あぱかば・ブログ篇

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2012年 11月 29日

ゴーゴー・ボルネオ!〜ジェッセルトンホテル&コタキナバル散策編 その1

トランジット/コタキナバル空港&シンガポール編のつづき。

前回書いたように、サバ州の州都コタキナバルは、マレーシア第二の都市だというのを疑いたくなるくらいにのどかだ。
街一番の老舗ホテル「ジェッセルトンホテル」に二泊した。
創業60年ちかくなる、植民地時代からのホテルである。

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小さなバーは夜になると地元客や旅行者で満席

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トリップアドバイザーでの評価は上々。ただしトリップアドバイザーを調べるときは、「ジェセルトンホテル」と表記されているので注意

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到着したときクリスマスツリーの飾りを始めていた。右下で隠れながらもピースする従業員

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もっと安いバックパッカー宿も、もっと高い超高級リゾートホテルもよりどりみどりだが、観光に便利な場所にあるうえ“歴史ある”とか“落ち着いた”とか書かれているとそっちへ泊まりたくなる。
モハメド・アリも宿泊したことがあるらしいが、なにしに来たんだろう。

写真でわかるとおり、ロビーも部屋も、華美でも質素でもなくまんなかへんのテイスト。
薄茶色のお湯をためて、バスタブに浸かって天井を見上げると、真っ白に塗装されているのになぜか穴がボコッとあいていたりする。
天井だけでなく、タオルにも穴があいていたりする。
でも昔のホテルらしい広々とした部屋の空間や、付かず離れずのサービスは悪くない。

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初日、チェックインして少し海へ向かって歩くと、5分くらいでたちまち海まで出てしまった。
寒い東京から来るとちょっとだけ暑さがこたえる。
だが縮こまっていた体が伸びていく感じもする。

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車の数が歩行者の数を圧する。
コタキナバルの第一印象がそれだった。
これは裏道りだが、表通りは車が一日中びっしりだ。

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だから駐禁にも厳しいんだね。
「P」というマークは、初心者マークのことだと聞いた。

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一日出かけて帰ってくると、ツリーは完成していた

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評判のいいホテル内ダイニング「ベッラ・イタリア」で夜食。
モヒートはきわめて甘くしかもぬるめで、ビールにしなかったことを悔やむ。
ブルスケッタは野菜がおいしいもののバジルではない不思議な味のハーブが刻んであった。
周りのお客さんたちは、ひたすらピッツァに邁進していた。

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朝食付きプランなので、朝も同じ「ベッラ・イタリア」へ。

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早朝なのでがらんとしている

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白身魚の中華粥

お粥と甘いミルクコーヒーでは相性がへんだが、こういうところに来たらあまり気にしない。

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今回は長時間のツアーに参加していたので、自由に街を歩き回る時間がほとんど取れなかった。
それが少し残念だが、限られた時間でも、ちょっとでも歩こう。(その2へ)

by apakaba | 2012-11-29 12:57 | ボルネオ | Comments(2)
2012年 11月 28日

ゴーゴー・ボルネオ!〜トランジット/コタキナバル空港&シンガポール編

チャンギ空港編のつづき。

ナゼ、なかなかボルネオの森の自然観察に入らないのか?
夏休みの宿題は、自由研究よりも計算・漢字ドリルを先にやってしまうでしょ。
あれと同じです。とっかかりやすいところから。

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楽しかった滞在も終わり(なんか妙ですが)、タクシーでコタキナバル空港へ。
羽田からここへの直行便が廃止されてしまったため、シルクエアー(シンガポール航空の子会社)でシンガポールを経由する。
コタキナバルはマレーシア第二の都市だというが、クアラルンプールとはまるで比較にならないのどかさだ。
むしろ、マレーシアの中で、KLひとりだけが突出して都会なのだな。

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土産物の店も、ないに等しい。
うちの子供たちも、さすがにこういうモノで喜んでくれる年齢では……

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いろんな行き先、おもしろい案内表示。

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見送りの人はここまで。
やることないし、私も中に入ろう。

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2008年にできた第1ターミナルは近代的できれいなのはいいが、なにしろ時間をつぶせる場所がない。

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唯一、購買欲が湧いたのがこの店。
TENMOKU POTTERY(天目陶藝)という、ハイセンスで装飾的な陶器の店だった。
娘に不思議な形のペンダントを買った。

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非常にリッパな足マッサージ機があったので、小銭を用意して張り切るも、ぜんぜん稼働せず。
動かないくせに、小銭を突っ込もうとしているととたんに警告音が鳴り響く、最悪の機械であった。チクショウめ。

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旅行者の最後の手段のスタバだ。
サバ州オリジナルデザインはテングザル。かわいい!

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今回の旅行はやたらと機内食ばかり食べていた気がする。
シンガポール航空の機内食はまるで普通だが、シルクエアーはおいしかった!

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ちなみにこれが往きのシルクエアーの機内食。
私は機内食の写真をほとんど撮らない。
おいしくないし見た目もステキじゃないから。
でもこれは、見た目はまるっきりステキじゃないけど、おいしかった。
ようするに、寝ぼけた味の洋食や和食まがいよりも、からいとおいしく感じるのよね。

どうでもいいことだけどシルクエアーのCAさんたちは、なぜか皆“前は男だった人”のような顔だった。
南国調の顔立ちにやりすぎなメイクがそう感じさせるのか。

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そして!
やってきましたシンガポールはオーチャード。
帰りの長いトランジットの時間、今回の目当てはオーチャードの、とある施設だ。

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自動車用と歩行者用の信号機の下の方に、もうひとつ小さな信号機がついていてかわいい〜。
車の座席に座った状態で見上げるのに楽だからか。

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しばらくウロウロしたけど、やっと看板を見つけましたー!
1年前も来て(「“南の楽園”はいくつあったの」の第21回「プラナカンハウスとブラック&ホワイトハウスの建築探訪」)、開館時間を過ぎてしまって入れなかった、ジャパン・クリエイティブ・センターである。
在シンガポール日本国大使館の肝いりでスタートした、漫画・アニメ・映画などの日本文化を紹介する展示館らしい(公式サイト)。
今回のシンガポールでは、ここ以外の観光はすべて無視で、ずっと楽しみにしてきた。
国内ではすっかり恥ずかしい言葉となった「クールジャパン」は、海外でどんなふうに紹介されているのか?
それを見てみようと。
由緒あるコロニアル建築のブラック&ホワイトハウスを丸ごと使うなんて、それこそ超クールだし。

