2005年 09月 28日
マイケル・ウインターボトム監督の野心作だ。 南極・セックス・ライヴ・南極・セックス・ライヴの3場面の繰り返しで構成されている。 主人公の男女がロンドンのライヴハウスで出会い、セックスを重ね、夜な夜なライヴハウスへ出かける。 別れた後になって、男が仕事で訪れた南極でその恋人とのセックスを思い出す、という話。 脚本はなし。 出演俳優はそのふたりだけで、セックスシーンを“本当にやっている”というのが最大の話題だった(なのでもちろん、R18です)。 とても、とても、飽きました。 半分以降は、しばしば早送りをしてしまいました。 だってずっと知らないバンドの歌か、あいもかわらずセックスシーンばっかりなんだもん。 奇抜な体位とか、仰天するような猟奇的な方法とか、そういうのはいっさいなく、ふつうの恋人同士がふつうに行う行為なんだけれど、なにしろやりつづけているので飽き飽き。 「またなのか……」とため息が出る。 映像は大変美しい。 この監督の作品では『CODE46』『日陰のふたり』『ひかりのまち』を今まで観たことがあるが、ぜんぶおもしろくなかったものの映像は全部すてきだった。 ライヴハウスの照明、裸のふたりがいる室内の暖かい光、南極の自然の風景はどれもきれいだなあとうっとりする。 暗い劇場で観ていたら、もっともっと陶酔感に浸れたと思う。 でも、私はそれだけじゃ不満なの。 映画になにを期待するか。 つまるところ、それが評価の分かれ目になるんだと思う。 私は、やっぱり俳優の演技になによりも期待するタイプの観客なのだ。 (その話題は“目”を見る『スパイダーマン2』の記事に書きました。) 映像美に重きを置く人は、環境ビデオのように、この映画を流しておきたくなるだろう。 でも……唾液や精液やこぼれたワインでべとべとの裸体を見ながら、私には、映画に本番セックスを持ち込むことが、果たしてどれほどのリアリティーを見る側に提供することができるのだろう?という疑問ばかりが残った。 これは、“映画”なのかなあ?と。 映像の官能って、俳優の演技で、“あるわけない世界”なのに思わずググッと身を乗り出させてしまうような、そういうチカラによるものなんじゃないの? たとえば私の大好きなラッセ・ハルストレム監督の『ショコラ』でのラブシーンは、ふたりがジプシーの演奏でダンスをして、揺れる小舟にふたりだけで乗って、しゃべっているうちにキス。 そこで終了。 あとはその舟が小さく映っているだけ。 ……スッゴク、官能的だ……! まるで、まるで源氏物語だ……! 源氏物語の、源氏の君と藤壺の不義のシーンは、まったくこんな感じ。 行為じたいにひとつの言葉も使われていないのに、「やってしまった……」というのがありありと知れる。 あれは凄いぞ。 話がそれました。 ウインターボトム監督が、 「通常の映画におけるラブシーンは、説明的で、役者はフリをするだけ。見ている方もフリとわかっている。でも食事のシーンでは、本当にものを食べている。セックスも本当にやることに意味があるのだ」 とインタビューで言っていたけれど、私は、フリだからこそ、演技のチカラで“持って行かれたい”のだ。 彼の考えと、完全に逆なのだ。 これではおもしろいと感じるわけがない。 とすれば「またなのか……」とため息が出るのは当たり前で、誰もが日常でやっている行為を映像で長時間わざわざ見せられるより、無から有を作り出す演技力に心を惹かれるほうが自然というものだ。 だって延々とゴハンを食べている映像を、見たいですか? それと同じなの。 彼のファンには失礼だけれど、おそらくさほど頭の良くない人、という感じを受ける。 断片的なきらめきはある(ストーリーも断片的。断片的な映画って、手法も真似しやすい。)ものの、すべての矛盾(彼の言うところの“フリ”も含め)を凌駕するほどの感動は、呼び起こせない。 まあ、本番セックスは、映画の極北……とでも呼んでおきましょうか。 アーヴィングが『サイダー・ハウス・ルール』を撮るのに、ウインターボトムをクビにしてハルストレムを採用した、というのも、むべなるかな。 9songs公式サイト
by apakaba
| 2005-09-28 23:26
| 映画
|
Comments(15)
みんな紳士淑女ぶるから誰もコメントつけられないじゃないのーーーーーーー。
時間がないからこの辺で。
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K国
at 2005-09-29 12:23
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どうも単純明快、正義の見方が勝って終わる、ノー天気ナ映画好きの
(水戸黄門的正義の味方は嫌いです) ワタクシにとって一番手ごわい映画の部類に入る 見たことも無いし、見る気も起きない 一週間に一度、漫画本のアル喫茶店で400円のコーヒーで 5,6冊の漫画読みますが一冊の中で読んでるのは1か2ストーリー位で 内容のシッカリしたスポーツ物か、時代物でも地に足の付いてる奴で全部足しても10話を一時間で片付けます。 どう見ても紳士のコメントじゃないな
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apakaba at 2005-09-29 15:37
見てもおそらく早送りしてしまう→レンタル料返せ〜、のパターンでしょう。
ゆうべ書いたときには、かなり紳士淑女向けだと思っていたんだけどな……またもすべったかな。 とりあえず、ベッドをあんなにキタナクしたらだれが洗濯するんだ!ホテルじゃないぞ!と主婦ははらはらしてしまうのでした。 ソフト緊縛プレイでは、ピンヒールのブーツで男を踏みつけています。 ああ、砂や泥が気になる……
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K国
at 2005-09-29 20:28
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昔ステンアライブの相手役の彼女が気に入って,次回作の
三流アクション映画をビデオで見ましたが、何か起きても安直に解決して何の盛り上がりもなく、何時クライマックスが来るのか期待しただけアホらしい映画を見たことがありますが あんな映画でも大勢の人間使って、真面目に作ってるのかと思うと 脚本と監督の差は大きいと感じます 金かけなくても感動する映画はありますし 大金かけて駄作は腹が立ちます どうも若い頃のように映画館に行くという行為が面倒くさくなりました 居ても立ってもいられないような名作は無いモンかねー。 一番近い映画館まで40キロありますからね~
