2006年 07月 13日
埼玉県立美術館で開催されている、「マンダラ展——チベット・ネパールの仏たち——」を見てきた。 仏像や絵画などの展示物は時代の新しいものがほとんどで、さして美術的な価値の高いものはないように見えた。 でもやっぱり、展示室を巡っていると、インドに、ネパールに、チベット世界に、モンゴルに、ブータンに、行きたいなあ……としみじみ思う。 この絵とか仏像って、かの国のおじさんやお兄ちゃんたちが、薄暗い作業場とかで背中を丸めてほそぼそ作っているのだろう。 チベット仏教僧侶たちによる、砂絵曼荼羅の公開制作を見た。 6年前のインド旅行(旅行記はこちら。お読みになっていない方はゼヒ!……といいたいところですが如何せんあまりにも長いので、お暇なら。)で、カーラチャクラ砂曼荼羅の制作と完成図を見逃してしまったことが、あとあとまで心残りだったから、このチャンスに絶対に見たいと思っていた。 僧侶たちが、色粉をわずかずつ落として、曼荼羅を描いていた。 薬師如来曼荼羅を制作しているという。 それは、カーラチャクラ曼荼羅の豪華絢爛さの足もとにも及ばない、小規模で、色やデザインもシンプルな曼荼羅図だった。 しかし、私は僧侶たち……ここまで書いてきて僧侶という言葉がいまひとつ彼らにしっくりこない。彼らはお坊さんと呼ぶのが似合う気がする。 お坊さんたちの淡々とした様子を、飽きもせずに立って眺めていた。 若いお坊さんは、えんじの袈裟の下にオレンジ色のアンブロ(フットボールブランド)のインナーシャツを着ていた。 5,6人のお坊さんたちのなかで一番年かさの、身分の高そうなお坊さんは、茶色のサングラスをかけ、強い紫外線に長年さらされてきたことを物語る、乾いて焼けた腕をしていた。 全員がえんじ色の安っぽい靴下をはいていた。 きちんとそろえて脱いであった靴は、今この季節の日本人が絶対にはかない、中敷きがボアで覆われたいかにも温かそうな靴ばかりだった。 そういう一つ一つを見るごとに、泣きたいほど行きたくなった。 私が、そっちへ行きます!そちらの国へ行きます、と言いたくなっていた。 やっぱりあの辺のエリア、好きなんだな。 砂絵曼荼羅の制作は7月16日まで。 作り終わると声明を唱えて、川に流すとかしてあっという間に壊してしまう。 じゃああの薬師如来曼荼羅は……どこに流すのだろう?
by apakaba
| 2006-07-13 22:34
| 歌舞伎・音楽・美術など
|
Comments(21)
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紫陽花。
at 2006-07-13 23:02
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ウムムム・・、分からない。「私が、そっちへ行きます!そちらの国に行きます」かー。人それぞれ惹かれる国の違い。前世での因縁の違いかなあ。私は何かと世間的には不評ではありますがアメリカ。あそこの大自然に包まれた思い出から逃れられませぬ。。
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ogawa
at 2006-07-13 23:15
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曼陀羅・・・印象に残っているのはネパールかな。
輪廻転生・・・吸い込まれていき感じです。 欧州のキリスト教芸術、 ムスリムの幾何学的なデザイン、 そして仏教・・・宗教の芸術はどこか惹かれてしまいます。
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apakaba at 2006-07-14 00:29
曼荼羅レス。
紫陽花。さん、アメリカの自然には罪はないし、今日もちょっと話したけど「個人的なオモヒデ=ノスタルジー」ってけっこうその人にとって絶対的な価値になってしまうから、それもわかります。 一度だけ行きました。 アメリカの西の田舎を、レンタカーで走ったのですが、国土がデカイってやっぱりそれだけでパワーを持つのねと思った次第です。 ogawaさん、宗教芸術に惹かれるのは、当然とも言えると思います。 たとえば趣味で写真を撮る人にしても、漫然とシャッターを切ったものと、思いを込めて、とか、感動して、とか、気迫十分で、とかの状態で写真を撮ったものでは、技術的な問題を差し引いてなお違いあるはずですよね。 それが宗教的な動機でなにかを作り出していくことになれば、その真剣さは段違いですから、心を奪われるのは当然だし、それが宗教芸術のひとつの存在理由でもありますね。 三大宗教はもちろん、土着のもの、ヒンドゥーやアメリカ先住民のトーテムポールなどにも惹かれますねー(星野道夫の世界)。
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キョヤジ
at 2006-07-14 00:32
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祈りや願いの力ってことだぁね、ね?
