2005年 12月 13日
ここのところ相次いだ、子供が犠牲になっている事件は、本当に滅入ってくるのでなるべくネットでも友だちとでも話さないようにしている。 子供をねらった、とくに性犯罪は、女の子を持つ親として言葉もない。 でも……私はずっと昔、友だちから、不思議な男の話を聞いたことがあった……私は、こわくてその記憶にふたをして忘れてしまおうとして、じっさい30年ちかく、忘れていた。 小学校の同級生だった彼女は、一言でいうなら“色っぽい”女の子だった。 4年と5年のとき、同じクラスだった。 勉強はあまりできず、クラスで目立つ行動もせず、男子からとくに人気があったわけでもなかった。 でも私は、彼女を初めて見たとき、なぜか胸がズキッときた。 同学年の男子たちには気づけないような色っぽさを、彼女が備えていた。 抜けるように色白で、黒目がちな切れ長の瞳、ラズベリーかなにかを食べたみたいな、血の色の透ける唇、伸ばした前髪のせいでいつも首を斜めにかたむけていた。 目が離せないようなあやうい美しさだった。 彼女は、やがて私とも遊ぶようになり、たまにふたりでも遊んだ。 うちに遊びに来たとき、彼女がこんな話を始めた。 「あのねだれにも言わないでね。私もいままでだれにも言っていないの。私ね、ずっと昔、あんまりはっきり覚えていないんだけど、へんなことがあったの。」 「なあに?昔っていつごろ?」 「うんと小さいとき。どこだったかも忘れた。私が立っていたら、知らない男の人が来て、『目をつぶって』って言われてずうっと目をつぶっていたの。 『いいよって言うまで、絶対に目を開けちゃだめだよ』って言われたからそのとおりにして。 それでしばらくしたら、『はいもういいよ』って言われて。はじめは立っていたけど、目を開けたときには大きい石の上みたいなところに横になっていて、それであとで気がついたんだけど、服のボタンが、一個ずつずれて留めてあったの。」 「ええっ……それほんとなの。夢とかじゃないの?だっておかしいじゃない。いくら目をつぶっていたからって、立っていたのを寝かされたのも自分でわからないなんて、おかしいわよ。それにボタンは自分でかけまちがえたんじゃないの?私もそういうこと、たまにあるよ。」 思いがけない告白を聞かされ、私は躍起になって、その話を否定しようとした。 けれども彼女は、 「ううん、ボタンは朝、着替えるときにきちんとたしかめたもの。なんかね、昔のことだから、もう細かいことを忘れちゃったの。自分でもへんだと思うんだけど、でも夢じゃないのよ。」 と言う。 「その、目をつぶっている間、なにをされたの。体に触られたとか、服を脱がされた、とか……。殴られたりとか、乱暴なことをされて痛い、とか、そういうのは……?」 「脱がされたどうか、覚えてない。でもぜんぜん痛いとかはなかった、とっても気持ちよかったの。もしかしたらそのまま眠っちゃったのかもしれない。だから目を開けたときに横になってたのかも。」 「気持ちがいいって……いったいそれはなにをされたから……?触ったりとか……キスされたり、とか……?」 尋ねている私の声がどんどん弱々しくなっていっている。 でも好奇心が勝って、いろいろ聞いてしまう。 「わかんないの、本当に覚えてないの。」 彼女の言うことはひどくあいまいで、奇妙だった。 しかし作り話ではないようだった。 なにをされたんだろう。 なにを、なにを、なにを……こちらも子供だから具体的な想像がつかない。 でも、彼女がやってはいけないなにかをされて、黙っていられなくなって私にしゃべったのだということは確かだ。 聞かされた私は、ものすごく怖くなり、同時にわけのわからない興奮を感じ、その両方の感情が自分で持ちきれないほど重くなり、とにかくもう忘れてしまおうと決心して、たまに遊んでいた彼女からもだんだん離れていき、そしてついに本当に忘れた。 今になって考えると、“昔”というのは、せいぜい数年前のことだったのではないか。 なにしろ“昔”と語っている本人が、10歳かそこらの子供だったのだ。 彼女も、私のようにその記憶を封印していたのかもしれない。 だから言っていることがあいまいだったのではないだろうか。 子供なのに色っぽかった彼女は、あのあとどのような大人になっていったのだろう。 人に打ち明けたことで救われて、本当にすっかりと昔のことを忘れ、ふつうの幸せな女性になっていたらいいな、と、心から願う。
by apakaba
| 2005-12-13 16:24
| ニュース・評論
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Comments(23)
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K国
at 2005-12-13 19:29
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10歳は年齢が二桁になり、子供から大人へ変わって行く一歩目
脳は大人の機能が備わり経験が無いだけ、体も心も一番差の出る時期、夢か現実かなんともミステリアスな体験ですね 小学生なのにハッとする様な美女、居ました鈴木杏樹のような切れ長な 目をして色白で、頭が良くて美人すぎるから男の子は声もかけれず 別格扱いで返って記憶の中に出てこない、天地真理型の気安いタイプの方が人気があったりして、同級会にも一度も出てこず 眞紀さんのブログで蘇った、どうしてるのだろう
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apakaba at 2005-12-13 19:59
