2010年 11月 12日
前編のつづき。 東大寺で開かれた、ダライ・ラマ講演会へ行った日のこと(記事こちら)をふり返っています。 夜のような雰囲気だけど朝の8時。 朝食のために、開店と同時に入店する。 ホテルのすぐそばの、伊右衛門サロンだ。 前回、ここに来たときは本当にお茶しか飲まなかったから、次は是非なにか食べたいと思っていた。 (店内の様子は「京都の空間意匠」を追う・その5に写真をたくさん載せているのでそちらもごらんください。) おいしうございました。 左奥に写っている、水出しのほうじ茶がたいへんおいしかったので、お土産に買った。 ノーファインダーにしてはちゃんと写っていたな。 中国人観光客の皆さんにしつこくからむシカたち。 彼らはシカのしつこさに、とてもビックリしていた。 「大華厳寺」と書かれている奥の南大門が、待ち合わせ場所である。 このダライ・ラマ講演会のことを教えてくれた方と、あそこの運慶作金剛力士像の前で待ち合わせている。 彼は内田さんというライターで、以前、私も微力ながら彼の著作のレビューを書いた。 彼の物した『ふるさとの仏像をみる』という本から、仏教美術に造詣の深い方ということはわかっていたし、国内外のいろいろなところへ旅をしていることも知っていたので、お会いしてゆっくりお話をするのがとても楽しみだった。 しかし、腹ごしらえをしなければならなかったわ。 なにしろ、会場内は飲食禁止であり、いくら朝しっかり伊右衛門サロンで食べたといっても、夕方までなにも食べないわけにはいかない。 軽く、名物の柿の葉寿司でも食べるか。 小さく見えるのに、だいぶお腹いっぱい。 ギュッとかたまったご飯物ってボリュームあるのね。 これだけお腹いっぱいなら、夕方までもつでしょう。 南大門で内田さんを待つ。 観光が目的で来ている人と、ダライ・ラマ講演に来ている人とが一目で見分けられる。 絶対に観光客じゃないわ。 さりげなく近づいてみると、韓国人のようだ。 おそろいのスカーフの後ろには、ダライ・ラマさんがなにか描いているような姿がプリントされている。 まるで熱気を発しているような団体が、このほかにもいくつか見られた。 とかなんとか言ってるうちに! 韓国からの信徒さんたちが、猛然と走り出す! その勢いにびっくりして、連続で撮ってみるがすべてブレボケ。 あわてていると、ろくなことになりませんね。 ダライ・ラマさんを慕うその熱意に、共感を覚える。 ほどなく、内田さんが私を見つけてくれた。 久々の再会、というより会うのは二度目なのだが、そこはネット友だちの強みで、すぐにいろんな会話をして楽しく過ごす。 内田さんと過ごした数時間は、ダライ・ラマさんに再会(再拝謁というのか)できた喜びと相まって非常に楽しいものだった。 横浜出身という同郷の気安さ、同じ大学卒の親近感、ダライ・ラマさんとチベット問題への言葉では説明しがたい気持ち、日本や世界を歩いていたタビビト同士のシンパシー。 まるで、どこかの国で、偶然に宿がいっしょにり、旅路がひととき重なって「じゃあ、いっしょに次の街まで行きます?」なんて言いながら夕食を共にしたりバスに乗ったりした旅の友と語り合っているような気分になる。 それは私にとって、とても、とてもなつかしい感覚だった。 いわゆる「ママ友」とはちがう、日常的な飲み友達ともちがう、お互いの種々なバックグラウンドよりも今ここでいっしょにいてしゃべっていることがなによりも現実感がある、というような——やはり、「旅の友」という感覚だ。 もちろん、仏像や仏教に関して、ド素人の私にやさしくいろいろと教えてくれて、講演の最中もあとも、実に助かった。 私もついつい、昔のような自由な旅行をしていたときの気分のままに、一度しか会ったことのなかった内田さんに向かって、べらべらべらべら、とりとめなくしゃべりつづけた。 ダライ・ラマさんに初めてお会いした10年前のインドヒマラヤの旅行のこと、新婚旅行が奈良だったこと、亡くなった夫の祖母が、ここ東大寺の戒壇院の広目天が好きだったこと、昨年の4月にその広目天を見に行って祖母を偲んだこと(「旅立て新婚旅行!」として書いた)……私はふだん、あまり友だちに向かって自分のことをべらべら話さないほうなのだが、旅先の人にはなぜか思いがけないほどしゃべることがある。 内田さんは“旅”の雰囲気を持った人だったのだな。 あとで内田さんのダライ・ラマ講演会の日記を読んで知ったが、あの講演会では、まったく同じところで胸が熱くなり、目頭が熱くなっていたのだった。 それも、とてもうれしかった。 同じように、法王の一挙手一投足に感じ入っていたのか、とわかって。 ほんの短い滞在だったが、すばらしい旅行だった。 さて帰宅して、さっそく「コシヒカリ」に例の頭蓋骨を見せたら、案の定 「うわーっすごい!恐竜の骨?」 と叫んだ。 「おかーさんがお店の人におねだりして、ひとつもらったんだあ。」 と自慢すると、 「おかーさんって、すごいね、よくやるね。恥ずかしくないの。」 と、決して非難しているのではなく感心していた。 これが、その骨です!!!!!!! ねっ、恐竜そのものでしょう! ダライ・ラマ講演会でもらったチベットのパンフレットに置いてみた。 横から。 カンペキなフォルム……! うっとり……! 光らせてみた……! 変身して異界へ飛び立つ戦隊もののヒーローみたいじゃない? これは実に、予想外の収穫だった。 「コシヒカリ」は得意げにクリップを胸につけていたが、学校につけていくのはさすがにやめていた。
by apakaba
| 2010-11-12 22:58
| 国内旅行
|
Comments(6)
