あぱかば・ブログ篇

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2017年 09月 29日

ゴーゴー・インド30年 旅の記憶 蔵前仁一旅の回顧展

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蔵前さんの著書『ゴーゴー・インド』が出版されてから今年で30周年となり、本日より早稲田奉仕園のスコットギャラリーにて回顧展が開催された。
蔵前さんが旅先で買い集めたお土産の物販もあるというので、初日の今日、行ってきた。

学生時代に心躍らせてくりかえしくりかえし読んだ、懐かしい『ゴーゴー・インド』。
本の中にあったイラストの原画、さらにそのイラストの元となった旅先でのスケッチが飾られ、一点一点を見ていると、二十歳になるかならないかの当時の自分が、自分の体の中で「きゃああー!」と歓声を上げているようだ。

どこかの旅の宿にあったものだろうか?
茶色く変色した、古い『ゴーゴー・インド』現物の全ページを、感慨無量でめくってみる。
何人もがコメントを書いており、そこに混じってなんと『ヒマラヤの花嫁』の平尾和雄さんのサインが入っている。
そこでまたまた感慨無量。
蔵前さんに、平尾さんに、インドやネパール、アジア大陸に、当時どれだけ憧れたかわからない。

展示されているイラストを見ながら、どうして自分が30年間も、蔵前さんの旅に惹きつけられていたのか考えていた。
そして急にそのわけがわかった。
蔵前さんの旅の絵の多くには、旅をする彼自身の姿が描きこまれているからなのだ。
私は、“旅をしている、この絵の中の人”になりたかったのだ。

絵の中の蔵前さんは、苦笑したり怒ったりもしているけれど、ほとんどは「目はテンテンだけ、口はぽかんと少し開いているか、描かれていない」かの、無表情に近い顔だ。
蔵前さんは、テンテンの目でインドのさまざまな人や出来事を見ている。
大きなバックパックを背負っていることもあるが、たいていごく軽装ですたすたと歩いている。
たまに街の真ん中で立ち尽くす。
私が好きな蔵前さんは、少し猫背でタバコをくわえて歩きながら、通りすがりにインドの「何か」をふりかえりざまに見ているという姿だ。
あの、無表情とも驚きともつかないような、どうとでもとれそうな顔つきが、とても好きだ。

旅先の絵を描く人は多いが、「何か」を見たときの自分自身を描きこんでいる人は少ない。
写真は誰でも撮るが、旅の写真を撮っていれば、自分は記念写真以外に写らない。
だが、旅先で「何か」を見たとき、旅人はきっとみんな、あんな顔をしているはず。
大げさに目をむいたりせず、ただテンテンの目で、呆然とそれを見て、口はちょっとだけぽかんと開けて。
その瞬間を数限りなく描きこんでいるから、惹かれるのだ。
このなんともいえない表情の、雑踏をすたすた歩く“この旅人”に、自分がなりたかったのだ。


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どの絵にも懐かしい思いがこみ上げるが、懐かしさに胸が締め付けられて泣ける、という心持ちではなかった。
30年かけて、自分なりにいろんな旅をしてこられたから。
これからもきっと、いろんな旅をできるから。
目がテンテンのまま、ふりかえりざま肩越しに「何か」を見ては歩き去っていく世界の旅人とすれちがい、ちょっとおしゃべりをする、そんな旅行を、ずうっとしていきたい。

蔵前さん、あらためまして回顧展開催おめでとうございます。
40周年、50周年も、絶対行きますよ!
そして京子さんはじめスタッフの皆さん、ご盛況おめでとうございます!


by apakaba | 2017-09-29 20:23 | 旅行の話 | Comments(0)
2017年 09月 01日

ちびっこ忍者

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次男が8月の休みの日に作ってくれた


今日から二学期。
久しぶりに早起きして夫(教員)のお弁当を作っていて、缶詰のふたで指先を切ってしまった。
ガーゼ部分をてっぺんに、絆創膏を二つ折りにするようにして貼る。
くるくる巻きつける普通の貼り方では、指先の怪我を覆うことができないからだ。

幼稚園児だったころの次男「アキタコマチ」の笑顔が、ぱっと浮かんだ。
まだ半分寝ぼけたままの頭で、どうしてなのか考える。
絆創膏をこの形に貼ったら思い浮かんだのだ。

ほぼ20年前、次男は幼稚園に入園した。
そのころは、子供なのでよく怪我をしていた。
指先を怪我すると、泣きながら絆創膏を貼ってもらいに来た。
ガーゼ部分をてっぺんにして、二つ折りの貼り方をしても、指が小さくて細いのでてっぺん部分はだぶついている。
指先であまっている左右の部分をつまむようにして貼り合わせると、ふたつ角(つの)が立って、ちょうど頭巾のように見えた。

「ほら、“ちびっこ忍者”だよ。」
と言うと、「アキタコマチ」は顔を輝かせた。
「アキタコマチ」は、当時のお遊戯会で「ゆけ、ちびっこ忍者」という遊戯を踊っていた。
喜んで絆創膏の指を動かしながら、一緒に「ゆけゆけゆけゆけ、ちびっこ忍者!やあ!」という歌を歌った。

それからしばらくは、指先に怪我をするたびに「ちびっこ忍者にして。」と言ってきた。
ボールペンで、勇ましい男の子の顔を描いてやったこともあった。

やがて、不器用な私よりも、手先の器用な「アキタコマチ」は、自分で“ちびっこ忍者”を形良く作れるようになり、そのうちに怪我もしなくなった。

……と、いうことを、自分で貼った絆創膏を見て、いっぺんに思い出した。
20年近く、ずうっと忘れていた。
急に泣きそうになった。
大事だったはずのひととき。
あんなにかわいいと思って、あんなに楽しかったことも、やっぱり忘れてしまう。
今日は思い出せてよかった。
このままでは、きっとまた忘れて、20年後にはもう思い出せなくなっているかもしれないから、忘れないうちに、ここに書いておく。


by apakaba | 2017-09-01 15:48 | 子供 | Comments(0)