2013年 03月 17日
キナバル公園編 その2・公園散策のつづき。 ポーリン温泉に向かうため、車に戻ると、ドライバーのケンさんは道沿いに広がる空き地を示しながら「ここは日本の資本で、豪華なリゾートホテルが建つらしいですよ」などと教えてくれる。 「ホテルが建てば、日本からのお客さんも増えるし、私の仕事も増えるとは思いますけど……せっかく自然がいっぱいのところなのに、それがここの良さなのに、これ以上ホテルとかはいらないのになあ……このままでいいのになあ……と、私は思うんですよねえ。」 本音なのかどうかわからないが、若いケンさんはそう話していた。 雇用を生むのは現地にとっていいことだとは思うが、環境破壊を心配するのもわかる。 きっとケンさんは、そこまでガツガツ仕事を求めなくても十分に収入があるのだろう。 ポーリン温泉には、続々と人が訪れていた。 とてもよく整備されている公園である。 橋のデザインが、よく見ると「竹」である。 ポーリンとは「竹」という意味だそうだ。 この温泉を掘り当てたのは、第二次世界大戦中の日本軍だという。 温泉好きの日本人は、戦争中もやることはやるのだね。 といっても、現在はちびっこが服のまま浮き輪でバタ足をするようなレジャースポットとなっている。 もとから温泉に浸かる気のない私は、ちびっこの歓声と水しぶきを横目にとっとと通り過ぎ、目当てのキャノピー・ウォークの料金所へ。 ここまで登って、すでにバテバテの外国人たち。 だが山に入ると、たちまち温泉場の喧噪からは遠ざかり、大気が濃く感じられる。 キャノピー・ウォークとは、森の林冠(木のてっぺん部分)の高さに吊り橋をかけ、森林を下からではなく上から見るというものである。 吊り橋は細くてグラグラする上、ここのキャノピー・ウォークはマレーシアでも最高レベルの高さにあるため、高所恐怖症の人にはつらいだろう。 ここに来るまでにも、さんざん山は見てきているし、高所から見たからといって、とんでもないスペクタクルな眺望になるというわけではないのだが、やはり森の中の、オランウータンの目の位置から見ていると思うと感激である。 今、聞こえるのは風の音だけだけれど、ほんとはこの緑の中に数えきれない虫や鳥や獣がいるんだなあ。 小さい子供にとって、キャノピー・ウォークは、フィールドアスレチックのように、揺れる吊り橋を渡るだけの体験かもしれない。 これは想像力が育ってから体験するほうがいいように思う。 きのう見たテングザルや、ボルネオの森のどこかにいるオランウータンや、美しい南国の鳥、自分がそういう生き物になったとしたら、こんなふうに風景は見えているんだ……と想像すると、なんともうっとりするし、次に動物園などでそれらの動物を見たときに、彼らの目にはあの高さの風景が映っていたのか、と感慨深くなるだろう。 子供は喜んで渡っていたが、キャノピー・ウォークは大人のためのプレイスポットだと思った。 キャノピー・ウォークを終え、再び温泉のほうへ戻りながら、ガイドのベンさんはまたも「この実は食べることができます。」「この木の枝を切ると水が出てきて、それは飲めます。」「この葉を干して繊維を取ります。」などといろいろ説明をしてくれる。 「もし、森についての知識を持っていれば、森の中だけで生きていけるのね。」 と私が言うと、 「そうですよ。森にはなんでもそろっています。なにも知らなければ死んでしまうけれど、ちゃんと森のことをわかっていればいくらでも生きていられますよ!」 と言う。 「すごいね、おまけに温泉もあるしね!」 とはいっても、このありさまではねえ…… 「温泉、入りたいですか?時間はまだ取れますよ。」 私の心を見透かしたようにベンさんが聞く。 「いや〜いいですよ温泉は。」 「ふふ。日本人は、たいてい、この様子を見ると『いや〜いいですいいです』と遠慮しますね。めったに『入る』とは言いませんよ。」 と意地悪を言う。 (その4・ラフレシア(最終回)につづく)
by apakaba
| 2013-03-17 15:52
| ボルネオ
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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