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ogawa
at 2010-11-14 21:54
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せっかく、関西に来ていただいたのに、土日と仕事でお相手できませんでスミマセンでした。
このスッポンの頭蓋骨は・・・面白いじゃないですか。 面白い店見つけたようで、また教えてくださいな。 伊右衛門の朝食もよさげですね、地元だと行かないので気がつかないもので。
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内田
at 2010-11-15 01:51
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奈良では楽しい時間をありがとうございました。↑旅先で待ち合わせるのっていいですね。私がミタニさんを見つけたときは、運慶の仁王像を撮ろうとしていたのか、かがんでいる姿でした。声をかけようとしたら、すくっと立ってどこかへ行きそうになったので、後ろから声をかけさせていただきました(笑)
いまダライ・ラマはどこにいるんでしょうね。あの風邪の具合だと、しばらくゆっくりしていただきたいです。 帰路、ちょうど興福寺の横を歩いているあたりで、「旅立て新婚旅行!」のお話をうかがいましたね。読ませていただきました。こんど、戒壇院を訪ねたときは、きっとこの話を思い出すことと思います。 クールな表情で振り向きつつ、「また誘ってください」とひと言残して、京都駅新幹線改札へ向かう姿に旅情があって、カッコよかったです!
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apakaba at 2010-11-15 11:31
ogawaさん、今回はどうしようかなと思ったのだけど、関西のお友だちには誰にも声をかけずにぱっと行ってきました。
すっぽんにコメント無反応なのがガクリだったので、うれしいです! これでもすっごい気合い入れて撮ったのですよ! 京都に泊まらないで京都のお店の朝食を食べる機会は、かえってなかなかないでしょうねえ。 以前はグランヴィアの「ル・タン」の朝食が好きだったのだけど(おおマダム。オホホホホホホホホ)、私の好きなセットがなくなってしまってからは一度も行っていません。 伊右衛門サロンは、若干お給仕が若者向けで我々のような年代にはせわしない印象の人が多いですが、それ以外はとても好きです。おいしい!
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apakaba at 2010-11-15 11:39
内田さん、あらためましてどうもありがとうございました。
本文を読んでくださればわかるように、ひどく「旅先の人」を思い出させるひとときでした。 最近、旅行には家族と行ったり、一人でも誰かといっとき共に過ごすような長旅をしていないので、なんともいえない懐かしい感覚でした。 昔は、空港や宿で出会った人と、「これからどっちの街へ?」「じゃあ、そこでもまた会えたら!」みたいに、いっしょに歩いたり別れたり(ほんとにまたばったり再会したり)やってましたよね。 >クールな表情で振り向きつつ、「また誘ってください」とひと言残して、 いやーあのう、私はわりと一人でどこでも行動してしまうので、お友だちには「また誘って」と言っておかないと忘れられそうで心配なのです。 「1杯やる?」とか聞きましたが、どう考えても1杯じゃ済まないよねと思い、しらふでお別れすることとなりました。 それこそ、それはそれで「また誘ってください!」
右脳型としては、まずは写真の話から。
今回の写真もイイですねぇ(^^)v 動くモノを撮れば、ブレ・ボケは返って自然ですたい。昔、ロバートキャパさんがノルマンディ上陸作戦を撮ったとき「臨場感を出すためにカメラをわざとブラした」なんて話を思い出しました。今回の記事は頭にいろんな像が浮かびました。鹿のお尻で「山上たつひこ氏のがきデカ」八丈島のキョン、がリンクしたのかな? すっぽんの骨は、ナウシカに出てくる巨神兵の化石。 ダライラマさんのメッセージを考えています。仏教の学生に特に発されていたということですが。旅って、帰るところがあるかどうかなんて議論もありますけど、まずはやっぱり動くことですよね。「欲しがらない若者たち」が増えているようだけど、命やら生き方には貪欲であってほしいなぁ(自戒も込めて)
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apakaba at 2010-11-21 00:21
ダライ・ラマ後編レス。
グッドバランスさん、おお〜写真へのコメントはとってもうれしいです!!!!! というか、せっかく得意満面で持ち帰ってきたすっぽんにみんな反応薄なのがさびしいです! ノルマンディーはわざとブラした、というのは苦しい言い訳だろうけど、でもあれによってたしかに臨場感は格段にアップ。 ほしがらない若者は、満たされているのではなくて、逆にずーっと、「あきらめさせられ慣れてる」ような気がしますね。 ある程度は、大人が与えてやらないと。 |
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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