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あぱかば・ブログ篇

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2006年 07月 21日

1990年の春休み.32 パキスタン篇

<初めて読まれる方へ>
この旅行記は、私が大学卒業旅行でタイ・インド・パキスタン・ネパールを一ヶ月半まわっていたときの日記を、不定期に載せているものです。文章(註・レート換算含む)はすべて22歳当時のままです。
前回までのあらすじ
ペシャワールでバザールをうろうろする数日間を楽しんだあと、ラホールへ。

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ペシャワールのフライングコーチ乗り場で。
発車までの時間、しゃべっていた。


2月16日(金)晴
 ホテルの食堂で朝食(食パン4枚)をとった後、ペシャワールを離れラホールに戻るため、フライングコーチ(長距離バス)に乗る。
 ラッキーなことに最前列の席に座れた。フロントガラスに、なぜか弾痕のような派手なヒビが入っていてびっくりした。しかしやがてそのガラス越しに風景の写真を撮るとなかなかおもしろいということに気づき、喜んでばしゃばしゃ撮る。

 今日は9時間乗ったので、書くことはいろいろあります。
 今日はいつになく調子がいいのか、久しぶりにバスの中で本を読んでいました。『途方にくれて(立松和平)』を半分くらい。ちょっと読書すると、他にもあれこれ読みたくなってしまう。果たして読めるだろうか……
 その場その場でなにを考えていたか日記を書くときになって忘れないようにするため、まめにメモを取ることにした。こんなに日記を書くことに真摯になっちゃって、いったいどうするつもりなのよ、と我ながら不思議。このノートを公表するわけでもないでしょうに。
 しかしメモを取って日記に再現すると、どうしても単発的なつながりのない文章になってしまうのだ。というわけで今日は箇条書きの形式にした。

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最前列で喜んでカメラをかまえるアタシ。ミラーに映っています。

・今日は、カメラを風景に向けることにした。そうするとやはり、ただぼけーと眺めていただけの景色を、カメラのレンズの目となって見てしまう。こうあってほしい!と頭のなかで組み立てた景色を、たとえば菜の花がバアーッと、果てしなく遠くまで広がって見える……というようなのを、必死で探してしまう。遠景と近景の組み合わせも考えて、どんどん欲が出る。

・私はやはりケッテー的に川にヨワイのでした。インダス川の支流を渡った。しかしそれはあとで地図を見て初めて知った。そのときはただ「水が青くてぐにゃぐにゃ蛇行してて、なんかすごく魅力的な川だなー。」と思って写真を撮っただけであった。
 でも、川は水が青いのがいい川とは限らない。ということが、突然わかった。赤い川も、ドロの川も、いい川はいい川。惹かれていく。

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なべて世はこともなし……

・ロバはなぜカナシイか!もわかった。ロバに乗ったじいちゃんが埃っぽい道端をのろのろ行くのを見かけ、あれは素晴らしい被写体だ、撮りたい!と思ったのだがバスがすごいスピードなので、チャンスを逃した。
 じいちゃんは痩せこけていた。ロバも痩せていて、下を向いて歩いていた。そして口もとが、ちょっとだけ笑っているように見える。二人の姿はとっても悲しみに満ちあふれていた。

・私たちのバスのすぐ前を、黒い牛がぎっしり積んだトラックがしばらくの間走っていた。
 黒光りした牛の尻が、振動でプルプルするのを楽しく眺める。彼らの、立ちっぱなしで途方に暮れたような運ばれ方も、すごくいい。

・風景を眺めていると、日本の風景と較べていく。
 日本には、こういう茫漠とした広がりはないけれど、したたるような緑、緑がつくるむっとした湿気、というようなものがある、と思った。やっぱり圧倒的に乾いてるよ、ここは。この、パキスタンの風景を思い出すたびに、乾いた空気もあわせて思い出すんだろうな。

・日本だったら、絶対「御神木」なんて言われたり、県指定の保護を受けちゃうような、突拍子もなく大きい立派な木がいくつもあった。でもイスラム教は唯一神崇拝だから、木がいくら長生きしてもだれも拝んでくれない。

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トヨタのトラックにめいっぱい積んでいる荷物は、なんだろう?
乗り出してカメラをかまえています。

・日本ではもはや絶滅寸前のスピッツ(当時。いまはまた流行っているみたい)が、こっちではけっこう飼われているようなのですね。鎖でつないで散歩させているのを見ると、一面土色の風景のなかでスバラシクかわいく見える。だって普通の犬どもがあまりにもひどいので。

・撮りたくて結局ダメだったのは、延びていく線路。あれはイイのよネー。
 道の右と左で、全く風景のちがうことがある。これはどうしたことでしょう。道が最初にあって、それから畑や街ができたのか……逆かな?道が境界をつくるというようなことはあるのでしょうか。

 セリームとシャーが、バスの発着場までバイクで迎えに来てくれた(*1)。
 たった4日間顔を見なかっただけなのに、なつかしーー気がした。バイクの後ろに乗り、またセリームの家にお世話になりに行く。

*1・・・お忘れかもしれないので念のため。私たちはラホールで、偶然知り合った友人セリーム(日本人の妻がいる22歳)の家に泊まっていた。彼はシェキ(スケベで気持ち悪い26歳)のことを私たちが嫌っているのを悟り、なるべくシェキを私たちに近づけないようにして、シャー(プレイボーイと名高い21歳)とともに迎えに来た。

by apakaba | 2006-07-21 16:49 | 1990年の春休み | Comments(3)
Commented by 紫陽花。 at 2006-07-22 06:56 x
>このノートを公表するわけでもないでしょうに
まさかこんな時代が来るとはねえ(しみじみ)

>またセリームの家にお世話になりに行く。
まったく、この頃から○レンチだったのね、おばさんは心配だー。
Commented by K国 at 2006-07-22 07:34 x
同じ家に戻るのですか、20代の男だったら(自分が20代でも)カン違いするのでは(惚れられたか、、とか)

そうか~イスラムは一神教なので、大木もただの大木なんですね
八百万の神がいる日本では、巨石、大木、裏山にまで神様がいる
地震、台風、山国の日本は雨が降らないと田畑が出来ず、降り過ぎると
水害になる、春夏秋冬に災害の危機がある国の人々は拝める物は
何でも拝んで平穏を祈ったのでしょう
よその国に行って、日本の良し悪しに気がつくことが多い
Commented by apakaba at 2006-07-22 07:49
1990年へ。
紫陽花。さん、公表できない部分は公表しておりませんのよ。
破廉恥な記述は全部カットです!

K国さん、男のところへ転がり込むというと破廉恥そのものですが、なにしろもう、あの家族の女性たちに引き留められていたので。

>よその国に行って、日本の良し悪しに気がつくことが多い

生活習慣から宗教から、いろんな場面で相対化できるようになりますよね。


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