あぱかば・ブログ篇

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2012年 12月 13日

ゴーゴー・ボルネオ!〜ガラマ川クルーズ編 その3

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ボートが交通手段

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その2のつづき。
テングザルは、思っていたよりずっとたくさん見ることができた。
群れが高い木の上を飛んでいたり、枝に実った大きすぎる木の実のようにじっとしていたりするのを見かけた。
何度見ても、かわいい。
そしてうれしい。
生き延びるために厳しい環境をあえて選んだテングザル。
がんばって頭数を増やしていってほしい。

ボートクルーズはつづき、昔は多くの人が住んでいたという、ほぼ廃村のようなところも通った。
「あれはモスクです。もう使われていませんが」
と言われてみると、なんの変哲もない掘建て小屋のように見えても、たしかに玄関のあたりのデザインがイスラム風である。

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ジェイソンさんが岸辺の木の実をさしながら、
「これはポンポンの木といいます。」
と、かわいいことを言うので一同で和んでいると、
「別名“自殺の木”と呼ばれています。」
とおそろしいことを言い始める。
木の枝で首つりでもするのかと思ったらそうではなく、実に猛毒があるという。
ネズミ捕りの毒餌に使う、というところまではまだわかるとしても、
「インドのケララ州では、この10年間で537人がこのポンポンの木の毒で自殺しています。」
と、あっさり言われると、つやつやした実がとたんに不気味なものに見えてくる。

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トホホ、ピント外れ

白い花はあくまで可憐だ。
昔、ケララを旅したときは、豊かで教育レベルが高く、現地になじんだキリスト教会が味わい深い、のんびりした州だという好印象を持っていた。
それだけに、この実を使って自殺をする人が後を絶たないというのは、のどかなリバークルーズの途中ながらやるせない気持ちになった。
我が日本にも自殺者はたくさんいるが、そこらへんにある木の実の毒で死のうと思いつく人はきっときわめて少ないだろう。
所変わればというか。
ポンポンの木という呼び名はおそらくこの辺りでの通称だろうが、正式にはどう呼ばれているのかわからない。
ご存じの方がいらしたら教えてください。

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我々のボートよりずっと速いモーターボートが背後から近づいてきたと思うと、乗ってきたおじさんにジェイソンさんがお金を払ってチケットを渡してもらっている。
ここは自然保護区なので入場料を支払うのだが、川で徴収するとはのんびりしている。
ツアー代金に含まれているため、入場料がいくらなのかよくわからなかったが、数百円くらいだった気がする。
この森の保護保全や広報活動に役立ててほしい!

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逆光だがシルバー・リーフ・モンキー。テングザルやカニクイザルに較べてシャイな性格で、なかなか姿を見せない。生まれたばかりの子猿はオレンジ色の体毛、3〜5か月くらいからシルバーの毛並みに変わるという。カメラのおじさん撮影。

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同じく。ミズオオトカゲ。長くて立派な尻尾が目を引く。

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奥地まで行って、来た道(道というか川)をUターンしてもとの船着き場に戻ってくる。
全部で12キロくらいの距離である。
我々が戻ってくる途中、何回かほかの会社のボートとすれ違った。
私はこういうときはいつも「ハロー、ハロー」と手を振るので、向こうの乗客も無邪気に振り返してくれているが、内心では「あんなにお客を満載して、融通も効かないだろうなあ。ガイドさんに質問したり、撮影ポイントで停めてくれたり自由にできる、少人数ツアーの会社に申し込んでよかったなあ。」と、優越感にひたっている。

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これが我々の有能なガイドのジェイソンさんである。
ちょっと笑いすぎているが本当はもう少しハンサムである。
帰り道(道というか川)は徐々に雨が激しくなってきて、やや沈滞ムードになってきたが、ジェイソンさんは
「ここは雨ですけど、西の空が晴れていれば、夕焼けはちゃんと撮れますからね。」
と励まし、やがて木々がひらけると、言ったとおりに絶好の夕日ポイントだった。

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やった!
絶対に無理だと思っていたのに、夕日まで見ることができた。
でも興奮して身を乗り出すと、カメラが雨に濡れてしまうー。
ジェイソンさんは、「(カメラの設定は)“夕焼けモード”?」と言って茶化してくる。

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川面を中心に撮ってみると、大粒の雨が降っていることがよくわかる。
ああ、日が暮れていく。

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そして、もとの船着き場に上陸した。
だいたい1時間半くらい、この舟に乗っていただろうか。
まるで飽きることなく、あっという間だった。

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素朴ながらもなかなかしゃれている桟橋

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あー暮れていく……

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あー暮れていく……

桟橋にちょっと立っているうちに、いろんな生き物を抱える森は、みるみる真の闇になってしまった。
ここで夕食となる。
これもツアーの内容に組み込まれている。
ツアーに申し込むとき、私は、「せっかく屋台っぽい食事がおいしいマレーシアなのに、お仕着せの夕食はつまらないなあ。どうせバイキングの冷めた中華とかだろうし。」と思っていた。
とにかく束縛されるのが嫌いで、パッケージというものが大の苦手なのである。
だが先ほどのマレー式おやつが思いのほかおいしかったので、少しだけ期待する。

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運ばれてきた食事は、マレー料理で、感動的なおいしさだ!
このツアーに参加して本当によかった。
もう思い残すことはなにもない……!と満足しているところへ、ジェイソンさんは
「じゃあ、蛍を見に行ってみましょうか!」
と言ってくる。
こんなに雨がひどいのに、蛍なんか出ているの?
にわかには信じられず、とまどっていると、桟橋で真っ暗な森と雨の様子をいっとき見てきたジェイソンさんは
「まあ、大丈夫でしょう。行ってみましょう。」
とにこやかに誘う。
この大雨で蛍が見えるとはどうしても信じられないが、ここのことを知り尽くしているガイドが自信満々なのだから言うことを聞くか。

