あぱかば・ブログ篇

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2007年 05月 21日

ノマディック美術館エキシビジョン Ashes and Snow——浅い水たまりのような「アート」

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お台場は上天気でした!が


夫が、めずらしくおずおずと
「……どうだった?今日のあれ。展覧会。」
と尋ねる。
「うん。よくなかったな。浅いし、あざといよ。」
と答えると、ほっとして、うれしそうに叫ぶ。
「そうだよなあ!よくなかったよなあ!よかった俺はやっぱりあなたと感覚が合うんだよ!俺は今日のあれを見て、半分半分のおそれを君に感じていたんだ。『どうしてこんなのに連れてきたのよ!』と怒られても弱るし、逆に『すっごくよかった!感動したー!』って言われても、俺と感覚がずれてることになるから辛いし。そうだよなあ、ああよかった。」

夫は、ある人からこの展覧会を強く勧められて、うちの人数分の招待券をいただいてしまったので、きのう家族で行ってきたのだ。

ノマディック美術館という、コンテナを組み合わせた移動式美術館がお台場に建設され、いまAshes and Snowという展覧会を開催している(公式サイトこちら)。
巨大な空間の内部は、グレゴリー・コルベールという「アーティスト」の写真と映像が公開されていて、暗い館内に足を踏み入れたとたん、「う、合わないな」という予感を感じた。

公式サイトを見ていただければわかるとおり、世界各地で長い年月をかけて、象やチーターやオランウータンなどの動物たちと、人間がいっしょにいる姿を撮っている。
超大判の手漉き和紙に写真が印刷され、ぶら下がっている。
この展示方法がまず鼻についた。
「パネルにプリントじゃ、ねえのかよぅ」と夫がうめいたとおり、“写真が好き”な人ほど割り切れないものを感じる。モノクロではなくてすべてセピアに加工されているのがまた気にくわない。
“写真展”のつもりで見に来た我々は、小手先のオシャレさに流れたような展示に失望した。

なにより、写真と映像の底の浅さに、軽く驚きを覚える。
老若男女、エスニックな顔立ちの登場人物たち(どう考えても意図的に、ヨーロピアンは皆無)は、どの写真でもうっとりと目をつぶっていて、どこのものともわからない民族衣装を着けている。
象やクジラなどの動物たちと、目をつぶった人間たちがいっしょに写っている(映っている)、それだけの写真と映像なのだが、これのどこが感動のツボなのか、いくら見ていてもわからない。
まさか、これ見て“自然と人間との共生”とか本気で思っちゃってる人が、いるのか?!
こんなの“自然”じゃないよ、不自然だよ見れば見るほど。
ディズニーランドと同じ、つくりもののむなしさだ。
(公式サイト内「ポートフォリオ」のページにたくさんの写真が入っているので、参考にご覧ください。)
ディズニーランドなら割り切ろう、私はディズニーランドはむしろ好きだ。
パレードに向かって「ミッキー!ミッキー!」と両手を振り回すくらいのことは平気でする。
しかし、このディズニー的展示の、ツボのはずれた気合いの入りようはどうしたわけだ?

いわゆる“絵的”にキレイなことはキレイだが、ものすごく、空虚だ。
まるでこの移動美術館の巨大空間と同じように、写真がむなしさで満たされている。
何故?
歩を進めるうちに自問は確信に変わる、この「アーティスト」は、写真とはなんなのか、写真の歓びがなんなのかを知らないあるいは誤解しているのだ。

先月、マグナムが撮った東京の写真展へ行って、後半は尻すぼみとなってがっかりしたけれども、マグナム初期のメンバーが撮った戦後間もない東京の姿には、胸を圧された。
“いま、ここにいることの歓び・驚き”に満ちている!
この場にいて、対象と向き合い、カメラを持っている自分がうれしい。
それがビシビシと迫る、だから写真に力がある。
マグナムに限ったことではなく、プロ・アマ問わず、好きだと思う撮り手の写真には、皆それが共通している。

コルベール氏の作品には、それがまったく感じられない。
彼の写真から見えてくるのは、対象のそばへ自分の感情を寄り添わせたいというひたむきさと謙虚さの代わりに、自分の求める“絵”に対象を当てはめ、絵のとおりにことを運んでいかせる傲慢さだ。

ほら、キレイなカタチでしょう。
人間と自然、いいでしょう。
時間とお金がかかったんだよ。しっかり見てね。
人間も動物も、ひとつになれるのさ——なんて、そんな悪い冗談やめてよ。
偏ったエスニックな世界、都合の悪いことがなんにも起こらない、箱庭的な世界観。
心の表層の部分を流れ去り、大衆に消費される……まるでプロモーションビデオのように。

PV的な価値はじゅうぶん見いだせるが、この浅さに本気で感動している人がいるのはどうしたことだろう?
1900円という高額の入場料にもかかわらず大入りの会場を、むなしい気持ちであとにした。
みんな、もっといいもの見ようぜ。

※無料招待券が1枚余っています。ご希望の方1名に差し上げます。

by apakaba | 2007-05-21 00:31 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(16)
Commented by Morikon at 2007-05-21 21:04 x
この人の写真、一ヶ月くらい前に写真雑誌で見てるけど、
全く心に響くものがなかった。
芸術表現としては「アリ」なんだろうけど、やっぱ写真じゃない。
剥製とマネキンを組み合わせた「まがいモノ」みたいに感じる。
ただ「キレイ」なだけで、ラッセンの絵と似てるかも。
一般受けするだろうね、私は食い足りないけど。
Commented by K国 at 2007-05-21 21:16 x
売り絵みたいな写真展かな、ホコリっぽさも湿度も感じない
スタジオみたいな風景。

