あぱかば・ブログ篇

apakaba.exblog.jp
ブログトップ
2014年 10月 26日

名古屋市美術館探訪記

名古屋の友人に会いに行き、ついでに名古屋市美術館を歩いてみた。

c0042704_8275673.jpg
まず腹ごしらえに白えびの天丼。白えびは東京ではめったに食べません

名古屋市美術館は、名古屋出身の建築家である故・黒川紀章氏が自ら「私の代表作だ」と言って殊に愛していたという。

c0042704_15454481.jpg


このスケールの建築物には、作り手も愛着を抱きやすいのではないだろうか。
晩年の作品である「国立新美術館」の、鈍重でお金のにおいしかしない建築物に較べ、1階部分を地下に埋め込んだ低層建築という野心あふれる構造が好ましい。
今になって見ると部材の古くささは否めないが、黒川氏のアイデアが横溢している。

c0042704_1832510.jpg
国立新美術館ほどには馬鹿げたうねり方をしていない

さてここで開催されていたのは、東京から巡回でまわってきた「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより」である。
タイトルといい、各作品の解説文といい、なんとも軽々しい。
世界の一流の現代アート作品が集まっているのに、この軽々しさが“アートの敷居の高さを低くする”と考えているのだとしたら、逆効果だと思った。

コレクションはすべてがすばらしいというわけではないが(現代アートはそういうもんです)、多くが感動的もしくは興味深いものだった。
とくに印象に残ったものはメモを取ったので、その分だけ記しておく。

・アンディ・ウォーホル「ジャッキー・フリーズ」 
有名人の顔を反復させるウォーホルの手法は、対象への愛とリスペクトがいつもある。それは無数に撮った「自画像」の自己愛と自己憐憫とは別のもの。素直さに心を打たれる。

・ゲルハルト・リヒター「毛沢東」
絵に目を近づけるとかえって逃げていく感覚。毛沢東という人物をまちがいなく描いているのに、近づこうとするほど実体が見えにくくなる。抜群の視覚トリック。

・杉本博司「最後の晩餐」
久々に見た、蝋人形シリーズ!どでかい。かの有名な宗教画を杉本が解釈すると、ゾクゾクする「実存」へ、生命を与えられる。

・トーマス・シュトゥルート「ノートル・ダム、パリ」
大好きな、パリのノートルダム寺院だ。下に人間、上に彫像、そのどちらにリアリティーがある?ゴシック建築の粋をこの高さとスケールで撮ると、見る者が神の視点になる。

・アンドレアス・グルスキー「V&R」
やっぱりグルスキーの巨大プリントはすごい。「物質文明への批判」などもっともらしい解説はあるが、私にはファッションショーの写真は色の美しさにうっとり。

・ツァイ・グオチャン(蔡國強)「葉公好龍」
香港大学の美術館で、この人の企画展を見た。大判の紙を火薬で焼いて、龍を表現するという発想のおもしろさ以上に、東洋的な美がはっきりと現れている。作家のことを何も知らなくても、一目で東洋人とわかるのだ。


1階展示室と2階展示室があり、1階のほうが圧倒的な作品ぞろいだったが、2階へ上がっていく階段のスペースは近未来的ともいえる真っ白な空間で、1階部分で得たさまざまな考えをいったんリセットさせている。
やるなあ。黒川紀章。

この美術館は所蔵品もすばらしく、半分はそれが目当てだった。
日本で唯一、フリーダ・カーロを持っているのだ。
初めて見るほんもののフリーダ・カーロの「死の仮面を被った少女」は、重い作品のはずなのに、愛らしく、陰りのない色彩があふれていて、素直に「きれいな色だなあ」と思った。

c0042704_18555367.jpg


そして、たまたま私が行った日一日だけ展示されていた、ジェームズ・タレルのインスタレーションが!!!
《知覚の部屋-テレフォンブース;意識の変容》という体験型の作品で、予約をして1時間ほど待つ。
7分間、やっと直立していられるくらいのせまい部屋に閉じ込められる。
小さな半円のドームが頭にはまりこみ、びょお〜びょお〜という砂嵐みたいな音とともに、ドームの中は青、紫、ピンクとゆるやかに変化する光が映し出される。
ドームは真っ白なので、たちまち遠近感は失われ、頭の上に無限に空間は延びているようにも思える。
いかにもタレルらしい視覚効果だ。
そのうち光に包まれていた頭上には、人を不安に陥れるような縞模様の光線——言葉では表しにくいが——が、しつこく発生する。
ずーっとこのくりかえしだ。
7分間耐えられる人は少ないようで、多くの人は途中で退出してしまうという。

c0042704_18564730.jpg


なんなんですかねタレルって人は。
私はもちろん7分間立ってましたが。
なにを信じるか?
目に映るものを信じていいのか?
いままさに体験していることは、ほんとうに“体験”か?
いつもクエスチョンマークを次々と突きつけてくる、大好きなアーティストだ。

c0042704_1905368.jpg
しめさばおいしうございました。焼酎のロックが鮨屋の湯飲みで出るのは不思議だったが

名古屋ですっかり文化的な一日を過ごせた。

by apakaba | 2014-10-26 19:11 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(2)
Commented by ぴよ at 2014-10-28 09:09 x
あれ?コメしたつもりなのに反映されてない?それとも自分が確定ボタン押し忘れたか?^^;
…という訳で、再度投稿。

名古屋市美術館は個人的に地元の美術館の中で一番のお気に入りなんです。
規模は愛知県美術館の方が圧倒的に大きいですが、名古屋市美術館の建物や立地も好みではあるが、根本的にキュレーターの趣向が自分と合致しているんだと思う。
…てか、黒川紀章氏の設計だったのか。地元なのに知らんかったわ(滝汗

そしておっしゃるとーりフリーダ・カーロの作品を所蔵しているし、他にも私の大好きなモディリアーニの名作も、そしてフリーダ・カーロの旦那ディエゴ・リベラのいい作品も所蔵しているのが個人的にぷち「我が町自慢」だったりしますw

この季節だともう少し後だったら徳川美術館で国宝の源氏物語絵巻の期間限定展示が見られたのに…また名古屋に来ない?^^
Commented by apakaba at 2014-10-28 10:56
なんかいつの間にかエキサイトのコメント欄がリニューアルしていて、使いにくかったのかも?
常設展示がスゴイのね!
なんでメキシココーナーがあるわけ?と思ったら、フリーダ・カーロがあるからだった……でもエコール・ド・パリも充実してたねえ。
「おさげ髪の少女」は前歯が出ているところがおもしろかったな。
ディエゴ・リベラもよかったし、エコール・ド・パリのパスキンも大充実しててかわいくてよかった!
かなり気に入ったよ!
他にも常設で目当ての作家がいたんだけど、その日は引っ込めちゃってて見られなかった。

徳川美術館も、大学生のときわざわざ行ったきり。
今回は、月曜定休だから翌日は行かれなかったな〜。


<< 英語の歌      コーシローが噛み付かれてからのこと >>