あぱかば・ブログ篇

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2018年 10月 15日

またも三島に泊まるドライブ旅行

ブログを書く時間がなく、更新がまるっきり滞っている日々。
中学校の非常勤で働き、ブログを書くなら旅行記事の原稿を書いてしまうので……


これが私のページ。現時点ですでに760本書いている。記事に「いいね」してね〜。
しかし、いろんなことをやってもいるので、写真だけでも載せていこう。


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箱根のポーラ美術館で開催中の「ルドン ひらかれた夢」へ行った。
ルドンは昔から好きで、これまでもよく展覧会を見てきたが、そのたびに受けてきた印象は「心を病んでいる人」というものだった。
心を病んでいるからこそ芸術を生み出せた人はたくさんいるだろう。
ルドンもその系譜だと考えてきた。


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けれども、今回は初めて、「ルドンのことを誤解していたのかもしれない。彼の心は、病んでいなくて、健康そのものだったのかも」と感じられた。
長年見続けてきたつもりの作家でも、まったく別の印象を持つこともあるのだな。
それは企画の力か、こちらの心持ちが変わっただけなのか。
今の私には、ルドンは健やかで好奇心に満ちた作家に見えた。

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収蔵品の、フィンセント・ファン・ゴッホ『アザミの花』。
苦しく、息詰まる、絵の具の厚塗り。
やはりゴッホの心は苦しんでいた。


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宿泊はドーミーイン三島。
ここのところ、半年ごとに3回泊まっている。
なぜなら最近の一泊ドライブでは、三島の「クレマチスの丘」に行くからだ。
ふだんはシャワーだけの入浴なので、温泉はとてもうれしい。
温泉内は撮影禁止だが、一番乗りで入って誰もいなかったので。
翌朝は目の前に富士山がよく見えて、いい温泉だなあ〜と感激した。

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温泉と並んでこのホテルのいいところは、おいしい朝食。
三島らしく、しらすと桜えびの二色丼。
このあとも山ほどおかわりをして、わんこそばのようにお皿を積み上げた。


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クレマチスの丘には幾度も来ているが、ヴァンジ彫刻庭園美術館は初めて。
庭園というから屋外展示のみなのかとずっと勘違いしていた。
ちゃんと美術館が建っていた。
しかし、このアプローチは大変めずらしく、一気に期待が高まった。
照りつける日差しにさらされた石庭は、賽の河原を思い起こさせる。


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ヴァンジという彫刻家のことすらまるで知らなかった。
なんじゃこりゃ。
とてもおもしろい。

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コンクリートの壁に咲く花。
須田悦弘企画展『ミテクレマチス』を見に来た。
須田悦弘は直島で初めて見て以来のファン。
木彫りの花はコンクリートの壁の質感と相性がいい。

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屋外にあるほんものの蓮池のエッセンスがここでくりかえされる。
うその水面、うその葉、うその花に、ほんものにはない哀しさが宿る。
歌舞伎の女形が女よりも女らしいように。
ほんものの女より美しく、純粋なように。

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庭園にほんものの蓮池が。
台風一過の最高の天気だ。

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須田さんの作品はもちろんのこと、ヴァンジ彫刻庭園美術館そのものが予想外によかった。
建築がおもしろいし、ヴァンジという彫刻家もおもしろい。
地下展示室の作品が、片方は男性ばかり、もう片方は女性ばかりを並べているのも、途中で気が付いておもしろく感じた。


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雪のない富士山を見ながら帰路につく。
最近のサービスエリアは食事もおいしいし、車は調子いいし、ドーミーインは温泉と朝食がいい。
このドライブ旅行は、うちの幸せパターンだ。
クレマチスの丘には今後も末長くがんばってもらいたい。
そして12年ぶりに来た箱根ポーラ美術館も、がんばってもらいたい。


# by apakaba | 2018-10-15 14:52 | 国内旅行 | Comments(0)
2018年 08月 13日

「ササニシキ」入寮

今日から9月末まで、「ササニシキ」が家を出ていった。
自宅から研修施設が遠いので、研修施設のそばにある寮に入るという。
ほんの1ヶ月半の短いひとり暮らしだ。
家にいても、家族にさまざまな迷惑をかけるばかりで、なにひとつ貢献しない「ササニシキ」なので、入寮は実にありがたい。

