2013年 05月 11日
8.高雄観光〜澄清湖海洋奇珍園と衛武営都会公園のつづき。(初回は台湾2013からどうぞ) 高雄の観光スポットである「龍と虎の公園」は、ほんとは「蓮池潭(れんちたん/リエンツータン)」という湖にあるのだった。 龍と虎がそれぞれ口を開けている派手な作り物があり、龍の口から入って虎の口から出てくると善人になれるとされているのが、写真で何度も見ていた「龍虎塔」だ。 今までちっとも行きたいと思っていなかった。 写真では、作り物がただけばけばしいだけで安っぽく見えた。 ところが、いきなり気が向いて行ってみたら、これが驚きのすばらしさだったのである! ミニバスを降りて、まず虎の塔の側から回り込んでいくと、龍のほうは遊園地じみているが、見えてきた虎の作り物がゾクゾクするほどカッコいい。 大型ネコ科の躍動感あふれるしなやかなボディーの曲線、獰猛そうな横顔、今にも闇夜に飛び出し疾駆してゆきそうではないか。 「なんてカッコいいんだ……!」 まさかここで、息が荒くなるほど興奮するとは思ってもいなかった。 しかし、観光客の人々はふたつの塔をバックに記念撮影をすると近づきもせずにすぐに帰ってしまう。 ガイドブックでは閉館は18時(冬期)となっているが、土産物屋が閉まるだけで、塔に近づくことには、別に支障ないのではないか? 不思議に思ってどんどん近づいていくと、龍虎の作り物が改修工事中(たぶん)なのであった。 “立ち入り禁止”と行く手を阻まれていたら、つねに無視して乗り越えていくことにしている。 “立ち入り禁止”を越えて橋を歩いて龍虎塔まで行っている観光客は私しかいなかった。 この龍虎塔のようなモノを、「ポップでキッチュでチープ」とにやにやしながら片付ける人がよくいるが、もったいないことだと思う(だいたい、こういうそれこそ“チープな”表現が嫌いだ)。 もしも昼間に来ていたら、「だめだこりゃ。安っぽくて、ありがたくも芸術的でもない」と思ったことだろう。 だが夜の力、ライトアップの力はすごい。 ツルツル・ごてごての作り物に、命が吹き込まれ、ほんものの虎の躍動や恐ろしさまで宿らせる。 思えば、台南の「ブループリント(3参照)」も「神農街(4参照)」も、夜に訪れたからこその感動と興奮だったのかもしれない。 今まで旅した先で見たいくつかのライトアップを思い出し(マカオのライトアップへ)、訪れる時間帯は大事だなあと感慨深くなる。 龍虎塔の虎のカッコよさに度肝を抜かれ、龍虎塔だけで帰ろうとしていた予定を変更して湖の周りをふらふらと歩いていく。 湖岸の遊歩道は非常に暗い。 それだけに、湖面に映るライトの輝きや、龍虎塔のような建造物のライトアップがよく目立つ。 龍虎塔から700メートルほど歩くと春秋閣というスポットに着く。 ここも、昼間ならやや馬鹿馬鹿しそうな装飾だが夜に来ると大迫力ですばらしかった。 春秋閣で「さあ今度こそ帰ろう」としていると、湖のさらに向こうに、ライトアップされた巨大なナニモノかが浮かび上がっていることに気づく。 高雄を観光するつもりがなかったから、あれがなんなのか知るはずもないのだが、疲れ果てた身にはなんだかもうこの世ならぬ世界を見ているような心地である。 闇に浮かび上がっている像の常軌を逸した巨大さに、真っ暗な遊歩道からしばし見とれる。 そして、湖に照り映えるライトアップの光景を写したくて何十カットも撮影するも、ぜんぜんはっきり撮れず泣きたくなった。 こんな異常な大きさのモノを見せられたら、やっぱり近づいてみなければ気が済まなくなり、歩きすぎて足が痛いけれどのろのろと真っ暗な遊歩道を歩いていった。 遠くからだと、どことなくバリでよく見かけるガルーダのように見えたが、近づくにつれ道教の神様のようだとわかってきた。 あとで調べたところ、高さ21メートルある「北極亭玄天上帝神像」というものであった。 湖の彼方から見えていたときの神秘的なイメージは、近づいたら消え失せた。 しかし、写真はボケボケのものしか撮れなかったけれど、湖に映った虹のような灯りとガルーダのような神像の天を衝く姿は、龍虎塔のうずくまる虎のフォルムとともに忘れられない蓮池潭の思い出となったのだった。 