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ところがー!
なんと休館。
土曜日休館の看板が。
土曜に来ることはわかっていたから、HPで「Mon - Fri 09:00 - 16:30 (Regular) Tues - Sat 10:00 - 18:00 (Exhibition)」と記されていることを確認していたのに!
もしかしてこれは……特別展示のないときは、土曜休館にしているという意味なのか?
悔しまぎれに、閉ざされた門の隙間から、あいかわらずの美しい建築だけを撮る。

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失意のうちに、オーチャード・ロードをとぼとぼと戻る。
人々は私の落胆など知る由もなく楽しげである。

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失意のうちに、フードコートでクイティオを食べる。
失意のうちでも確実においしいのが東南アジアのいいところ。
この旅行中、ほぼ唯一のガックリ体験であった。
ジャパン・クリエイティブ・センター、いつか必ず行こう!

さて、ぼつぼつ次回からは、コタキナバルの街やホテルなどを載せていきまーす。
このままじゃまるでシンガポールに行ってきたみたいだし……。
ジェッセルトンホテル&コタキナバル散策編 その1につづく)

by apakaba | 2012-11-28 11:27 | ボルネオ | Comments(6)
2012年 11月 27日

ゴーゴー・ボルネオ!〜チャンギ空港編

今回のボルネオ島旅行では日記を書かなかったため、時系列に沿わずトピックごとにまとめることにした。
今日はトランジットのシンガポール・チャンギ空港だけ。

みんな大好き、チャンギ空港。
私も旅行者のご多分に漏れず、チャンギが大好き。
とくにT3(ターミナル3)が好きだが、往きはT2だけに2時間弱降り、ひまわりガーデンに行ってみた。

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効かせ過ぎなエアコンから逃れると、あ、あ、レンズが曇ってしまうー。
早朝の空はどんよりとしている。

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それでもひまわりはみんなこっち向いてくれてる。と、思える。
おはよう!
寝てない目にねじ込んでくるような鮮やかな花よ。

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離陸も見られる。
すごい日の丸構図、日の丸のひまわり。

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虎模様の尾翼がかっちょいいけど、今日はその奥のシルクエアーに乗るのだ。

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屋外なので喫煙所も兼ねている。

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無料の足マッサージ機のお世話になろうと思っていたらどこも使われていて、しょんぼりしていた矢先、ここを見つけたのですばやく寝転がる。
目覚まし時計も装備されている、ほんとすばらしいね。
(奥の柱が激しく斜めなのは、私が寝転がって撮っているからだよ!)

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往きのトランジットはこんな感じで終了。
寝てなくてヨレヨレのうえに機内食が2回も出されてしまうので、なにか食べて時間をつぶすこともできない。

次は帰りのチャンギへ。

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なにを直しているんだろう?
MacBookとにらめっこしながら、おそろしい場所で孤独な作業中。
横目で見ながらT1へ移動する。
なぜなら、目当ての場所があるからだ!

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ばんざーい!
毎回、チャンギに来るたびにここへ来たいと思っていたけれど叶わず、やっと来ることができましたー!
トランジットホテル内のジムを、有料で使うことができる。
だいたい1000円くらいで、プールで泳げる!プールが大好きです!

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やったー!夕焼けにも間に合った。
小さくて浅めなプールであるものの、まあまあ泳げる。
右に並んでいるのは東屋。バリ風リゾートをコンセプトにしているらしい。

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いや、決してバリ風では……プールサイドから見下ろせばこの風景だし、第一離着陸の轟音がひっきりなしだ。
そこがおもしろいのだけど。

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一つだけ誤算があった。
「寒いよーッ!」
マリーナ・ベイ・サンズのプールも寒かったが(その写真。地上200メートルのプール)、ここも風がびゅうびゅう吹きつけて、気温もさほど高くなくてたいへん寒い。
力泳しつづけないと震え上がってしまう。
ジャクージに入ってもなぜかとてもぬるく、じっとしている分、かえって冷えてくる。
がまんしきれず退散してジムのシャワー(シャンプーやリンスは完備。自分のものを使ったため、使い心地は知らない)を使うが、これまたお湯がぬるく、結局冷えっぱなしであった。
力泳が一番。
ゴーグルは当然ね。

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チャンギで一番好きな場所、それはT3のタイガーシグネチャーバー!
泳いで風呂上がりで言うことなし。

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ジャン・レノ似だったね……

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ジャン・レノと飲めばよかったな……
後悔先に立たず。
ドラフト大変おいしうございました。
また来るよタイガーシグネチャーバー。
これで旅も終わり……


あ、あれ、終わっちゃった。
この連載、この調子だとずいぶん長くなりそうだけど最後までよろしくおつきあいください。
トランジット/コタキナバル空港&シンガポール編につづく)

by apakaba | 2012-11-27 22:45 | ボルネオ | Comments(4)
2012年 11月 26日

羽田空港国際線ターミナルのこと

きのう、ボルネオ島コタキナバル(マレーシア・サバ州)から帰国した。
旅行記本編に入る前に、今日は羽田空港国際線ターミナルのことをちょっと書いてみる。

私は羽田空港国際線ターミナルが大好き。
旅好きの友達にもよく「羽田が最高!もう成田はありえない!」と言っている。

1.うちからのアクセスがきわめてスムース。
2.成田空港が昔から嫌い。
3.新しいから当然だけど、施設がどこもきれいで、来るたびにいろんな催し物をちょこちょこやっている(無料のコンサートやイルミネーションなど。今回はユニクロのヒートテック専門店が、世界初・免税価格で期間限定出店していたのを見た)。
4.成田よりも、ずっと気の利いたお店がいっぱい入っている。
5.せまいこと。空港内で動くのがらくちん。
6.入国/出国審査が空いていて早い。
7.千住博作品があちこちにあって、何度見てもうっとり。

