2010年 03月 11日
その3のつづき。 貴船を発って、大徳寺へ。 大徳寺は、広い敷地にたくさんの塔頭(たっちゅう)が集まっていて、お寺の集合体を成している。 『京都の空間意匠(横のライフログ参照)』のなかで、大徳寺のシークエンスについてくり返し触れられている。 この本は数えきれないくらいの京都の寺社を紹介しているが、何度も名前が挙がるとそれだけ興味も強くなるので、このお寺を選んだ。 三門の二階部分は、千利休によって増築されたという。 空に、紅色が映える。 本坊となる大仙寺の庭園が、とくに名勝と名高いので、行ってみた。 枯山水の名園である。 建物の周りを囲む、かなり手狭な面積の庭だが、そこに石と白砂を組み合わせることによって、水の一生(山から水が生まれ、勢いよく流れて最後には大海に注ぐ)が巧みに表現されている。 本を読んで、ここの庭の写真をたくさん見ていたので、「これがそうか!」と、一角ごとに長く立ち止まって鑑賞した。 しかし2点、気に入らないことがあった。 ひとつは、庭の撮影はいっさい禁止にされていたこと。 光を浴びると傷むような仏像などならわかるが、石と砂利と木でできた庭を、撮ったらダメなの? 写真を撮ることでどんなダメージがあるのかさっぱりわからない。 庭に降りていけるのなら、三脚など立てる人間がいるかもしれないということはあるかもしれないが、この庭は砂利で模様が描かれているため、縁側をまわることしかできないのだ。 それなのになんでそんなにけちけちするのよ。 もう1点は、説明をしてくれるお坊さんや、住職が、なんというか、ひどく「生臭坊主」な感じがしたことだ。 たしかに、“シャベリ”は飽きさせずおもしろい。 しかし、ああいう人は、どこかに、向き合った人の居住まいを正させるような、特別なものを持っていてほしい。 自然と手を合わせたくなるような……とまではいかずとも、せめて自然と頭(こうべ)を垂れてお話を聞きたくなるようなものは持っていてほしいと思う。 あまりにも商売っ気にあふれているその様子には、庭園が期待にそぐわずすばらしかっただけに、残念であった。 写真を撮れなかったのも悔しい。 これは大仙寺の入り口の門から撮った。 本のなかの章に、「くずす、ずらす」という項目がある。 そこで禅寺の入り口について書かれていたことと、載っていた写真を思い出したからである。 写真はここではなくて金地院というほかのお寺であったが、筆者のいう「禅寺特有のアプローチ」がよく似ていた。 禅寺では門から先の空間を見せてはいるが、実際に入る寺院の建物はこの門から横もしくは斜めにそれたところにあることが多い。 (中略)門と建物のあいだは破調を起こすかのようにずらされ、そこを飛び石や延段などが繋ぐ。更に斜めに屈曲した道に合わせて木々は配置され、行き先を隠し、門と建物玄関の間に絶妙の緊張感を作り出しているように思う。このように意図的にくずされた場では空間に見えない力が感じられるようで、それがこのような寺院アプローチ空間の魅力のような気がする。 「まさにこんなイメージだ!」と思った。 ぴたりぴたりと、訪れた先で本文の文章があてはまっていくのを見るのは快感である。 ちなみに、この筆者は、この短い引用文だけ読んでもわかるとおり、文章に「〜のように思う。」とか「〜のような気がする。」といった、いかにも自分だけの主観的意見だが……という言葉をしばしばさしはさむ。 これが、はじめは「この人は、自分の意見に自信がないのかな?もしかして、逃げ?」と疑ってしまったが、読み進めるうちに、「逃げ?」なんてとんでもない、膨大な知識と、実体験と、審美眼をすべて持っている方なのだとわかった。 法堂(はっとう)。 あまりここばかりに時間をかけていると、ほかにも行きたいところがあるのに時間切れになってしまう。 法堂の有名な龍の天井画を鑑賞するのは、次回にまわそう。 (その5につづく)
by apakaba
| 2010-03-11 23:42
| 国内旅行
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Comments(4)
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kaneniwa at 2010-03-11 23:54
大徳寺はすぐ近く (千本北大路) に住んでいたことが
あります。もっともすぐに思い浮かぶのは大徳寺の敷地に ほぼ面していたパチンコ店ですが。 “シャベリ”は飽きさせずおもしろく、 どこか 「生臭坊主」 的な僧侶のスタンダードを 作ったのが良くも悪くも高田好胤(たかだ こういん) のように思う。高田好胤のような気がする。 (あくまで主観で) BYマーヒー
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apakaba at 2010-03-11 23:57
いやー私はマーヒーさんのシャベリ(聞いたことないけど)には、いつも自然と頭を垂れているように思う。
垂れているという気がする。
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Amano
at 2010-03-12 22:23
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撮影禁止はマナーの悪いアマチュアカメラマンが多いからでは
ないでしょうか。模様が書かれている砂利の上に三脚を立てる バカ者がいたのかもしれません。 写真好きとしては悲しい話ですが、そんなアマチュアカメラマンは 結構多いです。 ちなみにプロは絶対にそんなことはしません。
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apakaba at 2010-03-13 06:56
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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