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apakaba at 2006-07-14 00:43
キョヤジさん、ご案内ありがとう!
砂曼荼羅に絶対に間に合いたかったので、長旅してきました。 おかげですっかり楽しみましたよ! キョヤジさんが行くのはいつ? 宗教芸術って、けっこう簡単に時の権力とか政治的プロパガンダに利用されやすいものでもあるけど、それと無縁に、そこらへんのおっちゃんとかがコツコツ作っているものはやっぱり美しい。というかそのおっちゃんが美しい。ネパール再訪したいねえ!
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キョヤジ
at 2006-07-14 00:56
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でもさぁ、ネパールのマンダラペインターを見たけどさぁ、
一筆一筆が「銭~銭~」って言っているようだったぞ。 >ネパール再訪したいねえ! あぁ、したいねぇ。 実はだ、バクタプルに行ってないのだ。 ここは是非。 あと、ポカラ・ダンプスで一泊してみたい。 で、いつ行くぅ?(笑)
なんじゃかんじゃ言っても惹かれるというのは理屈じゃないんだよな。
私がイスファハンのモスクがどうしようもなく好きなように、真紀さんは砂絵曼陀羅とそれをとりまく世界にどうしようもなく惹かれるんだと思う。 多分「惹かれますよね」と、あれこれ並べた各地の宗教美術とは比べ物にならないくらい。
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紫陽花。
at 2006-07-14 08:00
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>なんじゃかんじゃ言っても惹かれるというのは理屈じゃないんだよな。
全くもってその通り。 私が青春時代をアメリカ文化にどっぷりつかって育ち、アメリカ文化との直接接触に奇跡的にもいやな思い出が一つもなかった。我が家に短期間ホームステイしたパッツィおばちゃんとの懐かしいオモヒデ。そして彼女を訪ねてアメリカ訪問時の最高の時間。ロードムービィのように北西部の大自然をの中をパッツィの車でドライブしたオモヒデ。 絶景との出会いでは、ヨーロッパの車窓の風景も好きだったけど・・。やっぱアメリカの大自然には勝らなかった、私にとっては。 好きに理屈はいらないけれど、何故かつい考えてしまうんだよなー。何で好きなんだろうって。。
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apakaba at 2006-07-14 09:06
曼荼羅再び。
キョヤジさん、銭もまたよきかな。 チベットの坊さんも生臭坊主はいっぱいいました。 肩を抱いて写真を撮ろうとしたりね。 その弱ッちいところがまた、いいですね、人間だもの(あいだみつを、またか) でも旅行だと、そのときの状況でオモヒデ→印象ってすごく変わってしまうと思う。 私はみんなが大好きなパクタプルよりもパタンのほうが、いい出会いがあったから好きになったし。バクタプルはきれいに整いすぎていて物足りない感じがしたのです。 のこのこさん、この投稿時間は一体…… イスファハンは未踏の地のなかでもかなりの憧れ。ブルータイルにはチベット密教と同じくらい心にくるものがあるんだけど、やっぱり旅行だとそのときの状況で(キョレス以下同文) 紫陽花。さんはひょっとして恋をしたら「ナゼ私はあの人が好きか」とか考えまくるタイプ……だったり? (私はまったく考えないタイプです。好きじゃなくなってくると「ナゼあまり好きじゃなくなったのか」って分析するけど。学習したいので)
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紫陽花。
at 2006-07-14 09:30
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愚問(どうした眞紀さん?)。
恋は盲目なんだから、考えるわけないじゃん! 「恋はするものじゃなくて落ちるもの」って言ったの誰だっけ。。
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apakaba at 2006-07-14 12:55
でもずっと盲目だったら危な〜い!
