2006年 12月 15日
先日、小学校へ個人面談の用事で行ってきた。 廊下で順番を待っているとき、掲示物を見ていた。 3年生の書いた初めての「詩」が並べて貼ってあった。 数日前におこなわれた、校内マラソン大会の感想を書いた詩だった。 どの子も上手に書けている。感心した。 でも、ひとつ気になった。 走る前に、緊張で足ががくがく、心臓が“バクバク”……、ん、バクバク? ドキドキじゃないの? 題材が題材なので、詩の中で、みんな緊張している。 だから何人もの子供が、心臓の音を書いている。 ドキドキと書いていたのは一人だけ、あとは全員が“バクバク”という擬音語を使っていた。 「あたしさぁ〜、緊張しまくりでぇー、もー心臓バクバクでー」 というような、若い人がわざと品を落として使う新しい表現というイメージがある。 聞き慣れなかったころは、耳への新しみはあるけど品のない音だなと思っていた。 ところが、娘が宿題で持ち帰ってきた国語のプリントにも、書いてあった。 うさぎを抱っこしたことが書いてある詩で、大人が書いたものだ。 うさぎの心臓はバクバクいっていた……と。 擬態語や擬音語って、絶対的な正解はないんだと思う。 以前、濃密なコトバ・うすーいコトバという記事を書いた。 うちの子供たちの間だけで通じる「おなかが“おべっ”とする」という擬態語について書いたのだが、うちの子供たちは、擬態語・擬音語を非常にたくさん作る。 とくに長男の「ササニシキ」がたくさん言う。 わざわざ作るのではなく、自然に口をついて、オリジナルの言葉がぽんぽん発明されていく。 「この紙、きゅびきゅびする」 「とのとのしてる味」 とか。 長男は擬態語だけでなく、たとえば脂っこい料理を食べ過ぎたときに、「ああ……あぶらい。」とか言い出す。 これらの濃密さ・オリジナリティーに較べたら、心臓バクバクなど、目くじら立てるほどのものではないのだろう。 ただ、うちの子供は決して「今日はフライドポテトを食べ過ぎて、おなかがあぶらいです。」などと作文に書かないし、家族の前以外でこんな擬音語は言わない。 心臓バクバクに品のなさを感じて引っかかるのはなぜだろうか。 私の頭が固いのだろうか。
by apakaba
| 2006-12-15 18:04
| 文芸・文学・言語
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Comments(24)
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キョヤジ
at 2006-12-15 18:10
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「頭の悪い」言葉は勘弁してくれだ。
その辺りに引っかかるんじゃないの?
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apakaba at 2006-12-15 18:23
「“おべっ”とする」が頭いいとも思えないんだが……
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apakaba at 2006-12-15 18:24
キョヤジさんはおべっとする?あるいはおべおべする?
胃腸の弱い人には、「ああ、する、する」とワカッテしまうこともあるの。
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キョヤジ
at 2006-12-15 19:37
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喜楽院
at 2006-12-15 19:40
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「言葉が乱れている。」ので「正しい日本語を使おう。」という
意見もあるし,「言葉は生きている。」だから「時代とともに 変化していって当然だ。」という意見もあります。 この二つの意見は、完全に対立しているわけではありませんが、 ある程度それぞれ違う方向を見ていると思います。 どっちがいいのか、私には判断出来る規準がありませんが、 見ている限り世の人々は比較的、新しい言葉に対して 保守的な目を持っていると思います。 多分、新しい言葉が次から次へと出てくるのは「不便なことで あって、あまり都合の良いことではない。」と感覚的に 察知しているのだ、と思われます。 ですから、一時的におかしな言葉だと思われるものが流行っても、 じきに飽きられて、もとの言葉に戻ってしまうケースが ほとんどなのは、そのせいなのではないでしょうか。 (続く)
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喜楽院
at 2006-12-15 19:42
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中には極めて稀なケースとして、「心臓バクバク」みたいな
新しい言葉がどこからか生まれ、いつの間にか多くの人たちの 賛同を得て、日本語を使用するほとんどの人たちに通用する 言葉になることもあります。いい悪いはともかく、昔は 無かったのに、いつの間にか幾多の試練を乗り切って 定着してしまった言葉には、なんらかのそれ相当の「力」が あったのだと思います。ただ、この「バクバク」よりも「ドキドキ」の 方に、潜在的に更に圧倒的な「力」があったなら、また長い年月を かけて、「バクバク」は「ドキドキ」に駆逐されてしまうことでしょう。
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maryqueen at 2006-12-15 21:57
「ドキドキ」っていうのも、最初は皆に、否定されたのかな?
