あぱかば・ブログ篇

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2012年 10月 22日

銭湯、台北、千と千尋。娘の大事なもの

靴を好きな数字の下駄箱に入れて、木札の錠前を持って入ると、番台は無人。
番台をはさんだ向こう側の男湯から、お客なのかちがうのか判別できない男性が、声をかけてくる。
「今ねえ、番台がちょっと奥に入っちゃってるから。お金そこに置いていって。」
娘の分と二人分払って入浴した。
たまに来る、近所の典型的な東京銭湯だ(入口の写真はきのうの記事いつか恋する君のために 中学最後の文化祭の最後)。

「京都でもいっぱい銭湯に行ったけど(娘の行きたい京都へ行く4.新選組以外の目的地に所収)、東京の銭湯もやっぱりいいね、負けてないね。」

お風呂から上がって、服を着ていると、番台のおばさんが坪庭のある木の扉から風のように入ってきた。
丼と箸を片手で器用に持っている。
丼は遠目には犬の餌じみたぶっかけごはんのように見え、思わず娘といっしょに横目で追ってしまう。
おばさんは、先ほど男湯の脱衣所から首を出して声をかけてきたおじさんに向かってその丼を差し出し、
「先に食べたから。はい、これね、おにいちゃんのごはんね」
などと話しかけている。
“あのおじさんのこと、おにいちゃんだって!”
“お客さんじゃなく、やっぱりここの人なんだね。”
娘と目配せで話す。

風呂上がりのおばあさんが、木の床にためらいなく手やお尻をつき、半裸で元気よく体操をしている。
大きなパンツが裏返しであることに気がつき、教えてあげようとしたものの既(すんで)のところで思いとどまる。
“もしかして、二日穿くのかもしれない?昔の人だし、それがふつうの習慣なのかもしれない。もしくは、新しい下着を持ってきていないで、家まで裏返しで帰ってから取り替えるつもりなのかもしれない。だとしたら余計なお世話だわ。”

お釜型のヘアドライヤーは3分くらいで20円。
小銭がなくて娘に出してもらう。

帰り道、娘は
「ああもっと来たいなー。わたし銭湯が大好き。とくに雨の夜に立ち寄って……お風呂から出たら雨が上がってた、なんて、すごくいいな、やってみたい!」
などと喜んでいる。
「さっきのおばあさんとか、いきなり丼持って入ってきた人とか、おもしろかったね。」
と言うと、
「そうそう、ああいうの好き!昭和な感じで。」
昭和を知らない娘は、ふだんからやや昭和を美化しすぎているのだが、たしかにあの銭湯のなにもかもがまぎれもなく昭和だ。

やがて3月に二人で行った台北の思い出を語り始める(旅行記は胡蝶の夢ひらひら台北)。
「『千と千尋の神隠し』でも、ああいう丼のごはんとか出てきた。
おかーさん『千と千尋』は見たほうがいいよ。あのね、昭和な銭湯の感じと、まさに舞台になった台北の感じが交ざって出てくるの……何回見ても、ああこういうことだったんだなあって発見があるの。
わたし台北に行ってほんとによかった。あの感じ、ほんとに『千と千尋』そのもので……『ここだ!こんなだった!』って思うの。
映画を観てから台北に行くと、またあらためて感動して映画が好きになっちゃうの。」

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3月に行った台北・金瓜石(きんかせき)。娘のカメラに一瞬だけ霧がどいてくれた。『千と千尋の神隠し』の舞台のひとつと噂されている丘。旅行記では4.金瓜石と、犬写真に濃霧の写真あり

これまで、娘にはあまりいろんな体験をさせていないように思っていたが、それでもなんだかんだとしてきたんだな。
京都や東京であちこち銭湯に行って、映画の舞台に行って、ひとつひとつは断片的な経験でも、娘の中ではつながって、楽しくて大事な思い出になっていくんだな。

by apakaba | 2012-10-22 08:54 | 子供 | Comments(4)
Commented by 八島秀二 at 2012-10-22 11:13 x
いいお話ですね。 ウルウルしました。 私と息子は離れているので父親の銭湯DNAは遺伝してなく、直島に昨夏行った時、大竹伸朗の美術作品かつ銭湯の隣に泊まって、一緒に風呂行こう!と誘っても、シャワーがいいと袖にされました。 母娘の間でも ハダカの付き合い 大切だなあ、、と羨ましく読みました。
Commented by apakaba at 2012-10-22 11:57
八島さん、コメントありがとうございます。
直島行かれたんですか!
アイラブ湯は時間がなくて入れませんでしたが、高校生の次男が春休みに一人旅してきて、ばっちり入ってきたらしいです。
子供の頃は「お風呂屋さん」と呼んでいましたね。
シャワーのついた内風呂のほうが便利なのはわかっているけど、娘にとっては昭和にタイムスリップしたような感じがたまらないみたいです。

私も、渾身の直島旅行記を書いているので、よろしければどうぞ!
ブログ端っこの「カテゴリ」のところに「直島2010」というのがあります。
Commented by 八島 秀二 at 2012-10-22 14:58 x
渾身 読みました! 痩身でしたね。 でも宿泊は豪奢 あそこに泊まられたのですか! 我が貧乏親子とは別世界ですね。 本当は、12年前に泊まった キャビンを模した宿を再訪したかったのですが、無くなっていたので、お盆の中 なんとかペンションに宿泊できましたけど、息子には初ドミトリーだったのでブーブー云ってました。 その息子も成長してというか我が家の身の程を弁えてきたので、来月は京都の美山地区のYHに連れて行きます。
Commented by apakaba at 2012-10-22 17:35
そうなんです、今はすっかり太ってますがこのときは大人になってからの人生で一番痩身に成功してしまいました。

YHもいい経験ですね。
私も学生のころはしばしばお世話になっていました。
美山はいつ行ってもすてきですが、寒くなってきたころまた一段とひなびた風情が楽しめるでしょうね。いいな〜。


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