というのが溺愛の理由である。

そうはいっても、今まで真夜中か早朝のフライトしか使ったことがなく、すべての店舗が開いている時間帯に来たことがなかった。
今回もまた真夜中のフライトだが、かなり早めに空港に行ってみた。
べつになにも買い物しないけど、すべてのお店が開いているとそれだけで楽しい!
肩がすごく凝っていたので、マッサージサロン「ラフィネ」でマッサージをやったり、「京はやしや」で抹茶ソフトを食べてみたり、ユニクロのヒートテックを今にも買いそうになったり、まるで旅行というより空港に遊びに来た人みたい。

一番好きなスポットが、プラネタリウムのある「スターリーカフェ」だ。
前にも行ったけどまた行くのだ。

前は時間がなくて最終プログラムを一つだけ見たが(その写真。連載「“南の楽園”はいくつあったの」の初回)、今回はゆっくり二つ見た。

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一つはプラネタリウムプログラムではなく、『旅するぬいぐるみ』というアニメ。
真っ暗にする必要がないため、ドームを密閉するドアも開けっ放しのまま、なんとなく番組が始まる。
空港で持ち主の女の子と離ればなれになってしまっただるまのぬいぐるみが、女の子に会うため何年もかけて世界中を探しまわるというシンプルなストーリーだが、世界の名所が次々出てきて旅行出発前にふさわしい。
隣の席の若い女性二人連れは、「あーここ行ってみたいね!」「ここも行きたーい」と盛り上がっていた。

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右下にチラッと見えているのがプラネタリウム本体

もう一つはプラネタリウムプログラム『ナイトフライト』。
上映中は真っ暗にしてドアを閉めきり、出入りもできない。

朝から営業しているが、暗いドームで冷え冷えなビールを飲んでいると、自然と眠くなってきて、どちらかというとナイトフライト向きだと思う。
番組は季節ごとに変わる。
入場するとき、テーブルチャージ500円を払えば、いくら長居してもかまわない。

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冬の大六角形。オリオン座の一等星ベテルギウスを囲むように、おおいぬ座のシリウス・こいぬ座のプロキオン・ふたご座のポルックス・ぎょしゃ座のカペラ・おうし座のアルデバラン・オリオン座のリゲルを結んだ六角形の直線。星座が好きなのです

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オーロラなう〜

初めて行ってみたのが到着ロビー階のはずれにあるシャワー室だ。
家で十分お風呂に入ってこられるのに、ここに入ってみたくて、わざわざ800円払う。
こんなことやってたら、旅行前に羽田でお金がなくなっちゃう〜。
6室しかないので、行ってみたら満室だった(予約不可)。
空き次第、電話をしてもらう。
プラネタリウムの最中に電話が来たので少し焦った。

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何の変哲もないシャワー室だが、シャンプーとリンス、ボディーソープ、どれもナイスな使い心地。シャワーの水圧が高くて快適。もちろん、きれいに清掃してあり、乾いていて、人が使った直後とは感じさせない。

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新しくて清潔で都会的なデザイン、満足度高し!コスメ類はないので持ち込む。

いろんな空港で、出発前にシャワーを使ってきたが、ここがまちがいなく一番快適だと思った。
日本バンザイ。
タシケント(ウズベキスタン)のシャワー室は、ちびけた石けん一個が置いてあるばかりでぼろぼろだったし、チャンギ空港(シンガポール)はミネラルウォーターのサービスがあったもののリンスなし。
水よりリンスをくれ。

出国審査のあと、千住博作品を見るためだけにエスカレーターで4階まで上がる。
前にも撮ったが(その写真。連載「あなたを香港・マカオに連れて行くよ」の初回)また撮るのよ。

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前回の写真より、だいぶきれいになったでしょう。自分のカメラにもやっと慣れてきました。遅い。

もし子供と一緒なら、「博品館TOY PARK」のスロットカーサーキットもやってみたい!
おばさんが一人でスロットカーをやっているのもナンだから今回は遠慮したけど。

羽田激ラヴ!また羽田からどこかの国へ飛びたいなー。

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そしていつかは免税店で高級品を買いたいな〜。ナンテ。出国後エリア、カルティエが窓に映っておもしろかった

追記:この記事のあと、シャワールームは15室と広くなり、料金が1000円に値上がりした。
ソフトドリンクの無料券がもらえるというが、とくにいらないなあ

by apakaba | 2012-11-26 12:51 | 旅行の話 | Comments(4)
2012年 11月 21日

「インド先住民アートの世界」蔵前仁一コレクション

ファン歴25年の蔵前仁一さんと『旅行人』のことという話を、今年の1月に書いた。
このときのお話にあった、インド先住民のアートの展覧会が開催された。
インド各地で、蔵前さんが個人で集めたアート作品である。

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[ワルリー画]は人を棒人間のように描くのが特徴。人間一人一人は完膚なきまでに無個性化/記号化される。だがよく見ると、棒人間たちは絵の中でいろんなことをしているのだ

「インドのいろいろな地方で、脚光を浴びたり浴びないままだったりしながら制作されてきた、愛らしくカッコよくソボクで奇妙で前衛的で土着的で先鋭的で懐古的な……いいようもなくおもしろい“芸術品”の数々」と1月に書いたとおり、トークイベントでの写真を見ただけでも、そのアートの独創的な魅力に驚いたのだが、実物はやっぱり、胸に迫る鋭さがちがっていた。

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[ミティラー画]。この細かさは前に見た武田尋善さんの絵を思い出させた(レビュー→異彩はホログラムとなり、旅路を照らす——武田尋善さんの個展「茸帽子道中見聞録

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あまりの細かさに目を近づける。この直線、定規なしで引くの?うっそー!

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[ミティラー画]。ナゼ、牛や人々がウロコ模様だったりそうじゃなかったりするんだろう……どういう基準でウロコ模様を採用するのだろうか

インド先住民とは、アーリア系の人々がインド亜大陸にやってくる前から住んでいた民族を指し、現在は500部族、5000万人がいるという。
5000万人というとすごい数のように見えるが、人口12億を突破したインドで、しかも500もの部族にわかれているとなれば、それぞれは全き少数部族である。
そんな人たちが、3000年もの間、各々の文化を伝え続けてきているのである。
3000年って。
日本だったら縄文時代の終わりくらいか。
え、進歩がない?
いや、進歩はきちんと、その文化の中でしている。
彩色は今ではポスターカラーやアクリル絵の具になり、伝統的手法の絵の中に電車や自動車が違和感なく描かれている。

インドの人々に、人間は、動物は、神は、世界は、こんなふうに映っているのか!

