2008年 11月 25日
帝国ホテルをチェックアウトして一歩外へ出れば、夢は終わってただのしがない観光客だ。 大阪にまるで疎い我々は、駅の切符売り場でもいちいち立ち止まり、改札に入ってからもいちいち立ち止まり、と確認をくり返さなければ動けないので、非常に時間を無駄にしてしまう。 交通手段(バスかタクシーかその他か)の選択や乗り換えを「これでいいのかなあ?」「この行き方がほんとにベストなんだろうか?」と迷いながら動くのでなおさらだ。 息子の写真展は午後からなので、万博記念公園内の国立民族学博物館(通称みんぱく)へ行ってみた。 私は以前に行ったことがあるが夫は初めてである。 駅からタクシーに乗ると2100円かかり、あとから地図を見て 「こんなはずがない!絶対わざと公園の外周をぐるっと半周したぞ!」 といつまでも怒っていた。 いわれてみればそんな気もする、でもこういうことってわからない。 外国だとよくこういうことがあるけど……どうなんだろう? 私が前に行ったときは、展示の量の多さに驚いてしまい、丁寧に見ていったら4時間近くかかってしまったことがあるので、あらかじめそれを言っておいた。 あんまり熱心に見ていると疲れ切るし時間がなくなると。 夫は、私に言われなくてもちゃんとスピードを心得ていたようで、かなり駆け足で一回りした。 だから1時間くらいであっさりと見終わった。 「どうだった?すごい量だったでしょう。」 「うーん。あれはなあ。きっと、あそこの人は、とても真面目な人たちなんだろうなあ。 でもなあ、無理なんだよ。あんなにいっぱい並べられても、人間はそれほど集中し続けられないものなんだ。お腹いっぱいになっちゃって。」 「あはは!長すぎる映画みたいに?監督の気持ちはわかるけど、2時間にまとめるのも芸のうち……って?」 「そうそう。あれも見せ方なんだよな。たとえばガイドツアーみたいなのを置いておいて、今日はここを重点的に見てみましょうとか学芸員が解説つけて詳しく見学させてくれるとか、そういうことをすればもっと生きるんだよな。 並べてみました!だけでは、人は食いつかないよ。」 「そうだねえ。すごい努力だけどねえ。」 「努力の方向性が大事なんだよ。……それよりこの公園はいったいなんなんだよ、なんだこの無駄な土地の使い方は。」 突然怒り出す。 「まったく徒歩の人間のことを考えてねーじゃねーか!クルマ前提かよ。バスはぜんっぜん来ない、駅からは遠すぎ、タクシーはぼるし。 自然文化園……?エキスポランド……千里住宅公園……?日本庭園。夢の池……ねぇ。国際児童文学館……とにかくなんでも持ってきたな?建ててみましたってヤツか。無茶苦茶なとこだなあ。こりゃ根本的に変えないと、こんな土地の利用じゃどうしようもねえぜ……」 「だけど大阪はお金がなくってそんな改革的なことできないんだよ。」 「だよなカネはないよな!利権がからんでくると身動きとれないっていういい例だよな……。うーん。司馬遼太郎行くか!」 突然行き先を変更する。 このまま、写真展の会場に直行するとばかり思っていたので驚く。 司馬遼太郎と言っているのは、安藤忠雄作品のひとつである司馬遼太郎記念館のことである。もちろん、行きたいことは行きたいが、 「もう一箇所行くの?写真展に行くのが遅くなっちゃうよ?」 「いいじゃねーかせっかく遠くまで来たんだから!写真はどうせ夜まであいてるんだろ?まだ大丈夫だよ!」 ということで、このあとどっさりと乗り換えをして、司馬遼太郎記念館へ向かった。 往きで懲りて、もう絶対にみんぱくからタクシーに乗りたくない夫は、モノレールに乗るという。 本当は公園内に乗り入れているバスに乗ろうとしたのだが、時刻表を見ると1時間に1本あるかないかで、短気な夫は「この野郎ふざけんな!」と罵詈雑言をバス停に浴びせ、カリカリしながら広大な公園を徒歩で出て、モノレールの万博記念公園駅まで行った。 初めて知ったがそこはガンバ大阪のホームグラウンドの最寄り駅で、グラウンドからは、まだ昼なのに応援の練習をする声がこだましていた。 それを聞いていると、夫の苛ついていた気分が幾分か収まったようだ。 i Phoneでせっせとアクセス方法を調べ、万博記念公園駅→南茨木→淡路→天神橋筋六丁目→日本橋→河内小阪、と乗り換えた。 ↑ 南下するにつれ、庶民的に…… 途中の南茨木で、昼ごはんにした。 