2014年 04月 15日
4月も中旬になって、やっと新年度の生活にも慣れてきた。 なんの理由もないけど、私がここ何年かの間に取り組んできた就活のことをまとめて書くことにした。 高校生のころ、「高校の国語の先生になりたい」と考えていた。 大学生になると、教員の夢はだんだん小さくなり、代わりに「文章を書きたい。新聞記者になっていろんなところへ行きたい」という気持ちが強くなっていった。 バイトは家庭教師、塾講師などをやっていた。 教職課程だけは修了したけれど、就活ではマスコミだけを受けて惨敗した。 当時、私は学校をさぼってバイトと旅に明け暮れていたので、成績は最低で、すでにエリート化著しくなっていたマスコミ業界には相手にされなかったのだった。 結局どこも通らず、商社に入って失意の日々を送った。 失意の日々でも着々と結婚の準備だけはすすめていき、1年も働かなかった会社を寿退社して、専業主婦になった。 結婚して10年くらいは出産と育児ばかりしていた。 それからまた働くことにして、自宅を開放して小学生に勉強を教える塾を始めた。 これも10年ちかく続けた。 それとは別に、友達の子供の家庭教師もやっていた。 よく思い出すと長男出産後に、通信添削教材のバイトもしていた。 なんだかんだと、私の仕事は教育関係が中心だった。 そのうち、塾を閉めて、外で働きたくなった。 夫に勧められて、私立高校の非常勤講師になろうと思い、2012年はその就活に邁進していた。 募集を調べて、履歴書を山のように書いて送った。 平行して、学力試験に備えて勉強もしていた。 やってみると、これがブランクのわりにけっこうすらすら解けるので、自信を持った。 国立大学受験用の問題集を何冊も解いたが、国語だけなら十分合格できるのね。私。 ところが、自信を持ったのはつかの間。 すべての学校に落ちてしまった。 履歴書でほとんどはねられてしまうから、面接にも筆記にもたどりつけない。 私が教員として未経験であることと、年齢がおばさんすぎることが原因だろう。 それ以外に考えられない。 履歴書を提出すると同時に筆記・作文・面接も受けられたのは2校くらいだった。 そこも落ちた。 学力ではきちんと書けていたのにだめだった。 猛烈に落ち込んだ。 自分はこんなに人から認めてもらえない人間だったのか。 自分のことも、周りの人間のことも、恨めしく思えた。 私の人生ってなんなんだろう? 女って結局、仕事をやめて家に入ったらおしまい。 子供生んで育てたら終わり。 大学なんか行ったって、なんの意味もなかった。 あの、学校の先生たちってなんなんだろう? 私のほうが頭いいぞ勉強もできるぞ。 あんな変な人たちと働くなんてこっちから願い下げだよ。 でもうらやましい。 仕事があるだけで、給料をもらっているだけでうらやましいなあ。 しばらくふてくされて、心の中はこんな恨み言がいっぱいだったが、頭を切り替えて別の仕事を探すことにした。 ある幼稚園のアルバイトを始めた。 ところがそこは、とんだブラック企業だった。 時給の仕事なのに毎日のサービス残業は当たり前。 しかも園バスの運転をしろと言う。 手当もなく、事故のときなどの保障の説明もなにもないまま、おそろしくて園バスなんか運転できるか! すぐにやめた。 そのあと、いよいよ保育園で働き始め、現在に至る。 保育園はうちから徒歩2分。 先生たちもパートさん仲間もやさしい。 なにより、区立保育園なので、システムがしっかりしているところがいい。 唯一いやだったのは、勤務が週6日だったことだ。 夕方の短時間とはいえ、そのために一日が拘束される。 加えて、他人からしたら取るに足らないことだが、メイクや服装も拘束される。 たとえば、うっかりブルーやパープルのアイシャドーをしていると、小さい子からは 「せんせい、どうしたの、ここ(目の上)、へんだよ、いたいの?」 と心配されてしまうし、大きい子からは 「あっ!悪者だ、魔女だ!」 と騒がれる。 はなはだめんどくさい。 ところが、4月からなんと、昼間のパートにうつることができた! 週3日、10時から4時の5時間(拘束6時間)という、らくらくな勤務! お弁当を持って行っている。 この時間帯にうつれて、とにかく最高! 保育園で働きながら、もうひとつ就活していた。 それは、区内の不登校児が通う「適応指導教室」というところの先生になることだった。 