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[ゴンド画]。かわいいような憎たらしいような表情の動物が描かれる。シカ・ネコ・鳥などの体に、実際の動物とは無関係な縞模様が施される

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「動物ばかりだから、じゃあこれは立ち上がったかわいくない表情のクマなんだね」と思っていたら!タイトルは[神像]……うそー。ゴンドの人々よ、神の姿はこれでいいのか本当に?

今年は、よく美術展に出かけた。
森美術館で開催されていた「アラブ・エクスプレス展」は、期待はずれであった。
アラブ美術にはあれほどの独自の伝統があるのに、西洋のアート表現をトレースしている限り、その枠から出られないと感じた。

対して、「ボストン美術館展」「KORIN展」「大阪市立東洋陶磁美術館コレクション展」「毛利家の至宝展」「お伽草子展」など、日本美術の展覧会は、どれもよかった。
日本美術と西洋美術、どちらがすぐれているかなどと考えるのはナンセンスで、西洋を模倣しない日本美術は実に美しかった。
伝統を捨て去ることは、かならずしも進歩とはいえない……しきりとそう思った。

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[サンタル画]。自由だ。もはやここまでくると大混乱。うまいのか?ヘタなのか?蔵前さんは「でもね、もしあなたが動物を描けと言われたって、こうは描けないでしょ。」たしかに……!

このインド先住民アートには、それらの日本美術の展覧会を見たときと同じ感動(西洋を模倣していない美しさ)と、「これらのアートは、だんだんと消えていくのだろうか?」というせつなさを覚えた。
インド国内では、「カースト制」に代表されるような、出自の差による少数部族への無理解という問題があるのかもしれない。
だとすれば、アートの生き残りには外国からの注目がきわめて重要であるはずだ。
蔵前さんのような人が、もっともっと世界中に現れて、世界のアートシーンで注目されるといいなあ。

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装飾的は瓦は、徐々に滅びゆく運命だとか。ヨーロッパのガーゴイルを思い出した。見事な鷲鼻。

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真鍮工芸のコレクションにも瞠目。大量生産品ではなく、一度きりしかできないものばかり。その理由は、会場で確かめてください。

きわめて貴重なコレクションだ。
インドという国に興味があるかないかではなく、アートに少しでも興味のある人は、絶対に見るべきコレクションだと断言する。
アートの奥深さ、世界の奥深さに、胸がいっぱいになる。

神楽坂 光鱗亭ギャラリーにて、11月25日まで。

by apakaba | 2012-11-21 09:08 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(0)
2012年 11月 18日

「ササニシキ」の横浜ドライブ

秋晴れつづきの東京で、きのう一日だけが悪夢のような悪天候になった。
そんな日にナゼわざわざドライブすることになったのか。
長男「ササニシキ」が「運転したい。」と言うからである。

「ササニシキ」は、免許はとったものの、車を必要としない毎日なので、ちっとも運転が上達しない。
これじゃいつまでも不安で、車の鍵を渡すことができない。
Facebookで友達に呼びかけて、半日で戻ってこられる場所を募集したら、横浜をまわるアイデアを出してくれた人がいた。
西や北を目指すことも考えたが、なにしろドライバーが9時過ぎまで寝ているから遠出はあきらめるとして、今回はこれに乗っかることにしよう。
土砂降りにはがっかりだが、「ササニシキ」は景色を見るよりも(そんな余裕ないし)、ただ運転をしたいだけだし、悪天候での運転も必要な経験だ。

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ここにたどり着くまで、苦労した……「ササニシキ」は首都高を走るのもまだ二度目。
なにをしてもめずらしくてうれしいのはわかるが、スピード出し過ぎ・対向車線にふくらんでカーブする・車間距離つめ過ぎ、おそろしくてしょうがない。
私は助手席に座るとたちまち眠ってしまうタイプなのだけど、こわくて寝るどころではない。

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ここは金沢文庫にある、称名寺というお寺である。
広大な敷地が市民の森になっているらしい。
私は結婚するまでの23年間、横浜から出たことがなかったが、ここは来たことがなかった。
「ササニシキ」は
「ほう。いいところだ。オレは神社仏閣めぐりが好き。」
と喜んで歩き回っている。

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「かわいい妹(「コシヒカリ」)が高校受験に合格できるように、お願いしてやりなよ。」と言うと
「いやだね、どうせ5円玉ないし……あ、あった。しょうがない、『コシヒカリ』の高校と、オレの司法試験合格とともに祈るか。」
司法試験なんて何年も先の話じゃないか。

神社とお寺の参拝の仕方のちがいなどしゃべりながら、誰もいない広い境内を歩く。

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こういうものがあると、飛びつかずにはいられないガキっぽい男である。
「よし、鳴らすぜ!」と張り切るが、撞木(しゅもく。鐘を撞く棒)が鎖で縛られていて動かせなかった。
「なんでこんなことするの。だったら立て札に[鐘を撞いてはいけません]って書いてあればいいのに。」
ガキっぽい、というより子供そのものの発言をする。

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お寺のまわりに、なにもないただの原っぱが広がっている。
鳩がたくさん、地面をつつきながらうろうろしている。

「人をおそれない。」
鳩を見て、いきなり「ササニシキ」がつぶやく。

サ :鳩って、なにを食べてるの。あんなに、ずーっと地面をつついて。
私 :知らない。木からこぼれ落ちた種とか、どんぐりがつぶれたりしてると、それを一生懸命つっついたりしてるよ。あとは、ちっちゃい虫じゃないかな。
サ :えっ。それだけ?それだけで生きてるの?
私 :だったら鳩がいっぱいいるあそこに行って、見てみたらいいじゃない。人をおそれないんだから。
サ :(鳩のいるところまで歩いていく)……あっ。これ?これかな(稲のような小さい粒があった)。こんなんで生きてるなんて。一日中食べてたって足りない。よくそれで……あの、鳩の形にまでなるね。
私 :……んんん〜?
サ :あんな食べ物で、よく、あんな丸々とした、鳥の形ができるね。それもこんなにいっぱいの鳩。

