2007年 01月 26日

ドトールの一隅で

「アキタコマチ」が鼻とのどの風邪を引き、学校を休んでいる。
午前中に、病院へ行った。
熱はないので、そのままお昼ごはんをどこかで食べようということになり、子供に聞くと「ドトールがいい」という。安上がりだな。

ドトールで向かい合わせに座り、サンドイッチなどを食べていると、隣の席のお年寄りが、指を3本立てながら「何年生?3年生?」と、とつぜん息子に向かって話しかけてきた。
つぶらな目の、和製サンタクロースとでもいうような風貌の人だ。
座席の横に杖が置いてあり、ウールの中折れ帽をかぶっていた。
「6年生です。ろく、ねん、せい、です。」
息子は子供っぽい顔つきなので幼く見られたようだが、年寄り慣れしているので、耳が遠そうだと見るとはきはきした声を作って答えた。

「そーぅ、6年生。もうすぐ中学生。おかーさん、お子さん何人?ひとり?ふたり?」
指を独特の形に立てる。
そのおじいちゃんは私と隣り合っているので、私の腕をつつきながら質問する。
「3人です。さん、にん。」
私も指を3本立てて答えた。だいぶ、耳が遠そう。声も老人らしくかすれている。
「ほーぅ。3人。兄弟どんなふうなの、弟、妹、この子が一番上なの?」
私の腕をバシバシ。
「この子が真ん中で、お兄ちゃんと妹がいるんです。」
「そーぅなの。へえー。じゃあお兄ちゃんは、高校生だ。」
「中3なんで、もうすぐ高校生です。」
「中3。3年生。3年生なの、もうすぐ高校生、ほーぉ。」
いつの間にか「アキタコマチ」に向かってしゃべっている。あれ、「アキタコマチ」が中3になってしまったようだ。
「アキタコマチ」はとくに訂正もせず、笑顔でうんうんと黙ってうなずいている。

「なんに、なる。」
とつぜん聞く。
「えっ。」
息子はパンをもぐもぐやりながらとまどう。
「なんになるの。んー、大人になったら。医者になるの。」
「いしゃ……うーん……?」
あいまいに笑って首をかしげる。
「はっはっはっ、勉強をいっぱいして、医者になりなさい。ねえおかーさん。」
私の腕をバシバシ。

「私の孫はね、医科歯科大あるでしょ、御茶ノ水の。医科歯科を出てね、いま、留学してるのアメリカに。それでもうすぐ帰ってくるの。」
「はあー、そうですか。」
懐からごそごそとA4サイズくらいの紙を取り出す。
どこかの診察券が拡大コピーしてある。
名前の欄に、なぜか『三女 洋子の夫』と書いてある。
「これね、私の娘の旦那の病院なの。脳神経科。」
「そうなんですか。」
「医者はいいよーハハハ。ね、お兄ちゃんも医者になりなさい。」
腕をバシバシ。

お財布の中を長いこと探っている。
くしゃくしゃの名刺を出した。
「私はね、医者なの。ほら『医師』って書いてあるでしょう。そうなの医者なんだよ。医者はいいよ。うんと勉強して、医者になりなさい。はっはっは。ねえおかーさん。」
腕をバシバシ。

甘そうなコーヒーが残っているおじいちゃんを残し、私たちは先に席を立った。
おじいちゃんは中折れ帽を持ち上げた。
外出時はいつも野球帽をかぶっている「アキタコマチ」も、帽子をちょっと取った。
「じゃあ、さようならあ。失礼しまーす。」
帽子を上げた息子を指さして「ねえ、おかーさん。」
おじいちゃんはうれしそうな顔をした。

「おかーさん、あの名刺さ……」
「ふふふ、ヘンだったね。名前と住所と、『医師』としか書いてないもんね。なんという病院の何科の医者なんだかさっぱりわからない。あれってきっと迷子札と同じなのよ。あのおじいちゃんはきっと昔はお医者さんだったのね。でももう引退しちゃって、働いてないのね。」
「そうだよね。あの名刺じゃうちのお父さんが学校名も書かないで『教師』だけなのと同じだもん。よたよただし、もうとっくに働いてないよ。」
「たぶん、あのおじいちゃんの子供たちが、作って持たせてあげているのね。」
「そだね。ふふふ。」

by apakaba | 2007-01-26 17:35 | 生活の話題 | Comments(12)
Commented by 喜楽院 at 2007-01-27 17:45 x
23年前の、東京・渋谷、初めて入ったドトールで食べた、
ジャーマンドッグ@¥180は大変おいしかった。感動しました。
あれは忘れられません。

