2011年 08月 03日
先週の日曜は、めずらしく家族5人そろって外出した。 土曜に、夫が飲んでくるメールをしてきたときに、「明日は早起きしてクレー展に行きましょう」と書いてきて、「え、全員で行くの?」とちょっと驚いた。 東京国立近代美術館で開催されていた展覧会「パウル・クレー おわらないアトリエ」は、日曜が最終日だった。 ふだん、美術展にはまちがいなく二人で行くので、なんで子供も連れて行くんだろうと不思議だったが、そのあと子連れで一気に買い物に行くからだった。 子供たちが明日(4日)からイギリスに旅行に行くため、旅行用に足りないものを買い出ししたのである。 最終日というせいもあるのか、クレー展は大にぎわいだった。 これまで何度かクレー展に行っているが、こんなに混んでいるのは初めてだった。 一度完成した絵を、切り離して独立した2点・3点の作品としたり、1枚の紙の裏表に、まるでちがう題材の絵を描いていたりといった、クレーが野心的にためしていたさまざまな絵画の技法を、文字だけの解説ではなく小型モニターを設置して動画を使って説明しているのが非常にわかりやすくてよかった。 しかし展示数が多い上にラビリンスのような館内構成にしたことにより、多くの閲覧者たちはまわる順番を見失ってうろうろしてしまい、後半の部屋は動線が無秩序なありさまとなってしまった。 一方向に人が流れるやり方を変えたのは斬新だが、来場者数が一定の限度を超えたらあの方式では無理だろう。 昔からクレーの色彩が好きなので、もっとたくさん油彩画や水彩画を見たかったが、今回は手法に着目した作品群で、それはそれで興味深かった。 とくに、裏と表でべつの絵を描いていて、うすい紙に描いた場合、きれいな絵の裏側にモノクロのぐるぐる殴り書きをしたような線描が透けて見えていたりするのは非常におもしろかった。 美しい完成品を、うっすら透けるぐるぐるの線が台無しにしている。 その“台無しな感じ”をも抱き込んで、完成しているという不思議な両A面。 絵にハサミ(だかナイフだか知らないが)を入れる、という行為も、画家にとって自傷行為にも等しいように思えるが、現代作家がやる“コラージュ”の先駆けと考えれば、そこまで深刻に受け取る必要はないのかもしれないな。 と、いろいろな刺激を受けた展覧会だった。 くわえて、常設展示の圧倒的な充実ぶりには、予備知識がなかっただけ感動も大きかった。 日本画の大作などのコレクションはもちろんのこと、常設展示なのに小企画展をやっていて、それがおもしろい! ちょうど、クレー展と同時に会期終了となった路上 On the Roadという企画展が、カッコよかった! きっと、すごいキュレーターがいるのだろうな。 夜は、遅ればせながら7月生まれの「コシヒカリ」の誕生会。 といってもきょうだいでプレゼントをあげたりはもうやらず、「アキタコマチ」が腕を振るってごちそうを作った。 牛肉バンザイ! 畜産の皆さん、がんばってください! わが家ではお祝いのときにしかまず食べない厚切りのステーキ肉! シェフによれば「牛ロースのグリルと、セロリとなすのカポナータ」だとか。 これと、きのこのバルサミコ風味のサラダを作っていた。 食事をしながら、美術館の感想を言い合った。 美術展が苦手(興味がない)な「コシヒカリ」は、常設展示のモダンアートを 「さっぱりわからなかった。粘土のかたまりみたいなのを“作品”って言われても……。あと、木の枠みたいなのに斜めに金属を張ってるのとか、まったくわからなくて困った。」 と言っていた。 「ササニシキ」は、 「え、オレ、どれも制作された年代にばっかり注目してたんだけど。」 と、世界史ヲタな感想。 「ヴァイマル以後かどうか、とか。日本の作家でも、戦時中の作品かどうかとか。」 夫は「世界史オタクな感想!」と笑いながらも、 「そうだなその見方は正しいよな。芸術は、その時代の大きなできごととは切り離せないもんな。かならず影響を受けてるものだし。」 と褒めていた。 そんなこんなで、楽しい日曜日となった。 明日から、子供3人は仕事の両親を置いて、祖父母とイギリス旅行に発つ。 パッケージツアーなので、コッツウォルズ地方を効率よくまわり、ストーンヘンジやウインザー城やロンドンの名所にも行くらしい。 ロンドンでは自由行動が長いため、美術館好きの「アキタコマチ」はテートモダン、歴史好きの「ササニシキ」は大英博物館に期待しているらしい(「コシヒカリ」はハリー・ポッターのロケ地とロンドンの観覧車に期待しているらしい)。 いいなあうらやましいなあ。 夫も仕事でイギリスに行ったことがあるので、家族でイギリスに行ったことないのは私だけになっちゃう。 そう言うと、夫から 「いやいや、家族で君だけしか行ったことのない国のほうがよっぽど多いからね。そんなことでうらやましがられてもなあ。」 と返されたが、でもでもやっぱりうらやましい〜!