私 :まあけっこう、カラスなんかに食べられてるけどね。この前、空中戦をやってたよ。カラスが鳩をつっついて、もう鳩はよろよろなんだけど、一生懸命逃げてて、それを追っかけてカラスがすごいつっつき方をしてた。
サ :え!そんなの見たことない。なぜ鳩はやりかえさないの。
私 :だってくちばしの大きさを較べてみなよ。かないっこないじゃないの。
サ :そうか……。カラスは、鳩を食べるのか。ということは……やがて、鳩は、みんなカラスになっちゃうのか。
私 :……え?
サ :鳩はいつかはみんなカラス。……ここには、まだ鳩がいっぱい。カラスになってない。平和。ここは平和。

この息子の、独特なテンポの会話にはしばしばついていけない。
すごく幼い子供が、幼いアタマで真剣にものを考えたときのようなことを言う。

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称名寺からすぐそばの柴漁港へ移動した。
「ササニシキ」は「やった、海だ海だー」と盛り上がる。
友人の教えてくれた「小柴のどんぶりや」でお昼にした。

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特大のあなごが一本そのまま揚げてある丼と、煮穴子の丼。
敷いてあるごはんはほんのちょっとだが、てんぷらのボリュームがものすごい。
「ササニシキ」は広島旅行を懐かしんで(息子の書いたひろしま旅行記)煮穴子にしたが、
「厳島神社のあなごのほうがうまかった。でも、高い。」

夕方からサークルの友達と飲みに行くというので、「天気も悪いし、もう帰ろう」と言ってみるが、まだ運転したいらしい。
ではあとひとつ、おすすめルートの最後の三渓園に寄ろう。

三渓園への道のりも、行き過ぎたり道をまちがえたりとすったもんだをした(カーナビがないので)。
「お前こんなんじゃ女の子を載せてドライブデートなんか夢のまた夢だぞ。ふつう怒って帰るよ。」
「うひゃひゃひゃっ、そうかな?」
「もう少し、運転にも道路にも慣れないと。」

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「いいね。庭園めぐり。オレ庭園が好き。広島の一人旅でも、庭園に行ってた。金沢もよかった。」
「ふーん、よかったねえ。お前の好きなとこばっかりで。」
彼はなにかにつけて「オレは何々が好き」と言う。

「お前は“抹茶とお菓子が好き”でしょ。雨がひどいからとりあえず抹茶飲まない?」
「うん。オレは抹茶が好き。和菓子がいい。」
小さい子を連れているような錯覚を覚えることがある。

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「ああ、うまい。久しぶりの抹茶はうまい。」

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紅葉にはまだまだ早い。
西か北へ向かえば、もっと色づいていただろう。

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雨はどんどん強くなるし……

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私の好きな水仙はまだ植え込んだばかりだし……

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菊も好きだが、こういうリッパなのより小菊が好きだ。

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いや、小菊といってもこういうのとはちょっとちがうイメージで……

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まあ、私の好きな石蕗(つわぶき)があったから、今回はこれでよしとするか。
あれ。「私の好きな何々」は息子の影響か?
それとも逆か?

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結婚して東京に来たら東京が大好きになって、「横浜なんて東京に較べたらおもしろくない!東京が最高」と思ってきた。
でもやはりこのあたりは懐かしい。
三渓園も、誰か男の子と来たことがあったはずだ……どの人だっけ……ちがう相手と何回か来たのかもしれない……来たのは確かだが、相手をぜんぜん思い出せない。
まあどうせ相手のほうも忘れてるだろうし誰でもいいや。

最後に、この池で
「お前おかーさんの写真を撮れ。こんなとこ来るの何十年ぶりだから。」
とカメラを渡したが、「ササニシキ」は背が高いのにまったく気を遣わず、屈まないで撮るので、不格好な写りになった。

車で横浜南部を走りながら、運転に必死な息子に向かって「このあたりは、本当に懐かしいよ。」と何度も言った。
「この海は本当に懐かしい。」
「京浜工業地帯。この工場の風景は懐かしい。」
「出た、横浜名物“いきなり階段”(住宅地を走っているとだんだん道が狭くなり、最後に突然階段が現れて車で進めなくなってしまう)」
「横浜名物“暗いトンネル”(幽霊が出るという噂、平家の落ち武者の声が聞こえるという噂など、こわいトンネルがいっぱいある)」
いちいち口に出して言わないようなずっと昔の思い出も、次々と浮かんできた。
(中1のとき、金沢文庫まで自転車で行ったことがあったな……本牧ふ頭に夜中運転していったことがあったな……この市民プールに母がよく連れてきてくれたな……などなど)
小さいころに死んだ父(「ササニシキ」の実の祖父)の話などもする。

「オレはもっと運転がしたい。今度は山道をずーっと走って温泉とか。」
「ふーん、じゃあおかーさんを温泉に連れて行ってよ。」
「おかーさんと二人じゃ盛り上がらない。もっとたくさん人を載せて行きたい。」
「じゃあお父さんや『アキタコマチ』も載せてく?」
「うん。」

by apakaba | 2012-11-18 18:18 | 子供 | Comments(12)
2012年 11月 16日

ラジオのジャーニーから

来年の3月にジャーニーが来日公演をするというので、J-WAVEでは今朝たてつづけにジャーニーの曲を流していた。
ジャーニーって、アメリカのロックバンドですよ(一応)。
私が高校生のころ大流行りしていたけど、まだバンドがあったのかということに、まず驚いた。
おじいさんバンドの来日公演が続くなあ……

