2009年 08月 11日

後輩と会う・中編

気がついたら9時間ぶっとおしで飲んでいた。
高田馬場で沖縄料理と焼酎の品揃えが売りの飲み屋など、学生時代には考えられなかったぜいたくである。
兼八、百年の孤独、佐藤の黒、魔王など、ひととおりのブランド焼酎が、なみなみと気前よく注がれるから、うれしくなって端から飲んでいく。
ロックだから味はどこで飲んでも変わらないはずだが、学生のころには、この街で、夜中に頭痛で飛び起きてしまう日本酒しか置いていないような店でしか飲んでいなかったことを思い出すと、ひときわ旨いように感じる。

私は飲んでも絶対につぶれることがないので、自分の心配はしていないが、“Cくんは大丈夫かな?また背負って帰るのは嫌だなあ。昔はひょろひょろしてたけど当時より重そうだし。タクシーに放り込んでも、自宅は遠そうだし。”と途中から少し気になってきた。
それくらい、彼は喜んでいた。
学生時代、いかに私の存在が大きかったか、いかに私とまた会えることがうれしかったかを、1時間おきくらいに語る。
こんなツマラン主婦と会ってここまで盛り上がってくれるとはありがたい話だ。

「あーっ!Iさん!今何時か時計見ました?!(あっという間に12時過ぎ)まだ10時くらいの気分でいたのに!アハハ!どうしよう。私はそこらへんの店で始発が動くまで飲んで帰るだけですけど!」
こんなこと言われて、あっそうと言って放り出すわけにもいくまい。
ホッピーくらいしか飲むもののない飲み屋へ移動した。
夜中過ぎだというのに、彼はホッピーの「なかみ」をボトルでとっている。
「あんたなにこれ。今からこんなに飲むわけないじゃないの!」
さんざんうまいブランド焼酎を飲んだあとに、なにが悲しくてホッピーの「なかみ」を飲み続けるんだよー。
しかしサシでいても“話すことがなくなる”という事態に陥る心配のない面子だ(彼はよくしゃべる人だし私もサシ飲みではよくしゃべるから)。
間断なく、あらゆる話をしつづけた。

明け方ちかくなって、Cくんは妙なことを口走り始める。
「あれ!(私の)顔が変わってきてる!あれっ?酔うと目がデカくなりません?!子供みたいな顔になってる!はりーっ!目の色が、薄い?!なんで?!」
「め、目の色?ああ、虹彩の色?」
こいつ大丈夫か。
酔ってなくてもハイテンションなタイプなのでいつ酔っ払うのかよく見分けがつかないけど、さすがにこれだけ飲みっぱなしでは、少しヘンな発言をするのかもしれない。

「Cくん、帰ろう。」

このセリフ、今までいったい何度、男性に言ったことか。
「○○さん、帰ろう。」
「××くん、帰ろう。」
ヨッパライには、「私、帰らなきゃ。」ではダメ。
男は、昼間に呼ばれている名前をはっきり呼ばれて「帰ろう。」と言われるとちょっと正気になる。
もしかして彼は酒にとんでもなく強くて、ちっとも酔っ払っていなかったのかもしれないけれど、それならなおのこと、“こっちも酔ってないのだよ”という態度を示しておかないと、この9時間しゃべりつづけたことが、すべて「なかったこと」になるような感じがした。
私は、話をしていた9時間がとても楽しかった。
だからそれを“なに言ってるんだかわからない、ヨッパライ同士の不毛の一夜”に落としてしまいたくはなかった。

明け方の薄い月と、走り回るどぶねずみを見ながら別れた。
私も飲み過ぎでバテた。
そのあとお礼のメールがきた。

(長くなったのでまたつづく)

by apakaba | 2009-08-11 16:40 | 生活の話題 | Comments(5)
Commented by キョヤジ at 2009-08-11 17:03 x
ミミガイタイ・・・
Commented by apakaba at 2009-08-11 17:07
キョヤジさん、帰ろう。
Commented by kaneniwa at 2009-08-11 22:07
一人、居酒屋に入って生ビールを一気飲みした後、
深いため息をついて高倉健さんのような口調で
「ふぅー、みんないい女だったなぁ」
と言ってみたい。

BYマーヒー
Commented by sora at 2009-08-11 23:08 x
ゴルゴ13は9時間も呑まないだろうな、と訳の分からないことを想像。
夜~朝で9時間は無理だけど、早朝から昼過ぎだったら意外と僕も9時間くらいいけるかも。
Commented by apakaba at 2009-08-12 11:06
中編レス。
マーヒーさん、健さんは日本映画の宝ですから。
健さんのようにはできるかもしれないけど健さんにはなれません。

soraさん、あなたもよくしゃべる人だもんね。


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