2004年 12月 11日

ピカソ・躰とエロス展

明日で会期が終了してしまう『ピカソ 躰とエロス』展に、やっと行ってきた。

美術の世界ではピカソが一番好きと何度か書いているとおり、ピカソ展があれば、たいていは行っている。
今回の展示は、これまで私が行ったピカソ展の中でも、相当の上位に入る、高い展示内容だった。

色をたくさん使った大作もいいけれど、私はむしろいたずら書きの漫画みたいな、そこらへんにあったザラ紙に鉛筆でさっさっと描いたような作品が好き。
そういう絵の中に、彼のブレのなさ、迷いのなさがよく見えるのだ。
女性や子供を描くときの、二重まぶたのライン、唇のライン、顎のライン、いくら目を近づけて見ても、鉛筆の線を消して描き直した跡がなく、一気に描いたなとわかる。
それらの線は右にも左にも一ミリも動かしようがないほど完璧な軌跡を描いていて、シンプルなのに優美で、しかもひとめでピカソの線とわかって、この人は本当に本当に絵がうまいのだと見せつけられる。

ピカソと聞いてまずキュビスムを思い浮かべる人も多いだろう。
人間の身体や静物が、めちゃくちゃに伸びたりデフォルメされたり。
でも、あれらをいくら見ていても、「精神を病んでいる……」という感想が、彼に限ってまったく出てこないのである。
きら星の如く名を連ねる近代画家、それらの多くは——ドガ、ルドン、ゴッホ、ルソー、ユトリロなど——見れば見るほど、「病んでいる……(だからこそ、目を離せない魅力をたたえている)」と思わされるけれど、ピカソだけは、あそこまで無茶苦茶をやっても、心に不安をかきたてられることがない。
驚きに目を大きく見開いて、もっともっと見ることを欲する。
私生活も無茶苦茶、絵も破天荒、なのになぜか健全さがある。
あの素描の中で引かれたラインに表されるような“ブレのなさ”が、素地として根底にあるからだと思う。
それはきっと、彼の魂のブレのなさだ。
本来なら子供しか持ち得ない“凄み”だ。

子供は夢中になると周りが目に入らなくなるけれど、ピカソの作品は8万点あるともいわれているとおり、想像を絶する多作な芸術家だ。
そんなところもまるで子供そのものだ。
止まらない、止まらない、だって描きたくって、作りたくってしょうがないんだ!

“20世紀最大の芸術家”と言いならわされるとおり、観るたびに魅了されてしまう。

by apakaba | 2004-12-11 00:04 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(0)


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