さっき、玄関に荷造りしたものが並んでいたので見てみると、小さいスーツケースと、仕事用のカバンと、紙袋がふたつ?
紙袋のひとつには新しいスリッパが。
もうひとつには、箱入りのお酒の一升瓶が。
ナンデスカこのまとめ方(まとまらなさ)は。
私なら一升瓶をスーツケースに入れるが……紙袋が破れたらどうするの……もう少しうまくまとまらなかったのか……?

出て行く瞬間まで頭を抱える、本当に奇妙な男。


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去年はイスラエルをひとりで回っていた「ササニシキ」。
かなり無謀な旅だったようだが、この写真はほのぼのだった。



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とある食堂に入ったら、ユダヤ人のおじさんが「旅行か?これを食え」と、自分は食べず、どんどんご馳走してくれたという。
旅行は人の情けで動いていく。


奇妙な男だが、あともう少しで、やっと一人前の社会人。
弟より出遅れること数年、がんばって勉強して、いい人生を作ってほしい。


# by apakaba | 2018-08-13 16:14 | 子供 | Comments(0)
2018年 08月 12日

ハルビン・長春・瀋陽・旅順・大連旅行と、留守番の「コシヒカリ」

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中国の駅は人的スケールを無視した巨大なものが多い。
ハルビン駅は伊藤博文が暗殺された現場だ。



今年の夏休みは、夫と中国東北地方を旅行してきた。
以前は、このブログに旅行記を書いていたものだが、今やその時間がなくなってしまったので、簡単なレポートだけをTwitterやFacebookに記している。
今回は現地でネットにアクセスしている時間が長かったため、Facebookに書いていた。
リンクを貼り付けることで旅行記としよう。


ハルビン点描

長春点描


瀋陽点描


旅順点描


大連点描


こうして並べるとバカみたいだけど、ちゃんとリンクに飛べるので!よろしく!
大連の最後に、以下のように感想をまとめた。


日本軍の足跡を追う、中国東北旅行最終日。
今回の旅行は、タクシーがつかまらないこと、英語が通じないこと、ビールが冷えてないことが、甚だしく苦しかった。

成田から大連へ飛び、大連からハルビンへと北上していくのが普通のルートどりだと思うが、わざわざ大連からハルビンへ一度飛んでから陸路で長春、瀋陽を通って大連へ出た。
その道のりは、満州からの引揚者が通った一番遠いルートと重なる。
また、ハルビンに多数住んでいたユダヤ人が、シベリア鉄道経由でナチスの迫害を逃れてきた経路でもある。
杉原千畝の発給したビザを持って、ヨーロッパからハルビンにとどまり、大連から日本へ渡ったのだった。
東浩紀の編集している雑誌『ゲンロン5』で井出明の連載していた「ダークツーリズム入門」を参考にして、このルートを作った。

旅行に行くと、しばしばダークツーリズム寄りの行き先を選ぶ。
戦争・侵略という、もっともむき出しとなった人間の愚行の片鱗を拾うことで、今見えている世界をとらえなおしたいと思うからだ。
日清・日露で多大な人的被害を出しながらも勝ったことで、完全に日本はイケイケになり、進む道を踏み誤った。
人の命が軽かった時代。
大きな意志のためには犠牲はやむを得ない、としてしまう、そのまちがった頑張りが、第二次世界大戦での結末を生んだ。
本当に、日本の軍隊の異常な頑張りようは、あちこちの戦争遺跡を見に行くとやりきれなくなる。
その頑張りが、これからの日本で正しい方向へ生かされることを切に願うが、今の政治を見ていると不安ばかりが募る。

