あぱかば・ブログ篇

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2012年 10月 31日

高校の文化祭・本編

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前夜の正門。
インテリア科の生徒たちが、真っ暗になってもまだ校門装飾を組み立てていた。

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グラフィックアーツ科がデザイン・印刷・設置をおこなっている、大型告知看板。
各科のイメージがデザインされている。

次男「アキタコマチ」の高校は、普通科ではなく、工業科である。
都立工芸高校というきわめてユニークな学校であり、中学生のとき、「ありきたりの普通科に進むより、お前にはずっと合っているだろう」と、夫が次男に勧めた学校である。
偏差値だけで考えたら、「アキタコマチ」はもうちょっと上位校に行けたかもしれない。
しかしまったく後悔していない。
偏差値の数字なんて、ここでの充実した高校生活に較べたらなんの意味もない。

先週末はこの高校の文化祭だった。
写真で簡単に案内していく。

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朝になると、ちゃんと校門装飾は完成していた。
今年のテーマは「レトロ」。
いわゆる“高校の文化祭”の飾り付けはもっと派手なものだが、一見、地味な装飾である。
だからここをさっさと通り過ぎていく来場者も多い。
だが、この中学生たちは、すでにここで立ち止まってしまっていた。
「すっげえ……!これって、ぜんぶ生徒がつくるの?うわあ……」
「え、この椅子も?この箱とかもだぜ?あっ、床もだ!」
ちらっとしか写っていないが、屋根裏の木組みを見てほしい。
ふつうの高校生、こんなものはつくれません。

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これこそ、本来的な意味で「レトロ」だ。
息子の属しているグラフィックアーツ科は、もと印刷科。
活字で活版印刷、どこかの博物館みたい。美しい。

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グラフィックアーツ科のお宝、エプソンの大判プリンタ。
4色が通常のプリンタのインクを10色使うという。

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これもお宝。
白いインクを使った印刷・インクを厚く盛る特殊印刷・皮革やフィルムやプラスチックにも印刷できるという。
こんなの授業で使っていたら、家庭用の小さなプリンタなどおもちゃみたいなもんですか?
だが残念なことに、こんなにプロ仕様のものを使っていても、グラフィックアーツ科の展示は印刷物主体のため地味である。

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手先の器用さがわかりやすいのは、やっぱりこういう実習作品かな。
食品サンプル、もうこのまま河童橋道具街に卸せる。

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陶芸部の作品は展示即売をしていてすごい人気。

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展示の花形は、なんといってもマシンクラフト科だろう。
定時制の生徒もいるとはいえ……こんなのつくる人を、私はとても「あの子」「子供たち」なんて呼べない!
ひれ伏すばかりだ。
マシンクラフト科は、女子が圧倒的に多いこの学校の中で、唯一男子が多い、昔ながらの男臭い“工業科”のイメージが残る科である。

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なんでも手作りしちゃうのよ……

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プロ裸足です。

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インテリア科。
将来、この人たちの設計した家やマンションに住む人がたくさんいるといいな。

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アートクラフト科の彫金体験教室も大人気。

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地下1階にこんな砂場があるとは知らなかった。
生徒たちが必死で砂に何かを埋めているような掘り出しているような?
なにをしているんだろう。

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アルミニウムを溶かして型に流し込み、砂に埋めて冷ましているのだった。
辺りに漂う異臭をものともせず、見学者が詰めかけていた。

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この体験コーナーでも、なにか金属を鍛えて、ものを作っていた。



この学校に来ると、いつも気持ちが明るくなる。
この人たちが卒業して、いろんな分野に散っていって活躍するんだな。
平凡な高校を出て平凡な大学を出て、“ほんとうの自分に合った仕事が見つからない”“ほんとうに自分を求めてくれる職場がない”などと嘆く人に、彼らはなりそうにもないな。

「アキタコマチ」が言うには、この高校の生徒は、“こんなすばらしい設備の中で、こんなに専門的なレベルのことを高校生で習える”ことで自分にもプライドが育ってくるし、友達同士でも互いに尊敬しあっているという。
自分にはとうていできないこと(マンガを描く・写真を撮る・服を作るetc.)をさらっとやってのける、才能にあふれた友達だから、ただ教科の点数を競うばかりの普通科では決して生まれないようなリスペクトと連帯感を持っているのだ。

「アキタコマチ」も同じことを言っていたのだが、私がなによりも大事だと思うのは、ここの生徒は、“あらゆるモノは、ゼロから誰かが作り上げたのだ”ということを、体験として知っているということだ。

世の中に、製品はあふれている。
しかし、ほとんどの人間は、それはそこにあったものだとしか思わない。
誰かがアイデアを出して、気の遠くなるような工程と、素材との試行錯誤を経て、やっと完成品にたどり着いている、そのカタチが、いま目の前にある「これ」なのだ、ということを、誰も意識していない。
誰かがゼロからモノを作ったということに思い至らない人間は、モノにも人にも敬意がなく、感謝を知らず、すぐ文句を言う。
だがここの生徒はそのことを体験でわかっている。
そういう目で、モノを見ている。
たとえば、ちょっと手に取ったチラシのレイアウトも、紙の質も、グラフィックアーツ科には気になる。
たまたま本棚にあった、活版印刷で刷られた古い文庫本をいとしく感じる。
他の科の生徒たちも、なにを見てもそんな感じだろう。
ふと座った椅子が気になる、照明が気になる、テーブルの花瓶が気になる、出されたカップが、運んできたウェイトレスの指輪が、身の回りのさまざまなデザインが、みんな気になる……「私ならこんなふうにつくるかな」「俺ならこの色にしないけど」「きれい。こんど真似してやってみよう」
それは、息子が卒業後に進む、一見この高校とまったく関係ない進路に見える「料理」の世界も根本は同じだと思う。

「アキタコマチ」は、いつも友達とこう話しているという。
「“消費するだけ”の側の人間にはなりたくない。“つくる”側の人間でいたい。」
風変わりな青春。
風変わりなこの高校は、きっと大人になってず〜っとたっても、彼らの母校でありつづけるだろう。
彼らに会うと、ニッポンはまだまだ大丈夫だなあと思えてくるのだ。

(私が参加したのはPTA編です)

by apakaba | 2012-10-31 18:10 | 子供 | Comments(4)
Commented by dekobokoミチ at 2012-10-31 21:07 x
Very nice! 共感、同感、感銘、でした。
Commented by apakaba at 2012-11-01 08:00
ミチさん、ありがとうございます。
この先もいろいろ挫折もあるだろうけど、ここでの3年間は、そんなときのための強さを作ってくれると思っています。
Commented by ぴよ at 2012-11-02 01:12 x
ステキね
本当に「物作りJAPAN」が今も脈々と息づいているんだと、これからの世代に託しても大丈夫なんだと、ちょっぴり嬉しくなる記事でした。

御子息にも、同級生の皆さんにも幸あれ!
Commented by apakaba at 2012-11-02 07:31
ありがとうございます。
いじめだの非行だのという問題ともまったく無縁だし。
やっぱり、自分が好きなことで、日々作り上げなければならないものが積み上がっていたら、非行なんかやってるヒマないんでしょう。


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