当初の夫の希望「関西行ったら粉モン食いたい」をかなえるべく、お好み焼きやうどんの店などを探そうとしたが、駅から見える範囲では見つからず、街へ出てさがすには時間が足りないので、割り切って駅にあるコーヒーとホットドッグを食べてしまった。 初めてシアトルズベストコーヒーに入った。 ぜんぜんうどんじゃなくなって少しがっかりだが、コーヒーはなかなかおいしい。 私は「こんなに乗り換えるんですか……」とうんざりだったが、夫は大阪の街の様子、駅構内に立っている人たちの様子をめずらしげに眺めている。 「なんか……どんどん様子が……とくに“おっちゃん”が……!外国みたい……!俺って……こんな小ぎれいなカッコしちゃってひょっとしてバカみたい?浮いてるか?(一応、帝国ホテルから出てきたので)」 あなたの言いたいことはわかる。 ディープな感じになっていくのですよね。 朝にチェックアウトした帝国ホテルがスタンダードな大阪だと思ったら大間違いなのよ。 (つづく)
by apakaba
| 2008-11-25 11:17
| 国内旅行
|
Comments(10)
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那由他
at 2008-11-25 15:44
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>「こんなはずがない!絶対わざと公園の外周をぐるっと半周したぞ!」
私は大阪で車を運転しないので、間違っているかもしれないのですが、小耳に挟んだところでは、万博公園の外周道路は時計回りの一方通行の部分があるそうです。 だから、路線バスは、時計回りにしか走っていなかったと記憶しています。 以前、父の車で、民俗学博物館へ行ったときは、反時計回りで行ったような気もするので、確かでは有りませんが、もしかしたら、一方通行という事情でタクシーが、大回りしたのかもしれないですね。 参考までにWikiによると 「吹田市内には、万博記念公園の大部分を取り囲む環状道路(時計回りの一方通行路)となっている所があり、その部分は大阪府道129号南千里茨木停車場線と重複している。」とか。
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さると
at 2008-11-25 17:14
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なかなか写真展に来ない訳だ・・汗
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ogawa
at 2008-11-25 18:41
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那由他さんの書かれているとおり、万博環状道路(通称:万博外周)は時計回りの一方通行です。
それも部分ではなく一周すべてです(那由他さんゴメンナサイ)。 そのため外周道路に進入して右手に見えていても一周せざるをえません。 公園内もたとえばガンバのホームのある側はバスも頻繁に出ているのです。 そこの交通が分からないと今回のように不便を強いられることになります。 事前にちゃんとお伝えしておけばよかったですね・・・申し訳ありませんでした。
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apakaba at 2008-11-25 19:26
那由他さん&ogawaさん、そうでしたか。
そんなことすらも知らないんだから、ぼられたかぼられてないかなんてわかるはずもなく。 これだから見知らぬ土地って無駄に気苦労しますね。 それが旅なんだけど。 土地の人間からしたら当たり前のことなのに、よそ者には疑心暗鬼になったり、大冒険気分という……典型です。 それにしても、道路の案内などの表示が非常に不親切という印象はありました。 あそこは、遠方の人間を対象にしていなくて、基本的に土地の人を対象にした遊びスポットなんだなあと実感した次第です。 さるとさん、ごめん、本当に(でも次回分はナイスだよ!)
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タカモト
at 2008-11-25 23:32
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>外国だとよくこういうことがあるけど……どうなんだろう?