それにしても、初めて中国本土に行ってみたが、都心でもないのに十分にその広さと人間の多さ、発展途上ぶりを体験した。
ひと昔前に較べれば格段に進歩したのだろうが、それでも先進国となるにはまだまだかかるであろう。
それより先に、先進国の人口は減少し、中国の人口は増えているので、これから中国的なやり方が当たり前になっていくのかもしれない、それはなんというディストピアだろうか!
初めて行ったが、もう本土はしばらくいいかなと思った。
しかし、いくら人から聞いたりものを読んだりしても実感できなかった中国本土の様子が、行ってみると実によくわかった。
人を人として扱わない、個人のことなど少しも考えない国
ひとりひとりは気のいい人たちだけれど、これでは人心が荒む。
ただ、住んでいる場所に安住している限り、人々は物質的にそれなりに幸せそうに見える(ごはんはおいしいし)。
子供や赤ん坊を眺めながら、この子供たちが大人になる頃、中国はどんなふうになっているだろうと考えていた。
ともあれ疲れた。
疲れた旅行だった。


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「侵華日軍第七三一部隊遺址」
日本軍の特殊部隊「第七三一部隊」の行なっていた人体実験の陳列館。
毒ガス室に母親と子供を閉じ込めているところ。


というわけで、私も疲れたのだけど、留守番をしていた娘の「コシヒカリ」も疲れたらしい。
兄二人はほぼまったく家にいないため、一人暮らしのように、自分の食べる分だけを自炊していたようだ。
8日間の旅行中、なんどもメールを送って「変わりないですか。」と聞いていた。
「今日は鶏肉とナスのサルサソースがけを作りました」
「昨日は冷しゃぶとナスのなんかおいしいやつを作りました」
「昨日はささみ梅しそチーズカツを作りました
今日はお味噌汁と、夏野菜と牛肉の煮込みです」
そんなにがんばっているとは、出発するまでは思いもしなかった。

置いてきた「コシヒカリ」が心配で、最終日の朝方に夢を見た。
寝ていたベッドで目が覚め、帰国の支度をしていると、「コシヒカリ」が実はレイプされたと知る、という悪夢だ。
私が「警察に届けたの! どうしてメールで黙ってたの!」と動転のあまり責め立てると、「旅行中に心配かけたくなくて……」と言う。
「性病や妊娠の危険もあるから! とにかくアフターピルだけでも!」
大騒ぎしているうちに現実との境が曖昧になってきて、またそこから目が覚めると、ふたたび同じ最終日のベッド。
そして支度をしていると実は娘がレイプされたと知り……、と、同じ場面をぐるぐる回り続ける悪夢だった。

帰宅して「コシヒカリ」に会うと、もちろんレイプはされておらず、しかし堰を切ったように、いかに留守番生活が大変だったかを話してきた。
「もうわたし、本当に疲れた。家事って大変なんだね。いつもいつも、次のごはんの支度を考えないといけないし。部屋に犬の毛がすごいふわふわだから、掃除機をかけるんだけど、寝る前にかけても次の朝に居間(犬のいる部屋)に入ると、『ウワアーもう床がふわふわだ! なんでなんだよ〜』って思うし。
洗面台も掃除したけど、すぐ汚くなるし、栓がすぐ犬の毛で詰まるし!
やってもやっても、家事って終わらないのね。
おかーさんって、大変なんだね。
わたしなんか自分の食べる分だけ作って、せいぜい一品だけなのに、早起きしていろんなものを作って、おかーさんってすごい。わたしは一週間が限界。わたしはおかーさんにはなれないって思っちゃった。」

「それに、お兄さんたちはほんとに!
夜も帰ってくるのかこないのか、ぜんぜん連絡くれないし! でももし女の子と遊びに行っていて、いい雰囲気になったときに妹からメールで『何時に帰りますか、お風呂はどうしますか』とか聞かれたら嫌でしょう。だから我慢してたの。」
「そんなのかまわずに聞けばいいのよ。そんなの気を遣っていたらきりがないよ。」
「だってもしそんなときにメールがきたら、めっちゃ萎える。」
「そんなんで萎えるようなやつは萎えさせとけばいいんだよ。そんなこと言ってたら男の子二人なんか育てられませんよ。」
「それはおかーさんだからだもん。わたし、妹だから。妹は立場が弱いもん。」


