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あぱかば・ブログ篇

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2008年 05月 12日

1990年の春休み.85 ネパール篇

<初めて読まれる方へ>
この旅行記は、私が大学卒業旅行でタイ・インド・パキスタン・ネパールを一ヶ月半まわっていたときの日記を、不定期に載せているものです。文章(註・レート換算含む)はすべて22歳当時のままです。
前回までのあらすじ
旅の相方ヒロの団羅辞への恋路を、私は邪魔しているのか分析しているのか。
なんだかワカランが短いポカラ滞在はまた過ぎていく。

3月7日(水)晴
 団が自転車でポカラを案内してくれるという。
 ゆうべ、そう誘われ、そのことでちょっとヒロともめた。
 じつは私は、ガイドブックで調べておいた、風光明媚な「ベグナス湖」に行ってみたかったのだ。しかし当たり前のことながら、ヒロはそれに反対した。ベグナス湖はバスで1時間かかるから、とか言っている。
 私は内心、だからなんだヨーと思ったけれど、ここでゴネたらヒロにも団にも気の毒だし、いいよアタシ一人でベグナス湖に行くから、とまで言い出す勇気もなかった。
 一人旅とちがって、あきらめなくてはいけないということもけっこう多い。しかたがない。一人のときとは別のおもしろさもあるのだから。

 早朝、サイトーくんはトレッキングへと旅立っていった。おとといの朝初めて会って以来、まるで昔なじみのように仲良くしてきた彼とは、もう会うこともない。最後まで、じゃあねえ、とさっぱり明るく別れた。
 サイトーくんを見送ってから、屋上で朝食にした。団と11時出発の約束をし、溜まっていた洗濯をいっぺんにやった。こんなポカポカの庭でなら、どこへ外出するわけでなくても、洗濯自体が楽しい。
 約束の時間に、団の友だちも加わって、今日は4人で自転車ランラランである。
 友だちはサラダという不思議な名前で、団と同い年なのにやたら無口ではるかに大人っぽい。というか、団がめまいのするほどコドモコドモしているのだ。

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ホテルパゴダの屋上でのぜいたくな朝食。


 まずはポカラ博物館へ。入場料のことで少しゴタゴタがあった。
 入り口に、英語で5ルピーと書いてあった。だがその下にネパール語でネパール人はタダ、と書いてあるのに団が気づき、怒って受付の人と言い合いを始めてしまった。こんなやり方は卑怯じゃないかと。しかし彼ががんばったところで、私たち外国人はやっぱりタダにはならないようで、私たちが5ルピー払うと、団はポカラの恥を一手に引き受けたようなすまなさそうな顔をした。べつに気にしてないのに。
 中はのどかそのもので、私たちに他に人もいず、ゆっくりと見て回った。停電(またかよ)のため、懐中電灯を持って入った。ポカラ周辺の民族の住居などが、写真と模型で展示してあり、団が先ほどのもめ事を帳消しにしようとするかのように一生懸命解説してくれたので、楽しく見られた。
 モノクロの写真は人物がどれもソレっぽく撮れるなあと思った。

 団たちが自転車を漕ぐペースは、やたら遅い。
 はじめは私たちのために遅くているのかと思ったが、そういうわけでもなく、本当にゆっくりなだけみたいだ。だらだらの上り坂は、ゆっくり漕いだほうがかえって疲れる。もっとせっせと漕いでほしい。
 次に仏教寺院へ。
 ちょっとした丘の上にあり、予想外に階段がきつかった。きのうのサランコット登山の疲れがまだ脚に残っている上に、妙にのろい自転車漕ぎで、私たちはくたくたになった。
 その寺は、けっこうリッパであった。みんなでお祈りをした。
 私と団とサラダは、手を合わせただけだったが、ヒロがものすごく長く真剣にお祈りをしていたので、とうに目を開けていた団がその姿を笑って見守っていた。
 まるで恋人同士の初詣みたいだと私は思った。
 しばし境内でくつろいでいると、同じように座っていたサウジアラビア人のカップル旅行者が話しかけてきた。
 彼らも学生で、ネパールの義務教育の話をしたり、それぞれの好きな科目を教え合ったりした(なんでこんな話題を……)。

