あぱかば・ブログ篇

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2006年 09月 12日

ビュフェ美術館にて

先月末に箱根へ一泊旅行をしたとき、クレマチスの丘という、美術館や庭園やレストランなどの集まった複合施設へも足を伸ばした。
施設のひとつであるビュフェ美術館だけを見た。
開催中の企画展は、ビュフェとアナベル 愛と美の軌跡展というものだった(会期9月26日まで)。

ベルナール・ビュフェという画家には、さほど興味はない。
生まれる時代がもうあと50年下っていたら、画家ではなくグラフィックデザイナーとして世界一になっていたかもな……とは思うけれど。グラフィカルな才能は感じるが、私にとって“いつまでも見ていたい”というほどの絵ではない。

この企画展は、ビュフェの愛妻アナベルとの出会いと、彼女にインスピレーションを受けてからの創作活動に焦点を当てている。
アナベルに出会うまで、彼の作風は暗く、色彩がとぼしく、出口の見えないような陰鬱さがあった。
彼女が生涯のミューズとなって、彼の絵に明るい色彩と人生を肯定するような画風があらわれた。
絵の変遷をたどればそれはあきらかで、なるほど感動的なものだった。
芸術家にとってのsignificant others(=重要な他者)の存在が、いかに彼の創作意欲をかきたてるものなのか、というのが企画のテーマだ。

しかしあまりにも、この企画はアナベルに良いようにできている企画展に見えてしまった。
それで少ーし、私と夫はこっぱずかしい気持ちになった。

「どうよ?ビュフェ。」(夫)
「うーん。まあ、絵はもともとたいして好みじゃないけど……むしろ、この二人を撮った写真がおもしろかったな。写真がよかった。」
「やっぱり!?オレもそう!そうなんだよ、絵はさておき、写真なんだよなぁ。ガイジンの写真はおもしれえんだよな。ガイジンはなんでこう写真がうまいかね。」
「展示はちょっとさ、妻との愛ばっかりでなぁ、ううむ。こんなはずないだろって思っちゃう。まあ愛妻家だっていうのはわかったけど。それにしてもね。他に女がいたに決まってるだろうし……」
「決まってんだろ、若くして名声を手にして、写真見りゃいい男だしよ。あんなのが女房だけなんてありえねーよ。まあ、これはこれで妻側の展示ってことで。」
「日本人はこういう企画、好きだしね。夫婦愛で組み立てればだれでも喜ぶじゃん、重要な他者とか言っちゃって。ピカソの突き抜けッぷりとはちがうなあと。」

とかなんとか、口の悪いお客だったのだが、最晩年に描いた、自分の家族の肖像画はいいなと思った。
妻アナベルと、娘と息子、端っこにキャンバスに向かっている自分も入った、4人が描かれている。
死の直前なので、自分はもちろん、しわくちゃの老人。
息子の額にも皺が出ていて、生え際もわずかに後退しているように見える。
娘も若々しいお嬢さんという雰囲気ではなく、服装などからしてすでに中年らしい。
ところが、ひとりアナベルだけが——まったく年老いていない。
あとの3人には、流れてきた歳月が感じられるのに、彼女だけが、初めて彼と出会ったころの、二十歳そこそこの華奢な少年のような彼女のままなのだ。
これには愛を感じた。
「愛してたんだね。」
「妻を愛していたのはたしかなんだろうな。」
と、二人で話した。

by apakaba | 2006-09-12 15:54 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(21)
Commented by ogawa at 2006-09-12 22:32 x
ベルナール・ビュフェですか。
何年か前に亡くなった画家ですね、私はリトグラフのイメージが強いですね。
あんまり好みじゃないけど・・・(^^;;
箱根にそんな美術館があるのですね・・・ぜんぜん知らなかった。
日本で、そんなメジャーな画家だったかなぁ?

たしかに画家よりグラフィックデザイナーだったら、もっと知られて
いたかもしれないですね。
アナベルをモチーフにした作品も知っていますが、年をとった自分と
若いままの妻の作品もあるのですね。
それはちょっと見てみたいなぁ。

Commented by apakaba at 2006-09-12 22:57
箱根ではなくて、それは沼津(とか三島)からすぐです。
ビュフェは、晩年に近づくにつれ、どんどん値段が上がってきたんですよね。
大学生のころ、新宿の京王プラザホテルで展示即売会をやっていて、ふらふら〜と行ってみたら、オウ、別世界。お金持ちのおばさまが絵を買っていました。
私もビュフェはあまり興味ないですが、ふたりを記録した写真がおもしろかった。
初めて出会った日の写真が、「愛の軌跡展」のリンクに出ています。若いふたりと、そのふたりを見ているガラス窓の中の老婆。すごい構図ですよ。
Commented by のこラクダ at 2006-09-13 01:01 x
なんだよラクダ家のすぐ近くじゃん声かけてよー。
って夫婦水入らずにお邪魔はイケナイか。(笑)

いつもいつも行きたい行きたいと言いつつまだ行けてない場所なのです日差しが弱くなったら行こうと思っているのです。

本題に戻って妻だけが若く、ですか。

若く描いても描かなくてもきっと愛を感じるだろうけど、
へえー。
見てみたい。その先の愛を。ウム。
Commented by K国 at 2006-09-13 08:03 x
うちにもポスターが1枚あります、テーブルの上にチューリップを
無造作に置いてある絵、内装屋がポスター類を仕入れてる在庫の中から
数枚買った内の一枚、色とデザインで買いました
ビュッフェの絵はそれしか知りませんが、人となりは初めて知りました
嫁さんだけ若く描く、、、、おそろしかった、のかな?
Commented by ぴよ at 2006-09-13 09:17 x
ビュッフェかぁ・・・あんまり興味のない画家さんだったなぁ。
亡くなった時に規模は小さいけど回顧展があって、見に行った記憶が。
日本では余りウケる画風ではありませんよね。
ぴよは「ポスター画家」みたいな位置付けで覚えてましたよ。
(ちょっと違うだろうけど、画風は明らかにポスター系ですわね)
日本ではポスター画家系だとロートレックやミュシャ辺りが人気ですもんね。