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昼は麺、とりわけ牛肉麺を食べることが多かったなあ


なるほど。
おつかれさまでした。
まあ家は大体そんなことだろうと思って、「コシヒカリ」だけにネックレスをお土産に買ったのだった。
「コシヒカリ」は喜んで何日も続けてそのネックレスをつけていた。


# by apakaba | 2018-08-12 17:23 | 旅行の話 | Comments(0)
2018年 07月 31日

地元サッカー部でつながる

次男「アキタコマチ」は月曜が休みの日。
毎週月曜にはよく遊びに行っているので、「次の月曜は何するの?」と聞く。

「ええと、遊びに行く。ヤスオくんと。」
「ヤスオくん? なんで?!」
「あと、ユリコ。」
「なんだその集まりは……中学のサッカー部?」
「まあ、そう。それしかこの3人に共通点がないね。」

ヤスオくんというのは、長男「ササニシキ」の小中学校時代の同級生で、地元中学のサッカー部出身だ。
つまり「アキタコマチ」の3年年長だ。
ユリコというのは、「アキタコマチ」の中学校時代の同級生で、女の子ながらサッカー部に所属していた、元気のいい子だ。

今朝、真っ赤に日焼けした「アキタコマチ」が起きてきたので、「何して遊んだの。」と聞くと、
「ヤスオくんが運転して千葉の海に行った。遊泳区域の限界のブイまで泳いで、3人で一個のブイに少しつかまって休んでまた戻って、3往復した。すごく疲れた!」
「へええー。ずいぶん泳いだね。さすが体育教師(ヤスオくんは小学校の先生で専攻は体育)。夏らしい遊びをしたねえ。海水浴なんて!」

ヤスオくんは「ササニシキ」のこともいつも気にかけていてくれる、地元のありがたい友達だ。
面倒見がよくてやさしい。
小さいころ、「アキタコマチ」はよく「あー、オレのお兄ちゃんがヤスオくんだったらいいのに。」と言っていた。
海から戻って、いったん車を置いて、近所で飲んで、最後の方にまた一人、サッカー部時代の友達も加わったという。

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本文と関係ありませんが。
暑かったシンガポールの空。


今、私は子供達が卒業した学校で働いていて、その中にはサッカー部の子もたくさんいる。
ということは、今、勉強を見ている生徒たちも、うちの子たちやヤスオくんたちの後輩かー。
そう思うと、とても懐かしく、いっそうかわいく思える。

それにしても地元のつながりはいいなあ。
毎日猛烈に働いている「アキタコマチ」は、ハードな海水浴でクタクタになったようだが、よく日焼けして楽しそうだった。

ありがたいヤスオくんのことを書いた、13年前の話



# by apakaba | 2018-07-31 18:50 | 子供 | Comments(0)
2018年 07月 24日

憧れのおばあさん的生活

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本文とは関係ありませんが。
シンガポールに行ってきました。
健康な体があってこそ旅行ができますね。


地元にいると、よく、病院の待合室とか、バス停とか、道端でも、おばあさん同士がばったり会って「あらーっ、誰々さん! お久しぶり! ちっともお変わりなく!」「……。あらあーっ! 誰かと思ったら!」なんて言い合って、ひとしきり昔話や自分の具合の悪さについておしゃべりをしている。
あれ、いいなあ。
私もおばあさんになったらああいうことがしたいの。

私はかねてから友達にこう言っていた。
そうしたら、今日、整形外科に娘の小学校時代のママ友がいた。
手を振ると「あらーっ!」と言う。
3年に一度くらい、たまたますれちがう。
お互いの娘同士は、しばしば駅のそばの居酒屋で飲んでいる。

「どこが悪いの?」と聞かれたので、
「私は椎間板ヘルニアのリハビリ。電気治療と、腰の牽引をするの。」
「私は腰の狭窄症でねえ。あーうちの娘に聞いたわ。あなたが椎間板ヘルニアになったって。」
「な、なんで知ってるの。」
「それで『コシヒカリ』ちゃんは『おかーさんが腰が痛くてそのうち歩けなくなるかもしれないから、そのために運転免許を取ることにした』って。だから教習所に通ってるんだって聞いたわよ。」
「なんだその美談仕立て……。すごくいい娘みたいじゃないの……。」