しかし人気はあるのでしょうか?どうでもいいけど。
Commented by apakaba at 2007-05-21 21:21
やっぱり!?やっぱり!?やっぱり!?
よかった……ボコボコに非難されたら……理論武装せねばと思っていたトコだったの
Commented by ogawa at 2007-05-21 21:32 x
ああ、この写真の撮り手だったの。
写真は知っていたけど、寡聞にして写真家の名前は知らなかった。

以前に見たとき、「時間の一瞬を撮った写真」でなく「作った写真」
だから、CM写真を見るような感覚で見てました。

だから、一枚の写真で「peace」とか「love」というコピーでも
ついていたらピッタリかな。
これをいっぺんに見たら疲れそうだ。
Commented by apakaba at 2007-05-21 22:00
やっぱり!?やっぱり!?
カンペキにべつの方向を志向しているんですよ。
写真だけでなく、映像表現がまた、なんというか……宮台さんの言う「ネタとベタ」なのまさしく。
ネタでやってるなら(ディズニーランドみたいに)こっちも割り切れるけど、ま、まさかベタで感動してる?と、だんだん不安になってくるんです。
たとえば、ブティックの片隅のテレビにずーっと流しっぱなしになっていたりするとおしゃれな空間作りに役立つとは思ったけど。
Commented by キョヤジ at 2007-05-21 22:03 x
あんなのCGで良いじゃん。
写真である必然性って・・・何かあんの?

無料招待券ですか?要りません。キパリ
Commented by apakaba at 2007-05-21 22:13
え、いらないの。あげようかと思っていたのに。
お台場ってそもそもすっごく合わないの。
お台場行って楽しかったことないよ。
あ、科学未来館は好きだけど。
昔はお台場なんて、な〜〜〜〜〜〜んにもなかったところじゃない?
Commented by Gina at 2007-05-21 22:20 x
みなさん、辛口なのね。。。
私は観にいきたいと思ったけどな。
あの写真を撮ろうと思ったら、きっとすごく長い時間をかけないと
撮れないものだと思うからな。

・・・ってことで、いらんかったらチケットくらはい。
Commented by キョヤジ at 2007-05-21 22:22 x
>昔はお台場なんて、な〜〜〜〜〜〜んにもなかったところじゃない?

はい、ワシ、ハゼ釣りしてました。
とおいむかしむかしのものがたり・・・
Commented by apakaba at 2007-05-21 23:54
Ginaさん、おお先着1名様。
うれしいわ。やっぱりホラ、感動するにせよ、批判するにせよ見ないと話にならないというところがあるから(それがレビューの難しいところですね)。
長い時間はかけているんです。15年かけたとか。
ああ、そんなではどんどん年を取ってしまう。
ではチケ送りますから住所と本名メールください。

キョヤジさん、さびし〜〜〜〜〜いところだったのが今やほんとにすごいですよね。
でも、合わないんだなあああなってからは。
Commented by Morikon at 2007-05-21 23:56 x
写真であれ何であれ、辛口なのは仕方ないでしょ、
それが商業ベースに乗った芸術の宿命ではないかと。

逆に趣味での作品に対する批評は、
言葉を選ばないとトラブルになるからねぇ・・・。
Commented by tabibito9999 at 2007-05-22 00:04
まあまあ、なんでもいいのでは、ご本人が良ければ。

何でも、商業、に引き込めば、商業ベースだし。
以外と、趣味、が売れたりして。ど素人が、大体は、デザインベースでは成功するようで。経済や、法律系のデザイナーの多いこと。本業は、金儲けに眼がくらむから、難しい。

ただただ、いつも、<それ>、に、すら、なれなかった、自分を恥じています。

Commented by tabibito9999 at 2007-05-22 00:14
追記

ちょいと、正座して、

写真で言えば、ただ、写真の社会的位置が低すぎる。デザイナーズブランドなど、戯れにやっていた頃、まあ、こんなふうに、こうやって撮っといて、で、終わり。商業写真は、そういう、宿命。いや、私は、こういう風に撮る、等とノタマッタ方はいない。
それを、逃げるには、アートに逃げる以外にない。となれば、うまいも下手も関係なく、オリジン、に逃げる以外にない。
そういう、意味では、こういう写真は、気持ちは評価します。

此の人は、
ーーで、あんたは、なんなのよ、
とはいえない。そこが、評価の対象。
Commented by tabibito9999 at 2007-05-22 00:20
座右の銘

言うは易し、行うは難し。


そろそろ、邪魔者、退散、退散。

またね~~~~~、マキちゃん。
Commented by apakaba at 2007-05-22 00:23
きゃあああ〜〜〜〜。
Commented by apakaba at 2007-05-22 10:22
たびちゃん、深いねえ。いいですねえ。写真の考察とても素敵。

Morikonさん、私も文章をけちょんけちょんにされたこと多数よ。
相手に対する感情はさておき、あきらかないちゃもんとアドバイスはちがうから後者の場合は謹聴するようにしています。


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