いつ頃から使われてるの?
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apakaba at 2006-12-15 22:01
ナルホド。@擬音語
キョヤジさん、ぼもぼもそしてしびしびかー。(……ノロウイルス大丈夫?) キョヤジさんは長男と共通するものがあるのかもしれない。 喜楽院さん、では悲観的にならずに待っていれば淘汰されるかもしれないのですね。 ようしいい気味だバクバク。
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apakaba at 2006-12-15 22:04
メリーさん、そんな質問されても日本語学者じゃないんだから……擬音語ってすご〜〜く不思議な言葉だと思う。
この前、コーシローが部屋の中を歩いていたら、生徒が「てちてち歩いてる」というのよね。 「てくてく」ではなく、てちてちは漫画の擬音語風でしょ。 爪の音が床にあたる音が、たしかにてくてくよりてちてちの方が合ってたのよね。
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Morikon
at 2006-12-15 22:08
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apakaba at 2006-12-15 22:14
さっきこのブログを長男に読ませたら、「心臓ってバクバクっていうじゃん、本当に。緊張することがあるときにはドキドキだけど、走った後なんかはバクバクいってるでしょう」と。
ドキドキだけが大正解ではないですよね。
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K国
at 2006-12-16 07:30
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日本で擬音語が多いのはマンガのせいだとどこかで見たな~。
溢れ返ってますからね、マンガが外国に出たときにその国で通用する擬音語を見つけないと意味が分からなくなるらしい 擬音語を作るのが上手い国みたいです、たしかに緊張する時はドキドキで走った後はバクバクのほうが適切な気がする
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ぴよ
at 2006-12-16 08:22
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うーん。
普通は「ドキドキ」って表現するけど、すっごく緊張したり運動した後で 心拍数が上がってる時は「バクバク」と表現していますよ。 より心音を強調して表現したい時に使いますね。 昔は使われなかったのに今は当たり前に使用されるようになった新語、 逆に今は良くない言葉として扱われるのに昔は普通(良い)表現だった言葉。 時代と共に言葉や表現方法は変化していくモノだと思いますね。 例えば「貴様」という二人称は、昔は目上の相手に対する尊敬語だったけど 今では相手を罵倒する時等に使われる「悪い言葉」になってますよね。 擬態語・擬音語等の表現方法も長い年月を経て変化していくものなんでしょう。
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apakaba at 2006-12-16 09:07
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那由他
at 2006-12-16 21:46
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私もウサギの鼓動に「バクバク」は、ちょっと不釣合いだと思います。
「バクバク」は、ぴよさんが書き込みしておられるように、激しい運動後の、息も上がっている様子が感じられます。 「切羽詰った感じ」がします。 詩の前後関係が分からないのですが、例えば、犬に追いかけられたウサギの心臓なら、「バクバク」になるかもしれません。 普通のウサギの鼓動はどんなものか知らないので、小学生の時、飼育係の時もそうでない時も、友達と、ウサギ・ニワトリ・孔雀を飼育していた飼育小屋に入り浸っていた娘に聞いてみました。 「ウサギの鼓動は、人間のより、強くて、ドキンドキンって感じかな。」とのこと。 念のため、「バクバクって感じはする?」と聞いたら、「それはないかな。」とのことでした。 詩を書いた人が、「バクバク」と感じ、それを表現したのでしょうけど、あまり共感を得ない表現だったということでしょう。
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那由他
at 2006-12-16 21:47
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日本語はオノマトぺ(擬音語・擬態語)が多いのが特徴だと、井上ひさしさんが書いておられました。
昔話でも、オノマトペのおかげで、情景がイキイキと聞き手の伝わる効果が有ります。 重ね言葉のオノマトペは、書き言葉より、くだけた話し言葉から出ているような気がします。 NHK大阪のアナウンサーさんが、大阪弁について本を書かれたのですが(「大阪弁スピリッツ」佐藤誠・著)の紹介で、ご本人の言葉として、大阪弁は「車がダ~っと走ってきて、ド~ンとあたったんや!」みたいに、オノマトペが多いと言っておられました。 「てちてち」に関しては、娘の愛読書の「少年陰陽師」シリーズ(ogawaさんのお嬢さんも読んでおられると書いておられたように記憶していますが)もののけの「もっくん」の歩き方として、初めて目にしました。 「てくてく」でもなく「とことこ」でもなく「てちてち」…。 これは、なんとなく、合ってるような気がしました。