間違いなくあるね。 でも、ガイドブックで見る料金よりチョイ高程度なんでまーいいかなぁと。 タクシーが曲者なのは・・・(俺が行ったことある範囲で) アジア・・・ベトナム(次点でバンコク) 欧州・・・・チェコ メーター落とさないなら「正規料金」より少し割安にしろよなぁ。 割高だから乗らんのよ。 アホと言うか・・・ >夢は終わってただのしがない観光客だ。 あはは、妙にウケた。 特に高級系の後のギャップはそれこそだよなぁ。 まー大阪は「独立国家」なので異国同様に「交通手段」では心配だよなぁ。 大阪かぁ・・・個人的には行かない土地だろうなぁ。。。 あー地元民様方、すみません。
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apakaba at 2008-11-26 14:02
タカモトさん、この前、うちからタクシーで新宿の小田急センチュリーサザンタワーまで行ったんだけど、運転手が完璧なるシロートで、正面につくまでぐるぐるぐるぐる回って法外にとられた。
ぐるぐる回るならメーター止めるべきなのに。 家のそばでもこういうことはありますわ。 大阪には、私も用事がなければわざわざ観光だけしには行かない。 誰かに会うとか、なにかがやってるとかでなければ……行けば「いいな」と思う面と「ザケンナー!」と思う面とがあり、「大阪大好き!」とまでは思わない。 私もそうだから、なにかあったらせっかくの機会だからせっせと観光しようと思ってるの。 ママ友だちで大阪出身の人がいて、彼女にいわせると「大阪に帰ると、ほんとうにリラックスできるの。なんにも緊張しないで、のびのびできて、帰ってきた〜って思えるの!」と。 彼女にとっては「ふるさと」なんだろうねえー。 私や夫にとっては、外国同然の緊張を強いられる場所なんだよね。 人の感じ方って不思議ね。 ウルフルズも「大阪ストラット」という曲のなかで、「なにはなくとも難波は最高、他に較べりゃ外国同然」とか唄ってるけどね。
結局、司馬遼太郎記念館は行ったのかしら?彼の書物を愛する私としては気になるところですが・・。
大阪は乗り換え駅で使うも降り立ったことがあまりない。 一度、遊びに行ったことがあって、記憶が薄いけど、有名な繁華街?グリコが万歳しているあたり?でたこ焼きを食べて「ふ~ん」。ベイサイドがいいと聞いて、行ってみて「ふ~ん」。唯一驚いたのは水族館でジンベイザメ?を見た時でした。 あとは、皆、喧嘩越しで話しているように見えるということ。普通の会話なのでしょうけど。 広島もヒドイ言葉があるけど、以前より方言が薄れています。 大阪は頑なに守り通しているのか・・
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apakaba at 2008-11-27 10:53
soraさん、まあ先を焦るでないぞよ。
近々つづきを書きます。 グリコバンザイあたりは繁華街としかいいようが…… 水族館というのは、海遊館ですね。 あそこデカイよね。 海遊館の入っているサントリーミュージアムの建築が、私の好きな安藤忠雄さんなんだけど、あまりにデカイので彼特有のよさがうまく体感できない。 いいところ(いい面)もたくさんあるし、よくないところ(よくない面)もたくさんある街だと思う。 大阪を「好き」「嫌い」と、一言では決められない街だな。 人がいっぱい住んでいるというのは、やっぱりそれだけでひとつの街の顔を複雑にするものだからね。 でも、「大阪いいなあ、住みたいなあ!」と思ったことはない。 やはり私にとっては、よそ者意識はかなり強くある。 そのひとつは、言葉の問題でしょうね。
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のこのこ
at 2008-11-27 11:11
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自称・専門は民俗文化 なので諸先生方はじめ民博は憧れの場所です。
一度その場まで行った事があるけどなんか事情があって時間がとれず、中をちゃんと見たことがない。 でもいいの。私はアタマ悪い分、本物を現地まで見に行くんです。 まあ、研究機関だかわざわざ来て地域をディープに研究したい人までも満足させられる展示になっていてほしいのですがどうなんだろ。 まあ、私にはチンプンカンプンのワインやチーズを楽しんでるダーリンに民博の展示が多すぎと言われても、お互い様としか。(笑) しかし突然パタリと翻るさまが面白い人ね。 頭がいつもフル回転してるんだろうな。
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apakaba at 2008-11-27 11:46
みんぱくは、ライブラリーや、コンピューターを使ったブースもたくさんあって、調べ物や専門的な勉強をしたい人の利用価値はあると思います。
ただほら、ほとんどの人はさっと見て回っておしまいだろうから。 学校の生徒たちの夏休みの研究なんかには適しているでしょう。 (それにしても公共交通機関の整備がヒドイが) いろんな国を旅行した人にとっては、ほんのちょこっとしたものにも「なつかしー。こういうの、あったよねえ」と感じるだろうな。 夫のあの変わり身の速さについていくのはなかなか大変だけど、こっちも自己主張のないタイプだから大丈夫。なんでも笑顔でつきあう。 |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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