2004年 08月 09日

カルロス・クライバー版「ばらの騎士」

すこし前の話題になるが、先月、指揮者カルロス・クライバーが亡くなったことを知った。
日本では、オペラ『ばらの騎士』の伝説的な名演で有名な人であった。
“この『ばら』を聴かずしてどの『ばら』を聴くのか”とまでいわれた演奏を、じつは一度だけ生で聴く幸運に恵まれた。

’94年、最後の日本公演となった『ばらの騎士』に行った。
ウィーンフィルを率いてきたクライバーのことを、当時は名前だけしか知らなかった。
それまでにも、ガラコンサートにも行ったことがあるし、英国ロイヤルオペラとか、ベルリンナントカとか、オペラには何度か行っていて、正直言うと「オペラ、……合わないなぁ。」という感想を持っていた。
ところが、クライバーの『ばらの騎士』の演奏はどうだ。
オペラであることを、忘れた。
あまりの演奏に、歌手の歌を聴くのを忘れてしまうのだ。
あの音色……熟成した赤ワインの複雑さ……赤、ばらの赤、こぼれるような紅い色だ。
人の声はどんな楽器よりもすばらしいと思っていたけれど、ああ、『ばら』の歌手の皆さまごめんなさい。歌声より、オーケストラボックスに釘づけでした。

パラドクスに満ちたこのオペラが、私のわずかながらのオペラ体験のうち、忘れえぬ一作となった。
指揮者の力とはこういうものなのか!ということを、生まれて初めて、どんな評論よりもたしかに、’94年に体験したのだった。
思い出の名指揮者が亡くなったことが残念だ。
あれほどの感動を味わえる指揮者は、いまなら誰だろうか。

by apakaba | 2004-08-09 01:02 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(0)


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