いや、それにしてもイイ男ですね。この方。
こんなイイ男に死ぬ間際までうんと愛されたなら、女として自慢でしょう。
ロートレックに愛されるよりコチラに愛された方が女としては断然嬉しいな(笑)
Commented by apakaba at 2006-09-13 10:53
ビュフェレス。
のこのこさん、そうなの、きっと近いんだろうなーと思っていたんだけど、犬もコドモもいないのに押しかけてもねえ……と思って。
いや、たしかに二人でゴタゴタ言いましたがやっぱり愛は感じましたよ。うん。
「この人を、ずっと描いていきたい」という、インスピレーションの源泉みたいなものは感じました。

K国さん、
>おそろしかった、のかな?
私もちらっとそう思ってしまった。
愛妻家と恐妻家は紙一重……ですからねえ。

いったん。
Commented by apakaba at 2006-09-13 11:01
ビュフェつづき。
ぴよさん、彼の(画家というよりも)グラフィックデザイナーっぽい才能はあのサインにも感じるのです。あのサイン、とりあえずかっこええ。
でも、晩年にパーキンソン病になり、それを苦しんで自殺してしまいました。
アナベルは取り残されてしまったんですね。愛してるならとにかく生きていろ!と言いたかったけど……周りにはわからないもんね。

>ロートレックに愛されるよりコチラに愛された方が女としては断然嬉しいな
これこれ……でもロートレックもうんと幼いころの写真は、人形みたいにかわいくてビックリでした。
Commented by Morikon at 2006-09-13 12:03 x
やっぱり、オトコは顔なのかぁ・・・オンナも同じかな。
どうせなら、昼と夜の顔が・・・(BBSへループ)。
Commented by apakaba at 2006-09-13 12:15
じゃあMorikonさんはきれーな女とブサイクな女とどっちがいいのっ!ストレートに聞く。
Commented by apakaba at 2006-09-13 12:21
昼の顔と夜の顔は、まあ古来いわれることですが。
でも実際にその両方を見ることのできる幸運な人はものすごく限られているわけですよ。
ある女性を見て、「その両方を見たい」と切望する男の全体数の何パーセントが、いったい両方を見ることができるのか。
パーセンテージが低いほど、その女性がいい女ってことですね。
実際の数÷妄想の数なので、割る数が大きくなると(ああ、生徒に割り算を教えている癖が)
Commented by Morikon at 2006-09-13 13:18 x
そりゃ、条件が同じ(性格美人)なら間違いなく前者。
書くまでもなかったですね(苦笑)
Commented by apakaba at 2006-09-13 15:22
はいそのとおり、おつかれさまでした。
割り算はできましたか?
Commented by ミケ at 2006-09-13 18:04 x
この人の絵、キライでした。
以前の勤め先の院長が大好きで何枚も購入して
院内のそこここに飾ってあったのですが、
薄暗い絵の前を歩く元気のない病人や怪我人・・・
なんかコワかったデス。
美術館で見たらもっと印象が違ったかもしれません。
Commented by apakaba at 2006-09-13 18:14
病院には不向きですよね。輪郭を取りすぎていて。
この美術館は、とても建物の造りがおもしろいのです。
陽光がうまく入り、広い館内の真ん中にとてもゆるやかなスロープがついていて。
幸せな絵もたくさんあります。
まあ、私も大して好きでもないんですが、歩くのが楽しかった。
Commented by Morikon at 2006-09-13 22:48 x
実際の数(一名:トニ・ーレオン)÷妄想の数(一名:マキ先生)
=100%
Commented by apakaba at 2006-09-13 23:20
いや、あの、生きている限り会うことのなさそうな人で割っても
Commented by apakaba at 2006-09-13 23:21
あれ?ちがうか。「割られる数」が先にくるんだ。
Commented by Morikon at 2006-09-14 00:25 x
↑納得のいくコメントが浮かばなかったので、
苦しまぎれに書いてみました、アハハ・・・。
Commented by apakaba at 2006-09-14 08:23
でもなんかMorikonさんはトニー・レオンにこだわっているように見受けられる。
ワタクシの某告白が衝撃だったのかしら。
訳を知りたければ、2046を見るべし!!あれ見たら、死ぬ!
Commented by Morikon at 2006-09-14 12:29 x
いや~トニー・レオンにはこだわってないし、衝撃は受けてないですよ、
ルックスならアンディ・ラウのほうが男前だと思いますし。

「2046」って、キムタクが出てるヤツですよね?
あんまり良い評価は見聞きしませんが、どう死ぬのかは気になる。
悶絶・失神・昇天・・・。

さて、メシ食ったら授業参観~保護者会じゃ。
Commented by apakaba at 2006-09-14 12:55
アンディ・ラウは男前ですよ!!!!!
笑うとバカっぽく見えるところがまたたまんないです!
ええと2046のキムタクは、「オレと一緒に行かないか」のセリフひとつ言うだけでもうフルイナフです。オウ、言われてみてぇー。キムタクじゃ一緒には行かないけど。
ええと死ぬのはコン・リーに長々とキスするシーンです。まるで食べられてしまいそうです。
ビュフェからズレにズレましたねえ。おほほ。


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