2014年 01月 30日

ジェイミー・カラム来日公演 Bunkamuraオーチャードホール(1月29日)

よりによってオーチャードホールを“ライヴハウス”に選ぶとは。
昔、オペラのガラコンサートに来たことがある。
このホールは、ふだんはバレエやクラシックのコンサートがおこなわれる、お行儀のよい会場なのである。
そんなわけでもちろん音響は最高。
2010年のJCBホールもよかったが、今回はさらに音質のよさにしびれた。

ほぼ4年ぶり、おかえりー!
ジェイミー・カラム!
先行予約で1階の前から9列目というすばらしい席だったから、ジェイミーの表情まではっきりと見えて、前回よりグッと親しみが湧いた。
「こんばんは、ジャスティン・ビーバーです。」
とふざけると、皆「ジャスティーン!」「ジャスティーン!」とかけ声。
「いや、あのー。ボクの名前、わかってるよね……!?」

客層のバラエティーもすごかった。
20代から40代くらいが中心層とはいえ、かなりのおじいちゃんおばあちゃんも意外と来ている!
ノリノリで喜んでいる!
赤ん坊を抱えた夫婦が、前から3列目くらいで、哺乳瓶をくわえさせて聴いている!
いいなあこういうの。
後半は恒例の、客席に降りて女性客の手をガシッと握って見つめて熱唱したり練り歩いたり(私もタッチできた)、あげくに「前に来てもっとそばに寄れー!」と警備員泣かせの号令。
オーケストラピットに張ってある床板?跳び箱の踏み切り板のように上下に揺れる板張りの床が、みんなのジャンプでトランポリンのように激しく揺れ、踏み抜きそうだった。
震動にたまらず後方へ逃げて行く人もいるのでどんどん前に詰めることができ、最後は最前列ちかくまで寄れた。
無茶な号令をありがとう!
次回の来日でもこのホールを使えますように。

なぜ、この人は若いのに、こんなに“生きること”をわかっているんだろう?
愛すること。
苦しむこと。
受容すること。
楽しむこと。
生きることで知り、置いてくる、また見つけ出す、すべての感情を、音にして目の前にひろげてみせてくれる。
一曲の終わりには、「生きることはいいな。生きていこう。」と笑うことができる。
なぜ彼は、そんな高みにまで行ってしまっているのだろう。

自在に繰り出すピアノのソロで、美しい和音が響く間もなく、ちょっと据わりの悪い音、不安にさせる音を出し、それが耳に届くやいなや、またとろける調和に満ちた音を生むという、一瞬も気をそらすことができない演奏を繰り出す。
人生のすべてを一片の音楽で表してしまう。

前作『The Persuit』が出たとき、レビューにこう書いた。

今の彼は、甘いとかハスキーといったひとことで言い表せる声ではなく、キラキラとギラギラと乱反射するなにかの金属のような——その金属片で、細い爪のように、背中や腕の内側をつーっと引っかかれるような——歌声になっているのである。
痛みと快感を伴ってくるような声なのだ。


新作『Momentum』ではその“痛み”はやや鳴りを潜め、“快感”が増幅するような曲が多い。
前よりさらに「人生は上々だ」というムードがはっきり出ている。
私生活の充実が反映されているのだろうか。

だがカバーでのセクシーなアレンジは健在。
たとえば、彼がリアーナの『Don't stop the music』を唄うとき。
リアーナの声では「あの人と踊るこのひとときのための音楽を止めないで」と言っていると聞こえるが、ジェイミーが「Please don't stop the music」とくりかえし唄うと、「音楽を止めないで!どうか、“音楽”を……」と、musicの意味合いが違って聞こえる。
本当に“音楽そのもの”へ切実に手を伸ばしているさまが見えてくるのだ。