ボーカルはスティーブ・ペリーではなく、アーネル・ピネダという人らしい。
ラジオから流れてくるアーネル・ピネダなる人の歌声は、スティーブ・ペリーほど金属的な響きではないものの(スティーブ・ペリーって、金属的というか磨りガラスを引っ掻くような音が声に交じり込んでいませんか?)、モノマネ芸人が歌っているみたいにやたらとそっくり。
この人はフィリピン人歌手で、スティーブ・ペリーそっくりに唄えるということで採用された、と今日初めて知った。
気になってwikiで見てみたのだ。
その来歴に、朝から度肝を抜かれた。
映画の中にしかないような貧乏成り上がり物語。
私と同い年だし、がんばってくださいアーネル・ピネダよ。

私にとって、ジャーニーは特別だ。
特別に好きだったということではなくて、高校生のときにつきあっていた男の子が、学校でバンドのボーカルをやっていて、よくジャーニーを唄っていたからだ。
私も唄うのが好きなので、今でも、アルバム何枚分も唄える。
今日は壮絶な少年時代を過ごしてきたアーネル・ピネダ版ではなく、磨りガラスを引っ掻くようなオリジナルボーカルで、車の中でジャーニーをかけてみた。

その彼とは、つきあっていた期間は高校時代の短い間だけだったが、小学校・中学校・高校・大学と、すべて一緒だった。
大学以外は(彼は大学を浪人して留年してしまったようなので)、二人ともすべて同じ卒業アルバムに収まっているわけだ。
私は、自分がバンドに加わる気はさらさらなかったが、やっぱり興味はあるので、彼からジャーニーの楽譜をもらって、家でひとり、ピアノでバラード何曲かを弾き語りしたりしていた。
ひとりジョナサン・ケインというわけですな。

でも実は、ジャーニーではないバンドの歌をやる彼のほうがカッコいいと思っていた。
オジー・オズボーン・バンドをやっているのも好きだったし、一度だけだが彼がドラムで出たライブがあって、そのときグレッグ・キーン・バンドの『Jeopardy』を、ドラムを叩きながら唄って、それが今も忘れられないほどカッコよかった。



斜めに顔を傾けてマイクに向かうのも、ふだんの、センターに立っているボーカルのときとはちがう姿でセクシーに見えたし、曲の途中で入るドラムの「ズダダッ」という繰り返し部分には痺れた。

それもこれも、まさにうちの3人の子供たちの年齢くらい(中学生から大学生)に、関わりがあった人なんだな。
ジャーニーを聴いたり、『Jeopardy』を聴いたりしながら自分の子供を見るのは、とても奇妙なものだ。
今、あの人が元気でいたら、きっとラジオから流れてきたアーネル・ピネダ版ジャーニーを耳にして、私と同じことを考えていると思う。
“あれ?スティーブ・ペリーにずいぶん似てるな、でもスティーブ・ペリーの声のほうが……”
“ずっと昔、唄ってたなあ。”
“あのころ一緒にいた女の子は、ええと”
ええとー、今こんな感じでやってます。えへへ。

(その人のことを以前に書いたと思ったらこれだった→「あぶない夜(声がいい男)
これすら9年前に書いたんだなあ。早いなあ!)

by apakaba | 2012-11-16 22:43 | 思い出話 | Comments(2)
2012年 11月 15日

戦きへ誘い込む——小瀧達郎写真展 「VENEZIA」

お茶の水のギャラリー・バウハウスで開催中の小瀧達郎写真展
「VENEZIA」
に行ってきた。

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この赤いマントの写真を、送られてきた案内状や画面上で何度も見ていた。
ところが、大型プリントになっているのを見たら、赤の色がまるでちがっていた。
印刷や画面では、暗く沈んだ色合いに見えており、もっと暗い写真なのかとばかり思っていたが、プリントでは目が痛くなるほどのあざやかな赤だった。
小瀧さんの写真は、当然プリントこそが身上だから、見る者の目を射抜くこの輝く赤が、真に見せたかった赤なのだろう。
やはりここまですばらしい写真はプリントを見なければだめだ、いつも小瀧さんのブログ画面で写真を見た気になっていたけれど、見に来てよかった……と、最初に見た赤で実感した。

私は、前に横谷宣さんの作品をこちらで買ったことがあり(レビュー「横谷宣写真展「黙想録」——置換への断念/共有する感懐」)、それ以来、展覧会の案内状が届く。
その案内状はいつも、紙の質もすぐれているし、そのまま壁に貼って飾りたいすてきなカードなのだが、今回の案内状は豪華さが段違いだった。
故・辻邦生氏が小瀧さんの写真集「VENEZIA(筑摩書房)」について書いた長文が掲載されている。
格調の香り高さに、読むだけで酔いそうになる。
案内状から、この写真展への気迫のほどが窺えた。

ヴェネツィアに行ったことがないままに作品を見たことがひどく悔やまれる。
フランス以外のヨーロッパを知らない私には、写真が見せてくれるヴェネツィアの姿は、“この世ならぬ姿”だ。
世界のどこにも存在しない街、あるとすればヴェネツィアにしかないだろう街であるヴェネツィア。
見ていると、魔法にかけられたような(といっても魔法にかけられたことがないからふつうに言うと「酔ったような」)感じがしてきて、頭にはこんな出口のない言葉遊びしか浮かんでこなくなる。
見たことのない世界を次々と見せられると、人の目は処理能力を超えてしまう。

だが、ヴェネツィアに行ったことのある人なら皆、このプリントをたのしめるのか?
「ああ、ここ行った行った。」
「そうそう、仮装してカーニバルやってたね。こんなふうに!」
笑顔で話しながら、旅を懐かしめるのだろうか。
そうではないような気がする。
行ったことのある人こそ、“自分の歩いてきた旅先のあの街とは、まるで別の街が写真の中に現出している”ことへの驚きと不安感がいや増すのではないか。
その心の戦(おのの)きを書き表すことは、私にはできない。
このプリントの前に立って、言葉を使って相対するのは、辻邦生さんレベルの方でないと無理なのだと思う。
けれども、逆説的だが“言葉にすることのできない心の戦き”は、いつまでも体の中に余韻として残り続ける。
それは、ほしいもの(たとえば水や食べ物でもいい)をストローやスプーンで得るのではなく口移しで与えられるような、官能に響く快感だ。