ううむ、このコメントには妙に救われました。
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紫陽花。
at 2005-12-13 20:06
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その美女、88%の確率で普通の女性、あるいは、もうちょっと下の女性になっている確率大です。ほんとに、美しさは永遠ではないのです。長く生きているとつくづく感じます。同窓会で、元美女がごく平凡な女性になっている場合をあまりにもたくさん見すぎました、私。。。
あまりパッとしなかった女性が美しく花開いている場合、「旦那がいいんだろうな。」と言われます。
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apakaba at 2005-12-13 20:08
旦那ナシで美しい方は?
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紫陽花。
at 2005-12-13 20:35
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旦那ナシで美しい方は?>その方は早く亡くなられました。佳人薄命。あ~あ。
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K国
at 2005-12-14 07:07
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そうか現状維持とは限らないんだ、う~む、出て来れない理由は
皮下脂肪備蓄かもしれん
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紫陽花。
at 2005-12-14 07:51
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皮下脂肪備蓄かもしれん>はい、92%の確率でそうでありましょう・・。あまりに太ると同窓会、出たくないものですよ。同窓会の案内があるとまず99%の確率で、女性は「ん?痩せなきゃ~~」と思うものであります。その必要のない人もいますが、私の周りは100%そうであります。別に何を期待してる訳じゃございませんが、やっっぱり女っていつまでかも美しくありたいのです。。。年を重ねると顔の作りより雰囲気が大事だということをみんな学習していますから。。
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K国
at 2005-12-14 07:53
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姐さん、眞紀さん旦那が良いんでしょうね(チョットフォロウ)
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紫陽花。
at 2005-12-14 07:55
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↑の書き込みで、「か」が「何○を期待して」に入るべきでしたが、「いつまでも」に入ってしまってます。ポインターの異常です。あ~~あ、マイパソコンウインドウズMe。いつまで健在か・・。 形あるもの必ず壊れる・・。
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紫陽花。
at 2005-12-14 07:58
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と思ったら、K国兄さんの投稿が・・。
旦那が良い→恐縮です(フフ) うちの場合は旦那の無関心が良いと思われ→ぅ、自分で認めるな~~~!
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apakaba at 2005-12-14 08:41
本記事の暗い本題から果てしなくずれていってくださってありがとうございます。
おかげで気持ちが軽くなりました。 年とともに外見が落ちていくのは当たり前なのに、どうしてそんなにこだわるのかな。 どうせ批評するほうだって、だいたいはろくなもんじゃないでしょ。 自分のことを棚に上げて、他人の美醜をあれこれ言うなんてくだらないことだと思いますけどね。 外見はもちろんいいに越したことはないけど、やっぱり中身だよ。 せっかく年食ってきたら中身がおもしろくなければ。 ううむまったくの正論を吐いてしまった、トシかな
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紫陽花。
at 2005-12-14 09:35
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正論、やっぱり面白くないですよ。眞紀さんらしくないし。 私は中身で勝負よ~~と言っている人の中身が?という場合多々あり。やはり外見に気を配ることは大切と思ってます。出来る範囲で。もちろん。
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apakaba at 2005-12-14 09:43
たしかに「私は中身で勝負よ」と自分で言っている人は、たいていダメですね……ふふ、そのとおり!