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那由他
at 2006-12-16 21:47
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新しい表現が、世の中で市民権を得るまでは、内輪だけの「符牒」のようなものから、始まるように思います。
それが表にも広まって、最初は、目新しく新鮮で、使う人が多くなり、だんだん多くの人の共感を呼び、普通の言葉使いになり、そして、手垢の付いた表現に変わっていくのでしょう。 その中で、手垢が付くほど、広まらないうちに消えていく言葉もあるでしょう。 自然淘汰というか、言葉は個人だけのものではなく、言い交わすものですから、その場にいる人たちの思いによって、進化したり、退化したり、消滅したり。 「言葉狩り」のように、人為的にどうこうしようとしても、言葉はナマモノで、「なるようになる」ものなんだろうなぁと思います。
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kaneniwa at 2006-12-16 22:38
オノマトぺ(擬音語・擬態語)論議がものすごく盛り上がって
いますね。生き物ではなくて蒸気機関の心臓音なのですが、 私のところのブログに今、美空ひばりのJAZZアルバムに ついて書いていて、次回かその次の記事に、美空ひばりの 歌う「A列車で行こう」のレビューを書くのですが、そのイントロが スネアドラムとかすかなシンバルの音だけで見事に 「シュッシュッポッポ」という擬音を表現しているのです。 A列車って、作曲者のデューク・エリントンの時代の最新の 乗り物である地下鉄のことじゃないの?というツッコミは 置いておいて、この音がアメリカ人に「チューチュー」 (チューチュートレインのチューチューはアメリカ人の蒸気機関車 の擬音)と聞こえるのかどうか、聞かせてみたいと思います。 なんせコケコッコーはクックドゥルドゥルドゥーだもんね。 BYマーヒー
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apakaba at 2006-12-18 08:38
擬音語放置気味どうもすみませんでした。週末いろいろ遊んでいて。
はなまちさん、口から泡、あははは。 心臓が「ばくはつ」しそうの「ばく」が元だとも聞きますね。 那由他さん、仲間内の「符丁」や、その地方のローカルなコトバが全国に広がっていくスピードは、テレビがあるととっても速いですよね。 大阪弁なのか知りませんが、「“ぐわーっ”行って“がーっ”食べて」とかいうのは、子供たちなどよく使いますが私はなじまないものを感じてしまいます。 たしかに会話に勢いはつくけど、とくに使ってみようとは思わないというか……でも若い人は抵抗ないどころか、楽しいコトバ使いのように感じるみたいです。 マーヒーさん、そちらの美空ひばりレビュー連載、とても楽しく読んでいますよ。 スネアドラム、ううーむ聴きたい。 ジャズドラムの粘るようなうねるような音、いいですよねえ。 美空ひばりの持ち歌では、一番好きなのは“悲しき口笛”なんですが、天才でしたねあの人は。
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那由他
at 2006-12-18 09:41
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>たしかに会話に勢いはつくけど、とくに使ってみようとは思わないというか……
言葉使いも、個性の表現ですし、伝えたい内容を、使いたい言葉で 、表現すればいいんでしょうね。 自分が馴染まない言葉は、使わないのが、一番でしょう。 ところで、12月17日日経新聞に、こんな本が紹介されてました。 詩人の蜂飼耳さん(この人のこと、知らないです。)が、紹介した本。 「暮らしのことば擬音・擬態語辞典」講談社 お茶漬けを食べる音について、ちょっと書いてはりました。 お茶漬けは「さらさら」か「ざぶざぶ」か・・・??? この辞典、読む辞典としても、面白そうです。 これって、シンクロニシティ?
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apakaba at 2006-12-18 09:58
おお、久しぶりに那由他さんのキメゼリフが……
ざぶざぶっていう地方(というのかな)あるのですか!ひょええ! 手洗いのお洗濯か、海に波をかき分けて入っていく音……としか思えなかった私は想像力が弱いのかしら。
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49
at 2009-07-18 19:16
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品のないって言うのは…。
そもそも、擬音語・擬態語はその人その人の感性で受け取られたり 新しくできていくものです。 どきどきよりばくばくのほうが激しく高鳴って手がつけられない状態に聞こえる方も中にはいらっしゃるかもしれません。 品のない・・・などとおっしゃる前に 偏った考えを直していったらいかがでしょう。
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apakaba at 2009-07-18 20:36
どなたか存じませんがだいぶ古い話にわざわざアドバイスありがとうございます。
今後も精進してまいりますのでよろしくお願いします。 |
アバウト
以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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