23年後、先日、長野自動車道、梓川SA下り線のドトールで
食べたジャーマンドッグ@¥190。これもおいしかった。
唸りました。



先週、長野自動車道、梓川SA下り線を利用した際、
中にドトールがありました。ほほお、今時のSAって
ドトールが入っているとこがあるんかい!って感心しながら
カウンターに近づき、あらためてよくメニューを眺めたら、
あらあら、食い物のメニューが昔に比べてやたら沢山ある。
でも、ジャーマンドッグをオーダーする。食べたいって思った。
¥190.
あらま。23年経って、¥10しか値上がってないし。
しかも、23年前は消費税なかったんだから、実質¥1しか
上がってない!。
かぶりつく。
23年前のリプレイ!。うまいうまい。
Commented by apakaba at 2007-01-27 18:06
はははははは……
ドトールは食い物系ががんばっていますよね。
ジャーマンドッグは、ケチャップじゃないんだ!マスタードなんだぁ!なぜならジャーマンだし!というところが新しかったですよね。
でも、「ケチャップにかえてください」と思いっきりジャーマンドッグをおとしめるオーダーも受け付けてくれるんですよ。「ケチャップもマスタードもどっちも」というわがままも受け付けてくれるんですよ!うへ。
Commented by K国 at 2007-01-27 19:22 x
似たような年寄りを抱えていますので、迷子札ですか。
うちの年よりは迷子にはならないけど、30分前の話を忘れて同じことを言う、怒らずに何度でも聞いてあげるほうが良いと言うけど、
そこまで人間できていない、ついさっき聞いたと言ってしまう。
まっ!陽気のボケるなら良しでしょう。
Commented by apakaba at 2007-01-27 19:39
子供とは合うみたいですね。
60還暦とは本当によくいったもんだなあと思います。
Commented by 喜楽院 at 2007-01-28 07:50 x
書き直す前の文章が残っていました。
変になっちゃいました。すみません。
あ~あ。ちょっぴり自己嫌悪。

また、本題とは関係ないコメントでした。すみません。

あ。そういえばケチャップじゃなくてマスタードだな。
(そう言われて、23年の時を越え、その事実に気付いて苦笑。)
しかも、ケチャップに代えてくれるとは…。ドトール恐るべし。
Commented by apakaba at 2007-01-28 12:11
文がヘンですかあ?どこが?おもしろかったけど。
本題とはたしかに関係ないですよね。でもおもしろいのでついつい引き込まれてしまいますね。
私も、サラリーマン時代に「オレって味覚が子供なんだ。」という先輩に、「ケチャップジャーマン」のオーダーを教えてもらったのです。
それまで、出来合いものに注文つけるという発想がなかったので……マクドナルドで「ピクルス抜き」とかいう人って「ナニモノなの??」と思ってたし。
Commented by 喜楽院 at 2007-01-28 16:20 x
うん、あのジャーマンドッグはナカナカの曲者である。

最初、カブリつくと、
「あれ?フランスパンかや?」と一瞬、思う。
しかし、温かい、そして柔らかい。
更に噛む力をこめる。
ドッグの皮が、プチンとはじける感覚。
と、同時に口の中に飛び散る、やはり温かい肉汁。
あら…。きゃー。とても素敵。
そのまま、なかなか歯ごたえのあるパンを食いちぎる。
咀嚼する。
マスタードの、辛味よりも少し酸味がかった風味。
あ…。おいしいな、これ。

ちょっと陶然となってる自分に気付いたりする。
Commented by apakaba at 2007-01-28 17:58
う、これが書き直すはずだった決定稿なのか??
Commented by 喜楽院 at 2007-01-28 18:18 x
ご冗談を。
もちろん、真っ先に却下した没稿です。
どうもすみません。
Commented by apakaba at 2007-01-28 18:48
じゃあ決定稿はどこにあるんじゃ〜〜〜〜〜っ!
Commented by 喜楽院 at 2007-01-28 20:21 x
おつあきあい頂きましてありがとうございます。

一番最初の投稿の、アタマから6行でございます。
どうも、すみません。
Commented by apakaba at 2007-01-28 20:47
にゃんでちゅとーーーっ!??


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