などと話していると、またもうひとり、娘の小学校時代のママ友が。
そしてまたしても「あらーっ!」
そして「どこが悪いの?」「トシねえ〜。」

いいなあ。
ママ友って本当に貴重で、ありがたい。
昔から憧れていた、“おばあさん同士の再会”シーンを、そろそろ実現できるようになってきた!
ちなみに私は、腰の椎間板ヘルニアが痛く、テニス肘と五十肩は完治せず、新たに足底筋膜炎になりそうな気配だ!
まだまだ、というかこれからずっと、整形外科には通う人生ね。
これからもっと頻繁に、待合室で「あらーっ!」となっていくんだなあ。
地元はいいなあ。


# by apakaba | 2018-07-24 17:37 | 生活の話題 | Comments(0)
2018年 07月 13日

影絵のこと

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犬は後悔しない


影絵人形劇団の今年度最初の公演が終わった。
私は毎度ながら主役の少年の声を当てた。
しかし、この4月から教員の仕事が倍に増えたため、練習にほとんど参加できなくなってしまった。
これまでは、企画段階からきちんと関わり、作品理解のための話し合いを重ねて、ほとんどの練習に参加してきたのに。
ようやく休みを調整して練習に行けたのは、もう最終段階でたった3回。
家で自主練をする余裕もなく、みんなとの温度差を感じながら、明らかに「口だけで」セリフを読んでいた。
これじゃあ、なあ……と焦るけれど、役が見えてこない。
自分に与えられた役割が、わからない。
わからないまま、とうとう本番の朝になっちゃった。

私は必ず主役をやる。
劇団代表が作る話は、私が読むことを想定してセリフが書かれている。
ラストに、その話の核となる主役のセリフが用意されている。
「ちゃんと主役をやって、特にここをしっかり読んでね」と口に出して頼まれたことはないが、初めて台本を開いて目を通すとき、いつでもその核となるセリフがバーンと目に飛び込んでくる。
そこに行き着くと、「これを読むのは私なんだなあ」と、代表からのメッセージ、いや、命令としてそのセリフを受け取る。
受け取ったら、大切に大切に磨いて、練習期間中はそのセリフのことをずっと考えている。
でも、今回はそれがまったくできていなかった。

私よりうまい人、きれいな声を出す人はいくらでもいるだろうけど、私より切実さを声に込める人はいない、と自負している。
私などはただの素人だから、どっちにしろたいしたものではない。
しかし、私の声で、見ている子供たちを別の世界へ連れ出したい。
別の世界を垣間見せたい。
誰も代わりになれない声を出したい。
ずっとそれを目指してやってきた。
それなのに、こんなに何も決まらないままで本番とは……と、暗い気持ちで起き上がった。
起きたときに急にすべてがわかった。

今回の役は、大地の子(王子)だ。
戦争で大地が荒れ果て、悪魔の存在がはびこり、森も海も暗くなってしまった世界に、力を合わせて再び明るさを取り戻そうという話。
最後、明るさが戻った世界で、これからどうするのかと聞かれ、王子はこう答える。
「この国が元どおりになったら、旅に出かけるよ。そして、見たことのない国の人たちと友達になって、お互いの国を知り、二度と戦が起きないようにするんだ。」
ずっと口先だけで読んできたけれど、その朝、突然この言葉が、自分とぴったり重なったのだった。
これは私がずっと求めてきたこと。
どうして今まで、わからなかったんだろう?
このセリフの深さに。

当日に気づいたから、仕方なく、ぶっつけ本番で読んだ。

「この国が元どおりになったら、」
私は自分の国の現在と未来を憂う。
他国の現在と未来も、やはり憂えている。
“元どおり”への、なんと道のりの長いことか。未来はあるのか?