リアーナの原曲(忘れた方・知らない方は是非とも聴き較べてほしい)が、ダンサブルでいかにも“今”っぽい気分をいっぱいに表しているのに対し、ジェイミー・カラムのアレンジは“今”の気分だけでなく、かつて過去に置いてきた、さまざまなめくるめく思い出のシーンを思い起こさせるような、人の感情の細かいひだの間を自由自在に行き来するような音を以て、原曲にオマージュを捧げながらも野心的に彼からの回答を出す。
彼が「 I wanna take you away 」と唄うと男の歌になる。
あの声で「 I 」を発音するとき、荒っぽく肩を抱かれてどこかへ連れ去られていくような感覚になる。


以前レビューにこう書いたが、彼自身がとてもセクシーな人なので(外見は子供っぽいが)、彼が永遠に焦がれ続ける“音楽”に向かって手を伸ばすとき、その声はもっともセクシーに響いて人の心をとらえてしまうのだろう。

次はいつ来てくれるの。
そのとき、彼はどう変わっているだろう。
近年、来日してくるミュージシャンは年齢層が高いけれど、彼のような、この先まだずっと長く楽しめるミュージシャンのファンでいられることは、とても幸せだ。


今まで書いた記事
やっと、CATCHING TALES

アダルトになったJAMIE CULLUM『The Persuit』への賛辞

人生の節目、ジェイミー・カラムの歌声は流れる

by apakaba | 2014-01-30 23:28 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(6)
Commented by sweetwood at 2014-01-31 00:09 x
TOYOTAのCM曲歌ってる素敵なハスキーボイスの人か!
と自分のなかでつながってちょっと興奮しました。
調べてたくせにちゃんと名前を覚えてなかったようで・・来日されてるんですね。そしてライブとても楽しそう!
「Don't stop the music」はYoutubeにあったので聞いていますが、しびれますね。
Commented by apakaba at 2014-01-31 00:13
アルファードのCMを知らなくて、今初めて見てみました。
ナルホド。
なんかアルファードが「いい車」に見えるー!
すばらしいパフォーマンスで、どんだけ鍛えてるんだ!って思いました。
Commented by Akiko at 2014-01-31 12:34 x
客層が老若男女でしたよね、私もジェレミー愛されてるな~と思いました。
昨日は前に来てや客席降りはなく、開演前に「ステージに近寄らないように」とアナウンスが流れていました。オーチャードホールは行儀にうるさいから、そちら方面からNGが出たと想像。マキさんちゃっかり載せているけれど開演前でも撮影禁止ですよー(笑)クラシックファンの間には不評の音響ですが、そこはさすがにというところで、マイクなしの生声で歌ってくれた時、上の席でも聞こえたのでは。
とにかくも、パワフルでセクシーでvividでjazzyでさいこうでしたね!
Commented by apakaba at 2014-01-31 16:09
げええ。
写真は削除しよう!
レスは帰宅後にまた〜〜!
Commented by Akiko at 2014-01-31 17:10 x
わぁ写真すみませんでした!実は学生時代オーチャードで案内係のバイトをしたのですが、東急デパート仕込みでマナーにうるさいところでした。でも客席内写真禁止のホールは多いですね、歌舞伎がOKで意外でした。
んー今日は脳裏にジェイミーが焼き付いて離れません。
あっジェレミーじゃなくジェイミー・・・(前の自分のポスト


Commented by apakaba at 2014-01-31 22:43
いえ、あそこが開演前の写真撮影もダメとは思わなかったです。
今までU2もブライアン・アダムスも撮ったけど開演前の様子なら大丈夫だったし。
一緒に行った次男が(長男次男を連れて行くハメに)、「メンバーのソロのとき、ジェイミー・カラムが舞台の袖でスタッフに怒られてた。でも“わかったわかった”みたいなポーズでそのまま前方に集めちゃうのをやめなかったから、袖のスタッフが頭抱えてた」って。
もう出入り禁止ですね。
オーチャードホールは、クラシックではダメでも、他は体育館とかでやるからググッとマシです。

あんなに動き回って、息が上がらずピタリと音を出せるのだから、常人の鍛え方じゃありませんねえ。
若いってすばらしい。
やっぱ若い人がいいな。
ジジイミュージシャンには興味ないわ。


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