by apakaba
| 2011-08-03 13:04
| 生活の話題
|
Comments(4)
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ぴよ
at 2011-08-03 14:27
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いいなああああああ!
私もイギリス行った事なーい!行きたいよーう!! 誰それよりも渡航国数が多いから羨ましくないとか、そんなの関係ないよね。行った事ない国に誰かが行くと聞けば羨ましいに決まってるじゃーん! 昔は「イギリスは行きたいけどムリだな。タバコと酒が高過ぎる」とよく言ったものだけど、少なくともタバコに関しては克服出来た。 後は酒だ!酒!・・・いや、コレは止められないだろ流石に(滝汗) そうそう、 うちの旦那は「ぷち美術通」ぶってるけど抽象画・具象画系は全くダメ。 クレーとかカンディンスキーの色遣いが私は結構好きなんだけど 「見て意味の判らない絵は評価出来ない」と旦那は言う。 ・・・クレーだってお前に評価なんかされたくないっつーの(苦笑)
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apakaba at 2011-08-03 17:24
ぴよさん、しかもビジネスクラスの旅行なので喉から手が出る羨ましさです!
カンディンスキーも色がいいよねー! 多分、ダーは絵を「感じる」ことが苦手で、「理解する」「読み解く」みたいな感覚に近いのでは? カンディンスキーって、「アタマの中、音符(♪マーク)が飛び交っていそう」といつも思います。
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agsmatters05 at 2011-08-03 23:12
apakabaさん、昨日湖水地方からC村にもどってきた、イギリス在住のミチです。ご家族がこのイギリスに!って、なんとなく、私、そわそわしてしまいます(笑)。コッツウォールズに、ストーンヘンジ、ウインザーに、ロンドンですかぁ。5人の皆様全員がそれぞれに(個性的に)どうかイギリスのよさをたっぷりと味わってくださいますように、と願っています。日本のように蒸し暑くないことだけは、メリットのはず。・・・とまあ書いているうちに曇り空から雨が降ってきてしまいました。こんなときに、コッツウォルズとかストーンヘンジだったら、ちょっと残念だなあ。雨のときは美術館、博物館がおすすめ。サイエンスミュージアムも面白い場所だとおもうのですが。もしも時間が余って、行くところがなくて、母さんのブログの読者に連絡とってみようかな、という奇特な方がいらしたら、44-7801351222 にいますからね、って、いったい何日間のご滞在かしら。コシヒカリです、アキタコマチです、ササニシキです、って電話の向こうでいきなり言われたら、私、ドッキリカメラもいいとこで、舞い上がるような気がします。(笑)。
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apakaba at 2011-08-04 23:46
ミチさん、わー気にかけてくださってありがとうございます!
今朝早くに、出かけました。 留守番の私も「今どこかなー」とぼんやり考えています。 もしも私が行くなら、なにをおいてもミチさんにお電話するところですが、なにしろほぼフルバックのツアーですからねえ。 ナニゴトもなく帰ってくるのを待ちますよ。 8日間の日程で、ロンドンではルネサンス・チャンセリーコートとかいう(名称変わったかも)に泊まるらしいですよ。 なんだかよくワカラナイながらも、とりあえずうらやましいです。 今夜はうらやましさのあまり、近所の居酒屋で飲んでいました。 |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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