「旅に出かけるよ。そして、見たことのない国の人たちと友達になって、」
10代のころから、ずっと続けてきたこと。
旅に出よう。広い世界を知ろう。
これまで旅してきた世界の、さまざまな情景が目の先を移っていく。

「お互いの国を知り、」
海外旅行ライターをほそぼそ続けているのも、読む人に、世界にはいろんなところがあり、いろんな人がいると知ってほしいからだ。
価値観を固定してほしくないのだ。

「二度と戦が起きないようにするんだ。」
今起こっている、世界の不幸を思い起こす。
紛争、衝突、テロ、そこで犠牲になる人たち。
二度と戦が起きないように……そうなったら、どんなにいいだろうね。
そんな世界、来るのかしら。
でも、この王子ならやるのかも。
子供向けの話では、世界は象徴的であり単純化されているが、それだけに、真実へいち早くたどり着ける力がある。
二度と戦が起きない世界。二度と戦が……と、ここで私は決定的な失敗をしてしまった。

世の不幸を眼前に再現しながら読んでいたら、本当にグッと込み上げてしまい、声がよろよろと震えてしまった。
泣きの演技や死ぬ演技は数えきれないほどやってきているが、本当に泣いてはいけないのだ。
声が弱々しくなってしまう。
ああそれなのに。
自分と重なり、感情が押し寄せて、ヘタクソな響きになっちゃった。
大後悔。

しかし、このように一種のトランスに入ったのは初めてのことで、本番で読みながら驚いた。
やはり、言葉には魂が宿る。
影絵は総合芸術で、すべての駒が合わさってひとつの大きな力になる。
私の声も、ひとつの駒。
他のそれぞれの持ち場も、大切なひとつの駒。
欠けたらできない。
こんなに心を動かされる体験を、自分たちの手で作れるのだから、本当に幸せなことだ。


# by apakaba | 2018-07-13 16:52 | 歌舞伎・音楽・美術など | Comments(0)
2018年 06月 10日

地元の神社で水無月茶会

学生時代、早稲田大学茶道研究会というところに所属していて、今日は学生主催の「水無月茶会」に行ってきた。
卒業してからめったにお茶会に行かないけれど、今回は、うちのすぐ近所が会場だったことで行ってみたくなった。


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はい、地元の皆さんはわかりますね。
大宮八幡宮です。

大宮八幡はよく行っているのに、ここにお茶室があることをまったく知らなかった。
境内のどこにあるのか知らず、それも冒険気分で楽しみだった。
この写真の左手に本殿があり、正面は手水舎、その右の、しめ縄の張ってある小さい門、ここが入り口だった!
初詣やらお祭りやらでしばしば通るが、この奥のことを知ろうともしていなかった!


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しめ縄の門をくぐると、このように!
竹の植え込みの向こうに、いつもの風景が見え隠れ。
参道を走る子供の声が、竹の隙き間から聞こえてくる。
鏡の中に入って、鏡の中からこちら側の世界を見ているみたい。


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そして、本当にありましたお茶室が!
こちらは濃茶席。
薄茶席は、待合に続いた広間があった。
なんと二つもお茶室を持っていたのね。

濃茶と薄茶と、ふた席入ったが、両方ともすばらしい道具立てだった。
なんたるお金持ちなサークルよ。
来年、創立70周年になるが、伝統あるサークルは卒業記念品も増える一方だし、私が所属していたころに較べてお宝が揃っているのだろう。

2年生のぎこちないお点前と半東さんをほほえましく見つつ、こんなすてきなお道具に囲まれてお茶席に入れるのは、実に得難い体験だなとしみじみ思っていた。
どんなに茶道具の名品がそろう美術展でも、この贅沢さには遠く及ばない。
美術館で、人の頭越し、ガラス越しに張り付いて道具を眺めても、それはあくまでも鑑賞。
お香が焚かれたお茶室に入り、おいしくて美しいお菓子を食べてお茶を飲んで、愛らしい道具、奇抜な道具、豪華な道具、そのひとつひとつと、学生さんたちの取り合わせに感心し、それを手に取ることさえできるなんて。
お茶席に入ると、ホリスティックな幸福感を得られるのだ。


