あぱかば・ブログ篇

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2015年 02月 25日

「怖い」と思っているのは誰

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先日、コーシローは9歳になった。
老け方が早く、もう老いぼれといっていい雰囲気。

近所に知的障害の男の子がいる。
今は中学生だが、9年前には5歳くらいの幼児だった。
飼い始めたばかりの子犬のコーシローをめずらしがって、よく外でぺったりと一緒に座り込み、その子のよだれをコーシローがぺろぺろなめたりしていた。

でもコーシローはその後急速に気の強い柴犬らしくなってしまい、彼にもワンワンと吠えつくようになった。
彼は吠えかかるコーシローにとてもおびえて、ワーワー泣いた。
子犬のころはあんなに仲よく遊んでいたのに、申し訳ない気持ちだった。

コーシローは気性の荒い犬で、いくらしつけても、知らない人に吠えることをやめなかった。
しかし、子犬のころにかわいがってくれた人や犬のことは決して忘れず、何年たっても子犬時代に戻って喜んだ。
でもその子にだけは、すっかり思い出を忘れたように吠えた。
というのも、彼は身体的にも少しハンディがあるようで、独特のぎこちない歩き方をするのである。
番犬は人とちがう行動に非常に敏感だ。
その歩き方に不審さを感じているのは明らかだった。
子犬時代の思い出よりも、縄張り意識のほうが勝ってしまったのだった。

私は彼をおびえさせたくないし悲しませたくなくて、ここ何年も、とにかくコーシローを遠ざけていた。
道の向こうから彼が見えると、ちがう道を通ったりしていた。
そのうち、彼は中学生になって、見上げるほどに背が高くなり、外見はかなりかっこよくなった。

つい先日、本当に久しぶりに、彼とコーシローがばっちり鉢合わせしてしまった。
例によってワンワンと吠えた。
ところが、彼は、さもいとしそうににっこりと、コーシローに微笑んで、
「コーシローくん、吠えてるね。やっぱりボクがこわいんだね。ふふふ。」
と言ったのだ。

年月が流れたのだ。
私が懸命に犬と彼を近づけないようにしていた間に。
昔、怖がっていたのは彼だった。
今では「ボクはコーシローが怖い」のではなく「コーシローはボクのことが怖いから吠えている」と考えている。
犬は老いぼれ、彼は成長していた。
9年前、犬と寄り添っていた小さい背中を見て、「少しはあの子の慰めになるかな」なんて考えていたのは、とんだ思い上がりだった。


by apakaba | 2015-02-25 14:00 | 生活の話題 | Comments(0)


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