2017年 01月 23日

香港フード合宿・中編

やや間が空いてしまったが、前編の続き。
中編は、フード合宿2大ハイライトのレストラン訪問である。

ひとつめは、初日のディナーで入ったプライベートダイニング「法租界」。
私が香港で、というか今のところ世界中で最も好きなレストランだ。
以前、仕事で2種類の記事を作ったので、詳細はそちらを見てほしい。



料理は言うまでもなく、スタッフの雰囲気もレストランのある場所も、すべてが刺激的なレストランなので、ここは絶対「アキタコマチ」が来るべき店だと前々から思っていた。
それがやっと叶い本望である。
「アキタコマチ」は予想以上にビビッドな反応をしていた。
これまで何度も来ているのに、仕事の原稿ばかり書いて、このブログを書く時間がなくなってしまったため、法租界の奇抜な料理を紹介したことがなかった。
この日のメニューは以下の通り。


c0042704_11440207.jpg

A Little Swaying Boat.Chao Phraya River.
左がなすのクネル、トムヤムクン風味。
右は魚の浮き袋、ゆず風味のマリネ。
詩的な料理名はシェフが考えるが、予約した相手には事前にメールで材料や調理法を知らせてくれるから安心。
以下、「アキタコマチ」の感想。
「完全に常温だ。冷たくも温かくもない。すごい。料理って、“温かくなければ!”とか“冷たくなければ!”とか縛りからたいていの料理人は自由になれないんだ。これはなかなかないね!」


c0042704_13491080.jpg

Shanghai Lake.Switzerland Mountain.
上海蟹の生姜風味と、スイスのサワークリームのソースを使ったダンプリング。
上下を混ぜて食べる。
「これは、中華と西洋料理が完璧に1対1だ。上海蟹は完璧に中華料理の手法、でも下のソースの酸味の付け方はまぎれもなく西洋料理の手法。中華にこういう酸味の付け方はない。両方がまったく譲らない。そして……うまい!」


c0042704_13571832.jpg

The Green Days in Mediterranean Sea.
左側は、オランダのムール貝の煮込みと日本のわかめを合わせたものに、揚げた黄ニラをトッピングしたもの。
右側はわけぎのグリッシーニ。
「もはや何が何だか……だが! うまい! ムール貝の煮方は西洋料理なのに、そこに迷いなくわかめを持ってくるとか。」


c0042704_14264271.jpg

Shaking Sleeve.Charcoal Fragrance From A Farm House.
右側は、チャイニーズマッシュルームの蒸し煮と韓国のじゃがいも麵にクリスピーなハモンセラーノをトッピング。
左側はシャントレル(アンズダケ)と、じっくり煮込んだフランス産あひるの胸肉。
「ううーん。すごい。まったく食べたことがない。一体どうしたらこんな料理を考えられるんだ!」


c0042704_14434489.jpg

Soft Pluma.Soft Rice.Fragrance.
plumaはスペイン語で「羽」。
イベリコ豚のプルマ(豚肉の部位の名前)のグリルと、上海風ベジタブルライス。
このお米はゆめぴりかを使っているという。
「あーっ! あまりにもうまくて写真を撮り忘れた!」


c0042704_14530257.jpg

Sumiyaki Coffee.
塩味カスタード入りの卵白を揚げたデザート。炭で色をつけている。
コーヒーマスカルポーネムースと共に。
「このどう見てもまずそうな外見、そして、うまい……! なんなんだよもう……!!!」

興奮しきったままディナーを終えた。
「もう、オレはがっくりと膝をついて泣き出したい気分だ。どうしたらこんな料理ができるんだ?
香港だからなんだな。この“プライドのなさ”は真似できないよ。
料理って、どうしても自分の専門や自分の国から離れられないんだよ。
日本人だったらやっぱり日本料理のセオリーから逃れられないとか、フランス人シェフが日本料理のテイストを入れると言っても、フレンチの中にアクセントとしてほんの少し取り入れるくらいとか。
だからほとんどのフュージョン料理はどっちつかずで失敗する。“創作料理”という名のおいしくない店がいっぱいある。
だけどここは完璧に変なプライドから自由だ。
西洋と東洋ということへの、コンプレックスもこだわりもない。まさに香港っていう土地の根無し草ぶりを体現した料理だよ。
こんな店は日本では絶対に生まれないね。参った。香港すごい。ほんとに、なんという料理だ。感動した! いやあ、うまかった!!」

私や夫は、何度来ても「おいしい!」「食べたことない!」という素人な感想しか出てこないのだが、コックが素材や調理など、料理を分析するとこういう感想になるのか。
しかし、ここのおもしろさを完璧に理解し、「香港という場所でしか生み出し得ない」というところにまで考察が及ぶのはえらいものだと思った。

いつも予約のメールをやりとりしている、サービスチーフのクリスさんは、「皿洗いの女性が休みで、今日はぼくが皿洗いをしなくちゃいけないので……」と、厨房の奥から出てこられず残念だった。
しかし、代わりに二番手の若いサービスマンが、時に筆談も交えつつ「アキタコマチ」に丁寧に説明をしてくれていた。
メールで「息子がコックで、貴店にとても興味を持っているから」と伝えておいたのだ。
「東京のフレンチレストランで働いている」と言うと、
「ぼくは日本の料理の本を読んで勉強しています。ええと、“カイセキリョウリ”の(“懐石料理”と紙に書く)。ええっとその本は、日本の学校の本で……(“辻調理”と紙に書く)。」
「あっ、ぼくはこの学校を卒業しました!」と「アキタコマチ」も驚き、若手サービスマンと盛り上がっていた。

サービスチーフのクリスさんのことを見るや「あの人がチーフだね。いかにも切れ者っぽい。厳しそうな人だな。スタッフには厳しい人だね。見てすぐわかる。」とも言っていた。
このユニークなレストランに初めて来て、ここまで堪能して勉強してもらえたら、フード合宿も成功である。
次回は正統派フレンチレストランへ。
フード合宿のフィナーレとなる。
(後編に続く)


by apakaba | 2017-01-23 15:53 | 食べたり飲んだり | Comments(0)


<< 横浜中華街ドライブ      集音器を買ってみた >>