あぱかば・ブログ篇

apakaba.exblog.jp
ブログトップ
2010年 07月 17日

マン・レイ展——アーティストはここにいる

c0042704_1553261.jpg


めずらしく夫がお土産にシールを買い、携帯に貼っていたので「私のにも貼ってー」
2コ貼ってもらった。


国立新美術館でスタートしたばかりの『マン・レイ展 知られざる創作の秘密』へ、先日行ってきた。
久しぶりに見る、たっぷりと充実した美術展で、いっしょに廻った『オルセー美術館展2010』のあまりの混雑ぶりにすっかり幻滅していた気分をさわやかに入れ替えてくれた。

高校生のときに初めてマン・レイ展に行き、ソラリゼーション技法の不思議さと、裸の女性の後ろ姿をバイオリンの形状に見立てた代表的な作品などが強く記憶に残った。
私にとってはそのとき以来の、マン・レイ単独の展覧会となる。

いろいろな美術展に行くと、20世紀屈指のマルチなアーティストとして、マン・レイの制作したオブジェやリトグラフもしばしば展示してある。
しかし、ただ“20世紀のアーティスト”という展覧会の文脈に彩りを付与するための位置づけとして、ぽつぽつと置かれているだけのマン・レイ作品は、美術的価値よりも奇矯さが先に立ち、ほかの作家のアートに較べてむしろ孤独に見える(と、私はいつも感じてしまう)。
ありていにいえば、キワモノっぽい扱いというか。
「彼はもっとすばらしく写真がうまいのに」
「デッサンを見れば、いかに芸術の土台のある人か、わかるのに」
と、残念に思っていた。

今回のマン・レイ展は、今まで見てきたマン・レイ作品が彼の大きく深い才能のなかの、ほんの一部に過ぎなかったことを、誰もが思い知ることになるだろう。
ごく若いころの絵画から、長い生涯の最終段階での作品までを網羅しているそのボリュームもさることながら、日本、いや世界初公開となる展示品を見ることができた感動。
ちょこちょこ断片的に彼の作品に触れているだけでは決して知りえない、アートへの愚直なまでの追求の姿勢には、「ほんと、今までごめん。あなたのこと、誤解してたの」と謝りたくなってくる。

近代アーティストのご多分に漏れず、マン・レイもまた数多くの魅惑的な女性との出会いと別れを重ねることによって、芸術の感性を琢磨していった。
男にとって、“ミューズ”というものは、ほんとに存在するんだな。

フェルメール展——“女”に向けて切るシャッター

女心には、ロートレックよりルノワール(か?)

妻を残したい。『モディリアーニと妻ジャンヌの物語展』

ビュフェ美術館にて

私もこれまで、“女”により触発されるアーティストのレビューをいろいろと書いてきたが、マン・レイよオマエもか。
若いころから彼のそばにはいつも美しい女性がいたが、50歳の彼の前に現れた、最後のミューズである妻ジュリエットの写真は、圧倒的に数が多く作風もバラエティーに富んでいる。
ジュリエットよりも、単純な美貌としてまさっている女性はいたし、いくら親子ほど年が離れているといっても、ジュリエットだってどんどんおばさんに、おばあさんになっていく。
それでも彼は妻を撮りつづけた。
弛みのめだってきたヌードや、中高年そのもののボディラインの水着姿の写真を、愛情こめて撮った。
妻のスナップやポートレイト写真は、ほかの美女たちを撮った作品とは、やっぱりちがう。
愛していたのね、誰よりも。

86歳まで長生きした彼の創作人生は、アート友だちの男性の存在はもちろんのことだが、幾人ものミューズによって——なかでも30年連れ添った妻によって、深い彩りに満ちたものになった。
60歳を超えてから彼が考案したという、世界初公開である「色彩定着技法によるカラー・ポジフィルム」を使ったカラー写真は、言葉では言い表せないくらいの、悲しささえ感じる美しい色合いだ。
この創作意欲を支えていたのが、妻ジュリエットだったのだろう。

“アート”“アーティスト”という“日本語”が大嫌いだ。
今、日本で使われているこの言葉は、あまりにも軽いから。
“アーティスト”の呼称は、彼みたいな人にこそふさわしい。
アートが好きな人なら、この展覧会には、万難排して行くべし!

(サイトはこちら
すごく凝ったつくりのサイトだが、とくにスペシャルコンテンツ「マン・レイの美神(ミューズ)たち」は必見だぞ!)

by apakaba | 2010-07-17 16:04 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(2)
Commented by ogawa at 2010-07-18 17:45 x
新美術館ではマン・レイ展ですか。
こういう大きな企画って、東京集中なんですよね。
関西に住んでいると、ちょっと歯がみしたくなります。

今回はキキをモデルにした「アングルのバイオリン」は展示されていなかったのですか?

あの写真を最初に見たときは、女性の身体のラインをバイオリンに見立てる発想に驚きました。

狂気と天才を併せ持ったマン・レイ、その発想をたどる展示会なら行ってみようかな。
Commented by apakaba at 2010-07-18 17:47
ご心配なく!
東京会場のあと、大阪にも行きます(9月ですが)

キキは着衣の状態のポートレイトでした。


<< 2ヶ月早いプレゼント      エステサロンでダイエットしよう... >>