2015年 02月 26日
きのう、長男「ササニシキ」は東京地裁で裁判の傍聴をしてきたという。 弁護士志望で4月からは法科大学院に進む「ササニシキ」は、たまに傍聴に行っている。 きのうの裁判は、30歳くらいの男の暴行事件。 その人は、やはり暴行か窃盗かなにかの前科があり、更生するための寮のようなところで暮らしていた。 しかしその寮でも暴れて退寮させられ、住所不定無職となった。 寮で一緒だった人を恨んでいて、こっそり寮に戻り、その相手を殴ったという罪。 過度に飲酒もしていたらしい。 犯罪そのものとしては軽いが、被告人の様子を聞いているとやるせない気持ちになった。 あまりにも知的能力が低すぎて、裁判官や検察官や弁護士との会話も成り立たない。 質問されても回答に詰まり長く黙ってしまう、寮でお世話になった人物のことを思い出すと突然泣き崩れる、自分に不利な発言もどんどんしてしまう、裁判の中で使われる言葉の意味(「黙秘権」など)も、説明しても理解できない。 せっかく弁護士が、「もう酒は慎みます」と言わせようとして水を向けているのに、「いや〜酒は好きなんですよね結局……」などと答えてしまい、「被告人もこのように反省しています」と持っていけない。 司法側3人の間では猛スピードで会話が交わされるのに、被告人に対しては幼児に向かって話すように、「あのね、“もくひけん”っていうものがあってね、……」などと、噛み砕いてごくごくゆっくり話していたという。 外見は、髪も肩まで伸び放題(浮浪者同然の暮らしのため)で、直感的に“危ない”と周囲が感じるタイプ。 「もし電車とかで乗り合わせたら、絶対別の車両に移動しようと思わせるタイプ。」(「ササニシキ」) いわゆるIQがすれすれという、知的障害者に近い人が、不幸な生い立ちでこういうことになってしまうという典型的なパターンだ。 実際、高度に知的な犯罪は別として、衝動的な犯罪(「カッとなって殺した」とか)を犯す人のきわめて多くが、知的能力が劣っているのだという。 「カッとなって殺した」あとにどうなるのかを想像できず、裁判になっても知識も判断力も乏しいために有利に進めることができない。 その結果、ただ周りの人間への恨みだけを募らせ、再犯率も高くなる。 社会に復帰できるチャンスはだんだん減っていき(更生のための寮さえ追い出されるなど)、やがて重大な犯罪を起こしてしまう。 30歳酒好きの被告人は、かわいそうだなあ。 知的レベルに問題があったって、子供のころに、親など周りの大人から適切な判断をされて、適切な処遇を与えられていれば、今ごろごくふつうの暮らしを送れていたかもしれないのに。 すべての人間には、幸せになる権利がある。 本田靖春の名著『私戦』や『誘拐』の犯人たちも、本田の筆によってその生い立ちが明かされていくと、罪への憎しみよりも、子供時代や青年時代の彼らの不幸さに泣きたくなってくる(寸又峡事件の金嬉老はかなり頭が切れるように読めたが)。 幸せを苦もなく得ている大多数の人間は、犯罪に走る人間をすぐに排除し、社会的に抹殺して安心しようとする。 私だって、30歳酒好きの被告人が、さっさと刑務所から出てきてしまったら怖い。 正直なところ、できればずっと入っていてくれと思う。 でもそのくりかえしだけでいいのか? 悪い奴は閉じ込めてしまえば? もう悪くなっちゃった奴は仕方がないとして(何かしらの更生のチャンスを用意していくしかない)、やはり社会は、子供にせいいっぱいの注意を向けるべきだと思うのだ。 子供に十分な環境(教育と愛情)を用意してやることでしか、こうした悲しい犯人は減っていかない。 がんばってくれ30歳酒好きの被告人。 それにしても、裁判官・検察官・弁護士の三者は、もう流れ作業のようにどんどん裁判を進めていっていたという。 お互い身内な感じで、どうせ被告人はろくすっぽしゃべれないから、「被告人もこのように反省の念がうかがえるので……(←ぜんぜんそんなこと証言できてないのに)」と、スピードアップして終わっていったという。 事件は山ほどあるのに、「傷害」ですらないようなこんな軽犯罪に、いつまでも時間を割いていられないのだろう。 司法の人たちも大変だね。 今まで知的エリートコースを歩み、猛勉強をして法の世界に入っても、付き合う相手はIQすれすれの犯罪者ばかり。 刑事事件に進んだ人は、そのあまりのギャップに、精神的に苦しむという。 「ササニシキ」も、大学時代は刑事のゼミに入っていたが、どうすんの。 このまま民事にいかず、刑事の道を突き進むのか? まああいつはけっこうメンタル的に大丈夫っぽいけど。
by apakaba
| 2015-02-26 09:37
| 子供
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以前はエイビーロード「たびナレ」や「一生モノ https://issyoumono.com/」などでウェブライターをしていたが今は公立中学校学習支援教員のみ。 子供のHNは、長男「ササニシキ」(弁護士)、次男「アキタコマチ」(フランス料理店料理人)、長女「コシヒカリ」(ライター・編集者) by 三谷眞紀 カレンダー
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