2010年 06月 28日
少し前のことになってしまったが、次男「アキタコマチ」の、高校の授業参観に行ってきた。 次男の高校は、東京都内随一の、イケてる工業科の学校だ。 昔ながらのヤンキー救済的な工業高校とはほど遠く、生徒はアートを標榜する女子学生が中心であり、授業は最新のマシンを導入したハイレベルなものである。 私は自分の高校時代には“学校”に通うのがとにかく面倒で、さぼってばかりいたのだが、授業参観のお知らせプリントを見ると「1校時・工業技術基礎 2校時・写真 3校時・現代社会」などと書いてあり、それだけでもうワクワク。 息子の在籍するグラフィックアーツ科全生徒による写真展も開かれているというので、おおいに期待して出かけた。 高校生だったころ、今の自分がいそいそと息子の高校を見に行くなど、想像もしていなかった。 これが公立の高校とは信じられないほど、すばらしい設備、カッコいい校舎、まるで美術館やホテルのように、随所に散らばる、生徒や卒業生たちの制作(プロ裸足)。 何度来ても、えもいわれぬ愛校心が湧いてくる学校だ。 「写真」の授業をのぞいてみたら、机には『「写真の学校」の教科書』というテキストが置かれており、黒板ではカメラのレンズの構造を板書していて、先生が 「これを、“光軸”といいます。」 などと言って黄色いチョークで下線を引いていた。 生徒たちは真剣に図を写している。 好きなことを勉強しているから、教室はシーンと集中している。 なんか、いいなあ〜〜〜。 あの生徒たちを見ていると、“ニッポンの未来は、大丈夫”と、明るい気持ちになるのだ。 保護者会で伺ったところによると、いまは就職氷河期で、高卒で仕事に就くのはたいへん厳しいらしいが、生徒がここで過ごす3年間は、そのあとどんな形にせよ大きな力になってくれると確信できる。 そんな学校だ。 写真展には、さらに驚いた。 皆さん、うまい、ものすごく! 平凡な表現しかできないのがつらいが、技術は並みの大人以上、しかも、大人には決してつけられないような、若い感性のあふれるタイトルのつけ方をする。 これも若さゆえか、寄りの構図の作品が多いのもまた、ご愛嬌でかわいい。 子供は興味ある対象に、まっしぐらに突き進むものだ。 これがだんだんと、引きの構図にしてみてバランスをとったりするようにもなるのだろう。 前からの読者はご存じのように、「アキタコマチ」は、小学生のころからカメラを持ち始め、大人に混じって写真展に参加したりしてきた。 褒められるとすぐ調子に乗る性格だから有頂天のままやってきたが、このグラフィックアーツ科の写真展を見てうれしくなった。 この子たちのなかに入れば、息子の写真など埋もれてしまう。 今までのように、天狗ではいられない。 大人に混じっているのではかえって見えないことが、いろいろとわかってくるだろう。 “うまいに決まってる”大人が撮ったものを見るのと、自分と同年配の人間がここまで撮ってくるということを知るのとでは、受ける刺激の性質がぜんぜんちがう。 入学してすぐに得意の鼻っ柱を折られ、鼓舞されただろう。 息子ふたりの高校に、私はそれぞれ心から満足している。 長男「ササニシキ」の行っていた高校は、典型的な「伝統ある私立の男子校」で、「ササニシキ」の所属していたサッカー部はとくに優秀な子が揃っていて、ほとんどの友だちが東大・早慶に進んだ。 ぼさっとしていた息子は敢えなく浪人だが、私は「ササニシキ」の学校もほんとに好きだった。 きれいな「アキタコマチ」の学校と正反対の、ボロボロな校舎にいつも砂でざらざらの廊下、頭が良くてカッコいい男子生徒たち、明るい先生たち。 同じお腹から生まれたのにこうもちがうかというくらいに別々の道へ進んでいるが、本人たちも、親も、「あそこに行けてよかった」と思える。 保護者会に出てみて感じたことだが、どちらの学校も、親たちの満足度が高いところは共通している。 私は自分の行っていた高校を、嫌いではなかったが満足してはいなかった(大学でやっと「よかった」と思えた)ので、息子ふたりが楽しくかよえるのは何よりだと思っている。 長い人生ではたったの3年間であっても、青春時代の3年間だもんね。
by apakaba
| 2010-06-28 18:22
| 子供
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Comments(14)
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タカモト
at 2010-06-28 20:13
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そそ。
そーなんよ。(たぶん) >あの生徒たちを見ていると、“ニッポンの未来は、大丈夫”と・・・・ メディアの過剰な情報垂れ流しで現代の若者が歪んで発信してますから。 あんなのごく一部だと思う、俺は。 感性豊かな子いっぱい居ますから。(たぶん・・・笑) 俺も学校は行かなかったなぁ。 365日間で80日は休んでましたから。(休日除く) そりゃぁ3年間で卒業出来んわな。 3ヶ月オバでしたから。(笑)
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アキタコマチにとって同世代が撮る写真は良い刺激になると思います。
彼は、私たちの写真、つまりひねた大人、それなり技術を持った大人の写真を見慣れているけど、同世代の写真は新鮮でしょう。 若い感性の写真はいきおい寄りの写真になるけど、それを知ればこなれた写真になりますよ。 写真の授業で光軸を扱うのは、流石ですね。 面白い高校だ。
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那由他
at 2010-06-28 22:30
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息子も娘も孝行の時、授業参観なんて、あったかなぁ。文化祭は見に行きましたが、授業参観は中学までだったような・・・。
高校の授業参観、たくさん保護者の方、来られてましたか。 生徒さんも保護者さんも満足度の高い高校、嬉しいですね。
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apakaba at 2010-06-28 22:36
タカモトさん、自分らが生きる国の未来に希望がないのって、ツライよね。
