あぱかば・ブログ篇

apakaba.exblog.jp
ブログトップ
2011年 11月 05日

『ミッション:8ミニッツ』

「もし残りの人生が、あと1分だったら?」
「悔いのないように生きたいわ」

SFサスペンスのつくりながら、かわされる言葉はせつないほどにまっすぐでシンプルだ。
デビュー作『月に囚われた男』ですでに証明済みだが、気鋭の若手監督ダンカン・ジョーンズ(鋭いまなざしが父デヴィッド・ボウイ譲りだ)の才能は、新作『ミッション:8ミニッツ』ではジェイク・ギレンホールの魅力によってさらに開花している。

主人公スティーヴンス大尉(ジェイク・ギレンホール)はアフガンで軍役についていたはずが、眠りから覚めるとシカゴ行きの通勤列車に乗っている。
目の前の女性から親しげに「ショーン?」と話しかけられるがまったく知らない。
自分の顔は別人の顔になっており、なぜか持っている身分証も「ショーン」という名の教員のもの。

はじめこそ記憶が混濁してしまったが、実は、彼はアメリカの空軍基地から次のような任務を帯びてここにいる。
この列車には爆弾がしかけられており、爆発はすでに起きて乗客全員が死んだ。
犯人は第二のテロをしかけると予告しており、その二度めのテロを未然に防ぐため、列車に乗っていたショーンという別人の肉体に軍人スティーヴンスが入り込んで犯人をさがすという任務である。
その猶予はわずか8分間。
犯人を見つけられないで8分が過ぎると、爆発して列車が吹っ飛ぶ。
しかし、この“転送”は、何度もくり返して行うことができるため、爆発して彼(の意識が乗り移っているショーンの肉体)が死ぬと、そのとたんに彼に指令を出している軍の本部に意識が戻ってくるのだ。
任務のため何度も何度もくり返し、爆発8分前の現場に戻されるスティーヴンス。
そのたびごとに、前とそっくりな情景がくり返されるのだが、彼は学習しているため「この次にこれが起こる」とわかり、だんだんと手際よくトラブルに対処できるようになる。
そして、目の前に座っているショーンの同僚らしき美しい女性をいつしか愛してしまい、彼女を救いたいと切望するようになる。
スティーヴンスは犯人をつきとめ、二度めのテロを未然に防ぐことができるか?
できることなら、一度めのこの列車テロも、起こさずに済ませることはできないのか?
自分の意志と関係なく任務を遂行する軍隊の歯車の一個としてではなく、ひとりの尊厳ある人間として、彼はどう行動すべきなのか?

“時空超え”“潜在意識”という、映画にうってつけのテーマと、スピーディーでスリリングな場面の展開の見事さもさることながら、俳優好きな私はやはりジェイク・ギレンホールがすばらしかったと思う。
彼には、まるで歌舞伎の若手俳優のような、底の知れない深い魅力を感じる。
やや寄り目の大きな目。
人懐こそうだがまるでスマートでなくむさ苦しい風貌。
あの、あまりカッコよくないところが、彼の演じるすべての役柄に現実感と説得力を加える。
みずからの(スティーヴンスとしての)生にはもはや絶望しかないことを受け入れるとしても、目の前の愛する人と触れ合いたい、離れてしまった父と和解したい、乗り合わせた乗客たちの最後の一瞬を笑顔で満たしたい……“人生最後の(とわかっている)8分間”をくり返し生きることで、彼は“善く生きよう”“悔いなく生きよう”と行動する人間として成長していく。
今が人生最後の時だったら、という彼の問いかけは、スティーブ・ジョブズの「毎日を人生最後の日だと思って生きる」というあの言葉とぴったり重なり、目頭が熱くなった。

奇想天外な舞台設定と、人間として生きることの普遍的で不屈の意志。
そのふたつのテーマを、矛盾を感じさせることなくしっかりとつないで感動させてくれるのが、ジェイク・ギレンホールだ。

キャッチコピーも日本版ポスターも実にぱっとしなくて興行収入が心配だが、まだ公開して日が浅いので、これを読んで興味を持ったら、ゼヒ劇場へ!
ジェイク・ギレンホール、大好きだよーッ!!!!!!!!!!!

(以前に書いた彼への愛は、こちら!『マイ・ブラザー』ヨカッタです……!)

by apakaba | 2011-11-05 14:04 | 映画 | Comments(2)
Commented by タカモト at 2011-11-05 22:32 x
意外に満席だったよ。(三銃士は半分か)

ハリウッドもやれば出来るんじゃんと思う。
銭掛けなくともそれなりに。(掛けてるのかしれないけど)

途中。
自分の意思とは関係なく8分間に行くのは面白かったわ。

思うに。大都会シカゴの手前の駅があー言う素朴な感じがいいのか。
Commented by apakaba at 2011-11-05 22:56
タカモトさん、ありがとうありがとう。
映画は観てない人からはコメントつかないし観る予定の人は読んでくれないし……あはは。
有楽町もけっこう入ってました。
みんな、デートなんだな。

シカゴに行ったことないからなあ……
でも「たくさんの人々、それぞれに人生がある」ということを思わせるにはいい舞台設定だったと思う。


<< 20年の子育てで      吉祥寺のレストラン 芙葉亭 >>