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お昼は地元の名店「蘭」にて


幽霊部員だった学生時代には、この歳になって自分がこのような感慨とともに再びお茶会に行くとは想像もしていなかった(基本的に、若者はそんなに先の未来なんて想像しないが)。
加えて、見慣れていたはずの地元の神社の風景が、ぐるりと何もかも変わって見えるという、不思議な感覚も味わえた。
大学生になってサークルに入ったときに買った袱紗ばさみ(茶道用の小物入れ)は、今日、取り出してみたら、いつの間にかボッロボロになっていた。
娘が高校生のころ茶道部に入っていて、そのころは娘にも貸していたので、今にも崩れて小物が出てきそう。
来年の70周年記念茶会までには新調して、これからも細く長く、茶道と付き合おう。


# by apakaba | 2018-06-10 18:40 | 生活の話題 | Comments(0)
2018年 06月 01日

子供との毎日で

6月は月曜から金曜までぎっしり学校に行き、土日も自習教室のボランティアに行く週がある。
自分が中学生だったころはあんなに学校と学校の先生が嫌いだったのに、いつの間にか中学校にどっぷりじゃーん。

昨年度から行っていた学校の方は、生徒も私に心を開いてくれていて、ありがたい。
今年度から行き始めた方は、まだ新しくてたまに来るだけのセンセイのことがよくわからないながらも、どうやら味方になってくれるらしいと思い始めたようで、少しずついろんなことを話しかけてくるようになった。

きのう、昨年度から行っていた方の生徒から言われた言葉。
「あのね、先生、先生は、先生の中で最高。この学校の全部の先生の誰よりも最高。俺はそう思う。」
たまにしか会わず、ほぼ話したことも勉強を教えたこともなかった生徒も、こんなふうに思ってくれているなんて、本当にうれしいことだ。

「先生、教えて!」「先生が授業やってよ!」と言われるけど、私の役目は授業ではなく、こそこそっと小声で教えるだけなので、ちょっともどかしい。
でも生徒との距離感は近い。
自習などで少しは自由な感じで勉強できるときには、いろんな声色で間違いを指摘したりする。
「先生、いろんな声が出るんだねー。」
「今の声、かわいい!」
「孫悟空の声やって!(まだ言うのか←影絵公演でやったことがあるので)」

体はクタクタだけど、学校に行っている間は疲れたなんて思いもしない。
生徒の顔を見ると、かわいくて、とたんに元気になる。
で、一人になるとどっと疲れが。

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長男「ササニシキ」が突如「これをあげましょう。」と言う。
「なにこれ。もらいもの?」
「ちがう。」
「買ったの?なんで?」
「日々の、感謝。」

日々の感謝だそうです。驚くね。
きっと家にいる私は、精根尽き果てているのだろう。


# by apakaba | 2018-06-01 21:10 | 子供 | Comments(1)
2018年 05月 20日

しのごの言わず、覚えないといけないこと

近隣の中学校で、土日に自習教室をやっている。
私は、2年前からそこで講師のボランティアをしている。
きのうと今日も行ってきた。

この自習教室は年々人気が出てきて、今年度はさらに大盛況。
3年生になっても来ている子がたくさんいる。

3年男子は日本国憲法前文の暗記にうんざり。
「ねー先生、これ全部覚えるんですよ! 大変すぎるでしょ! なんでこんなの覚えないといけないんですか!?」

「おお。これは日本国民の義務だよ。これは覚えないと。」
「えっ、先生も覚えたんですか?」
「おーもちろんよ。」
「じゃあ言ってみて!」
「“われらとわれらの子孫のために”ってヤツでしょ? えへへ。」
「そ、それくらいはぼくだって。」

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新宿御苑にて


「あのね日本国憲法前文は、覚えないとダメなやつだから。これは義務というより、国民の権利なの。」
「そうなの!? どうしてですか?」
「だって読んでみてよ。胸アツでしょう、この辺とか、この辺とか(“専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと……”、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する……”)。」
「ううーん? 言葉が難しい。」
「日本が戦争に負けて、どん底のところから立ち上がろうとして、この憲法を作ったわけ。感動的だよこの文章は。」
「そうか〜。“諸国民”ってなんですか?」
「ん、たくさんの他の国のことよ。日本だけが発展するんじゃなくて、世界の他の国とも一緒に発展しようってこと。」
「なるほど。」
「胸が熱くなるねこの文は。今は覚えろ覚えろって先生に言われて、やらされ感が強いと思うけど、勉強ってそういうものなんだ。今このときには『なんだかわからないなあ』と思っても、無理に覚えさせられたことが、そのあと一生の宝になるということはあるからね。
日本国憲法前文を覚えることは、そのあとのあなたの人生でずーっと持っていられる宝物だよ。」
「そうなのかあ。わかりました!」