住んでいる地域がいいというのもあるだろうけど、私の感触では、皆いい子ばかりですよ。 それぞれのレベルで。 3ヶ月オバかあー。さすがにそこまでは。 私も、一学期間にひとつの授業(生物)を10回さぼって、点がつかなかったことがあったな。 そんなこと自慢にもならないわね。学校が楽しければもっと出ていたはず。あとは自分がどうしようもなくだらしない子だった、と。(あとは親の目が行き届かない娘だったとか) 自分が親になってみると、子供の悪事には、片目つぶってたまに怒って……ですかね。
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apakaba at 2010-06-28 22:44
ogawaさん、あの写真展は、ogawaさんにも見てほしくて、思わず目ぼしい子の作品を携帯で送ろうかと思ったけど……一応、「撮影・ビデオ撮りはご遠慮ください」だったので。
ほんとにおもしろかったですよ! 若いってスバラシイ。 次男みたいなヤツが、山ほどいて、しがらみもなく、可能性いっぱいで。かわいいです。 寄り構図もほほえましいです。 たとえば、お年寄りのカップルが手を繋いでいるところを「いっしょ。」とかタイトルつけて、思いきり真ん中にどーんと置いているけど、「これをタテ構図のままもっと引いて、ほかの通行人や背景に溶け込ませる構図でもよかったかも。でもこの子は、この老人カップルに目が行ったんだなあ」とか、見るほうも考えさせられます。 フィルムカメラの勉強ももちろんするし実習もあります。 フィルムカメラを持っていない子には貸し出しもするみたい。 おもしろい学校でしょうー!
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apakaba at 2010-06-28 22:50
那由他さん、子供に関することって、年々過保護化しているというか、予備校だの大学でも親が出て行く場面が増えているみたいですね。
私は浪人生の予備校の面談など行ったことないけど。 よく書いているように、私ってとても子育てに冷たくて、小学校卒業までしか関わらない気分でいたのです。 でも、息子たちの行った高校があまりにもよかったので、ついつい顔を出したりしてます。 親も臨機応変、気に入れば出かけますわ。 高校の授業参観および保護者会の出席率は、驚異的でした。 過保護になっているというのも否めないでしょうけど、やっぱりあの学校に足を運びたいという私のようなミーハー心もあると思いました。
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Amano
at 2010-06-28 23:39
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自分が高校生の頃にどんな写真を撮っていたかな~と
思い起こすと赤面するばかり・・・・。 今はもっぱらテクニックに頼った写真ばかりで、こちらも お恥ずかしい限りです。 今の高校生がどんな風に撮るのか見てみたいな。
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ぴよ
at 2010-06-28 23:52
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面白いわ。
私は普通科しかない高校だったから、こういう特殊な科がある高校の様子はとっても楽しい。 同じ高校生活でも学校が違うだけでこんなに違う過ごし方をするのね。 私の弟は「普通科に行けない阿呆が行く工業高校」だったのかよく判らないけど とりあえずアキタコマチ君同様、小学生の頃から手を染めていたパソコンを 専門的に勉強する為に、当時まだ余りメジャーじゃなかった「情報処理科」 のある工業高校を選んで受験してましたよ。 バカだから絶対に受からないと思ってたのにまぐれで合格しましたが(苦笑) 私の親は、私が行った高校についてきっと不本意だっただろうと思う。 当時(中学3年受験期)、父親から「○○高校は?」「××高校じゃダメなの?」 といくつか他の高校の名前を挙げて勧められたけど無碍に断ったし。
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apakaba at 2010-06-28 23:57
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apakaba at 2010-06-29 00:02
ぴよさん、普通は普通科に行くからねえ。
だからこその普通科だもの。 でも息子を受験させてみてつくづくわかったけど、偏差値で輪切りにされて(中学の担任に割り振られて)受ける普通科公立高校とちがって、脇目も振らずねらって受ける学校だと、こうも生徒の真剣味がちがうものなのだと。 生徒たちはほんとに充実してるって、一目で分かるもの。 弟さんもきっとそうだったのでしょうねえ。
タイプは全く違うけどそれぞれいい高校に進学できたんですね。
うちの高校はめちゃくちゃだったからな~。 そういうところに進学したということは私の頭もむちゃくちゃだったんだろうけど。 ササニシキくんとアキタコマチくんもそれぞれの良さがありそうですもんね~。 どちらも将来有望だな~と。 兄弟っておもしろい。何か不思議~。 アキタコマチくんに写真、教えて欲しいってお伝えください!(^^)!
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apakaba at 2010-06-30 08:28
「めちゃくちゃ」とか「むちゃくちゃ」と言われても。
またーく具体的にわからないところがめちゃくちゃでむちゃくちゃな所以でしょうか! まだ、何者にもなっていない人に囲まれて生きるのは、しんどさもあるけど基本的に楽しいですよ。
>「めちゃくちゃ」とか「むちゃくちゃ」と言われても。
いや、本当、我ながらめちゃくちゃですね・・・。 どういう学校だったかここではちょっと書けないくらいです。 盗んだバイクで走り出すような生徒ばっかりでした。
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apakaba at 2010-07-02 08:19
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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