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apakaba at 2005-09-29 21:35
http://www.jtnews.jp/cgi-bin/person.cgi?PERSON_NO=6128
これかな…… ビージーズが強烈に高い声出してましたね。 映画館に行かなくても楽しいことがたくさんあるし。 >居ても立ってもいられないような名作は無いモンかねー。 >一番近い映画館まで40キロありますからね~ ひとつは、情報量かなとも思います。 宣伝やプロモーションビデオをさんざん見せられると、おもしろいかも!と思ってくるものだし、レンタルショップでも新作情報をバシバシ出すでしょう。そうするとあおられるんじゃないかな。情報の多い場所ほど。 しかし、本当に駄作も増えましたよ。 とくにアメリカ映画は、もうダメなんじゃないかと思っています。 有名な役者が出ているからなんとなく観るけど、おもしろい!と思うものがとても少ないです。 アメリカ以外の国の映画は、まだまだおもしろいですけどね。 フツーレベルの話だったらレンタルで十分ですねえ。
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satomi
at 2005-09-29 21:43
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そうかぁ、、、本当のエロってそうなのかぁ、、、なんて一人で感心しながら拝読させていただきました。
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apakaba at 2005-09-29 21:53
satomiさん、いえ、本当のエロなんて呼べるものは、べつにないんだと思いますよ。
どんなエロが好みか?ってだけの話で。 私は本番エロは、べつにいらないな〜……と思っただけなのです。 たとえば昔ながらのインド映画では、大半のラブシーンで、キスもありません。 気持ちが盛り上がると、妄想シーンに突入して、ダンスシーンになだれ込みます。 でもそのダンスで、あ〜そうなのね、愛なのね愛なのねっと、こっちも盛り上がるんですよ〜! 正直に言います。 本番は、見ていて「イタイ」です!夢をくれ!といいたいの!
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satomi
at 2005-09-29 23:01
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apakaba at 2005-09-29 23:13
satomiさん、阪神優勝したみたいですがこんなトコでコメント書いてていいんですか。ビールかけ見ないんですか。
私は見ませんが…… まあ、「ショコラ」は我がジョニーさんがキス上手というところに大きく因ると思います。「妹の恋人」でも抜群にウマカッタです……あっ、ナンだ?コラ!芝居超えてるぞ!みたいな感じで、ううう。 インド映画のリアリズムはまったく不思議ですね。
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K国
at 2005-09-30 07:26
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apakaba at 2005-09-30 08:17
『◎』は気分がイイ時によく使ってるんです。。けれども!
ホントに眞紀サンをかんなり絶賛してたんですよ〜◎ あっ阪神優勝したんやぁ。これから優勝セールで安くなります★ 秋冬に備えて買い込もうかなぁ。。 今日初めて眞紀サンのHPあることを知りました! bbsに書き込もうと思ったら使えなかったんでこちらに書きました。ここに関するコメントじゃなくってすみません(*>д<) o
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apakaba at 2005-09-30 13:39
yumiさん、やはり素直に二重マルを受け容れることにします。
ありがとうごじゃいまちゅー。 そうです、このブログはHPの日記部分という位置づけなんです。 BBS書き込めませんでしたか?どうしてかな?ものすごい放送禁止用語とか、書いてないですよね?おかしいなあ。 メインサイトのほうでもとてつもなく文章がいっぱいなのであきれるかと思いますが、旅行記をぼつぼつ更新していくので読んでやってください。
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ssnostalgia at 2005-10-01 08:56
こんにちわ。
ウインターボトムさんは右脳がものすごく強いのだと思う。映像感覚はすごいですよね。ドキュメント映画「サラエボ」は考える余地がないからチョッピリ成功したとおもいますが、その他は印象がないほど。 左脳で造らなきゃならない村社会の仕組みを描いた「サイダーハウスルール」をウインターボトムさんが造っていたらズッコケタでしょうね。
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apakaba at 2005-10-01 18:24
ssnostalgiaさん、コメントお待ちしてましたよ!それにしても難しいHNだなー。
そう、映像美にはまったく感心します。 だから映画監督じゃなくて、むしろプロモーションビデオを撮らせたり、CMを制作したりしていたら素敵だったかな。 「サイダーハウス・ルール」は、アーヴィングがハルストレムのことを「ワタシとほとんど同じ世界観を持っている監督」と指名したんだと、宮台真司氏の映画評の本にありました。 あ、ssnostalgiaさん、ワタシは今日六本木ヒルズの杉本博司写真展に行ってきたんですよ。行かれましたか。絶対、ssnostalgiaさんなら気に入ると思います。もしまだだったらゼヒ行ってみてください。 感想を聞きたいです。 コルビジェやミース・ファンデルローエとかの建築を大ぼけ写真で撮ったり、アノ、例の三十三間堂の千手観音像を撮ったり、やたらとおもしろかったんですよ。会期1月9日まで! |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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