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いきなりヘボ写真に変わってすみません。
ギャラリー・バウハウスに来るといつも真剣に見すぎて頭がくらくらしてしまうため、すぐそばの神田明神に立ち寄り、甘味処の天野屋で甘酒を飲んでクールダウンすることにしている。黄金パターン。


私のようなカメラ音痴の人間が言う資格などないけれど、ヴェネツィアを撮影したカメラはそこらへんの普及品であるはずがなく、大判カメラの解像度があってこそのあの諧調であることは間違いない。
人間の目で識別することができないくらいの色まで写っているから、写真を見たときに、なんとも言いがたい不思議な感覚にとらわれる。
こんな写真を、撮れるわけはないけれど、せめて、その不思議さ——色と色のあいだの色合いまでも表現し、その間(あわい)にこの世ならぬ世界を現出させる写真——を見分けて心打たれるだけの目は持っていたい。
雑な目を、持ちたくない。
それが、写真家に応えることのできる、鑑賞者としての誠実さだ。

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会場では稲田敦人形作品展「CARNEVALE」も同時開催されており、ヴェネツィアのカーニバルの写真とちょうど呼応している。
この作家のことを今まで知らなかったが、この人形作品も、とてもよかった。
小瀧さんの写真で陶酔したようにふらふらして、ふと目を移すと、極彩色のチープな素材でつくられた、諧謔的なたたずまいの人形に囲まれていて、はっと我に返る。
人間の苦しみを蹴飛ばしあざ笑うような、ふざけているような人形、でも眺めているうちに現(うつ)し身の分身に見えてくる。

神社というのは、古来より、最高の“気”の流れる場所をロケーションにしているという。
ギャラリー・バウハウスという場所そのものが、(神田明神のすぐそばということが証明しているとおり)、どこかこの世……というよりこの世間の塵埃から切り離されたムードを持っている。
そこに収められた幾体もの人形は、ますますギャラリーを世間から遠ざけ、写真のヴェネツィアへと誘い込むための格好の案内役となっていた。


※ 会期2013年1月31日まで。
※ 前回訪れたときの記事はこちら 真・善・美への問い——W・ユージン・スミス写真展「楽園への歩み」

by apakaba | 2012-11-15 12:18 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(0)
2012年 11月 10日

マーティー・ブレイシー日本デビュー35周記念ライブ~ありがとう!みなさまのおかげです!お江戸編~

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11月5日、目黒ブルースアレイでのライブに行った。
長年のネット友達のメリーさんが、ドラマーのマーティー・ブレイシー氏のアシスタントを務めていて、この案内をいただいた。
私は一般客だが、次男「アキタコマチ」が、カメラマンとして働くことにもなった。
以前、吉祥寺のライブハウス「サムタイム」で演奏をしたとき、次男が撮った写真をマーティーがとても気に入ってくれたからだという。

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マーティー・ブレイシーは、もんた&ブラザースをはじめとして、日本で35年も活動しているドラマーである。
彼のバンド The Edge のメンバーと、ゲストに大橋純子を迎え、この日、記念ライブが行われた。

今度もまた「サムタイム」のようなライブハウスかという予想を大きく裏切り、会場は、値段も高いが味もいいリッパなレストランだった。
「アキタコマチ」は、スタッフとして打ち合わせから入場し、開場して私が席に通されたときには、すでに控室にいてスタッフパスを首からぶら下げていた。
今までも、友人の素人バンドとはいえ、ライブのカメラマンはかなりこなしているので、動き回れる範囲の厳しい条件下でも、落ち着いて撮影していた。

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友人を撮るのと、プロミュージシャンを撮って、それを1000人単位の人が見るのとでは(マーティーのFacebookは友人1000人以上、メリーさんでも200人以上、各メンバーもFBをやっている)、緊張感がちがう。
もうすぐ高校を卒業したら就職する友達もたくさんいる、つまりそれはもうコドモ扱いも卒業ということだ。
撮影に関わるすべてに責任を持つこと。
失礼のないように、大人と付き合うこと。
それを言い聞かせて仕事に臨ませた(私は席でビールとワインを飲んでいただけだが)。
大人のライブにふさわしい、大人っぽい作品になったと思う。

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撮影のことはさておき、マーティーのライブは2回目だが、まったく非の打ち所のない演奏である。
あの音を言葉で表現することはとうていできない。
大音量なのにずっと聴いていたい音楽。
親密でセクシーな演奏、一体感のある演奏……大人ならそんなふうに表現するだろうが、そんな手垢まみれの言葉では足りない。
「アキタコマチ」が、一言で「“吸いつく”。」と言っていたがこれ以上の表現が見つからない。
リハーサルを間近で撮影していたときにそう感じたという。
演奏のスタートは、きわめて適当にというか、なんとなく始まっていくのに、メンバーの音が、ひゅぅっと吸いつくように集まって一瞬で一体になってしまい、もう離れない。

第一部と第二部の間に、マーティーの音楽仲間からのお祝いメッセージの映像が流れた。
これが思いがけないほど心温まるメッセージビデオだった。
ばんばひろふみ、つのだひろ、上田正樹、もんたよしのり、八神純子、コロッケ、他にも数えきれないほどの有名人(息子はコロッケ以外あまりよくわからなかったようだが)が次々と映り、マーティーはほんとに日本に愛されているなあと思った。
しかも、出演している皆さんの、“感じのいい”こと。
芸歴の長い有名人って、やっぱり決めるトコ決める。さすがだわ……と感心しきりだった。