不登校だと学校の勉強が遅れていくので、その遅れを取り戻すための教室である。 しかしこれはなんだか不透明な募集で、要領を得ないまま締め切られてしまった。 きっと、本当は募集なんかしていないのだろう。 表向きには募集をかけるが、引退した教員などの受け皿になっていて、実際は内輪でなり手を決めているのではないか。 ともあれ、その仕事の芽はなくなった。 今、保育園のパートとともに、リクルートの海外旅行サイトエイビーロードというサイト内で、旅コラムを書く仕事をしている。 たびナレ〜旅に行きたくなる!海外旅行に役立つナレッジ情報というコーナーだ。 こちらは原稿料としてはそんなに儲かる仕事でもないのだが、保育園だけだと金銭的に心細いのと、ちがう仕事もしたいという欲求があるのでちょうどいい。 文章を書くのは好きだし、旅行のことは今までもさんざん書いているので、書きやすい。 「仕事ってなんだろう」「私はもう社会的に価値がないのだろうか」……ずっとそんなことを考えてきた。 私と同じ大学を出た友達が、高給取りになって第一線で働いているのに、私は…… 子供を生んで家庭に入らなければ、こんなことには…… 今も、そう思わないわけではない。 でも、私はなんといっても、「体が弱い」! 虚弱な人間は、なにをやってもだめだ。 私は教員になっていたら、もしかしたらすごく有能だったかもしれない。 マスコミに入っていたら、すごく稼げたかもしれない。 でも、きっとだめだ。 体が追いつかなくて、倒れて終わりだ。 金銭の問題は大きいが、それと同じくらい、自分が「取り替えの利かない存在だろうか」ということは考えていた。 保育園の仕事は、私でなくても、誰でもできる仕事だ。 下働きだけでなく、もう少し専門的な仕事がしたい、という気持ちもないわけではない。 だが現実的には不可能。 だったら保育補助は社会貢献と割り切ってもいいか。 非常勤講師の就活では、正直いってプライドがズタズタになった。 しかし、それから1年たって、最終面接で私を落とした高校から電話が来て、今年度働かないかと申し出があったのだった。 それでちょっとだけプライドは担保された。 迷ったけど断ったが。 ちょうど、その電話が来たときが、ボランティアで所属している影絵劇団の練習最中だった。 影絵をいくらやってもお金にはならないが、だんだん活動を大きくしていくつもりである。 私の声が好きだと言ってくれる人はたくさんいる。 劇団代表が、 「ミタニさんの声は替えが利かない。ミタニさんが練習に来ないとき、他の人が代役をやるんだけど、たしかに代役でもみんな上手なんだけど、でもちがうの。代役だと、誰でもいいの。でもミタニさんが来てセリフを言うと、“この役は、もう絶対にこの人にしかできない”と思うのよ。どこがちがうのか、わからないんだけど。」 と言ってくれた。 人間が、自分を大事に思えるときは、こういうときだと思う。 私は、就活中、ずっと自分を大事だと思えなかった。 それは、仕事で実現するものなのかもしれないし、私のように最底辺の仕事をしている人間でも、別の場所で自分を替えの利かない存在だと感じられることは、生きる力になる。 今年度は、去年、おととしよりも、いい年になると思える。
by apakaba
| 2014-04-15 14:16
| 生活の話題
|
Comments(7)
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タカモト
at 2014-04-15 15:07
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1回読んだだけなので何とも言えぬけど。(ペコリ)
必ず ( いや、多分 ) 必要とされるろ思うわ、人間って。 それがお金になるかならないかは別だけど。( 笑 ) 今回は高校には縁がなく影絵劇団には縁があった ( 前からだけど ) と言うことか。 そのうちきっといい出会いがあるぞ! ほんのちょびっとでもいい年になるといいですね♩
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apakaba at 2014-04-15 16:21
こんな長文、1回でも読んでくれただけで十分ですよ!(ペコリ)
