2010年 11月 19日

東京婆

寝不足つづきでキツイよう。
でも面談の時期なのでがんばる。
(面談というのは、私の生徒の保護者が家に来て話をするということです。)
ふだんとちがって大人が家に上がってくるので、朝、掃除をしてから面談開始。

昼前に終わってから買い物に出るが、すでにくたびれてしまっていた。

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くたびれていても、こういう“カフェめし”をすぐ食べられるのが都会暮らしのいいところ。
首都圏に展開しているチェーンのカフェだ。
店員さんは英文をちりばめたそろいのTシャツと、カフェエプロンを着けて動き回っている。

だいぶ年配の女性が、ひとりで入ってきた。
上品な服装に、顔も美しくメイクしているが、足取りがおぼつかない。
さっと女の子が手を貸す。
店員さんのひとりだった。
どうも、年配の女性とその若い女性店員は顔なじみのようだった。
顔なじみといっても、日参しているというほどではなく、今まで数回ここへ来たことがあり、たまたま担当したのがその店員だったという程度のなじみのようである。

小柳ゆきに似ているその小柄な店員さんは、
「お水は、どうしますか。氷は?入れない?冷たくないほうがいいかな。ちょっとお湯足します?」
と、適度に砕けた調子を織り交ぜながら年配のお客さんに聞いている。
しかしお客さんの女性のほうはいささか耳が遠いらしく、これだけの質問に何度も「え?」「え?」と聞き返している。
店内にはボブ・マーレーの『Three Little Birds』『Redemption Song』がつづけてかかっていて私の好みだが、その年配の女性客にとっては邪魔なだけのようだった。

しまいに聞き取ることをあきらめ、
「いらないわよ、あたしはミルクティーだけでいいって言ってるでしょ!」
と、にっこりしながら拒絶した。
孫娘にでも返す言葉のような調子だった。
孫娘のような小柳ゆきちゃんは、にこっとして無言のまま氷水をいったん捨て、氷なしの水を入れ直して黙ってテーブルの端にそっと置いた。
年配の女性はそれを完全に無視していた。
というより小柳ゆきちゃんの気遣いをまるで理解していなかった。
小柳ゆきちゃんは平気でいた。

ほかにもぼつぼつお客が入り始めていたが、年配女性は小柳ゆきちゃんを独り占めしてとりとめなくおしゃべりしていた。
小柳ゆきちゃんも、年配女性のそばに立っておしゃべりしたりさりげなく離れていったりしていた。

男性スタッフによってミルクティーが運ばれてきたので、いったん小柳ゆきちゃんは彼女の元を離れ、ほかのお客の注文を取っていた。
しかし年配女性は、やや手先が利かなくなっているようでポーションミルクを床に落としてしまった。
その様子を、注文を取りながら小柳ゆきちゃんはちゃんと見ていて、注文を厨房へ通してから、新しいミルクを彼女のところへ持っていった。
彼女はおちゃめな動きで小柳ゆきちゃんに手を合わせた。
“ありがとね、あなたはあたしのことをちゃんと見ていてくれたわね。”
感謝と尊大さの混じった態度は、ふたりの年齢差にふさわしかった。

女性店員の態度の的確さもたいしたものだと思った。
そして、年配女性客は、なんだかひどく懐かしい感じがした。
亡くなった夫の祖母に、そっくりなのだった。

外出するときは、おしゃれな小さい帽子をかぶる。
年齢にふさわしい、女性らしいきちんとした服装をしましょう。
メイクはファンデーションからきちんとやるのよ。
でもやっぱり、足は弱っているから、なにかにつかまって、ゆっくりゆっくり。
知らない人でも知ってる人でも同じ態度でしゃべるしゃべる。
若い人は大好きよ。

東京の人間ではない私がイメージする、どんぴしゃりの“東京婆(ばばあ)”だ。
その女性を見ているうちに、祖母と面差しまで似ている気がしてきて、ふと涙が出そうになった。

私は、生まれも育ちも東京ではないけれど、東京が大好きだ。
こんなファッショナブルなカフェでも、さりげない人情がたっぷりあるから。
むしろこれからは、この手の飲食店は年配の人とどう接するかが生き残りに関わるのかもしれない。
テーブル4つくらい離れたところでかわされていた、女性ふたりのやりとりと、ちょうど読んでいた新書『デフレの正体』を交互に見ながらそう思った。

by apakaba | 2010-11-19 00:16 | 生活の話題 | Comments(2)
Commented by minmei316 at 2010-11-20 10:04
ん~~いいお話です
apakabaさんの人間観察、面白いなぁ

川崎に住んでいた頃、働いていたお店にも
そんな感じの年配のお客様がいらっしゃったのを思い出しました
結構わがままをおっしゃる方でしたけれど、嫌味がなくサバサバっとしたかたで、何より売上に沢山貢献してくださり、こっそりチップもはずんでくださる方でした^^
Commented by apakaba at 2010-11-21 00:48
minmeiさん、どうして最後に『デフレの正体』という本が出てくるかというと、ちょうど「東京は、このあととんでもなく高齢化していく」という下りを読んでいたもので……あ〜これから先、元気なお年寄りはもっともっと街にあふれてこんな光景を目にすることも増えるんだなあーとか考えていたのです。
世代のちがう人と交流するのは、大変さもあるけどそれはおたがいさま。
小柳ゆきちゃんには感心しました。
minmeiさんも、東京婆ならぬ川崎婆(嗚呼)と、きっととてもうまくお付き合いできていたのでしょうね。


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