2008年 02月 05日

『建築の記憶——写真と建築の近現代——』と『ルノワール+ルノワール』で光る企画力

美術展にはたまに出かけているが、企画力・構成力がすぐれている展覧会を見ると、満足感も倍になる。
「昔見たことのあるあの作品を、もう一度見たい!」
「テレビやポスターでしか見たことがないけど、いよいよホンモノが来た!」
などと、展示品そのものへの関心は行く前から自分の中で高まっているのが当然だが、企画のうまさは体験してみないとわからないものだ。
ここ数年の美術展で、企画のうまさに感心したものは、
『杉本博司 時間の終わり(レビューこちら)』展
『モディリアーニと妻ジャンヌの物語(レビューこちら)』展
『ル・コルビュジエ(レビューこちら)』展
これくらいだった。

ふたつの美術展をまわってきた。
東京都庭園美術館で開催されている、『建築の記憶(特設サイトこちら)』展と、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムの『ルノワール+ルノワール(特設ページこちら)』展へ。
ふたつとも、企画力がおもしろい展示だった。

東京都庭園美術館は建物自体が好きでよく行く。
『建築の記憶』展は、「建築」と「建築写真」という、いわゆる純粋な“美術”にはカテゴライズしがたいけれど“そこに確実に存する美”という観点で構成されている。
建築とは、堅牢であり、脆くもあり、恒久的に見えてはかなくもあり、美的である……矛盾を本来的に内在させた“芸術”である。
その魅力を最大限に伝え、そればかりでなく建築家の手を離れたレベルの美にまで引き上げるのが、写真家である。
建築と写真との相関関係、そしてまたこの旧朝香宮邸というロケーションでの展示公開による、もうひとつの相関関係——アールデコの結晶と謳われる建築物の中で建築の美術展を見ることでもたらされる高揚感に、来場者は美術展の可能性を知ることになる。

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東京都庭園美術館のお庭では梅が咲き始めていて、きれい!


『ルノワール+ルノワール』は、画家ピエール=オーギュスト・ルノワールと、その次男であり映画監督のジャン・ルノワールの作品をダイレクトに対比させることで、父親が息子に与えた影響を紹介していく企画展だ。
これまでジャン・ルノワールの映画を観たことがなかったため、あまり期待しないで行ってみたのだが、予想外におもしろかった。

父親の絵画作品のすぐ隣で、息子のフィルムの抜粋をエンドレスで上映しつづける。
その絵画とあきらかに同じモチーフが、映画の中に現れる。
息子ジャンの作品解説には「父親へのオマージュ」という言葉が使われていたが、私はオマージュというよりも、もっとも身近にいた偉大なアーティストから自然に受けたインスピレーションという印象を持った。

父ルノワールは、ごく一般人から見れば、ついていけない人だ。
終生、自分好みのモデル(もちろん、女性)を求め続け、見つかるやいなや自分のところへ連れてきてポーズに厳しい注文をつけまくっては思う存分に描くなど、並みの神経では家族は耐えられなかっただろうと思う。
家族愛の代名詞のようにいわれるルノワールだが、ちょっと考えればその家族の在り方は通常のものではないとわかるではないか。
妻の従姉妹を子供たちの世話係として家に迎え入れるのはいいが、彼女をほとんどハダカにしてモデルとして描くなど、それはふつうの家庭といえるか?
妻の気持ちはどうだったのかはさておき、女性の裸体を描き続ける父を生まれたときからずっと見続けていればこそ、息子も同じモチーフを取り入れることをひらめき、父の気に入りのモデルと結婚して映画に出演させたりもできるのだろう。
変わった家族だ……凡人は、あの絵の美しさの前には、その才能に感服する以外になすことがない。
その、変わった家族像を端的に見せてくれる展示なのだ。

両方よかったな。
どちらもまだ始まったばかりなのでゼヒ。

by apakaba | 2008-02-05 23:06 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(5)
Commented by ぴよ at 2008-02-06 00:49 x
コレ、どちらも名古屋に来る予定はあるのかな?←自分で調べろって
建築系には正直余り興味がないので、名古屋に来てもスルーかも。
でもルノワールは・・・

実はルノワールってあんまり好きじゃない。
日本人にはすっげー人気みたいだけど、ぴよは正直興味ない。
そもそも「マティス、萌え~♪」と言ってるタイプだからルノワールはね(苦笑)
でも映像とコラボ(しかも父子対決!?)という企画は面白そう。
ルノワールの絵自体には興味なくても、彼の背景は実に興味深い。
画家なんてサ、ロクな人種じゃーないんだよ。←いきなり何を
でもロクな人種じゃないからこそ面白い。
それを息子視点で見せてくれる企画ってなかなかないですよ。

名古屋に来ないかなぁ・・・東京にまた見に行っちゃおうかなぁ。

Commented by k国 at 2008-02-06 07:24 x
今はまともな画家や、まともな人間ばかりになったから面白い
絵がなくなったのかな、ゴッホ、ピカソや北斎あたりも相当な変人。
芸術は何か足りない時代のほうが生き生きしてる気がする。
Commented by apakaba at 2008-02-06 15:57
美術展レス。
ぴよさん、建築は、たぶん、その東京都庭園美術館というロケーションが興奮度アップに役立っているから、ふつうの場所で見てもさほどでもないと思う。
ルノワールは私もファンということはないです。
好きな画家は?と聞かれたら「ルノワール」とは出てこない。
でもあのうっとりする色彩にはとりあえずうっとりする(文法メチャクチャ)
あの人の色は、コピーじゃ絶対に出ないでしょ。
もちろん他の画家もそうだけど、彼ほどホンモノとコピーの差が開いてしまう人もいない。そこは凄いね。
息子の映画は見たことないけど、バーグマンとか出ていて驚いたわ。

K国さん、この展示ではとくに次男との関係に焦点を当てていましたが、長男も三男も芸術系で名を成した人たちで、「芸術の才のある家系なんだなあ。K国さんちみたい」と展示を見ながら考えていたのですよ。
Commented by sora at 2008-02-09 10:55 x
東京都庭園美術館ってもう何年も行ってないっすよ。
ルノワールは気になってました。もう少し暖かいといいのですが。前も描いたけど、僕はビュッフェのような、やや抽象化した絵かつシャープな絵が好きなので、印象派はさほど興味が無いんですよ。でも「美の巨匠たち」を先日見てから、意味論的なことも理解し、受け入れることができそう。

で、駅の広告でBAUHAUS関連の展覧会のようなもの、やってません?そっちのほうが気になります。(昨日、駅で広告を見た)
Commented by apakaba at 2008-02-09 13:49
soraさん、東京都庭園美術館は、展示よりもあの建物がすごくいいんですよ!
展示品があると、せっかくのおもしろいアールデコの醍醐味がよくわからなくなってしまって。
中は撮影禁止ですが、たまに撮影できるときもあります。
そのときはカメラ持った人がどどっと訪れますよ!

絵は、とにかくどっさり見ることですよね。
そうするとどういうのが自分の好みなのかだんだんわかってきますね。
だからいい常設展示品を持っている美術館が大事なんですねー。

バウハウスは江戸東京博物館のかな?
あそこもいい展示してますねー。


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