2012年 09月 08日

東京都写真美術館のある生活

今日は東京都写真美術館で過ごした。

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まず自然の鉛筆 技法と表現 平成24年度東京都写真美術館コレクション展へ。
会期を学生の夏休みの期間にちょうどぶつけており、デジタル以前の写真の歴史について学ぼうという目的をはっきりと感じられる。
所蔵品の展示なので、これまでにここで見ている作品が多かったが、やはりすばらしい写真は何度見てもすばらしい。「これ、もう見たことあるし」と飽きることがない。

“写真における「化学」に焦点を絞り、プリント技法の変遷と表現、さらに印画紙の古典技法と現代表現や、モダニズムにみるカメラレス・フォトグラフィなどに注目”と案内にもあるとおり、解説は芸術作品としての価値を語ることよりも、ひたすら印画紙の作り方などの説明に重点を置いている。
解説をていねいに読めば読むほど、“写真を撮ることとは、なんだろう?”という問いかけが大きくふくれあがってくる。
写真というのは科学技術なんだなあ……化学反応の成果であり、記録であり、そして芸術であるのだなあ……
カメラがなければ写真は撮れず、写真を撮る大多数の人間は、カメラをつくることができない。
デジタル時代以前には、さらにそこに「プリント」というハードルもあった。
だが、芸術性をねらった写真ではなくても、たとえば戦争記録写真でも、その土煙は、泥まみれの顔は、燃え落ちる家屋は、たしかに芸術になっている。
絵画にはない、偶発的な美が宿っている。
そこが、たまらなくおもしろい。
こうしてテーマのある展示をあらためて見てみると、現代芸術の大きな一角を占める「写真」にまた魅力を感じる。

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次に鋤田正義展 SOUND&VISIONへ。
予想をはるかに上回る充実した展示であった。
どこかの美大の学祭のような、ポップな仕立ての展示方法も雰囲気に合っている。
数多くのミュージシャンを中心とした超有名アーティストを撮りに撮っている。
ニューヨークや東京の街角スナップ的な作品も多く展示しているが、それはさほどでもなく、やはりアーティストの写真が輝いている。
これは、カメラマンの力量なのか、それともアーティストたちが輝きまくっているから?
はじめは「だって、スターだし。彼らレベルなら、どう撮ったってピカピカでしょ」と思っていたが、この圧倒的な量の仕事を並べられて、そのひとつひとつが、まったく譲らず輝きを主張しているからには、やはりこのカメラマンがすごい力なのだとわかってきた。

死んだ人の写真はつらい。
キヨシローのつぶらな目のやさしいまなざしには涙が出たし、加藤和彦が愛らしい笑顔でくったくなくこちらに歩いてくる姿も胸が詰まった。

高校生のときに母親を撮ったのが写真家人生の始まりと解説にあったが、その写真にはびっくりした。
祭りなのか、横向きの母は着物を着て、菅笠を目深にかぶって、顔はすべて隠れている。
写真家(息子)の視線は、菅笠(=顔)と、着物の襟との間、つまり真っ白な首筋に注がれている。
まぎれもなく、“男”が“女”を撮っているのだ。
高校生の息子が母親をこんなふうに撮れるとは。
すでに、人物写真を撮るべくしてスタートを切っていたというまたとない証左である。


そして最後に、ホールで映画『ラ・ワン』鑑賞、二度目だ。
渾身の感想は、一度目のとき「インド映画の王道を進む、『ラ・ワン』」に書いた。
まだの方は是非読んでね。
ええ、またアホみたいに泣きましたとも。
とにかくシャールクが好き。
泣いて(座ったままだけど)踊って、CDも買って満足至極よ。

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恵比寿ガーデンプレイスにはおいしいお店もいっぱい。

東京都写真美術館は、「全世界でも数少ない写真と映像の専門美術館(サイトより)」である。
これからもがんばって、内容の濃い展示をしていってください。
応援しています!

by apakaba | 2012-09-08 23:11 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2012-09-09 20:36
それほど遠くもないのにときどきしか行かないのはもったいないなあ。
Commented by apakaba at 2012-09-09 22:05
そうなんですよ!
入場料も、西洋画家の絵画展などよりずっと安いし、バカ混みしてないし(世界報道写真展は別ですが)、都会の穴場です。是非是非!


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