こういう話をすると、絶対「あなたには子供がいるじゃない。子供が最高の宝よ。自己実現よ」と反応される。 でも、それってちょっとちがうんだなあ。 だって子供って、「私」じゃないもん。 私は私一人だけのものだもん。 自分の子供はもちろん大事だけど、しょせん「別」の人間。 あんまり子供と一緒にされると、「あのー、私はどこに」と思ってしまうわ。
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ぴよ
at 2014-04-15 17:26
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さて、子供も産んでいない、仕事もしていない、ボランティア活動もしない
完全専業主婦のこのアタクシに生きる価値はあるのか否か! 昔リアル友達に叩かれましたね。 「アンタは完全に社会のお荷物だ」って。 「子供もロクに産まずに遊び歩いてる専業主婦なんてうちの息子達の将来足かせになるんだからさっさと死んでほしい」ってさ。^^; あんまりムカついたので「お前とお前の旦那が馬車馬みたいに働いて納めてるスズメの涙程の税金よりも うちの旦那が一人で稼いで納めてる税金の方がうんと額が多いだろ」と本当の事を言ってしまいましたw ははははは!本当に私は正真正銘の石潰しだなぁ! んーでも私、バカだからあんまり「自分の存在意義」とか考えないのだ。 好きな事やって時々旅行行ったりお友達と遊んだりして、全然退屈してないし。毎日楽しいし♪ 真面目な人程色々考えちゃうんだろーなーって思う。 眞紀さんは元々皆から必要とされてたじゃん。リアルでもネットの世界でもアナタはずーっと人気者よ!^^
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apakaba at 2014-04-15 17:53
人気なんかどうだっていいのよ。
人気じゃカネにならないし。 私が唯一喉から手が出るほどほしいのは、お金なの。 しかし女なら子供生まないと死ぬしかないのか? 最低の考えだわね。 私の理想は、「どんな人でもなんとなく生きられる社会」だよ。
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apakaba at 2014-04-15 19:12
ていうかそれって「友達」ではないよ……
「知り合い」だよ……
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Akiko
at 2014-04-16 13:05
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男性はもれなく仕事するのが前提なので議論にならないけれど、女性は選択肢が多いから、自分も悩むし、違う立場の女性を理解するのも難しいんですね。
私は未婚勤め人で職選びにも苦労してきました。どの会社にも本当に「替えがない」人はいないと思います。そうはいっても仕事はお金や税金だけの問題ではなく、生活に結びついています。 それにしても年齢と・女性は不利ですね。やはり仕事が半年以上決まらなくて悩んでいる友人がいますが、マキさんみたいにどこかに居場所を見つけらるといいなあ。
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apakaba at 2014-04-17 16:32
女が女の敵になってはいけない、っていつも思っているけど、現実はいろんな場面で「対岸の彼女」になっているのが女同士。
学生のころまでは似たり寄ったりだったのに、だんだんと立場が離れてしまうのはさびしいです。 私は男をどこかで敵視しているのかも。 自分の子供を、「生まなければよかった」とは思ってないけど、子供がいなければ男と肩を並べてどこかで能力を発揮できたかもしれないのに……という忸怩たる思いはけっこうあります。 「おばさんは無能、男の方が有能」と頭から信じている男ドモへの怨念はけっこう深いかな。 |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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