そしてそのセリフは岡田准一!@東京タワー江國香織
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紫陽花。
at 2006-07-14 13:16
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いくつになっても恋話は好きだなあ。 眞紀さんがナイショで話した「うちのダンナが誰よりもかっこいいと今も思ってる。」(ここで書いたらナイショじゃないけど、いいよね(^^)。とはちょっと違うけど、うちは「ダンナが誰よりもかっこいい」とは思わないけど、しょっちゅうドキドキするわ26年経ってても(;;) 結婚しても恋していられるって幸せ、あるいはお互いにメデタイ性格のよーで・・。え?別に私、心臓が悪くはないと・・思う。。
元記事と離れてないよね。 訳も分からず惹かれる理由とコジツケ。。
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apakaba at 2006-07-14 13:44
いや、うちのよりも福山雅治のほうが確実にかっこいいとは思うけど、一応、評価は総合力ですから。
「オレの方がキムタクよりも身長も学歴もあるぞ!」 「バカね、収入がぜんぜんちがうじゃない」とも……どこを重視するかも大事ですねえ。 私は、結婚して○年たったから、もうなにも感じないっていうのはよくわかんないです。 結婚をしていない人のほうがむしろ、「結婚して何年もたつともう男と女ではなくなる」って頭で決めている人が多いように思う。 そんなことはないですよね。 はい、そうとうズレました。
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花岡じった
at 2006-07-14 19:17
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ミケ
at 2006-07-14 19:34
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apakaba at 2006-07-18 10:21
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apakaba at 2006-07-18 10:24
ミケさん、インド旅行記ですが、サイトのスタイルを変えたときに、あの話も移そうと思っていたんだけど、あまりの長さにジャンプしていただく形式でご容赦願っています。
あの話は、自分でもとても好きです。日記形式ならではのストーリーの展開も好きだし、好きなフレーズをたくさん書いていて、一番、旅行記がノッていた時代の文章です。 ミケさんがおいでになる前に連載していたときは、あれでもすごく盛り上がっていたんですよ。 よかったらざざっとではなくてのんびり読んでみてくださいね。 また感想お待ちしています! この展覧会の砂曼荼羅は、すでに壊してしまったようです。 その日に見学に来た人へ砂が配られたとか。
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Kay
at 2006-07-18 12:09
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10日間のシルクロードの旅から帰ってきました。来年はどこに行こうということになり、候補地がネパールまたはチベットということになってました。来年の同級生旅行はチベットにまずなりそうです。
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apakaba at 2006-07-18 15:10
Kayさん、お帰りなさい!
同級生との旅行って、いろいろな面で足並みがそろっていないとできないことですよね。よいお友だち同士なんですね。 そしてまた高地への旅ですか。私もチベットは行ったことがないのですが、いつか行きたいです。好きなエリアです。
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Kay
at 2006-07-18 16:25
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そうなんです、チベットも4000m程度の高地ですよね、今回完全に高山病でだめだった一人が「チベットやったら、らいねんはやめとくわ」といったら即座ブーイングで「それまでに鍛えてやる」というのがいて、彼も絶対にリタイアできないでしょう。そうですね、同級生でここまで集まって、まとまりのいいのも珍しいかも。38年前にトリップしてました。
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apakaba at 2006-07-18 17:35
高山病は鍛えてどうにかなるというものでもない……とは言われますが、とにかくゆっくりゆっくり、ですね。
急いで高度を上げると命の危険に関わりますから、順応のためには旅程をゆっくりとって、気をつけてくださいね。 |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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