2003年 07月 15日
夫の祖母が、きょう亡くなった。 90過ぎの大往生なので、とくにかなしいということはないのだが、晩年がさびしい人だった。 旦那さん、つまり夫の祖父が病気で倒れたころは、気が張っていたのだろう。しゃんとして、むしろいきいきと若返っていたくらいなのに、いざ看取ったらあとは一気にしぼんでしまった。 おとーさんのいない家に独りで住むのはいや、子供の誰かのところへ身を寄せるのもいや、老人ホームもいや、かよいのヘルパーさんもいや。 生きてることがみんないや。 はやくお迎えが来ないかしら、おとーさんのところへ行きたいわ。 おんなじ言葉をくりかえす。 息子、つまり夫の父は、 「お袋、そんなこと言っちゃいけないよ。」 とおんなじように言葉を返し、実質ひとりで面倒を見てきた。 だけど義父だって、もう70ちかい。 しょっちゅう夜中に電話がきては、 「家の外に誰かがいる」 「台所でごそごそ音がする」 「心臓がどきどきしてもう死にそうだから救急車呼んで」 そのたびに車を飛ばして出かけていっていた。 「お袋、俺だってもう年だよ、血圧も上がっちゃうし、疲れるよ。」 と言ったところで、 「なに言ってんの!あんたは若いくせに!」 老いた母から見れば、子供は永久に若いものなのだ。 「お袋は矛盾してるんだよ!いつも死にたいとか言ってるくせに、フロに入れと言えば『湯冷めして風邪引くとたいへんだからきょうはやめとく』って、なんなんだよもう!」 義父は、ときには私にもこぼしていた。 明日はお通夜か。 泣き崩れる人は、きっといないんだろう。 無事“おとーさんのもとへ”送り出せたという安堵感で、和やかな席になるのだろう。 あの雰囲気も、悪くないんだけど。
by apakaba
| 2003-07-15 12:48
| 生活の話題
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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