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あぱかば・ブログ篇

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2007年 11月 15日

犬を連れる日常

犬を連れる日常_c0042704_14131211.jpg


よく見ると前足が1本しか写ってないでしょ。
ケロちゃんに向かって、左足を伸ばそうとしている途中なのです。


朝、コーシローを外につないでいると、ひきがえるのケロちゃんとにらめっこをしている。
ケロちゃんはうちの玄関に長年住んでいる。
コーシローがつながれていてよかった。
もし鼻先が届く距離にいたら、ケロちゃんはひとたまりもないだろう。
でも、ケロちゃんがそもそも1匹なのか、複数いるのかは私には区別がつかない。

仕事が休みなので長く散歩に行ってやる。
川沿いの遊歩道をどこまでもまっすぐ行く。
車椅子に押されたおばあさんのところへコーシローが駆け寄る。
介護サービスを受けているらしいおばあさんは、犬が近寄ってもほとんど無表情で、口をきかない。
こういうとき、不潔だから触ったらダメ!と怒る介護の人もいるのだが、車椅子を押している女性は
「あらー、ナントカさん、よかったね。犬が来たよ。わかるのね好きだってことが。」
と明るい声を出すのでほっとした。
コーシローは知らない人にすぐなれなれしく寄っていくので、迷惑がられることも多い。
介護の女性は、私に
「ナントカさんは犬を飼ってらしたから。わかるんですね。」
と言う。
コーシローを無表情のまま、痩せこけた手でいじっている。
コーシローは立ち上がって、おばあさんの口をぺろぺろなめた。
おばあさんはそれでも無表情。
私は、さすがに汚いと思われるかな……と少し心配するが、介護の女性は
「あらナントカさん、よかったねえ、熱烈なご挨拶されたねえ。たのしいね、よかったねえ。」
と繰り返してくれた。
おばあさんは最初から最後まで無表情だったけれど、介護の女性は「とってもよかったね。」と言っていた。

おばあさんと別れ、散歩中の何匹もの犬にじゃれついては嫌がられたり相手にしてもらったりしながら進む。

二十歳くらいの若い女の子に、
「さわっても、いいですか?」
と声をかけられる。
黒ずくめの、一目見て“ちょっと変わっている”という雰囲気のお嬢さんだ。
アニメ風というかオタク風な子。
「どうぞ、大丈夫ですよ。」
とこたえると、
「柴ですか。さっきそこの公園で、猫をさわってきたんです。においがするかしら。」
と一方的に話しかけてくる。
コーシローは早く先へ歩きたがっているので、あまりお嬢さんの相手をしない。
変わった雰囲気のお嬢さんは、
「あ、行きたがってますね……。」
と、さびしげな声を出すので、不憫になって
「大丈夫ですよ、どうぞ。」
と犬にお座りをさせて撫でさせてあげる。
コーシローがちょっとでも立って歩き出そうとすると、そのたび
「行きたがってますね、行きたがってますね」
とさびしそうに言うので、私も彼女が満足するまで、犬をじっとさせるのになんだか努力してしまう。

お嬢さんと別れると、コーシローがいつもかまってもらっている大型犬に会う。
散歩させているのは私より少し年上な感じの男性。
やさしそうな人なので、よく相手してもらう。
でもこの人と、犬抜きでまちなかで行き会っても絶対にわからないんだろうなとぼんやり考える。

大型犬と別れたら、対岸の遊歩道に、見覚えのある二人連れが歩いてくるのが見えた。
あのふたりは……はっとした。
私が、ちょうど1年前にここで文章を書いたことのある夫婦だった(川のそばの夫婦)。
あれから1年の間、見かけなかった。
気がつかなかっただけなのかもしれない。
あのときと同じように並んで歩いていたが、旦那さんは、パンくずではなく、半歩前に立ってスーパーの買い物袋を提げていた。
例の奥さんは、ごくふつうに歩いていた。
あのころより、歩調が速くなっている。
漂うような歩き方ではなく、買い物をして家に帰るというふつうの夫婦の足取りに見えた。
川をはさんで、私の視線にはもちろん気づかずふたりはずんずん近づいてくる。
対岸なのと鉄柵があるのでこちらからでは見えないが、
“手をつないでいないかな。手をつないでいるといいな。手を、つないでいて。”
と近づくふたりを無遠慮に眺めながら私はいつの間にか願っている。
川をはさんですれちがう。
私は首をぐるりとまわして振り向き、見送る。
手を、つないでいた。

それを確認するまで私が立ち止まっていたので、コーシローはいっしょに止まって待っていた。

by apakaba | 2007-11-15 14:57 | 生活の話題 | Comments(6)
Commented by キョヤジ at 2007-11-15 15:25 x
散歩で一冊書けそうだ。
「コーシローと二人連れ~散歩道の人間模様~」なんてな。(笑)
Commented by apakaba at 2007-11-15 18:17
今日は書くことがない、ということって、まずないよねえ……私は。
本当にどうでもいいことばかりだけどね。
Commented by はなまち at 2007-11-15 23:04 x
書くことないより、疲れ切って書く前に寝てしまうことの方が多いな。
Commented by apakaba at 2007-11-15 23:10
上に同じー。
疲れていて無理してなにか書こうとしても、トホホな文章しかできあがらないしね。
それだと書かないほうがマシですね。
Commented by ぴよ at 2007-11-16 12:09 x
ああ、あの夫婦か・・・凄く印象に残る日記だったからよく覚えてる。
何だかとってもいい方向に向かっているみたいね。
ワンコの散歩してると、「散歩常連」みたいな知り合い?まで行かないけど「知った顔の人々」が自然に出来ますわね。
犬の散歩組だったり、ウォーキングしてる人だったり。

ところでぴよもお散歩ワンコに出会うとかなりの確立で
「触っていいですか?」とか「可愛い~!」攻撃をする。
殆どの人が「どうぞ」「ありがとうございます」って言うけど、時々凄く嫌な顔されて「触らないで下さい」って言われる事もある。
ワンコ飼ってる人ってみんな自分ちのワンコを「可愛い!」って言ってもらえる事が嬉しいんじゃないの?と飼った事のないぴよは思っていたんだけど、そうでもない人もいるのかな?
Commented by apakaba at 2007-11-16 15:16
1年前の日記には、「胸が痛くなった」とか「泣きそうになった」といったストレートな表現をわざと使ってみることを試していました。
最近は、そういう表現を使わないでどう書くかというのを試したりしてます。
まあ、単なる気分なんだけどね。
でもつづけてなにか書いているというのはやっぱりおもしろいものですよ。

あの夫婦者にはまれにしか出会わないのでなんともいえないけど、手をつないでいたのはとりあえずうれしかったぞ。

>時々凄く嫌な顔されて「触らないで下さい」って言われる事もある。

なんなんだろう?
とても急いでいるとか。
犬は好きだけど人と話すのはおっくうで嫌いとか(意外と、多いよ)。
凶暴な犬で、制しきれないとか。
他人はみんなバイキンだと思っているとか(赤ちゃんを連れている母はこういう人いますが)。


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