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とても自然で、仲のいい雰囲気が表れているカット

第二部の大橋純子には、自分でも思ってもいなかったほど、感激した。
マーティーが「お姉ちゃん」と呼んでいるように、大橋純子さん(はい、もう呼び捨てにできません。ほんと感動したから)のトークは、やさしく温かく破綻なく、客席もみんな、昔からの友達だったような気分になってくるほどである。
そして歌。
大橋純子さんの歌は……すばらしかった!
数曲、昔マーティーとともに作ったアルバムの中から唄い、そのあと「今日ここにいらした皆さんと、マーティーに、プレゼントの意味で唄います。」と、『シルエット・ロマンス』を唄ってくれた。
昔の、凛々と響き渡る歌声とは少しちがっていた。
『シルエット・ロマンス』は、年月を経て、まったくちがう歌になっていた。
若かったころの、情熱がほとばしるような、ドラマチックな『シルエット・ロマンス』ではなく、別のドラマが浮かび上がっていた。
昔より声量が少し落ちて、少し声が嗄れて、そこに若い張りのある声には出せなかった陰影が生まれる。
昔どおりに自由自在に低音から高音へと移り変わることは難しいけれど、それは年を取っていく一人の人間そのものの命の姿だ。
曲の中にその人がすべて入り込みそして出し尽くしていた。
「アキタコマチ」に、「おかーさん泣きそう!」と言われて初めて気付いたが、ものすごい感動で、知らずのうちに涙ぐんでいた。
短い歌にあそこまで自分のすべてを出し尽くすことができるとは。
亡くなった尾崎紀世彦は、生前「自分はまだ『また逢う日まで』を唄いきれていない。」と言っていたという。
それを聞いて、「あんなに何十年も同じ歌を唄ってて、まだ唄いきれないってどういうことよ?」と笑ったが、大橋純子さんの『シルエット・ロマンス』を聴いたときにわかった。
歌には、“これで到達した”なんてことは、ないのだ永遠に!

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アンコールの一番最後に、キャロル・キングの『You've got a friend』を、皆で大合唱して終わった。
The Edge の演奏よりも、大橋純子さんの歌についての記述が長くなってしまったが、演奏について語る言葉がどうしてもうまく浮かばないので許してほしい。
演奏はもちろん最高だったし、最後の『You've got a friend』は最高だった。
やはりマーティーが friend を集める力を持った人だからこその、このライブだったのだと思う。
すばらしい夜だった。
マーティーおめでとう!
そして、息子にまたとない機会をくれて、どうもありがとう。

*料理写真とスタッフパスの写真は私がiPhone撮影しています。
それ以外は「アキタコマチ」撮影です。

by apakaba | 2012-11-10 09:31 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(12)
2012年 11月 08日

本屋で、「ササニシキ」の誕生日に

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大きめな本屋に行き、数冊を探してうろうろしていた。
「ヒクッ……、ヒクッ……」
周囲の雑音の足下から立ちのぼるように、しゃくりあげる声が交じってくる。
誰も気がついていないのか?
きょろきょろ見回すと、痩せて目の細い男の子が、すごい速さで人の間を歩いていた。

小学校低学年、もしくは背の高い幼稚園年長児、くらいか?
細い目は必死で親(であろう、一緒に来た誰か)を探している。
“どうしたの。お母さんがいなくなっちゃった?”
心で話しかける間もなく、びゅーんと書架の間をすり抜けていく。
焦っている子供というのは、思いの外、速く動く。
私も、自分の子供があれくらいだったころ、すぐそばにいるのに何度も取り逃がしたことがある。

水族館のマグロみたいに、猛スピードで店内を回遊している。
「ヒクッ……、ヒクッ……」のしゃくりあげが、近づいたと思うと遠のいていく。

次にそばに来たら、細い腕をつかんで教えてやろう。

“君どうしたの。お母さんと来たのか?
はぐれたときは、そんなに速く動いたらだめだよ。
お母さんのほうだって、君を探しているの。
君がそんなにすごいスピードであっちこっちに動いちゃったら、見つかるものも見つからないでしょう。
お店の人に言って、じっと待っていれば絶対に迎えに来るんだよ。
絶対に、来てくれるんだよ。
だって、よーく考えてみな?
大事な大事な自分の子供が、ちょっと見えなくなったからって、「あー、あの子どこかに行っちゃったわねえ。今ごろどこかの親切な人に拾われているかもね。そこで幸せに暮らせばいいわね。さあ、あきらめて帰ろうかしら。」なんてことに、なるわけないでしょう?
そんな、つかまえてきた虫とかでもあるまいし。
どんなことがあっても、探し出してくれるんだから。
だから心配しないで、動かないで待っているんだよ。”

このセリフは、私が自分の子供たちに、数えきれないほど繰り返して言ってきた言葉だ。

回遊魚のようなその子をとっつかまえるために、漁師のように待ちかまえていると、その子はお母さんと手をつないで、落ち着いた足どりで書架の間から現れた。
涙の跡も消えうせ、完全に平常心を取り戻している様子だ。
私も本を買って、家に帰った。

今日は長男「ササニシキ」の、21歳の誕生日である。

次男「アキタコマチ」は、小さいころ、一瞬でも目を離すと迷子になってしまう子供だった。
昼間見たあの目の細い子のように、焦って泣いている次男を、たびたび漁師のように掬い上げた。
「ササニシキ」は、あまり迷子にならなかった。
あの目の細い子くらいの年頃、「ササニシキ」は、一本道では私の手を振りほどいて、だだだっと走って先に行く。
私があとから歩いていくと、一本道の終わり、曲がり角のところで、かならず、ふり返った。
私があとからついてきていることを確認すると、安心して、曲がり角をやはり先に曲がった。
その、立ち止まってふり返るときの顔——おかーさんが、ちゃんと自分を見ていてくれるだろうという期待と、自分はもしかしたら先に行きすぎてしまったかもしれない、ふり返ったらおかーさんはいないのかもしれない……という、ほんのちょっぴり心配な気持ちとを混ぜたような表情は、一生忘れることができない。
私と目が合うと、照れたように笑って、また走り出す。
あれがあいつの性格なんだな。

子供というのは、みんなあんなふうに、あとから親がついてきてくれることを確認するものだ、と思っていた。
ところが次男「アキタコマチ」は、同じ一本道を、一度もふり返らずに曲がり角まで曲がって走りつづけてしまう子だった。
私はびっくりした。
そうか、同じ年頃の子供でも、ふり返る子と、ふり返らない子がいるのか!

子供と走りつづけて、私も大人になった。
21年間、親をやってきた私、おめでとう。
「ササニシキ」は友達と飲むと言って出かけてしまったが、あのバカ長男を21年育ててきたことを祝って、鯛を買った。
鯛は回遊魚じゃないけどね。


昨年同日の日記はこちら→20年の子育てで

by apakaba | 2012-11-08 23:03 | 子供 | Comments(4)