びしょびしょのボートに、再び乗り込んだ。
ついさっきと同じ川をもう一度進んでいるだけなのに、暗闇の中ではちがって見える。
というか見えない。
なんにも見えない。
ジェイソンさんは懐中電灯で川面のあちこちを照らしている。
照らしても蛍は見えないんじゃないの……と思っている矢先、突拍子もないことを言う。
「あっ。ワニがいますよ(!)(←なぜ「!」が括弧に入っているかというと、注目させるために力強く言っているが大声を出すと……以下略。テングザルと同じ)」
「えーっ!どこですか!どこですか!」
私は大騒ぎをして尋ねるが、「ほら、あそこあそこ」と言われても、ちっともわからない。
「あそこです。目が赤く光っているでしょ。」
大騒ぎしている私を落ち着かせようと、ジェイソンさんは何度もライトで指し示す。
やっと、赤い小さな光がわかった。

「あれがワニなの!?すごい、よくわかりますねえ!」
そのまま、遠くを通り過ぎていくのだとばかり思って言うと、
「そうです。ちょっと近づいてみましょう。」
「うええー!ちょっと!待ってよ!だってワニでしょ!大丈夫なんですか!」
「大丈夫ですよ、もうちょっと、もうちょっと近づいてみますね。」
「い、いいですから!ワニなんてそんなに近づいちゃあまずいでしょ!ちょっと!ジェイソンさん!やめてよ!」
すっかりパニックである。
だって暗闇の川にワニの目が光るなんて、怖くないほうがおかしいでしょう!
ボートなんか簡単にひっくり返されたりしたら、どうするの。

船頭さんに言いつけて赤い点にどんどん近づきながら、
「ワニは縦に細い瞳をしていますね。目に光を当てると、網膜を通して、その奥にある輝板に反射するのですが、ワニの目は光を吸収せず反射しやすいため、赤く光るのです。だから夜にワニを探すときはライトを使うのです。」
と説明する。
カメラのおじさんも、
「ああそうですね。ちょうどカメラと同じ原理ですよね。」
などと、いかにもこの人が言いそうなことを言っているが……ジェイソンさんの日本語能力の高さに驚きつつも、私は怖くて緊張していた。

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出ました!ワニです!!!!!!!!!!!!
……ち、小さい……頭から尻尾まで30センチくらい?赤ちゃんじゃないかー。
「イリエワニです。これはまだ生後一か月くらいです。大きくなると6メートルになるものもいます。」
怖がって損したなあ。
この川には、赤ちゃんのワニしか棲まないという。
これくらいのころには小さな虫などを食べて、もっと大きくなってくると、大きな餌を求めて別の川へ移動する。
だから暗闇の中でワニの目を見つけても、ちっとも怖いことはないのだった。

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カメラのおじさん撮影。さすが、全体がよくわかります

「逃げないんですね。子猿みたいに、好奇心に勝てないんですかね?」
「いや、これは好奇心というより、そういう気持ちが出てくるよりももっと小さいので、ちょっとどうしていいかわからなくてぼんやりしているだけですね。」
ジェイソンさんの答えにすっかり和む。
私は感激しやすいたちで、こんなけなげな生き物を間近で見ると、もうかわいくてたまらず、またもや泣きそうになってしまう。
「ワニの子供はだいたいは、鳥などに食べられてしまいますね。」
みんな成長してしまったら川はワニだらけになってしまうが、やっぱり赤ちゃんはどんな動物でも憐憫の情をもよおすものだ。
ライトに照らされてしばらくぼんやりしていた赤ちゃんワニは、のそのそと茂みに隠れていった。
ぼんやりしないで生き延びて、立派な6メートルのワニに育ってほしい。
そしてそんな巨大ワニが悠々と暮らせる自然が残っているといいなあ。

見られるわけがないと思っていた蛍も、ちゃんと見ることができた。
日本の蛍とちがう種類で、点滅が非常に速く、1秒間に3回明滅するという。
光も、日本の蛍のように緑がかった色ではなく、ひたすら白い。
LEDの電飾みたいである。
オスが光ると、メスがそれに応えて光るので、蛍がびっしりついている木はオスとメスが呼応してまさしく電飾っぽい(ジェイソンさん曰く「婚活パーティー」……なんでもよく知っているのね……)。
このツアーの謳い文句で、しばしば「クリスマスツリーのよう」と表現されている意味がやっとわかった。
ジェイソンさんは一匹つかまえて私の手の中に入れてくれた(きっと女性客へのサービスだろう)。
体長は5ミリと大変小さい。
手の中でピカピカ光っているのはかわいらしい。
日本の蛍は幽玄を感じさせるが、ここの蛍には、風情よりも、光り輝く生命をダイレクトに感じた。

ガラマ村へ至るまでの道筋で見たサバ州のさまざまな風景、ガラマ川で生きるたくさんの生き物、大雨の中の夕日とおいしかった食事、そして名ガイド、なにもかもがパーフェクトであった。
ふだんは一人で勝手に歩きまわるだけの旅行をしているが、たまにはネイチャーツアーも楽しいものであった。
キナバル公園編 その1・ナバル村につづく)

by apakaba | 2012-12-13 15:16 | ボルネオ | Comments(0)


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