あぱかば・ブログ篇

apakaba.exblog.jp
ブログトップ
2011年 08月 25日

四門出遊

ゆうべ、あるブログを読みふけっていた。
リナックスカフェ代表取締役の平川克美さんという方が連載している、ご両親の介護をつづったブログである(かんかん!という、看護師のためのWebマガジン内の連載)。
「俺に似た人について知っていること——老人の発見」というタイトルで、現在6回まですすんでいる。

第一回 母親の死

第二回 ゴミ屋敷

第三回 放蕩息子の帰還

第四回 生死を分ける賭け

第五回 介護の関門

第六回 死への親近感

長い連載だが字が大きいので案外すらすら読める。
いや、すらすら読めるのは字が大きいからだが、書いてあることが重いので、やっぱりそうすらすらとはすすまないかもしれない。

平川さんご自身も還暦だというのに、80なかばの老いたご両親をほぼ男手ひとつで介護するということの物凄さが、ときに悲壮に、ときにほのぼのと、ときに詩的に、そしてとことん個人的に語られる。
読みながら、自分が介護する立場として、
“老いた親たちを、このように介護できるだろうか”
“ご両親に倒れられてみて初めて平川さんが悔やんだように、私も親たちのことを、見ているようでなにも知らなかったのではないか”
とも思えば、逆に未来の、介護される側の立場となって、
“記憶がとぎれとぎれになることは、かえって幸せなのかもしれない”
“でも周囲は憐れむだろうな。あの元気だった眞紀さんが、とか言われるんだろうな”
“でもその声さえ届かないほど、心が遠くへ行ってしまえば”
“私はどんなふうに最晩年を送るんだろう。子供たちはそのとき、どのように私を扱うのだろう”
“いや、夫を介護する日が来るかも。人一倍、体がデカイから大変だ”
“夫は私の介護など、やってくれるのかな。あの人は弱虫だから、無理かもしれない”
などとも考える。
老いることの容赦のなさ、死への苛烈な道のりを確認する。
そして最後には、45歳という年齢で、脳出血で一晩にしてあの世へいってしまった父の死に顔をはっきりと思い浮かべ、「あれは、今にして思えば、なんとまあきれいで元気そうな死に顔だったことよ。」と感慨にふけった。
病気との長い闘いについに斃れた人、老いから逃れることができなかった人の死に顔もいくつも見たが、みな安らかではあるにしても、やっぱり壮絶さが顔にとどまっている。
きれいな死なんてきれいごとで、一個の命がなくなることは、すさまじく重い現実である。
そう考えると、父みたいな死に方だと周りはショックだけど、遺体は美しかったんだな。

夜中にひとりぼっちで介護と死のブログを読んでいたら、さまざまな思い出や感情が押し寄せて、つい数日前に楽しく旅行をしてきた写真などを見ても、ただただむなしく感じてしまう。
こんなことして遊んでる場合じゃない……たったいまも、介護をしたりされたりして眠れずに過ごしている人がいっぱいいるのに、なにを浮かれてるんだ私は……なんて思っちゃう。
ゴータマ・シッダールタの四門出遊じゃあるまいし、そんなことを思っていてもしかたがないのだが、平川さんの文章に圧倒されて、気持ちを飲まれてしまった。

きのうは、そろそろ香港旅行のことを書き始めようと思っていたが、どうしてもする気にならなかった。
でも一晩たって少し落ち着いてきた。
やはり夜に一人で読むと入れ込んでしまうのね。
自分の楽しみを知らない人は、介護だの看取るだのもろくすっぽできないだろう。
自分を満たすことができなければ、弱っている人も決して満たされないだろう。
とりあえず今は親たちも全員まあまあ元気だし、我々夫婦も元気だし、それなら今は、めいっぱい遊んじゃえー。
かの平川さんだって、きっとすばらしい仕事やすばらしいお友だちに恵まれて、幸せな60年を生きてこられたはず。
だからこそやれたのだと思う。
生老病死はどれもつらいに決まってるけど、楽しく生きたい。

