あぱかば・ブログ篇

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2009年 12月 06日

アダルトになったJAMIE CULLUM『The Persuit』への賛辞

ジェイミー・カラムの、待ちに待ったニューアルバムを買った。
やっと、CATCHING TALES」を書いてから3年近くが経ち、あのときもギュッと大人っぽくなったボーカルに驚いたのだが、新作『The Persuit(ザ・パースート)』は、さらに前作とは比較にならないほどアダルトな1枚になっていた。

以下、アダルトになったジェイミー・カラムに敬意を表し、アダルトなレビューを試みる。

彼の出す声は重く、彼の弾くピアノは軽い。
前回のレビューでは、
声がチャーミングだ。
やや鼻にかかった声が甘さを出し、かなりのハスキーさが甘さを消して渋い陰影をつける。

と表現したが、今の彼は、甘いとかハスキーといったひとことで言い表せる声ではなく、キラキラとギラギラと乱反射するなにかの金属のような——その金属片で、細い爪のように、背中や腕の内側をつーっと引っかかれるような——歌声になっているのである。
痛みと快感を伴ってくるような声なのだ。

私にとっては、これまで世界で一番いい声なのはU2のボノだと思っていたが、ボノにかなり肉薄、いや匹敵といってもいいくらい、好きな声だ。
しかし聴く人によっては、むしろヘタに聞こえてしまうかもしれない。
「低すぎる?音程が、低いほうに流れてる?」
と聞こえるような。
彼の声は、“低めチューニング”に聞こえる。
音程が、外れてはいないけれど、常に下ぎみに唄うように聞こえる。
それが、もとの声質の低さに加えてさらに“重み”となってずっしりくる。
2005年の2月に書いた、映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」のレビューで“心地よい重み”について触れているがまさにそんな感じ。

クリント・イーストウッド監督・主演の最新作『グラン・トリノ』のテーマ曲も収められている。
しみじみといい映画だった……という余韻をいつまでも残させる名曲だ。
ほかに、ジャズのスタンダードのカバーもあるが、なかでも私が毎日1回は聴きたくなるほど好きな曲は、『Don't stop the music』だ。
そう、あのリアーナの大ヒット曲の、大胆不敵なカバーなのである。



リアーナの原曲(忘れた方・知らない方は是非とも聴き較べてほしい)が、ダンサブルでいかにも“今”っぽい気分をいっぱいに表しているのに対し、ジェイミー・カラムのアレンジは“今”の気分だけでなく、かつて過去に置いてきた、さまざまなめくるめく思い出のシーンを思い起こさせるような、人の感情の細かいひだの間を自由自在に行き来するような音を以て、原曲にオマージュを捧げながらも野心的に彼からの回答を出す。
彼が「 I wanna take you away 」と唄うと男の歌になる。
あの声で「 I 」を発音するとき、荒っぽく肩を抱かれてどこかへ連れ去られていくような感覚になる。
彼はカバーが好きだ。
リアーナではほかにも『Umbrella』のカバーもしているし、レディオヘッドの『High and dry』も、あの独特のダウナーヴォイスのトム・ヨークの向こうを張って、すばらしいアレンジをしていた。
よほど、自信のある人なのだろう。
だからこその、連れていかれてしまいそうな感覚なのだろうと思う。

クルマのなかで大音量で流しっぱなしにしておけば、“ヤバくカッコいい”気分になれる。
口説けます!!
息遣いや椅子の軋みもわざと収録するという、ジャズのライヴっぽさを取り入れるバランスも巧妙。
金属片のような声が嫌いでなければ、絶対おすすめ。

by apakaba | 2009-12-06 00:57 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(3)
Commented by タカモト at 2009-12-06 19:28 x
ダメだ、食いつけない。

この人も知らないしリアーナってのも知らない。(トホホ、オヂサンです)
こいつなら知ってるが「You Can't Stop The Music」Vピープルです。
Commented by ogawa at 2009-12-06 21:42 x
彼、声の質いいですよね。
このアルバムのすごいところはライブのカットでいろんな雑音も収録していることです。
ほんとにコンサート会場にいる気分になります。

Don't stop the musicは声の伸びといい良い楽曲ですね。
私は後半の2曲「Not While I'm Aroud」「Music is Through」も好きですね。

大音量で聴くほどひかれる声です・・・ハイ
Commented by apakaba at 2009-12-06 22:26
ジェイミー・カラムレス。
タカモトさん、さほど超メジャーな人でもないから。
まさか『ブリジット・ジョーンズの日記』は見てないと思うが……一作目のテーマ曲で「エヴァーラスティングラ〜ヴ」って唄ってた。
聞けばわかるはず!
リアーナは絶対知ってるって、「ナントカアンブレラ、れら、れら、れら、……」と続くダンスな感じのヒト。
今はDV被害者としてのほうが有名です。
Vピープルも、あ〜、ダンスだね!

ogawaさん、若いくせにヤルでしょう彼。
すごく今っぽいのに、やっぱりジャズのスタンダードをきっちり踏襲してるところがいい。
椅子の軋みや「yeah.」とかつぶやいているのを入れるのは、ホールで演奏するジャズの古典アルバムの常道だもの。
口説けるよねー。


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