景だが、どの絵を見ても、「セザンヌっぽい」「モネの真似」「コローの出した緑には及ばない」などと思ってしまう。
そう感じさせる時点で、その絵はもうオリジナルの魅力を失ってしまっている。

写実主義の肖像画などを見ると、たくさんのロシア人の顔が緻密に描かれており、「ああ、たしかにこういう顔のロシア人っているなあ」とおもしろく見ることができるし、女性のまとった布地とか、遠景に描きこまれたクレムリンの屋根など、ロシアらしさをそこここで感じ取れるという楽しさはある。
しかしそれだけのことで、絵そのものに吸い寄せられる感覚がない。

もしここに1枚でも、たとえばモディリアーニがかかっていたら、と想像する。
「えええっ?!」
モディリアーニの絵をまるで知らない人間でも、ここにあるすべての絵が束になってもかなわないオリジナリティーに打たれ、立ちすくむことだろう。

そんなわけで、作品じたいよりも、この作品を所蔵しているモスクワのトレチャコフ美術館の写真を見て、いかにもロシアらしい建築様式に興味を惹かれた。

そしてもうひとつ興味を惹かれたのは、ここに出展された絵の作家たちは、彼らがめざしていたフランス印象派の画家よりも、時代がやや遅れた分だけ、新しい表現形式すなわち“写真”の表現に慣れ親しんでいるのではないかという印象を受けたことだ。
構図の取り方と光の採り入れ方に、強く“写真っぽさ”を感じる。
いろいろな作品を見て回りながら考えることが、
「ほんとは風景じゃなくて、うまいカメラマンの写真を見ながら描いたんじゃないの?」
「これ、むしろ写真だったらもっとおもしろいのに」
「ずいぶん広角だな」
「わざと露出オーバー気味にしてみたのか」
など、だんだんと絵画を見ているのか写真作品を見ているのか判然としなくなってくる。
それは予想外の感想であり、時代のおもしろさを感じた。

by apakaba | 2009-05-11 23:35 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(6)
Commented by ぴよ at 2009-05-12 09:02 x
ロシア芸術ってかなり苦手な分野だったり。
そもそも「ロシアの画家」って言われてもちょっと名前が浮かばない。
せいぜいシャガールとかカンディンスキー辺り?
シャガールはユダヤ人か?ロシア人画家ってほとんど知らないわ。
でも彼らだって活躍したのはフランス・ドイツ辺りだよね。
彼らの作風だって決して「ロシア芸術」ではないしねぇ。
フランスのそれだもんね。うぅ~ん・・・

確かに絵画よりも建築の方が「お国柄」が出易いね。
絵は眺めるだけのものだけど、建築は生活に密着してるからかな。

ロシア絵画が写真的かー・・・面白い考察だなぁ。
同じく「写真的云々」と言われるフェルメールとはまるで違うのにね。
何だろう?ロシア絵画は「絵葉書っぽい」という感じかしら?
優等生的絵なんだけど平坦で面白味がないってのか。
あー、何だかヒドイ事書いてるな(苦笑)
Commented by apakaba at 2009-05-12 09:13
私もカンディンスキーとかはぱっと思い浮かんだんだけど、ぜんぜん違ってて、結局名前がひとつも覚えられなかったトホホ。

「ああ、遅れてブームが来たのネ」ってことがありありなの。
たとえば、本文中にある特集ページ内のリンクから、「学芸員による展覧会紹介」というのを見てください。
下のほうに「レーピン夫人と子供たち」という絵があるでしょう。
……モネでしょ。苦笑でしょ。
そんな感じなのよー!

フェルメールは、写真ができる前に目がカメラだったからすごいけど、「うーん、写真見ながら描いたのかな?」と思わせる時点で絵としては残念。
でも、そんなおぼこな絵画の歴史をたどっていたロシアが、革命後にはすっかり共産主義のやたら吹っ切れたポスター芸術(?)に邁進していくんだから、おもしろいねえ。
Commented by 子ヤギ at 2009-05-13 21:47 x
う~~ん・・・。訪問するたび、感想が難しいのですが、おじゃまします・・・・笑
今回は、独特のもう一つの濃い絵で作品の多くが写実的でしたね。筆数少なくわかりやすいのですが、近からず遠からず適正な距離でみると、絵の具の重ね塗りも?「そう来たか!」みたいな古い時代のロシアが感知できましたよ。
あとね、人物のむすっ。とした感じはロシアでした。
BanKamuraは絵との距離を置けるのがいいのかな?


Commented by apakaba at 2009-05-13 22:17
子ヤギさん、コメントありがとうございます!
なんか行動半径がかなり重なってる?もしかして同じ日に行っていたりして。
でもお顔がわからないので、もし隣同士で見ていても気がつきませんね。

絵を見るときに、たしかに「適正な距離」ってありますね。
わかります。
だからうんと目を近づけて見たり、ぐっと引いて見たりしてみたいものですね。
あまりにもバカ混みだとそういうことができなくてつまんない。

とても写実的、でもやっぱり光の入れ方なんかは「絵」の技巧だなあと思ったり。
「鳥追い」という作品で、じっと寝そべって鳥の様子をうかがう老人に、やたらとぱぁ〜っと陽が当たっているのを、「ウソをつけウソを。こんなにこっちの方向から光が当たっているわけがない。第一これじゃ目立って鳥が逃げちゃうし」とか心の中で突っ込みましたが、でも絵画的な感動にはあの当て方がいいんだろうな。

私はウダイプルの水上の風景なんかがおもしろかった。
まあ、あれも半屋外の柱にちょっとフラッシュ焚いて装飾が見えるようにしたのね……とか、写真を見る目で見てしまいましたが。

行った人とお話しするのは楽しいですね。
Commented by Amano at 2009-05-14 23:36 x
どうも、お久しぶりです。

去年、ロシアへ出張した際に、トレチャコフ美術館へ行きました。
あまり時間がなかったので駆け足で見て廻ったのですが、正直言ってあまり心引かれる絵はなかったですね。一枚だけ気に入った絵はありましたけど・・・。

そこで感じたのはロシア絵画はヨーロッパと違って宗教画が非常に少ないということ。欧州では宗教画が数多く展示されていますが、トレチャコフ美術館では収蔵点数に比して宗教画が圧倒的に少なかった。

「写真的な描画」って、あんまり感じなかったな~~(ニブイもんで・・・^^;)


Commented by apakaba at 2009-05-15 07:53
Amanoさん、どうも。
ロシアは文学でしか親しんでいなくて、未踏です。
ウズベキスタンに行ったとき、タシケントの中心部の様子は「きっとこういう感じはソ連っぽいんだろうな」と感じましたが。

建築を見るのが好きなので、トレチャコフ美術館の写真はおもしろかったわ。
宗教画の少なさは、トレチャコフ氏の意向なのではないでしょうか。
イコンの製造など、古くからロシア美術は宗教と親しんできたはずなので。
宗教画を排して、風俗画にフォーカスを当てるところこそが狙いだったんじゃないかな。と、解釈してみたり。


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