2011年 10月 14日

死んでいくこと、生きること

先日、子供たちの友だちのお母さん、いわゆるママ友の一人が亡くなってしまったと知った。
癌だったことも治療の入退院をくり返していたことも、周りの知人は誰も知らないままだった。
近所の人なのだが、最後にその人に会ったのがいつなのか、まったく思い出せない。
昔はたまに子供が遊びに上がらせてもらったりして、夕方に子供を迎えに行くと、
「いらっしゃい。お茶飲んでく?ビールのほうがいい?ミタニさん飲めたよね?」
とさっそく聞いてくるような、豪快な人だった。

亡くなってから思い出してみると、“そういえば”ということが出てくるものだ。

犬の散歩をしているときに、たまにすれちがっていたが、会うたびに印象が変化していくようだった。
「なんだかあの人、昔はもっとどっしりとした雰囲気だったのになあ?なんだかだんだん、ふわふわとはかない雰囲気になってきたような?なんでだろう?」
と、私は不思議に思っていたのだ。
もともと色白な人だったが、白い大きなつばの帽子をかぶり、ゆっくりとした足どりで遊歩道をすすむその人は、まるで少女のようというか、ほとんど透きとおっているかに思えた。
透きとおっている人間なんているはずがないのだが、そう感じた。
とくに痩せているということもなかったし、つらそうな歩き方をしていたのでもない、ただ、足をつけないままでスーッと地面と平行に移動しているかのように見えて、昔の「ビール飲む?」と聞いてきたあの豪傑の女性とは別人のような印象を受けていたのだった。
すれちがうときに挨拶すると、私に笑い返す表情も可憐な少女のようになっていて、「若返ったってことかな?うらやましいわ」と思いながらも、どことなく落ち着かない気分になったものだった。

あれは、病院の帰りだったのかなあ……偶然出会うたびに、私にちょっとずつ別れを告げていたのかなあ……無垢な表情の後ろに、どれだけの思いがあったのかなあ……などと、ここ数日、思い返していた。

ママ友が亡くなったことを知ったのは、ちょうどスティーブ・ジョブズ氏が亡くなったのと同じころだった。
Macファンのわが家にとって、彼の死はもちろんショックだった。

そしてそのころ、たまたま、友人がYouTubeでRCサクセションの映像を貼っていたのを見た。
海辺のワインディングロード』を唄うキヨシローは、まるで私の息子みたいに若いあんちゃん。
ひょろひょろでお肌ツルツルの子供っぽい彼を見ていると、涙があふれてくる。
ねえキミ、私の大好きなその歌を唄っているキミは、60までも生きられず、そのすてきな声が咽頭癌に冒されていくことを、知らないのだね。
そのかわいい顔が、50半ばなのに70過ぎにしか見えないくらいに老け込んでしまうことも、知らないのだね。
“未来を知らない”ということは、なんてやさしいことだろう。
“未来=自分の死を知っている”ことは、なんて厳しいことだろう。

つらい気持ちが、重なったなあ。
まあ私自身は、84歳まで生きることを約束されているのだけど。
シンガポールでインド人占星術師に占ってもらったからね。
私は、生涯この占いだけを信じて生きていくことにしたんだ。
占星術は“未来を知らない”ことでもあり、“未来を知っている”ことでもあるから。

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今年初のむかご。
蒸かして塩つけて食べると、秋のおつまみ。
気に入りのお皿は、星占いをしてもらったときにシンガポールで買ったお土産だ。
おいしいものをたくさん食べて、楽しく生きていきたい。

by apakaba | 2011-10-14 22:15 | 生活の話題 | Comments(7)
Commented by saheizi-inokori at 2011-10-15 08:18
はかない存在なんですね、人間とは。
Commented by apakaba at 2011-10-15 08:30
古文だと死ぬことを「はかなくなる」って言いますからばっちり当てはまりますよね。

私の父は脳出血で、倒れて半日で死んでしまったのですが、そのときはちっとも「はかない」感じはありませんでした。
倒れるくらいだから疲れは溜まっていただろうけど、見た目は同じでした。
ほんとに元気なままバッタリ倒れた、という感じ。
でも癌だと、だんだんと透明になっていくような感じがします。
いろいろな方を見ていると、そういう印象です。
Commented by minmei316 at 2011-10-15 17:18
心がちょびっと沈んじゃいましたね・・・
おいしい物でも食べて、酒でもかっ食らって元気出してくださいな

私達の年代も、いよいよこれからどんどんこういうことが
増えていくのでしょうね
そしてわたしたちもどんどん神経が図太くなっていくのでしょう きっと
中高年のオバちゃんたちのあの図太さの裏には
もしかしたら沢山の悲しみを乗り越えてきたからなのかもしれません
てか、何話てんだろ わたし・・・

同じカテゴリの記事画像にapakabaさんのお着物の写真みつけて見てきました(確か2008ねん)。3人の子供さんたちの怪我や頭痛のことが書かれていて大変そうでしたが、ごめんなさい、非常に面白楽しく拝読させていただきました^^
Commented by apakaba at 2011-10-15 19:47
minmeiさん、そうなんです。
年を取るのって、やっぱり伊達に年取っていませんよね。
私も、死に関して思うと、人生の先輩たちのことは素直に尊敬してしまいます。

「同じカテゴリ」って、ちょっと前から始まったサービスなのかな?
けっこうおもしろいですよねー。ナイスアイデアだわ。
私もminmeiさんの銀ちゃんのカテゴリは、銀ちゃんだらけになって、かわいくてついつい次々に見てしまいます!

http://apakaba.exblog.jp/9027059/
「近況報告とか、病院あっちこっちとか」てヤツですね。
なんかこの日はすごく長く書いたなー。
欲求不満だったんだな。
Commented by kaneniwa at 2011-10-15 23:52
「はかなくなる」という表現のほかに
死ぬことを
「いたづらになる・あさましくなる・むなしくなる」
などと言われてきましたね。

横尾忠則さんはイラスト作成中、
まったくジャンルを問わずに
「この世にはもういない人の歌声」
を聞いているそうです。

高校生の頃、
サウンドに出会うことができたばかりの
ボブ・マーリーが亡くなったニュースを聴き、
ラジオからの歌声がまったく別な声に聞こえたことを
思い出します。

また、同じく高校生時代、
ジョン・レノンの声が、衝撃のニュースを聞いた後で
まったく違ったものとして聞こえてきました。

BYマーヒー

Commented by apakaba at 2011-10-15 23:59
ん、待てよ、「同じカテゴリ」は、写真の載っていない日の記事は永久に出てこないのか。
写真を載せろよということが前提か。
Commented by apakaba at 2011-10-16 00:04
マーヒーさん、私はボブ・マーレーもジョン・レノンも、当時はなんとも感じていませんでした。
やっぱり近年で一番その感覚を覚えたのはキヨシローだったな。
「これはもう死んだ人なんだ」と思って、ことの重大さをどうしていいかわからなくなっていました。
横尾忠則さんのチョイスは、どうしてなんだろう?

>「いたづらになる・あさましくなる・むなしくなる」

うーん、書かれるまでまるで思いつきませんでした。


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