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あぱかば・ブログ篇

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2011年 09月 19日

夫を香港に連れて行くぞ・6

のつづき(第1回はこちら)。

2日目・午後〜夜 ヘビスープ・フォーシーズンズスパ・ソーホーの屋台
どこでも効きすぎる冷房のせいで、夫は体調が悪くなってしまった。
香港島の東のはずれの海防博物館を去り、MTRで銅鑼湾(コーズウェイベイ/トンローワン)まで戻る。
「上野とか浅草みたいな感じだから。」
地上に出る前にそれとなく“人が多くて庶民的なところ”ということを伝えておく。
冷房の効いた地下鉄を降り、蒸し暑い地下道を歩いて地上に上がると、脳天をガーンと殴りつけられるような暑さが襲ってくる。
「次はどこへ行くの……」夫は息も絶え絶えだ。
「ヘビスープの店に行くからね。体が温まるよ。ヘビは、冬が旬だから今はあまりないんだけど、一応ヘビ料理専門店だから、多分あると思う。」

駅を出てすぐにある蛇王二という店に、この3月にも行っていた。
店内は3月と同じように大盛況の満席で、ヘビに似たおもざしのマスターが、これも3月と同じようにきびきびと切り盛りしており(そのマスターの載っている回)、ヘビスープはちゃんとあった。
もはやこういう店に慣れたのか(観念したのか)、夫はおとなしく相席の丸テーブルに座り、それなりにおもしろそうに、漢字ばかりの張り紙や、猛然と食べている周りのお客さんの様子をきょろきょろと眺め回している。
注文したのは、ヘビスープ・蒸しレタスのオイスターソースがけ・白いごはんに腸詰めを載せたものというお得用セットである。
すごい分量で、夫は完食したが私には無理だった。
ヘビスープは、やっぱりおいしうございました。

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たまに入っているやや大きめの肉のかたまりは、非常に上品な味わいである。
獣の肉にはない、品のよさだ。
むしろサカナに近いか?鶏肉に似ているともいわれるが、鶏からさらに獣っぽさを抜いたような味わい。
爬虫類って……何に近いんだろう?
鶏とサカナの中間の味わいというのは、進化論の立場からしてもあながち的外れでもないような気がする。
わさわさと落ち着かない食堂の中、この結論に自分で満足する。


前回の旅行記に書いたような感懐を夫に話しながら食べる。
夫は香港人も顔負けの食いつきで食べていたが、そのうち「暑い!暑い!」と、汗をだらだら流し始めた。
ヘビは芯から体を温める効果があるうえに、薬味としてねぎやしょうががたっぷりと入っていて、さらに片栗粉でとろみをつけてある。
腸詰めはかなりクセがある風味で(腐りかけているような味わい)、ゲテ系には相当に強い我々も、お酒なしで食べるのは厳しかった。
もしも白いごはんではなくお酒といっしょだったら、喜んで食べていたかもしれない。

店を出てふたたび午後の直射日光を浴びると、夫は水をかぶったように汗を流している。
「暑い……!でも体調はすごくよくなった感じがする。多分、あのスープの薬効が俺の体に合ってるんだと思う。」
体調を崩してぐったりしている人と旅行するのはツライという経験は、昨年の直島旅行で私が夫にさせてしまった。
元気になってよかった。

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我々の部屋は安い山側のお部屋。窓からはIFC(国際金融中心)が見える

ホテルに戻り、2ヶ月前から予約を入れておいたスパへ。
早くから予約していたおかげか、いくつかあるカップル用トリートメントルームのうち、一番眺めのいい角部屋に案内された。
ここでまずバニラ・ミルクバスという、白濁したお湯のお風呂に入る。
グラスにシャンパンも用意されている。
もったいないので私は飲みたかったが、夫は陽の高いうちには飲まないと決めている人なので、つきあってふたりとも一口だけ口を付けるだけにした。

ボディーポリッシュをして、そのあとさらにオイルマッサージをする。
私は体が凝りやすいので、マッサージはなんでも大好きだ。
しかし夫は凝らない体質で、少しでも強めのマッサージをすると痛いと言う。
そのうえ、
「ここのスパって、サウナとかのスペースは使い放題なの?だったら俺はとくにマッサージは必要ないな。ミストサウナとかジャクージとか、ベッドでジュース飲んだりしているだけで十分だなあ。」
などと、高いトリートメントプログラムをプレゼントした私に向かって罰当たりなことを言い出す。

バテバテだった午前中とは別人のようになった夫は、
「夜は、屋台でくだらないものでも食おうぜ!きのう行ったあのにぎやかなとこ(ヒルサイドエスカレーターで行ったソーホーのこと)をちょっと下ったあたりに屋台があったんだよ。それから朝見たスーパーでワインとかつまみとかを買い込んで、部屋で飲み直そうよ!」
と、自らすすんで提案してくる。
単純な性格、単純が体がうらやましい。
ヘビスープの効力はすごいね。

