2012年 04月 22日
ファン歴25年の蔵前仁一さんと『旅行人』のこと ポンガル@国分寺カフェスロー 1月・2月とつづけて、旅行人(旅を愛する人の雑誌・現在休刊)になじみの深いイベントに参加してきた。 そしてきのうは神楽坂のギャラリー「光鱗亭」で開催されている「旅行人文化祭(本日最終日)」にうかがった。 敬愛する作家の田中真知さんのトークイベントに参加するためである。 トークのテーマは、20年前のザイール川(現コンゴ川)を、奥様の裕子さんと二人で丸木舟を漕いで下ったときの、さまざまなエピソードだった。 これまで、本や雑誌などで断片的にその過酷な旅の模様は読んでいたが、写真を見たり現地で録音した歌や音を聴いたりしながら、たっぷり時間をかけてお話を聞いたのは初めてのことである。 写真の中のご夫妻は壮絶に日焼けしているし、病気やケガは場合によって命取りになるほど深刻なことだし、たとえ愛する人と一緒であっても、同じことをやりたいとはとても思えない。 それでもやっぱり、時間やいろんな条件に縛られず、自由に旅に出たいなという気持ちは、入道雲のように力強く湧き上がる。 「旅行人」という雑誌が、そういう雑誌だった。 誌面に展開する旅の行き先は、まさしく世界中バラバラ。 それでも、今まで自分が少しも興味を持っていなかった“彼の地”の旅情報によって、次の旅先を決定したり、がぜん興味を持つようになって詳しく調べ始めたりするようになる。 定期購読をしていたころ、本誌が届くと、真知さんのページはいつも一番最後にとっておいた。 軽く読み流すことができない、一番楽しみで一番大好きな連載だった。 単行本『ある夜、ピラミッドで』に収録された「ある朝、シナイ山で」の最後の一行には息が止まった。 “こんな文章を書けたら……!” 背筋から身震いし、目で読みながら同時に読む声が漏れて、何年も何年も、その余韻が体に焼きついていた。 どれだけ憧れただろう。 こんなふうに書きたい、そして、こんなふうに人と出会いたい、歩きたい、と。 「旅行人文化祭」は、あのころの灼けつくような感覚を思い出させるイベントだった。 会場には、私のネット友達も来ていたし、思いがけない人もたくさん来ていてうれしかった。 12年前、最後に行ったインドで、偶然知り合った作家の謝孝浩さんと、10年ぶりに再会できた。 年賀状などはやりとりしていたが、お会いする機会はもうないかなと思っていたのに、まるであれからほんのちょっとしか経っていないみたいで、なつかしさに胸がいっぱい。 インド・アジア映画評論家の草分け松岡環さんにも久しぶりにお会いできて、来週おうちにお邪魔することを約束する(超老舗月刊ニュースレター「インド通信」の発送作業のお手伝いをするため。私も10年以上行っているがここ数年ご無沙汰していた)。 また、旅行人執筆陣のなかでも大ファンだったエッセイストの森優子さんに、勇気を出して初めて声をかけた。 もう15年以上前、「旅行人」誌上で森さんが出品した読者プレゼントに当選して、感激して森さんにお手紙を書いたりしたことを話した。 他にも、「ファン歴25年の〜〜(上記リンク)」のコメント欄で案内をくださったライターの前原さんを始め、たくさんの執筆関係の方々、初めてお会いする方々と楽しくお話をすることができた。 トシをとること、は、ちっとも憂きことではない。 10年、20年、25年という長い単位で、初めてお話できたり、再会したりできるなんて、これこそがトシとることの楽しさだ。 私は子供もすっかり大きくなっちゃったし、これからもどんどん、楽しい出会いをしたいわー!
by apakaba
| 2012-04-22 23:13
| 旅行の話
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Comments(4)
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Akiko
at 2012-04-23 12:40
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マキさんにとっては再会と出会いの夜だったんですね!私は旅行人を誰よりも読んでいなくてスミマセンという気持ちはありました(笑)旅雑誌が存続できない今、次はどういうものがありえるんだろう、この、旅行人を愛する人たちのコミュニティはどこへ行くんだろう?ネットはマネタイズするのが難しいだろうけれど・・・と考えたり。もちろん田中さんのお話は大満足でした。紙媒体がなくなるのはしょうがない(?!)ですが、優れた文章を読みたい話を聞きたいというニーズはあると思います。
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apakaba at 2012-04-23 14:07
Akikoさん、オヤユビだけの友情出演でこちらこそどうもスミマセン。
旅行人を読んでいないタビビトということは、若者の証拠です(なんか、ひどい括り) 旅雑誌は、たんなる情報だけならネットに負けてしまうから、読み物としての価値と写真の美しさで勝負になっていくのかなー? 私も数年にいっぺんしか買いませんが、あまりにも写真がファンタスティックだと雑誌を買っています。 またいろいろ、お話しましょう!
嬉しいですねえ。
マキさん、旅行人文化祭についてむっちゃ嬉しい記事を書いて下さって、ありがとうございます。 ライターの前原氏の思いつきに巻き込まれ、いつの間にかおりゃおりゃーと文化祭ミコシを担いでた、旅を愛するイラスト・エッセイストの森優子です。 この間は再会が果たせて・・・というか考えてみれば正真正銘の初対面だったんだけど、旧知の知り合いみたいに「あーっ」て手をとりあえて実に感慨深かったです。 ブログも拝見して、かつての私の著書紹介文をまだ掲載して下さってることに「おおっ」。さらにさりげなくキモノ姿にも反応しちゃったりもして(笑)。 年をとるっていい。 いやいや、同感です。 かつてあるテレビ番組で、『老いとは何か』という問いかけにタレントやいわゆる知識人が答えるというのがあって。 たいていは「ワインの熟成」「落ち葉となって次代に栄養を与えること」みたいな答えだったんだけど、数学者の森毅が言った一言にズギュンと胸を貫かれたことを思い出しました。 『老いとは、若さからの解放である』 うひー、それやそれやー!ってね。 また来ます!
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apakaba at 2012-04-24 21:36
ウワー!コメントありがとうございます!
ほんとに感激したので、 5月20日西荻窪アコースティックカフェスロのトークイベント「がけっぷち欧州よどこへ行く?」 にも参加いたします!←ぬかりない宣伝活動! 森さんのブログにあった、遺影を撮るお話の写真を見て、まったくしみじみしましたね。 どんなお顔の人も、「いい瞬間」「いい表情」を持っているんだなあ。 それをとらえるのだなあ。 こういう顔になっていきたいなあ……トカナントカ。 そちらのブログにも、こんどこそ勇気を持って書き込みます! |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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