あぱかば・ブログ篇

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2007年 03月 21日

“日本”の正統的継承者として——125magazineのエキシビジョンへ

丸山晋一さんは私にとって特別な人だ。
初めて会ったのは、もう7年前になる、夏のデリー(メインサイト、インド旅行記参照)。
「チベット人たちの“幸せの表情”を撮りたい」と、きわめてあっさり言っていたカメラマンだった。
思いがけないことを言う人だなあと驚いた。

旅行から帰ってからもたまに会ったが、会うたびに、「もう二度と会えないのかもしれないなあ」と思わされた。
メールの返信はこないし、しまいに「あのねえメールというのは、必ず返信が来るものと期待してはならない道具なんだよ。みんな勘違いしている。」と居直られるし。
私もこれには呆れて笑ってしまい、必然的に疎遠になっていった。

「日本の写真界は、大御所でもなく、20代の若さばっかりの写真家でもなく、30代ががんばらなきゃいけないんだ。だから僕もがんばらなきゃって、思ってるわけ。うん。」
「アラーキーとシノヤマ較べてみて、アラーキーはいきなり頂点に達して、ずっと長い余生を送っている。シノヤマは年と共に、時代と共に変わり続けている。で、僕はシノヤマになりたいの。」
クスクス笑いながら、クールな外見と裏腹に、恥ずかしくなってくるような愚直なことをさらっと言う。
他はさておき、こと写真に関しては。
もっと会いたかったし、もっと話したかった。
しらふだと無口だから、酔っ払うまで飲ませて、そういう話をすらすらしゃべり出すのを聞くのがとても好きだった。
でも活動拠点をNYへ移し、やりとりも絶えて3年たった。
心のどこかで、
「どうしているかなあ。NYで活躍しているかな。いい写真撮れてるかな。」
と思っていた。
ずっと応援してますよ。
日本で作品を見られる機会があったら教えて。
とか、最後あたりのメールに書いたような気がする。

つい先日、3年ぶりにひょこっとメールが来た。
神宮前のギャラリーで作品が展示されているからどうぞ、という。
この人には弱いんだ。
たった2行くらいの、これ以上そっけなくできないくらいの短いメールでも、やはりさっそく、行ってしまうんだなあ。
でもたいしたことない作品だったら、困ったな、どう言おう……という一抹の不安を抱えつつ、神宮前のPaul Smith SPACE GALLERYへ。

ポール・スミスのオシャレな路面店の最上階がフリースペースになっており、そこで写真展をやっていた。
125magazineという、世界の写真家が参加する年2回発行の写真誌があるらしい。
毎回異なるテーマのもとに自由にイメージを広げた写真家たちが、それぞれの観点で作品を撮っていく。
一番新しいテーマは“日本”。
その作品のうちいくつかを、展示しているということだった。

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いつもながらカメラを忘れるワタシ。携帯で御免。

21人の写真家の作品が、数点ずつ展示してあった。
丸山さん以外は全員が外国人(欧米人中心と思われる)だった。
正直にそれらの人々への感想を言うと、あくまでも外面的に“外国人が見た不思議な国としてのニッポン”としか感じられなかった。
撮影技術は高いけれど、手を伸ばせばコツン、コツンと浅い底に突き当たってしまうような手応え。
目が吸い寄せられ、いつまでも見ていたいと感じるほどの作品はなかった。
ガイジンが和服をだらしなく着付けてカブキ調のメイクを施すことなど、古くさい手法だし見ていて汚らしい。
原宿の奇抜な男女や、学生服やゴシックロリータ調の女の子も、“今さら”と興ざめ。
典型的で日常的な一コマ、日本のどの家にもあるような毛布・カーテン・靴・スリッパなど、ノスタルジーは感じるものの、まあ、ありがち。
アニメ・漫画・昔話などに着想を得た作品も多く見られたが、「日本といえば、そうくるだろうなあ」という予想は行く前から立っていたことだった。

ホテルの上階から見下ろした、ビルの林立している東京の風景は、いいなと感じた。
浅めの焼きが、実際に目で見る東京のビルよりもはかなげで、撮り手の“執着心のない愛着”とでもいうような視線を感じた。
(ただ、これは私がいろいろなホテルの上階から、くり返し東京の街を見下ろしていることも手伝っているのかもしれない。)

さて、出展者の中でただ一人の日本人である丸山さんの作品には、思わず「ふふ、そうきたか。やるね。」とひとりでに笑顔が出て、足が止まった。
直球だった。
技術的なことは素人だからさっぱりわからないのだけど、ずばり「日本的」なイメージを写しとっていた。
この人は液体を上手に撮る。
はね上がり飛び散るしぶき、ぬめぬめと形を変え光沢を帯びる水、本業であるキレイな広告写真を撮っているときも、うまいなと思ってきた。
今回は血しぶきや、墨汁も含めて……液体がうまい。
なぜ水を撮って日本的なのか、言葉では答えられないけれども、彼の写真を見れば誰でも日本っぽいなと感じるはず。

彼は、表現する者の一人として、日本の伝統文化を正統的に享受し継承していきたい、と、いつからかは知らないが思い始めたのだろう。
そして、たくさん日本の伝統芸能や美術を勉強して、継承者となれるという自負も持っているのだろう。

