あぱかば・ブログ篇

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2012年 11月 08日

本屋で、「ササニシキ」の誕生日に

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大きめな本屋に行き、数冊を探してうろうろしていた。
「ヒクッ……、ヒクッ……」
周囲の雑音の足下から立ちのぼるように、しゃくりあげる声が交じってくる。
誰も気がついていないのか?
きょろきょろ見回すと、痩せて目の細い男の子が、すごい速さで人の間を歩いていた。

小学校低学年、もしくは背の高い幼稚園年長児、くらいか?
細い目は必死で親(であろう、一緒に来た誰か)を探している。
“どうしたの。お母さんがいなくなっちゃった?”
心で話しかける間もなく、びゅーんと書架の間をすり抜けていく。
焦っている子供というのは、思いの外、速く動く。
私も、自分の子供があれくらいだったころ、すぐそばにいるのに何度も取り逃がしたことがある。

水族館のマグロみたいに、猛スピードで店内を回遊している。
「ヒクッ……、ヒクッ……」のしゃくりあげが、近づいたと思うと遠のいていく。

次にそばに来たら、細い腕をつかんで教えてやろう。

“君どうしたの。お母さんと来たのか?
はぐれたときは、そんなに速く動いたらだめだよ。
お母さんのほうだって、君を探しているの。
君がそんなにすごいスピードであっちこっちに動いちゃったら、見つかるものも見つからないでしょう。
お店の人に言って、じっと待っていれば絶対に迎えに来るんだよ。
絶対に、来てくれるんだよ。
だって、よーく考えてみな?
大事な大事な自分の子供が、ちょっと見えなくなったからって、「あー、あの子どこかに行っちゃったわねえ。今ごろどこかの親切な人に拾われているかもね。そこで幸せに暮らせばいいわね。さあ、あきらめて帰ろうかしら。」なんてことに、なるわけないでしょう?
そんな、つかまえてきた虫とかでもあるまいし。
どんなことがあっても、探し出してくれるんだから。
だから心配しないで、動かないで待っているんだよ。”

このセリフは、私が自分の子供たちに、数えきれないほど繰り返して言ってきた言葉だ。

回遊魚のようなその子をとっつかまえるために、漁師のように待ちかまえていると、その子はお母さんと手をつないで、落ち着いた足どりで書架の間から現れた。
涙の跡も消えうせ、完全に平常心を取り戻している様子だ。
私も本を買って、家に帰った。

今日は長男「ササニシキ」の、21歳の誕生日である。

次男「アキタコマチ」は、小さいころ、一瞬でも目を離すと迷子になってしまう子供だった。
昼間見たあの目の細い子のように、焦って泣いている次男を、たびたび漁師のように掬い上げた。
「ササニシキ」は、あまり迷子にならなかった。
あの目の細い子くらいの年頃、「ササニシキ」は、一本道では私の手を振りほどいて、だだだっと走って先に行く。
私があとから歩いていくと、一本道の終わり、曲がり角のところで、かならず、ふり返った。
私があとからついてきていることを確認すると、安心して、曲がり角をやはり先に曲がった。
その、立ち止まってふり返るときの顔——おかーさんが、ちゃんと自分を見ていてくれるだろうという期待と、自分はもしかしたら先に行きすぎてしまったかもしれない、ふり返ったらおかーさんはいないのかもしれない……という、ほんのちょっぴり心配な気持ちとを混ぜたような表情は、一生忘れることができない。
私と目が合うと、照れたように笑って、また走り出す。
あれがあいつの性格なんだな。

子供というのは、みんなあんなふうに、あとから親がついてきてくれることを確認するものだ、と思っていた。
ところが次男「アキタコマチ」は、同じ一本道を、一度もふり返らずに曲がり角まで曲がって走りつづけてしまう子だった。
私はびっくりした。
そうか、同じ年頃の子供でも、ふり返る子と、ふり返らない子がいるのか!

子供と走りつづけて、私も大人になった。
21年間、親をやってきた私、おめでとう。
「ササニシキ」は友達と飲むと言って出かけてしまったが、あのバカ長男を21年育ててきたことを祝って、鯛を買った。
鯛は回遊魚じゃないけどね。


昨年同日の日記はこちら→20年の子育てで

by apakaba | 2012-11-08 23:03 | 子供 | Comments(4)
Commented by ogawa at 2012-11-08 23:21 x
小学生の頃からの「ササニシキ」君と「アキタコマチ」君を知っているから、今日のブログはちょっと感動しました。

私の娘も自分の人生一生懸命走っています。
それを支えるのも親の役目ですよね。

ササニシキ君誕生日おめでとうございます。
もう少しすれば、親から独立する(はず)・・・!
Commented by apakaba at 2012-11-08 23:36
ありがとうございます。
今はあまりネットで話題を提供していない「ササニシキ」ですが、私がサイトを立ち上げたころは大人たちのアイドルでした。
子供の成長は早いです。

お嬢様も同世代、長いような短いようなですな。
もう少しすれば、お互い、親から独立する(といいな)……!!!!!!!!
Commented by 花子 at 2012-11-08 23:45 x
お誕生日、おめでとう。

熱いものがこみあげてきたのは、あなたの文章に自分の過ぎし日の情景が重なったからでしょうか・・

本日、息子にあてたおめでとう!のメール。返信は「今まで育ててくれてありがとう」でした。ちょっと大人になってきたかな。
そして今日は飲みに出かけていますよ。

マキさん、おめでとう。母たちで乾杯!
Commented by apakaba at 2012-11-08 23:48
花子さん、おめでとうお互いに!
やーんいい息子に育ったねえ。いいなあ!

うちのはま〜だま〜だ、小学校中学年くらいの中身ですよ。
どっちが早く、嫁さんをもらうか競争だわー←負け戦と言う!


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