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紫陽花。
at 2005-12-14 11:13
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うーーん、言葉で抽象論は難しいね。もちろん、中身で勝負と言ってる人、思ってる人、難ありでしょうが、そもそも人の中身って?と思うわけよ。外見も含めて、相性ってあるものね。ある人が素晴らしいと思っている人を周りの人がみんな認める訳でもないしね・・。まあ、ということで、ここでは、オバカ話に徹するのが好きです・・。私は。。
ある程度の年齢になると財布の中身ですよ・・・・・
ただ、H社の社長みたいな儲け方すると、どうも???な顔になりますが。
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K国
at 2005-12-14 12:23
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apakaba at 2005-12-14 14:52
紫陽花。さん、いえ、私ね。中身が大事だとか書いたのって、スッゴク身近な例が頭に浮かんでいたのです。
奥さんが、自分の旦那さんのことを、「結婚したときはスリムでかっこよかったのに、いまじゃデブでハゲで、すっかりかっこわるくなった!だまされた!」とか言ってる友だちがいるのね。 でも私から見ると、旦那さんてとってもステキなの。 私はとても好き。 頭もいいし人当たりもいいし、たしかにハゲだけど見方によってはセクシーと言ってもいいんじゃないでしょうか?ってくらいで。 私なら、あれほどの人なら、探してでも結婚したいと思うんですよ。 それで、中身が大事なのにと書いていたのです。 まあ、外見の好みってあるんだろうし、夫婦の間なんてハゲでデブだからイヤという以上の複雑な問題もあるんだろうし、外から見ただけではわからないんだけど、あんまりその人がそう言うものだから、ふと思い出してしまったのです。 なので、男性のことについて正論を吐いてしまったんですが、こと女の人は、まあやっぱりきれいな方が確実に「得」だわね〜〜〜。
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apakaba at 2005-12-14 14:58
財布の中身は、子供が巨大化するのに反比例して、だんだん少なくなっています。
しばらくは仕方ないですね。 「ない」状態がつづくと、だんだん慣れてきて…… あれば使ってしまう未年の女には、「ない」くらいでちょうどいいみたい。 絶対、つまんないことに使ってしまうんですよ〜〜〜〜っ。
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紫陽花。
at 2005-12-14 16:08
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なるほど~~、2人ですっかり論点がずれてましたね。
外見と中身、そりゃあ中身が大事ですけど、外見も大切です。。って、またよく分からない中途半端なコメント。年を重ねても外見の変化も愛せる風になりたいですね。でも、その奥様、結構オノロケで言ってる感じもするけど、違うかな? 財布の中身、どーでもよくなってくるのが年取った証拠かな。物欲が薄れてきます。煩悩がなくなって、生きやすい世の中です。これって私だけ?かもしれませんが。未年の女の行く末もまあこんなもの・・。眞紀さんはまだ若いのだから、煩悩まみれだとしてもええのよ(^^)
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ミケ
at 2005-12-14 17:34
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apakaba at 2005-12-14 18:29
高野山にこもってさえ煩悩と縁が切れていません。
そうか〜、私ってのろけられていたのね。 気がつかなかった、バカだった。 言われるたびに「そんな、ステキだよー!」とかってひとんちのご主人をほめまくっていた私の立場は。 でもほんと、私はハゲとか全然気になりませんねえ。 しかしミケさんのコメントでキマリだな。
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K国
at 2005-12-14 21:01
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決まりで終わらない所がこのブログ、年取ると自分の事で金使ってない
ここんとこの出費は、手作り豆腐にアゲ、従業員の三時のコーヒーと 貼るカイロくらい、色気のある買い物してないな~ 判断し易い年寄りです
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apakaba at 2005-12-14 23:24
K国さん、色気のある買い物は生活に関係ない、ムダなものを……うふふ。
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アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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