改憲の議論がこの先どうなるのかわからない。
しかし、ろくすっぽ知らないものを論じる資格はないと思う。
彼もあと3年で選挙権を得る。


# by apakaba | 2018-05-20 22:04 | 生活の話題 | Comments(0)
2018年 04月 09日

突如おかーさんをダサいと言う

新学期になり、私もいよいよ自転車通勤が始まる。
今まで行っていた学校(今年度も行くが)までは徒歩5分だったため、“通勤”にほとんど気を配らずに1年間勤めてきた。
今度は自転車で20〜30分くらいかかりそうなので、気になるのが“日焼け問題”だ。
私は紫外線アレルギーで、UVケアをしっかりしないといけない。
徒歩なら日傘を差すけれど、自転車なので帽子をかぶることにした。
キャップだと首の後ろが露出してかゆくなるから、つばの大きい帽子。
先日、つば広で風でも飛ばされなさそうな紺色の帽子を買った。
ファッション性ゼロだが、通勤だけに使うからいいの。

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ソウルでは娘だけ韓服をレンタルした。
私は付き人のように撮影だけしていた。


と、思っていたけれど、やっぱり新しいアイテムはうれしいので、まだ通勤が始まらない春休みに、買い物や犬の散歩で毎日かぶっていた。
ところが娘の「コシヒカリ」と出かけようとしたときに、私がこの帽子をかぶると、
「おかーさん。ダサすぎる。」
と。

コ :なんでそんなにダサい帽子をかぶるの。こんな帽子見たことないよ。なにもここまでダサくなくても。
私 :どうせ通勤にしか使わないから……。
コ :そう言って通勤じゃなくてもかぶってるじゃん。どうして自分からダサくなろうダサくなろうとするわけ? わたし、恥ずかしい。もしもわたしの友達とかに会ったら。
私 :ええっと、どうせいつも帽子をかぶってマスクもしてるから、私だってバレないよ。「あ、『コシヒカリ』ちゃんのおかーさんだ、ダサいー」とか、言われないよ。犬を連れてたら犬しか見ないでしょう。
コ :ちがうから! どんなに顔を隠しても無駄なの。コーシローは友達の間で有名なんだから。犬を見れば「あ、この犬を連れているダサい人は、おかーさんだ」って友達にもわかっちゃうの!
私 :ご、ごめん。
コ :わたしまでダサいみたいで困る! わたしがダサくて捨てようと思ってた(ユニクロのミッキーマウスが描いてある)トレーナーを着てるし、ボロボロのウインドブレーカーを着てるし(そのときの服装)。それで帽子がそれでしょう。それって自虐だよ。なぜそこまで自分を貶めるの。わざとダサく見られようとしてどうするの。

なんでこんなに攻撃してくるのかねこの娘は。

私 :かわいい「コシヒカリ」ちゃんの付き人としていればいいの。存在を消したいのよ(意味不明)。
コ :そんなの意味ないし、逆に目立ってるから。通勤には、ほら、みんなかぶってる、こんなやつ(サンバイザー)、あれでいいじゃん。
私 :あれは首筋を覆わないからダメなの。
コ :だったら首にタオル巻いて。そしたらたくさんいる“ダサいおばさんの一人”に混じれるじゃん。自転車で通り過ぎても、誰も注目しないよ。存在を消せるよ。この帽子じゃ、「あ、今通り過ぎた変な帽子は『コシヒカリ』のおかーさんだ」って一発で覚えられちゃうのよ。“ダサいおばさんの一人”にすら、入れてもらえないのよ!

なにこの子。
昔はダサかったくせに、ちょっと色気付いてかわいくなってきたと思ったらこの口のききようなのね。
ビックリしちゃうね。


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まあ、たしかにかなりかわいかったが……



# by apakaba | 2018-04-09 22:39 | 子供 | Comments(0)