 団は、ホテルの息子の義務として、毎日、長距離バスの着く時刻に、バスステーションに行って“客引き”をしなければならないそうだ。朝から、「二時半になったら、バスステーションに行く」と言い切っていたので、私たちはその時刻をすごく気にしていた。
 ところが二時半が近づくにつれ、そわそわしだした私たちと裏腹に、団は
 「やっぱりいいよ。客引きの仕事は好きじゃないし、今日はあなた達といられる最後の日(我々は明朝カトマンズへ帰る予定になっている)だから、特別にずっといっしょにいるよ。そして明日は、あなた達が行ってしまってからボクは泣くんだよ。」
 とか言い出したのである。なにを言うんだコドモのくせに。
 なんだか団は、急速になれなれしいというか、グッとくるようなことをかわいい笑顔で口走るようになってきた。私に対してははそうでもないが、やはりヒロにホレているのか、ヒロと二人だけになるとかなりキワドくすごいセリフを言っているらしい。ヒロのほうも、全面的に好きだという態度を隠さずにいるので、端で見ているとまるっきり恋人同士だ。

 「二人の交わす会話を翻訳してずらっと並べたら、疑いようもなく二人はデキているに違いないけど、なにしろ相手はコドモだし、下手な英語の会話じゃずばずばストレートな物言いしかできなくなるし、もしかしたら単なる社交辞令かもしれない。」
 これはヒロ自身の分析である。
 私から見ると、団も彼女を好きだと思うのだが、今ひとつ確信が持てない。
 私は、だんだん、ちぇっ面白くないという気分を通り越して、彼の本当の気持ちと、これから二人がどうなるのかを知りたくなってきた。

by apakaba | 2008-05-12 18:01 | 1990年の春休み | Comments(4)
Commented by キョヤジ at 2008-05-12 18:17 x
そうそう。
蚊帳の外の人間は分析でもしてなきゃぁアホくさくてやってらんないわな。(笑)

で、岡の上の寺院ってぇのはヒンドゥバシニかぇ?
オールドバザールんとこの。
Commented by apakaba at 2008-05-12 22:26
おお、蚊帳の外人間的分析。
最後まで蚊帳の外で突っ走れるのかわたし!
ビンドゥバシニ(ビだったような)テンプルだったかどうか、覚えてません。
日記を見ても寺院の名前が出てきません。
すごく上るのがきつくて、境内は高台にあって(当然ですねのぼるんだから)気持ちよかったということしか。
ゼロ歳の「アキタコマチ」を連れていったのは、山羊とかを生け贄にする血だらけな寺院だったなあ。
Commented by ぴよ at 2008-05-13 01:15 x
>まるで恋人同士の初詣みたいだと私は思った。
のくだりで吹いた。
もう達観しているのか?思いっきり分析モードじゃん(笑)

今更ながら、こういう旅のスタイル(シチュエーション)がないから
旅のパートナーの恋愛模様やら、それにひきずられて自分が本来行きたかった場所に行けない等のストレスとか、そういう事に悩んでる姿がすっごく新鮮に映ったりするよ。
例えば今からもし眞紀さんとぴよが2人で長旅しても、旅先恋愛系のストレスだけは皆無だとお互い言い切れるじゃない?(苦笑)
それはそれでストレスがなくて結構な事なんだけど、「若さゆえ」という旅の醍醐味を味わえない自分が悲しかったりするんだなぁ。
Commented by apakaba at 2008-05-13 08:02
ぴよさんと私が、ハンサムなネパリ少年にいかれてしまって奪い合う……とか……「どうしてネパリ少年はぴよにばっかやさしいのよ!あたしには?!」とひがむとか?(そうぞうちゅう)嗚呼、恐ろしすぎるそんなこと。

サイトーくんは去っていくし、私さびしいよ!
と思っていると、また新たな旅人が、この宿にやってくるんだなあ。


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