2012年 08月 27日

異彩はホログラムとなり、旅路を照らす——武田尋善さんの個展「茸帽子道中見聞録」

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会場は、とってもステキなA.C.T.

今年の初めに初めてお会いしてから、いろいろなイベントで顔を合わせてきた芸術家の武田尋善(ひろよし)さんの個展が、きのうまで開かれていた。
「芸術家の」と書いたが、私にとっては、彼はついきのうまでは「お料理をする人!」だった。
相棒の鹿島信司さんという方と二人でマサラワーラーというコンビでインド料理を作る。
そのおいしさと明るい笑顔でどんどん人気が出て、イベントに引っ張りだこのお二人である。
きのう、初めて武田さんの別の顔を見た。

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チラッと見えるのが武田さんのオートリキシャ!

ギャラリーで絵を見ながら、彼にとって、インド料理を作ることも、絵を描くことも、まったく同じ文脈の中にあるのだと思った。
どんどん思いつく。
どんどん作り出す。
ぜんぜん手が止まらない。
もっともっと、おもしろいことを思いついちゃう。
それは、すごく新しくて、すごくおもしろいもの。
そうやって自然と、周りに人が集まってしまう。

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一日早く個展に行ってきた「アキタコマチ」が、
「人に、自分の作ったものを“作品として見せる”ということはこういうレベルか、と思い知った。自己満足レベルじゃなくて、きちんと人に見せて、売れるモノ(作品は即売されている)。自戒を込めてそう思った。」
と、かなり感銘を受けていた。
本当に才能のある人って、ああいう感じ。
いろんなことを、ただ純粋に大好きで趣味みたいにやっているんだけど、突き詰めていくとそれが生業になってしまっている。
武田さんの才能には圧倒された。

それは、各々の作品に添えられた童話のような短い文章にもあふれていた。
今回のテーマは、森のキノコが、大きくなってひっくり返されたかっこうで帽子となり、タビビト(似てないけど武田さんの姿か)の頭に載っていろんな場所へ旅する……というようなものだったが、これがもう、文章と絵で本にしてくれたら絶対に買うのに!というものだった(本は作ったそうだがすぐに売り切れてしまったという)。
文才もすごい……いや、文才というと軽々しい。
文章は飾り立てていなくて平易なのだけど、まるで絵のような別の世界を開いてくれるというか……そこに掛かっている彼の絵と、ビリビリと共鳴しあって、その場にボワッと旅世界のホログラムが立ち上がってくるような感覚だ。
魔法使いみたいな人だ。
茸帽子をかぶった魔法使い。
異次元な音楽とともに、別の世界へ連れていく。

最終日は、「異次元パレット」という音楽ユニットが特別出演して、武田さんがスケッチブックにごくすばやく描いていくスケッチ(ちゃんと茸帽子が旅に出るストーリー仕立て)に合わせてさまざまな楽器を即興で演奏していくというとんでもなく高度なショータイムもあったのだ。
異次元パレットはふだんは二次元パレットという名前で活動しているという。
このお二人もすごい才能。
才能のある方同士って、やっぱり共鳴しあうのだね。

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これが「旅」という作品ですが、わざとぼやけた撮影にしています。

旅の始まりから終着までを順番に見ていくと、最後のほうにずばり「旅」というタイトルの作品があり、そこに添えられていた文章の前で、私は息を呑み、動けなくなった。
個展なのであまりばっちり作品の写真を撮るのはひかえたが、この文章だけは持ち帰りたいと思って、ご本人の許可を得て撮影させていただいた。
この言葉は、「私と同じだ!私が思ってたことと!表現まで、まるっきり同じだった!」

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旅に出る前の場所と
旅から帰った場所が
違う場所

その言葉がずっと残っていた。

それならば、旅は終わらないのではないか。
円のようにもどってくるのではなく
螺旋のように、元居た場所の凄く近く
だけど少し違う場所に遠回りをして行く。

繰り返しているようで、繰り返していない。
その繰り返しは、繰り返しではない。


学生時代最後の卒業旅行で、インド・ネパール・パキスタンを一ヶ月半歩いてきたとき、旅行記の最後に私はこう書いていた。

直線的に流れていく時間を40日だけ止めて、できるだけ大きな円を頭のなかに描き、その上を、わざとゆっくり歩を進めてきた。
ところがその円は、じつは円ではなく、ゆるやかな螺旋だった。
ほんとに“戻った”のでなく、旅の前よりちょっと浮き上がった地点に戻ってきている。私はもう、アジアの旅の楽しさを知っているし、学生という身分でもなくなる。なにしろ生涯最後の春休みなのだから。


「円」「螺旋」という表現もピタリと同じ。
ここで、私は彼とビリビリ共鳴しあった!
1990年、旅日記を抱えた生意気な22歳の女の子が、ホログラムになってそこに立ち上がった!
二倍の年月を生きてから、思いがけず再会した!
胸に込み上げるものがあった。

だが、いったん武田さんに撮影の許可をもらうためにその場を離れ、また「旅」の絵のところに戻ると、一人の男性が動けなくなってしまっている。
まるでつい先ほどの私みたいに。
辛抱強くその人が去るのを待ち、やっと撮ろうと思うと、こんどはその男性よりやや年かさの男性が動けなくなった。
みんな、その絵と言葉の前で釘付けになり、自分にしか見えないホログラムを見ているんだ……彼ら、旅好きなんだな……背後から二人の男性を見送りながら、私にははっきりとそう感じられた。

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武田さんが作ったお人形も、これが最後の一体!ラッキーだった私!横の犬さんたちは武田さんの奥様作。ソーキュートよ

「すごくよかったです!」と武田さんにバカ丸出しの感想を言い、私のことなんか覚えてくれていないだろうと思って自己紹介すると、
「覚えてますよ!シャールク大好きミタニさんでしょ!」
と言ってくれて、それもカンゲキ……!!!!!!(インド映画の王道を進む、『ラ・ワン』というレビューを書いたばかりですのよ)

ギャラリーを借りて個展を開くというのは、お客さんにとっては気楽なものだが、やるほうはとても大変だということは、次男がグループ写真展を何度もやっているので想像がつく。
だから、きのう会期終了したばかりの武田さんにこれを言うのは酷だというのは重々承知、でも言わせてくれ。
「次回が待ち遠しいです!」
次回には皆さん、どうぞ行ってくださいね。

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オマケ!マサラワーラーのもう一人、鹿島さんは実は二次元パレットの特別メンバーでもある。つまり鹿島さんは料理人であり音楽家。まったくこの人たちの才能には気絶しそうだよ。鹿島さんに「覚えてないと思うけど、こんにちはミタニです。」と挨拶すると、「覚えてますよ!カフェスローで会ったでしょ!これあげます」とみそピーをくれたのでした〜カンゲキ〜。

※武田さんのサイトはこちら→
武田尋善的世界 総天然色
  過去のお仕事を見ることができます。

※卒業旅行の日記は、「1990年の春休み」として以前に95回連載しました。
長すぎるので誰も読まないとは思いますが、本文に載せた抜粋箇所は最終回の分です。

by apakaba | 2012-08-27 19:57 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(0)


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