あぱかば・ブログ篇

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2015年 05月 28日

また別の、保育園時代の子


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次男「アキタコマチ」が作ってくれた牛タンの赤ワイン煮

今日から、来月の公演に向けて影絵の練習が本格的にスタートした。
小学校へ行き、図書室の前を通りかかると、一人だけ廊下に出てうろうろしている男の子がいる。
クラスの子供たちは、みんな図書室の中で本を見ている。
あの子を見たことがある、あの子も、保育園のパートでおととし担当していた子だ(保育園時代の子)。
1年生の始めならまだしも、もう2年生なのに廊下か〜。

私はその子を、「つーちゃん」と呼んでいた。
つーちゃんは、先生やパートさんの間で、とても難しい子と言われていた。
大人になつかない、甘えるのが下手。
心を開いた相手でないと、絶対口をきかない。
私も、つーちゃんがしゃべってくれるまで、何ヶ月もかかった。

先生には人気がなかったが、男の子たちの間では、つーちゃんは一目置かれていた。
大人っぽいニヒルな風貌がかっこよかったのかもしれない。
つーちゃんは人間の言葉でコミュニケーションをとるのではなく、たまに獣になって、私のところへ来た。
四つ足で、なにかの猛獣になりきって、「ぎゃううー」とか「ううー」といった唸り声だけを発する。
鼻に皺を寄せ、四つ足で広いホールの中を駆け回る。
その擬態は見事だった。
赤ん坊のころからずーっと一緒に生活している(保育園生活は、まさに「生活」である)幼児同士というのは、なんでもすぐにありのまま認めてしまうので、「ああ、今つーちゃんは動物になってんだな」と周りは気にも留めない。
つーちゃんが四つ足で一人走ってみたり威嚇してみたりするのを、注目しているのは新人の私だけだった。
私のところへも猛獣のまま飛びかかってきて、「おお、こわいねつーちゃん。」と言うと、「ぎゃうっ!」と、顔に噛みつきそうにして吠えた。

つーちゃんは卒園して1年生になり、去年の夏休みには保育園の庭を懐かしそうにのぞいていた。
そのころ私はまだ勤めていて、フェンス越しに
「つーちゃん、学校楽しい?」
と聞くと、にこっとして「うん」と言っていた。
そしてせみの抜け殻をフェンスの隙間からくれた。

「うん」と言っていたのに。
図書室の廊下でひとりぼっち、猛獣にもなっていない、ただの小さい子供に戻ってしまったつーちゃん。
「つーちゃん。なんで外に出てるの。」
いきなり声をかけたら、びっくりして見上げる目が少しおびえている。
この子は猛獣になっていないとき、一人でセンチメンタルになって泣いていたりしたな。
しょうがないなー。
君のためにもやろう。
今、私は演技で壁にぶち当たっているけれど、本番までにちゃんと仕上げて、君が夢中になる劇にするよ。
もう私は君の「せんせい」じゃないし、直接してあげられることはそれくらいしかない。


by apakaba | 2015-05-28 22:35 | 生活の話題 | Comments(0)


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