もうへとへとだったが、タクシーとMRTを使って高雄駅まで戻り、あとひとつだけ欲張って見ることにした。 旧高雄駅の駅舎を歴史的建築物として保存している「高雄願景館(たかおがんけいかん/ガオシォンユィエンジィングアン)」というところである。 外観は日本統治時代そのまま、内部は近未来的に改装されているという解説に興味を持った。 まるでオルセーみたいじゃないか。 オルセー美術館の建築が好きで、3回行ったフランス旅行で3回ともオルセーに入ったほどである。 同じコンセプトだから“東洋のオルセー”なんちゃって。期待できる! 閉館は20時、滑り込みでどうにか行ける! ところがー! 旧高雄駅舎は、改修工事中で(またなのか)、入場はおろか近寄ることさえ不可能であった。 龍虎塔では立ち入り禁止も踏み越えていったが、ここはがっちりとフェンスに囲まれて、さらに鉄骨が山積みになっており、とても無理だ。 とたんに疲れがどっと押し寄せて、もうなにもしたくなくなった。 午前中、三地門でトイレをさがして半べそになっていたのが三日くらい前のことのように思える(6参照)。 旅立つ前は、いっぱしに「あれを食べてみよう」「これも試してみたい」と、ご当地グルメにひととおり思いを馳せているのだが、いざ旅に出ると、ついつい歩くことに邁進してしまって、食は後回しになる。 「鞄に水さえ入っていれば、食べるのなんかどうでもいい」という具合になってしまう。 一人旅ではいつでもそうだ。 限界まで歩いて、食事にエネルギーをかける気力も体力も失せ、結局は似たようなもので済ませる。 せっかくの旅行なのに、これは大きな損だなあと自分でも思う。 だからたまに家族や友達と一緒に旅行をすると、一人のときより見たいものは半分も見られないが、食べることは充実するのがうれしい。 どっちも好きだ。 今回は、台湾グルメはもうあきらめている。 限界まで歩いて、台湾ビール飲んで寝ちゃう。 (10.台湾の真ん中の街・埔里へにつづく)
by apakaba
| 2013-05-11 18:09
| 台湾2013
|
Comments(0)
|
アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
ご案内
直島の旅行情報 blog links (エキサイトブログ以外) 彼の地への道すがら 三毛猫日記 ムスリムの女たちのインド 王様の耳そうじ 細道 紀行地図へと続く道。 「いい子」をやめたら人生がきらめく! greenmanbaliの日記 すきなものだけでいいです Avance(アヴァンセ)でいこうっ ライオンシティからリバーシティへ カテゴリ
全体 映画・ドラマ 歌舞伎・音楽・美術など 生活の話題 子供 国内旅行 旅行の話 ニュース・評論 文芸・文学・言語 健康・病気 食べたり飲んだり ファッション ベトナム2023.3 ソウル2022.11 思い出話 サイト・ブログについて 1990年の春休み 1990年の春休み.remix ver. 香港・マカオ2006 シンガポール2010 直島旅行2010 バリ&シンガポール2011.1 香港マカオ2011 香港2011夏 バリ&シンガポール2011.11 台北2012 家族旅行香港マカオ2012 ボルネオ 台湾2013 ヨルダン・シリア1998 イスラエル1999 エッセイ フランス インド2000 香港2013 スコットランド 大腸がん闘病 ソウル2023.1~3 シンガポール2023 台北旅行2023 未分類 最新のコメント
ライフログ
お気に入りブログ
Tatsuo Kotaki 草仏教ブログ ガタム ( ghatam ) 子供部屋 紅茶国C村の日々 梟通信~ホンの戯言 みんなのヒンディー語教室 勝手に僻地散歩 Atelier Kotaro SALTY SPEEDY シニアバイクマンⅡ FC2ブログに移転しました 旅行・映画ライター前原利... 塩と胡椒 いいあんべぇブログ 折原恵のニューヨーク写真... ブログパーツ
以前の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||