私は最近、音楽や建築や演劇や美術展など、どのジャンルのアートシーンを見ても、同じことを考える。
過去を知り、過去から学べ。
感性という言葉が実態を離れてもてはやされて、過去を知らずに感性頼みで作品を出していく“アーティスト”にはうんざりしている。
それは感性ではなく、ただの“ノリ”だ。
日本人なら、日本を学べよ。
伝統の深さを思い知れ。

ノリばかりの“アート”を見る機会が重なっていたこともあり(アートの限界と可能性)、歯がゆく感じていた。
だから、いっそう、“日本を継承していきたい”という勢いの感じられる丸山さんの写真がうれしかった。
ずっと話はしていないけど、似た感覚を持っているんだと作品を見て確信したから。

まっ、まだまだこれからって感じだけどな。
あなたなら、さらにヤルでしょ。
初めて会った日に、
「僕あまり幸せじゃないからねえ……幸せな人の顔を、見てみたいかなっとも思ったりしてね……」
とちょっと笑って付け足していたあの人は、7年たってこんなふうに変わってきたの。
だいぶ幸せに、なってきたんじゃないの?
私が応援しても何の足しにもならないけど、これからも遠くから応援してるよ。
ガンバレ。

125magazineのサイトはこちら
英文サイトですがテキトーにクリックしていけば、今回のJAPAN Issueの全作品も見られます。見てねん。丸山さんの写真のあるページに直接行くのはこちら
Paul Smith SPACE GALLERYの展示は4月1日まで。

by apakaba | 2007-03-21 00:46 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(10)
Commented by キョヤジ at 2007-03-21 01:15 x
あぁ・・適当にクリックしていたらヌードのページに辿り着いてしもうた。(笑)
全作品が見られるURLにリンクをしてもらえると嬉しいんだけどなぁ。
Commented by ogawa at 2007-03-21 08:14 x
丸山氏の商業写真はCMであちこち拝見させてもらっています。
おそらくこの分野では日本のトップクラスの実力をお持ちの方ですね。
その方が撮ったJAPAN Issueは拝見したいですね。
商業写真と違う撮り方されているでしょうから興味があります。
眞紀さんが褒めるだからお世辞抜きで良い写真でしょうしね。
Commented by apakaba at 2007-03-21 11:31
写真レス。
キョヤジさん、わかったわかった。編集して直リンク張りましたから。
ヌードの号もあって、ポール・スミスで見てきたけどね。先達には及びませんよ……世界にはヌードの先達はどっさりいるじゃないの。

ogawaさん、いや、まあ、多少お世辞も入れた(あらら)。
ともかくも、可能性を感じる人が好きですね。
立ち止まっている人間には魅力がないです。
彼の広告写真は、もちろんキレイだなとは思っていたけど、今回の写真は、日本へ回帰する……というより、日本人である自分を意識して、日本から出発していこう……という(彼なりのオサレな手管ながらも)姿勢を強く感じたのがよかったなあと思ったので。
Commented by キョヤジ at 2007-03-21 17:34 x
はいはい、確認。
つーか、コッチだな。↓

http://www.125magazine.com/index.php?p_id=100&action=list&img_photographer_id=147

「いかにも」な感じがしないでもないけど、
確かに日本人の目による日本だな。
てか、他の写真は、どうなのよ?ってかんじ~。

今、海外のデザイナー・アーティストの間では、日本が相当coolらしい。
一時的なムーブメントで終わらないことを願うのみ。
Commented by apakaba at 2007-03-21 17:45
このリンク、出ないよー?
いかにもで、いいんじゃない。
まずは原点に取り組めってトコで。
日本画の様式の「余白・余韻」みたいな雰囲気を写真で再現したいのかなと。

外国人が見たニッポンは、curiousだ。
Commented by キョヤジ at 2007-03-21 18:16 x
>このリンク、出ないよー?

飛べるべよ。
コピってペれば。
Commented by apakaba at 2007-03-21 19:09
出ない。でない。
Commented by ぴよ at 2007-03-22 01:28 x
ぴよは逆に眞紀さんのリンクではどこか判らなかったけど
キョヤジ氏のリンクから飛べましたよ。
どーなってんだい?

それにしても、キテレツなメイクで着物着せて撮影してるのが
何点かあったけど・・・あれは本当に日本の美だと思われてんのか?(涙)
Commented by キョヤジ at 2007-03-22 02:15 x
>あれは本当に日本の美だと思われてんのか?(涙)

あれはあれでステレオタイプだなと理解できるのだけど、
何ですかぁ?ってのは電線やら木の枝やらの写真だよ。
深読みするに、もしかすると「侘び寂び」(←簡素化され、洗練された様式美)を表現したかったのかなぁ?と。
見る者に深読みを要求するのはいかがなものかなぁ・・・。
Commented by apakaba at 2007-03-23 09:00
写真レス。
カブキ調は、まあ陳腐だよね。
木の枝は盆栽ってことじゃない?
電線は、日本の街の風景は美しく日本人もステキなのに、頭の上を見上げれば醜悪な電線が。それってどうなの。みたいなメッセージらしいです。
長いキャプション読んでやっとわかったの。


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