平川克美さんの連載は、是非読んでください。
このWebマガジンは、ほかの連載もおもしろそうですね。

by apakaba | 2011-08-25 16:23 | 健康・病気 | Comments(8)
Commented by agsmatters05 at 2011-08-26 07:04
はい、読みました。読ませていただきました。時間がかかったけど・・・。やっぱり貴重な読み物。貴重な書き物だと思いました。ご紹介に感謝。さて、私もブログを更新しなくては・・・なのですが、、、。
Commented by apakaba at 2011-08-26 07:16
ミチさん、元気ないご様子ですね。
私はもうすっかりミチさんのクイズのトリコで、昼も夜も正解を出そうと考えています。
毎日かかさずブログを書く人がいるけど、よほど強靭な心をお持ちなのか、とんでもなくドラマチックな日々を送っているひとなのかな?
いずれにせよ、尊敬してしまいます。
ふつう、いろんなことで落ち込んで、書く気になれない日がありますね。
Commented by saheizi-inokori at 2011-08-26 10:11
昨夜NHKで認知症の妻を介護している夫のドキュメントの終わりの方をみました。
家の近くの山に二人合わせて1万回登るのを目標にしていて、とうとう達成するのです。
「せつこさ~ん」と笑顔を絶やさず決して急かさず幸せそのものの顔をして奥さんの手を引いてあげるのです。
ああ、神様がいる!と思いましたよ。
二人の後に先になりして嬉しそうに走るワンちゃんも可愛かった~!
Commented by ぴよ at 2011-08-26 18:10 x
すごい偶然(なのか?)
昨日学生時代の友達と3人でランチしながら自分達の老後の話で盛り上がって(盛り上がるネタでもないかw)、私ともう1人の友人は「うちの旦那はもし私が寝たきりになっても絶対自分では介護してくれないと思う」とかそんな話してたんだよね。

あと1人の友達は既に一度寝たきりになった経験があって(重篤な病気で何年も病院と自宅を行ったりきたりだった)その時にご主人がトイレに自力で行けない友達の為に毎日おしめを変えてくれて風呂場に連れてってくれて自分のシモを毎日洗って皮膚荒れしないように薬を塗ってくれたりしたって言ってて、もう1人の友達と一緒に「アナタは本当にいい旦那さんを見つけたね。羨ましいよ」という話をしていた所ですわ。

でも私も、もし自分の旦那が寝たきりになったら・・・うちも身長も体重も結構あるしガタイがいいから私一人では到底風呂に入れてやる事も出来ないだろうなぁ、と思ってしまう。
Commented by minmei316 at 2011-08-26 19:38
ありがとうございます
一通り読ませていただきました
介護の現実をまざまざと見せられたような気がします
本当の大変さは、下の世話、肛門に指を入れて便を出す事、ではなく、日々変わらない介護生活の中での自分との葛藤にありそうです。
>自分の楽しみを知らない人は、介護だの看取るだのもろくすっぽできないだろう・・・
わたしもそう思います
自分に余裕がないとね、それこそ見えるはずのものが見えなくなるのだと思います・・・
どんどん老いていく親を見ていると、ほんと切実な問題です・・・
Commented by apakaba at 2011-08-26 23:46
saheiziさん、コメントありがとうございます!
認知症の奥様を介護する旦那さんの生活は、きれいごとでは済まない日々なのでしょう。
でも、だからといって、そのときの笑顔が無理してるとかウソなのだということではなくて、心底からの真実なのでしょうね。
そういう真実の瞬間に触れると、人間は神にもなれる(比喩的な意味ですが)ものだなっと、希望を持てますよね。
Commented by apakaba at 2011-08-26 23:52
ぴよさん、いやーとくにすごい偶然というほどでもなく、我々世代以降はこの話題とは手を携えていくって感じですねえ。
アナタの旦那さんもうちの夫も、絶対に妻を「悪いようにはしない」とは信じているけど、いわゆる身を挺しての介護、を、してくれるかどうかは微妙だねー。わはは(弱い笑い)
でも、夫婦も親子も義理の親子の関係も、やっぱり運命なんだよね。
その運命の中でできるだけのことをしようと思いますねー。
Commented by apakaba at 2011-08-26 23:57
minmeiさん、平川さんのブログを読むきっかけは、minmeiさんの記事を見たことでした。
twitterでの評判を通して、このブログの存在は知っていたけど、minmeiさんのあのお話を読んで、気持ちがぐっと引っ張られ、「もっといろんなことを知りたい。そういえば、平川さんという人のブログがあった」と思い出して辿ったのです。

こちらこそ、いろいろ考えさせてもらってありがとうございます。


<< 犬がもたらす幸せ      コーシローの姿勢のもんだい >>