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リクエストどおりに屋台へ行き、がたがたのテーブルと丸椅子に座って飲むことにした。
出てきた青島ビールは申し分なく冷えている。
「よく冷えてる……ッ!クー、すばらしいな。ビールは冷えてなくちゃ。」
夫は「アゲアゲでいく」と、揚げ茄子に揚げワンタンを注文し、屋台のおじさんおばさんたちが、その場で手早く調理をしては各テーブルへと運んでいくのをおもしろそうに見ている。
「チャーハン作ってるチャーハン!」
「切ってる!」
「おおー炒めてる!すげえな!」
「あー、作ってる作ってる!」
なにがそんなに興奮するのか、さっぱりワカリマセン。
でも……私も、旅に出始めたころには、そうだったのかもしれない。
目に入ってくるものすべてが新鮮でものめずらしかった。
こんなに素直な反応をする人といっしょに旅行をしたのは、6歳だった長男を連れて行ったヨルダン・シリア以来のことである。

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6歳児並みの好奇心を止められない夫は、こんどは隣のテーブルに着いた、ダブルデートらしき若い男女4人組に注目し始めた。
彼らはお茶やコーラなどのソフトドリンクを注文している。
「なんで男と女がいて誰も酒を飲まないんだ?なんてつまらねえ奴らだ。」
「ここの人たちって、あまり大酒を飲まないみたいなのよね。周りを見てみなよ、次々ビールを飲んでるのって私たちだけでしょ?」
「なんてこった。こんなうまいもの食ってて酒なしなんて。あっ、男一人がどっか行っちゃった……あ、戻ってきた。ん?ポケットティッシュを買いに行ってたのか?」
「洗杯といって、出されたお茶を使って、お箸とか湯飲みをさっと洗うマナーがあるのね。でも若い人は今ではあまりやらないらしいよ。年寄りはやるけど。」
「あっ、ほんとだ洗ってる洗ってる。そしてティッシュで拭いてる。そのためにわざわざ買ってきたのか。」
「若いのに抜かりない奴だね。」
「あの野郎あれで好感度アップをねらってるんだな。」

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洗杯をしていた男女

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夫が感心して見ていた、チャーハンを作るおばさん

揚げ茄子には薄く衣がついていて、揚げにんにくがかかっている。
揚げワンタンは箸で持つとこわれてしまいそうな薄い皮の中央に、ほんの申し訳程度に肉が入っている。
「どっちもうまいぜ!肉なんかいっぱい食いたくないもん。でもこれで肉がぜんぜん入ってなかったらつまんないし、このちょっとだけ入っているのがいいアクセントだ。カラッと揚がってて、うまいなあ。」

これでそのままホテルに帰るのかと思ったら、
「うまかったな!ちょっと、あのにぎやかなとこ(だからそこはソーホーというんだってば)をのぞきに行こうぜ!ガイジンがどれくらい増えているのか、見たい。」
と、先頭に立って暗い夜道の写真を撮りながらずんずん行ってしまう。

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夜道をおもしろがって歩く夫(中央奥)

週末を迎えたソーホーの中心は、夫の期待に十分応える活況だった。
飲み屋の外の道路で、山のような白人たちが、ビールジョッキやワイングラスを手にして立ち話をしている。
「すげえな……」
自分も酒飲みの夫はあきれながらもこのとんでもないありさまに親しみを覚えているらしい。
道端で数人ずつでしゃべっては嬌声を上げている香港人やさまざまな有色人種、人込みの脇をすり抜けていく上半身裸の地元の老人、なにもせずにぼけっと階段に座っているだけの老人、それらを飽きることなく見回している。

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香港はうんざりする、香港は高揚する、香港はまさに、世界都市だ。

につづく)

by apakaba | 2011-09-19 11:05 | 香港2011夏 | Comments(4)
Commented by ogawa at 2011-09-19 20:23 x
ますます面白くなってきましたね。
ソーホーの外国人いっぱい状態は香港らしくない光景ですが、これも今の香港ですね。

ご主人の屋台街からソーホーまでの感性は、香港を旅慣れた人間にとってはとても新鮮です。

次回、香港へ行ったら素直にこの視点でみることにしましょう。
香港の新たな魅力を見つけることができそうです。
Commented by apakaba at 2011-09-19 23:27
旅慣れるということが、かならずしもよきことでもない、というのを、初心者とともに行動すると感じますね。
もう二度と、あのなににでも目を見張っていたときには戻らないのだろうかと思うと。
でも、だからこそ子供を連れたり、子供のような人を連れていくことが楽しいというのもあるな。
Commented by ぴよ at 2011-09-20 12:24 x
うわあああああ。
この展開は我が家には決して訪れないな。羨ましいわ~!
そーか。眞紀さんちってゲテ系は全然OKだったよね。いいなぁ~
ヘビスープなんて、私が「へ・・・」と言った瞬間に却下されそう^^;
屋台ご飯も絶対にダメだし。いいなーいいなーいいなあーーーー!
Commented by apakaba at 2011-09-20 18:13
ゲテがダメだとミタニ家の人間として生きていけないのでねえ。
寒暖差に圧倒的に弱い夫なので、香港は地獄だったみたい。
でも暑い国ほど、冷房はきついのよね。

ヘビの威力はすごくて、すっかり気持ちも前向きになり、夜道をバシバシ撮影していました。
このあと、スーパーでも率先して買いまくって、部屋でワイン1本空けちゃった。


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